【北京・工藤哲】中国建国以来最大の密輸・汚職事件とされる「アモイ事件」を首謀したとされ、99年から逃亡先のカナダに滞在していた民間会社「遠華集団」の頼昌星(らい・しょうせい)元社長が23日、12年ぶりに中国に送還され、北京の空港で逮捕された。事件の関係者には現中国指導部の家族が含まれる可能性もあり、送還後本人の口から汚職の真相が語られれば、来年秋に控える党大会の人事にも影響が出そうだ。
中国外務省によると、カナダの裁判所がこのほど、中国への送還を猶予するよう求めてきた頼容疑者の要求を棄却する判断を示した。馬朝旭報道局長は22日、「裁判所の決定を歓迎する」との談話を発表した。国営新華社通信(英語版)によると、頼容疑者は23日午後に北京首都国際空港に到着し、中国の公安当局者は頼容疑者を逮捕したことを明らかにした。
福建省党委書記だった共産党政治局常務委員でナンバー4の賈慶林・人民政治協商会議主席の夫人らが事件に関与したが、江沢民前国家主席がかばったと香港メディアが過去に報道。頼容疑者は裁判を受けるとみられ、証言次第では、江氏に近い幹部の今後に影響する可能性がある。
福建省アモイであった密輸・汚職事件。頼容疑者が賄賂などで役人や軍人を抱き込んだ。96年から石油や自動車など530億元(約6500億円)相当を密輸し、300億元を脱税。約300人が訴追された。
毎日新聞 2011年7月23日 19時57分(最終更新 7月23日 23時00分)