レッドパージ訴訟:国家賠償請求を棄却 神戸地裁

2011年5月27日 10時10分 更新:5月27日 10時59分

 戦後の連合国軍総司令部(GHQ)占領下、共産党員らが企業などから追放されたレッドパージで、当時の勤務先を解雇・免職された神戸市内の81~94歳の男性3人が国に計6000万円などを求めた国家賠償訴訟で、神戸地裁は26日、請求を棄却した。矢尾和子裁判長は「国は(マッカーサー)連合国最高司令官の命令指示に服従する義務があった」と述べ、解雇の有効性を認めた1952年4月の最高裁判例を踏襲した。

 レッドパージを巡り国の責任を問う初の訴訟で、解雇・免職は違法か▽国は対象者に名誉回復や職場復帰、補償などの救済措置を講じる義務を負うか--などが争われた。矢尾裁判長は「連合国最高司令官の指示に従ったもので違法行為とはいえず、法律上の根拠もなしに救済措置を行うべき義務は認められない」と判断した。

 官公職から追放された人が、サンフランシスコ平和条約発効に伴う公職追放令廃止で復職した一方で、レッドパージの対象者は救済されなかったことについては「損害を補償すべきか否かは立法裁量の問題で、その裁量の範囲を逸脱したものとまではいえない」と結論付けた。

 3人は、大橋豊さん(81)=当時神戸中央電報局▽川崎義啓さん(94)=同旭硝子尼崎工場▽安原清次郎さん(90)=同川崎製鉄葺合工場。50年8~10月、共産党員であることを理由に解雇・免職された。判決後、大橋さんは「最高裁の超憲法的な判断が60年近く維持されているのはおかしい」と批判した。

 レッドパージを巡っては、雇用主を相手取った訴訟が100件以上あったが、すべて原告側が敗訴していた。しかし、原告3人の人権救済申し立てを受けた日本弁護士連合会が08年10月、「連合国最高司令官の指示などに基づき、日本政府が支援したものだから、日本政府にも責任がある」と国に名誉回復や賠償を行うよう勧告。全国の弁護士会でも同様の申し立てが少なくとも11件、勧告が6件出されていた。【重石岳史、渡辺暢】

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