九州電力が自家発電設備を保有する企業から電力を買い取る交渉に入ったことが23日、分かった。管内の企業が自前で使う分を除く余剰分の「埋蔵電力」を調達し、電力需給を少しでも和らげるのが目的。やらせメール問題などもあり、玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)2、3号機などの再稼働が遅れ、電力不足の長期化は避けられないと判断したようだ。ただ、全量買い取りが実現しても、埋蔵電力は約4万キロワットにすぎない。九電の供給力(1736万キロワット)は0・2%増える程度だが、わずかでもかき集める。
九電によると、九州には、製造業の工場などで使用する電力を賄うため、重油や石炭などを燃料とする火力を中心に計約540万キロワット分の自家発電設備がある。設備量は九電の原発分に相当する。
しかし、設備量の約4割は既に九電が買い取る契約になっており、残りは自家消費分が大半。燃料価格が高騰しているため、九電から電気を購入した方が安上がりになる場合もあり、稼働を中止したり、稼働を抑えたりしているケースもある。菅直人首相が今夏の電力不足対策の救世主として期待するほど埋蔵電力は多くないのが現実だ。
それでも、九電は、自家発電設備を持つ約500社をあらためて調査。休止中や稼働率が低い発電設備を利用することで計4万キロワット前後の買い取りが見込めることが分かった。九電は、高値で電力を買い取ることを条件に、稼働率を引き上げてもらい、電力不足を補おうとしているとみられる。今後、さらに1万キロワット程度を掘り起こし、それぞれの企業と具体的な買い取り交渉を急ぐ。
一方、企業側は電力不足への備えを強化中。三菱化学は黒崎事業所(北九州市)の発電設備2基のうち古い1基の廃棄を延期した。コカ・コーラウエストは、鳥栖工場(佐賀県鳥栖市)の使用電力の半分以上を自家発電で賄っているが「まだ設備増強も可能」。
原油高で停止中の基山工場(同県基山町)の自家発電設備の再稼働も検討している。企業の自家発電設備強化により、埋蔵電力が増える余地も少しずつ広がっているのは確かだ。
■高値で買う制度必要 九州大の合田忠弘教授(電力系統工学)の話
停電の恐れもある中、たとえ少量でも、自家発電から電気供給される意義は小さくない。ただ、埋蔵といわれる設備は、燃料高で不採算に陥り、企業が稼働させていないものが多いはず。赤字では企業は発電ができない。埋蔵を本当に掘り起こすには、自家発電の電気の高値買い取り制度が必要だろう。
=2011/07/24付 西日本新聞朝刊=