何てアホらしいのだろう? 俺はそう思った。 別に誰が悪いわけじゃない、まぁ強いて言えば俺に責める権利はない。死んだ理由を作った俺が悪いのだ。
その日は朝っぱらから寝坊した。小さな雲が2,3個程しか無い良い天気で散歩には丁度良いだろう? だがそんな事を考える暇も無く、いや事実は走りながら考えてしまっていた。
目の下に黒々とした隈、いくらか伸びた髭、油っぽいワカメ状態の伸ばし放題の髪の毛。
絞まっていないネクタイ、皺《しわ》だらけの制服、口に咥えたカビかけの食パン。 そしてノートパソコンと32GBのメモリを50程モッサリと仕舞い込んだバッグ。
この日は大学院の事で少々用事があるにも関わらず、彼は寝坊をした。こんな20代後半の男が居ていいのだろうか? それが俺さ。
俺はとにかく色んな情報を知りたかったが為に大学院で様々な知識を手に入れてきた。 それをずっと続けて居た結果がコレだ……もう30歳だぞ!? 20代後半って言うけど三十路で未だに彼女ゼロだからな!?
っと、俺は角を曲がろうと_グボホ!?
何かに俺は撥ねられた、トラック……?
痛い……言葉が出ないほどだ、手から力が抜けていく……命が尽きる感覚を感じた。
俺の頭に走馬灯が流れた……だが一度も家族の記憶がない、父は俺の生まれる前に死んだらしいし、母は俺を産む前に死んだ。 母の死直後に腹から引きずり出されたと聞く。
全ての記憶、ほとんどがこの世界の様々な知識。 友達も居ない、恋愛も……結婚も……したかったな……。
俺の瞼の裏を、チクチクと突き刺すような光が差した。
「生まれた……私の子が生まれたのね」
ハ?
「2人ともおめでとう。元気な男の子よ!!」
俺は声を出そうとするが、「あうあう」としか喋れなかった。
「ありがとうカリーヌ、でも……この子を貴方に任せるなんて……。両親が旅でいないなんて可愛そう……」
体が……思うように動かない、手足が短い……短い? 俺、――赤ん坊の姿!?
「大丈夫よ、私とピエール、それにもう一人のカリーヌが育てるから」
「ありがとう……カリーヌ……」
――にしても何があったんだ? 声からして外国語っぽい……でも何で分かるんだ? まぁ良いや。 眠い。
「この子が俺の子か……連れて行きたいのは山々だが、赤ん坊には耐えられないだろう」
「ええ、貴方の名前はロイド」
「ロイド・アンブロシル・キウス・ド・ニベリール・ヴァルトリ。それがお前の名だ。我が“息子”よ」
そっか、俺……死んで転生したのか。