2011年5月26日 1時11分 更新:5月26日 9時6分
日本ユネスコ国内委員会事務局に25日入った連絡によると、福岡県・筑豊の炭坑労働の様子などを独特の手法で表現した画家、山本作兵衛(1892~1984年)の原画や日記などが、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「メモリー・オブ・ザ・ワールド」(MOW、通称・世界記憶遺産)に登録されることが決まった。日本の歴史資料のMOW登録は初めて。
山本作兵衛は福岡県笠松村(現・飯塚市)出身。14歳から筑豊各地の炭鉱で働いた経験を基に「子孫にヤマ(炭鉱)の生活や人情を伝えたい」と64歳から炭鉱労働者の日常を墨や水彩で描いた。余白に解説文を添える手法で1000点以上の作品を残し、うち約600点は福岡県有形民俗文化財に指定されている。
申請していたのは、遺族が田川市石炭・歴史博物館などに寄贈するなどした1914~84年ごろの作品589点と日記・メモ類108点。狭い坑道で採炭するふんどし姿の男女やガス爆発の惨状、長屋での子供の遊びなど、当時の暮らしを克明に伝えている。
田川市は当初「九州・山口の近代化産業遺産群」の一環として旧三井田川鉱業所伊田竪坑櫓(たてこうやぐら)などの世界遺産登録を目指していた。09年10月、審査で外れたが、関連資料として提出した作兵衛作品を海外の専門家らが絶賛。同市は昨年3月、MOW事務局に日本で初めて申請した。【荒木俊雄】
文書や絵画、音楽、映画など歴史的資料の保護を目的に92年、ユネスコが創設。政府申請に限る世界遺産と違い、自治体や個人でも申請可能(1カ国2件まで)で、真正性や希少性などを審査し隔年で選ぶ。フランス人権宣言(1789年)やベートーベン第9交響曲の草稿(1824年)などが登録されている。