食ニュース【大阪】天然酵母パン貸工場で30年 東大阪2008年02月04日 中小企業が軒を連ねる東大阪市内の貸工場に、「楽健寺パン工房」と書かれた小さな看板。毎週月曜日、ここで老夫婦が一日中、パンづくりに励んでいる。夫婦が30年以上作り続けているのは、リンゴやニンジン、ヤマイモなどをすり下ろしてつくった天然酵母で発酵させて焼き上げるパン。おしゃれさも、派手さもないが、じっくり時間をかけてつくった自然の風味はじわじわと評判を呼び、全国にファンを増やしている。
同市御厨西ノ町2丁目にある貸し工場の鉄の扉を開けると、焼きたてパンの香ばしい香りが漂ってくる。ブドウパン、食パン、ライ麦パン、ヨモギパン……。つくっているのは大小7種類。広さ約50平方メートルの工房にオーブンやホイロ(発酵庫)が所狭しと並び、その間を、山内宥厳(ゆうげん)さん(72)と妻の幸子さんがせわしげに動き回る。 元々、指物師だった山内さんは貸工場で額縁などをつくっていた。ところがぜんそくを患い、健康法に関心を持っていたところに、知人から「天然酵母でつくるパンがいいらしい」と聞いてパンづくりの道へ。まだ健康食品が珍しかった時代。高価な顕微鏡を手に入れ、どんな条件が発酵に最も適しているか2年間研究し、おいしいパンを安定して作り上げるコツをつかんだ。 山内さんの天然酵母は、リンゴ、ニンジン、ヤマイモのすり下ろしと、玄米ご飯などを混ぜて培養する。残った「パン種」に栄養素となる野菜のすり下ろしなどを再び継ぎ足す形で、30年以上、大切に育て続けてきた。パンといえばイーストでつくるのが一般的だが、山内さんに言わせると、「工業的に純粋培養した発酵力の強い菌を使って急いでふくらませるのと、じっくり自然発酵させて焼いたパンは違う」「野生の酵母が作り出すうまみは、市販のイーストでは出せない」。 パンを焼くのは週に1回。日曜日の夜に仕込んで一晩寝かせておき、月曜日の朝5時からパン種に小麦粉などを混ぜて生地をつくる。形を整える前後にそれぞれ2時間余り発酵させ、焼き上げるのも時間がかかる。夕方5時まで手を休める暇がない。 最初は自分たちで食べるパンをつくっていたが、25年ほど前に新聞で取り上げられたのをきっかけに、全国から注文が来るようになった。最近は、人気料理漫画で「天然酵母パンづくりの先駆者」として紹介され、漫画のレシピを見て天然酵母パン作りに挑戦する小学生もいるという。 山内さんには「二人ヨーガ楽健法〜医者に頼らず生きる術」という著書もあり、夫婦で編み出した、体を足で踏む独特の健康法を紹介している。2人ともこの健康法を長年続け、天然酵母パンを毎日食べているため「ずっと病気知らずです」。 だが夫婦で一日につくることができるパンは限られる。「注文を受けている分で手いっぱい。作り方を教えますから、ぜひ自分でつくってみて」と幸子さん。山内さんは「酵母は気にさとく、人を見る。作り手の陽気が伝わるので、楽しくつくってほしい」と話す。 パンの詰め合わせを5250円(送料込み)で発送しているほか、「いいものは広げたい」と、パンづくりのノウハウを公開している。発酵の元になるパン種は3000円(送料別)。10人以上の予約があれば工房で講習会(有料)も開いている。問い合わせは、楽健寺パン工房の山内さん(06・6788・6478=ファクス兼用)へ。 この記事の関連情報 |