親権停止:改正民法など参院で可決、成立 虐待防止に期待

2011年5月27日 10時38分 更新:5月27日 11時59分

 親による児童虐待から子供を守るため、親権を最長2年間停止できるよう定める改正民法などが27日の参院本会議で全会一致で可決、成立した。期間の定めのない従来の親権喪失制度は親権の回復が難しく「親子関係の修復が不可能になり活用しにくい」と福祉の現場から指摘されていた。より柔軟に運用できる停止制度を創設することで、虐待防止につながることが期待される。1年以内に施行する。

 厚生労働省によると、全国の児童相談所(児相)が処理した児童虐待相談は、09年度は4万4211件で、10年前の4倍に増えた。児相はこのうち1万682件を一時保護。だが、児相所長が家裁に親権喪失を申し立てるのはまれで、最高裁が把握したケースは08~09年の2年間で計12件にとどまる。

 改正法は親権規定に「子の利益」を明記し、親権喪失の要件を「虐待または悪意の遺棄」「子の利益を著しく害する」場合に限定。親権停止は「子の利益を害する」場合と、適用を柔軟にした。申し立ては従来の親族、検察官、児相所長に加え、虐待された本人も可能とした。

 改正法の活用で、虐待された子を養護施設などが保護した場合、親権を停止させ親子をいったん引き離した上で、施設などが仲介して親子関係の修復を支援することができる。必要な治療を受けさせない「医療ネグレクト」の場合でも、親権停止中に治療を施すことが可能になる。

 また、親権者のいない子供の法定代理人となる未成年後見人も、必要な場合には複数選任できるようになる。

 改正児童福祉法も成立し、児相所長や児童福祉施設長は、保護している子供の生命や身体安全にかかわる緊急時には、実の父母の意に反しても必要な措置がとれることとした。【石川淳一】

 ◇親権

 民法は、未成年の子は父母に親権があると定めており、権利と義務の双方の意味合いがある。子の保護・監督や教育、財産管理などに範囲が及ぶ。離婚の際はどちらか一方が親権者となる。

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