東京電力福島第1原発の事故から4カ月余りがたった。避難中の住民をはじめ、多くの国民が、一日も早い事故収束を願う中、政府と東電は19日に、3カ月前に発表していた収束に向けての工程表を改定、発表した。
前半のステップ1は、目標を達成できたのか、後半のステップ2で、収束への道筋はつくのか。朝日以外の各紙が、20日付の社説で取り上げた。
原子炉の安定的な冷却を目標に掲げたステップ1の結果に、最も高い点数を付けたのは、日ごろは厳しい政権批判を展開している産経だ。「安定的な冷却は、目標の3カ月以内に実現できた」とし、「困難を克服しての達成を評価したい」とたたえた。毎日は、循環注水冷却システムが動き始めたことを評価しつつも、現システムは急ごしらえの「仮設」と指摘、持続可能な冷却システム構築を求めた。
一方、日経は汚染水が「外部に漏れ続けているのは確実だ」として、「安定」には至っていないとの認識を示した。東京も「水漏れなどトラブルが続出し、思ったほど成果を挙げていない」と辛い点を付けた。
政府・東電はステップ2として、今後3~6カ月で「冷温停止」を目指し、達成時に住民への避難指示解除を検討、実施するという。
これについて、これまで、点検停止中の原発の再稼働に前向きな論調をとってきた産経は、「年明けをめどとする一応の収束への期待が、ほの見えてきた感がある」と期待感を示し、「再稼働への工程表も必要だろう」と、原発再稼働に道筋をつけるよう求めた。
対照的なのが東京で、「目標が極めて困難であるのは間違いない」と指摘。菅直人首相が、前倒し実施の意向を述べたことに関しても「かえって不安になる」と懐疑的だ。読売も「肝心の具体策は依然、実効性に乏しい」と厳しい評価。「収束の方向が見えてきた」という首相の国会答弁に疑問を呈し、政府に「現状と見通しを正確に示すべきだ」と注文を付けた。
一方毎日は、地下水や海水の汚染防止策としての地下水遮蔽(しゃへい)壁設置を迅速に進めるよう求めるとともに、「住民に今後の暮らしの指針が与えられていない」と、周辺住民への配慮不足を厳しく批判した。日経も「避難中の住民が帰宅できる環境づくり」への取り組みを求めた。
周辺住民、そして国民が求めているのは、事故収束と被災者支援の道筋だ。しかし、産経を除く、各紙の評価はそろって厳しい。【論説委員・大高和雄】
毎日新聞 2011年7月24日 2時30分