きょうのコラム「時鐘」 2011年7月24日

 消えゆくものは懐かしい。時代遅れだといわれてもかばってやりたい。銭湯、街中の映画館、SL、そしてアナログテレビ

わが職場は、デジタルテレビを見ている者と、ラジオを聞いている同僚が混在している。そこで分かったのは、国会中継など同じ内容の音声をリアルタイムで伝えているのに、ラジオの音声はデジタルテレビよりも2秒近く先に届くということだ

アナログテレビならラジオ放送と同着になるのに対し、デジタルテレビだと遅くなるのである。これは仮に、野球中継で松井選手が快音を発したとして、ラジオでホームランと分かった後に一呼吸置いてデジタルテレビが「入った、入った」と叫ぶのと同じだ

ニュースは1秒でも早く届く方に価値がある。総合点で比較すれば、デジタルに軍配があがるのは仕方ないが、時代遅れのアナログ放送も伝達スピードではデジタルに勝っている。何事も二つを並べて比較してみないと、互いの長所と短所は分からない

「アナクロ(時代錯誤)」と笑われそうだが、きょうのアナログテレビ最後の瞬間を目撃し、一つの時代の終わりを実感したい。