きょうの社説 2011年7月24日

◎上越が駅名公募 新潟知事の対応が気掛かり
 上越市など新潟県内の5市が4月に発足させた「新幹線まちづくり推進上越広域連携会 議」が、上越市内に設置されることになっている北陸新幹線の駅の名称公募を始めた。2014年度の金沢開業に向け、機運を盛り上げるための取り組みが、同県内でも広がることは大歓迎だ。

 その一方で、泉田裕彦新潟県知事が新幹線の建設負担金の支払いを拒んでいる問題につ いては、いまだに打開の気配も感じられないのが気掛かりである。同県は、新幹線の停車駅などに関する考え方が国土交通省と食い違っていることなどを理由に、今年度の予算に負担金をまったく計上していない上に、昨年度分も約10億円を「滞納」している。新潟県と国交省のこじれた関係がこのまま解消されず、支払い拒否が長引き、開業が遅れれば、石川、富山県はもとより、上越市などの盛り上がりにも冷や水を浴びせることになってしまう。

 そうならないようにするためにも、上越市などにはぜひ、開業準備とともに、新潟県に 負担金問題の打開を働き掛けることも考えてほしいものだ。北陸新幹線関係都市連絡協議会で上越市などと一緒に整備促進活動を展開している石川、富山県内の各市も、その背中を押してもらいたい。

 打開のカギを握るのは泉田知事と国交省の協議である。新潟県が今年度予算に負担金を 盛り込まない方針を打ち出したのを受け、いったん実施が決まった泉田知事と津川祥吾国交政務官の会談も、直前に東日本大震災が発生したため延期となり、そのままになっている。国交省だけではなく、震災で甚大な被害を受けた福島県に隣接する新潟県も対応に追われ、「それどころではなかった」のかもしれないが、負担金問題も、いつまでもたなざらしにしておくわけにはいかない。

 開業までの残り時間は4年を切っており、刻々と少なくなっている。そろそろ打開へ歩 みださなければ、工事日程が狂い、本当に取り返しがつかなくなる。石川、富山県や沿線の与野党国会議員らにも、泉田知事と国交省を動かす努力を、あらためて強く求めておきたい。

◎地デジ移行 「空き電波」を地域振興に
 テレビの地上波放送をデジタル放送に切り替える目的の一つは、デジタル化によって余 裕が生まれる電波を有効に利用することにあり、この取り組みが本格化するのは今からである。政府は地デジ移行で気を緩めることなく、電波の有効活用で産業や地域振興を図るという目的の実現に全力を挙げてもらいたい。

 デジタル放送の特徴は、電波を効率的に使えることである。映像や音声情報を圧縮して 送信できるため、使用する電波の周波数帯はアナログ放送の3分の2程度で済むという。国内の周波数帯はほぼ目いっぱい使用され、余裕はなかったが、完全地デジ化によって周波数帯に空きが生じることになり、今後、携帯電話の通信サービスや新たな放送サービスに利用されることになっている。

 地デジ化で空いた電波枠の有効活用は経済活性化の一つのカギといえ、この点で成果が なければ、地デジ化の意義は半減する。

 空き電波の利用では、「ホワイトスペース」と呼ばれる未使用の周波数帯の活用策も、 地デジ化に伴って大きな課題になっている。テレビ放送などに割り当てられている周波数帯(チャンネル)の中には、他地域との電波干渉、混信を避けるため、使っていない周波数帯が幾つもある。地デジは電波干渉が起きにくいことなどから、この空き周波数帯の活用にも期待が膨らんでいるのである。

 このため、総務省は具体的な活用案を民間事業者や自治体から募り、その中から選んだ モデル事業地域を「ホワイトスペース特区」に認定し、先行実施している。

 北陸では南砺市が今年、特区に選ばれた。同市では五箇山などの観光情報に関する携帯 端末向け放送サービス(ワンセグ)を地域限定で行うことになっている。市内6カ所にワンセグ専用の簡易アンテナを設け、9月ごろから試験放送を開始する予定という。

 テレビ放送用電波の空き周波数帯の活用策は、地域振興や新たなビジネス創出などの可 能性を秘めている。政府、自治体、民間が一体となって活用策に知恵をしぼってもらいたい。