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玄海1号機:圧力容器鋼材の質にばらつき 製造ミスの疑い

 運転開始から35年以上たった九州電力玄海原発1号機(佐賀県玄海町)について、原子炉圧力容器に用いた鋼材の質にばらつきがあり、製造ミスの可能性があることが、井野博満東大名誉教授(金属材料学)らの分析で23日、分かった。九電が今月初めて公表した鋼材の劣化判断の基準となる「脆性(ぜいせい)遷移温度」の試験データを精査した。

 原発の長期間の運転による劣化は、研究者の間でも不明な点が多い。ただ、詳細なデータに基づき、鋼材そのものに欠陥がある可能性を指摘されたことで、従来の検査の信頼性が問われそうだ。

 玄海原発1号機は三菱重工業が設計・建設した。九電は原発の健全性を評価するため、圧力容器と同じ材質の試験片を長さ約3.3メートルのカプセルに入れ、圧力容器内側に固定。数年~十数年ごとに試験片を取り出し脆性遷移温度を調べている。

 井野氏らの分析によると、試験片のうち、鋼材をつなぎ合わせた溶接部分周辺(熱影響部)の脆性遷移温度が、鋼材本体(母材)に比べ数十度低かった。熱影響部の方が脆性遷移温度が低く、健全性が保たれていることは異例。さらに、両者の温度差がこれほど開くこともまれで、総合すると、鋼材の場所により材質の組成が異なる可能性が高いと考えられる。

 また、試験片母材の脆性遷移温度は1993年に56度だったが、2009年には98度に上昇。理論上、十数年でこうした急上昇は考えにくく、同様に検査箇所により組成が異なる可能性を示唆しているとみられる。

 井野教授は「(運転を開始した)1970年代の原子炉の製造技術は未熟。鋼材の製造過程の欠陥も考えられ、耐久性も疑問だ」と指摘。安全性を確認するまで停止するよう主張している。

 九電は同教授の指摘に対し「鋼材の組成に不均質な部分があったとしても、脆性遷移温度の急上昇の主な要因とは断定できない」と話している。

 1号機の脆性遷移温度の急上昇については、研究者の間で圧力容器が想定以上に劣化している可能性を指摘する声があり、佐賀県は九電に関連データの開示を要請。7月中旬に同社が公表した数値をめぐり、県は近く専門家会議を設置し、あらためて評価を求める。

 ◇脆性遷移温度

 鋼鉄は高温では軟らかく粘り強いが、低温では硬く割れやすい。脆性遷移温度は原子炉圧力容器の鋼鉄が割れやすくなる境界の温度。圧力容器は長年にわたる運転で中性子を浴びる量が多くなるほど劣化し、高温でも壊れやすくなるとされる。大地震などのトラブル発生時は、制御棒で核分裂を止めるとともに圧力容器を大量の水で冷却するが、鋼材が劣化していた場合、急激な冷却で損傷する危険性が高まる。

毎日新聞 2011年7月23日 21時29分

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