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  シーカー 作者:安部飛翔
第二章
1話
【毒蛇の巣穴】地下21階
 邪神シェルノートとの戦いから数日経った。
 あの事件は非常に強力なアンデッドと成ったアレスタ教諭によって起こされたものとして処理され、解決したのもとある凄腕の冒険者達ということで、スレイ達の名が表に出る事はなかった。
 スレイに対する裏の報酬であるシークレットウェポンの双刀以外にも、スレイとアッシュ達の4人に対して探索者ギルドから「強力なアンデッド」討伐の報酬としては妥当な金額が支払われ、4人の懐事情は今現在かなり暖かい。
 そして現在スレイは、あの後予定通りに正式なパーティ登録を解除した3人と、今度は臨時でパーティを組んで、中級者用の迷宮【毒蛇の巣穴】へと挑んでいた。
 理由は邪神の一部を倒したことでの急激なLvアップにある。
 スレイはLvが10上がり24となっていたが、あの時点でパーティ登録をしていたために、アッシュが6、ルルナとエミリアが7とアッシュ達3人もLvが上がり、3人のLvは25となっている。
 ルルナに至ってはクラスアップの条件も満たした為、職業神の神殿へ赴き、魔闘士へとクラスアップも果たしていた。
 尤も、物騒な称号や特別な特性の幾つかは、実際に戦ったスレイだけが入手したのだが。
 現在の能力値としては、
 
スレイ
Lv:24 
年齢:18
筋力:B
体力:B
魔力:B
敏捷:SS
器用:S
精神:EX
運勢:G
称号:不死殺し(アンデッド・キラー)、神殺し(ゴッド・スレイヤー)
特性:天才、闘気術、魔力操作、闘気と魔力の融合、思考加速、思考分割、剣技上昇、炎の精霊王の加護、炎耐性、邪耐性、神耐性
祝福:無し
職業:剣士
装備:紅刀アスラ、蒼刀マーナ、鋼鉄のロングソード×2、革のジャケット、革のズボン、革の靴
経験値:2380 次のLvまで20
預金:10100コメル

アッシュ
Lv:25
年齢:18
筋力:B
体力:B
魔力:E
敏捷:C
器用:D
精神:C
運勢:C
称号:エルシア学園卒業生
特性:狂化、戦技上昇、炎耐性
祝福:戦神アレス
職業:戦士
装備:ダマスカスのバルディッシュ、ダマスカスのプレートメイル、重量軽減のアミュレット
経験値:2479 次のLvまで21必要
預金:104000コメル

ルルナ
Lv:25
年齢:18
筋力:B
体力:B
魔力:D
敏捷:B
器用:C
精神:C
運勢:D
称号:エルシア学園卒業生、纏う者
特性:闘気術、魔闘術、格闘技上昇、炎耐性
祝福:闘神バルス
職業:魔闘士
装備:ダマスカスのガントレット、ダマスカスのブレスとプレート、絹の服、絹のズボン、革の靴
経験値:2470 次のLvまで30必要
預金:14820コメル

エミリア
Lv:25
年齢:18
筋力:D
体力:D
魔力:A
敏捷:D
器用:C
精神:B
運勢:C
称号:エルシア学園卒業生、森エルフ
特性:思考加速、思考分割、魔法上昇、精霊の祝福、炎耐性
祝福:森神ルディア
職業:魔術師
装備:祝福の杖、エルフのローブ、エルフの靴
経験値:2450 次のLvまで50必要
預金:15310コメル

となっている。
 実際に邪神シェルノートと戦ったスレイはともかく、その恩恵を偶然受けて急激なLvアップを果たした3人は、今のままでは自らの力を使いこなせず自滅する可能性すらある危険な状態であった。
 時々高Lv探索者と低Lv探索者でパーティを組んだ場合にこのような事態が生じるが、そのような場合、時間をかけて円形闘技場などでその新しい力の慣らしをするのが通常である。
 もちろんアッシュ達もその慣例に倣い円形闘技場での模擬戦闘などで慣らしをしていて、クラスアップした双子の妹であるルルナに負けて落ち込むアッシュなどという一幕もあった。
 その時にルルナが見せた魔闘術、闘気術で自らの肉体を強化すると同時に魔力を物質化して身に纏い強化する特性は、スレイの闘気術と魔力操作の併用に似ていて、しかしスレイの強引なそれとは違い、より洗練され完成された技術体系であった。
 無論、使用者であるルルナの未熟を除いての話だが。
 現在のルルナではせいぜい両手両足に魔力を物質化した装甲を纏うのが限界である、これが上級職の魔闘術の使い手ならば全身を魔力の装甲で覆う事も可能らしい。
 尤も、この特性は闘士系の職業であっても、習得できる者が限られている稀少な特性らしいので、そのような者は滅多にいないという話だが。
 そのように3人はなんとか自分達の力を使いこなそうと、円形闘技場での模擬戦闘や鍛錬を繰り返していたのだが、なかなかにそれが捗らない。
 スレイとしても自分に原因がある以上最後まで面倒を見るつもりではあったが、それほど悠長に付き合ってもいられず、スレイ自身もあと少しでクラスアップ可能なLvに至るという状態なので精神的にも急いていた。
 なので3人と臨時のパーティを組んで、自らもLvアップを図りつつ、実戦の中で3人に力を使いこなせる様になってもらおうと考えての、今回の迷宮探索である。
 中級者用の迷宮を選んだのは、流石に初級者用の迷宮ではこれ以上経験値を稼ぐこともままならないのと、逆にルルナ以外は皆下級職である事を考えての選択である。
 その試みはこれまでのところ成功し、スレイも目的のLvアップまでかなり近づき、3人も順調に自らの力を把握し、扱いこなせるようになってきている。
 今もまたモンスターとの戦闘中であった。
 3人の戦いをきちんと把握し見守りながらも、スレイは自身の戦闘をこなす。
 スレイに襲い掛かる女性の上半身と蛇の下半身を持ったB級モンスター・ラミアの群れ。
 スレイは容赦なく右手の刀アスラで、一体を上半身と下半身の真っ二つに叩き斬る。
 後ろから迫る蛇の下半身の鞭のようにしなった一撃は、天井ギリギリの高さまで跳んで避ける。
 明らかに土を掘られただけの洞穴、地面は踏み固められているがそれでも柔かい、まして天井や壁に至っては軽く蹴るだけで崩れてきそうな脆さだが、身体の向きを変え、天井を軽く土の下級魔法で強化し固めて、思いっ切り蹴る。
 閃光の如く一瞬でラミアの眼前に降下し、右手のアスラで頭から蛇の下半身の一部までを縦に真っ二つに斬り裂く。
 同時に横合いから迫っていた別のラミアを、左手のマーナでやはり腰から上下に身体を断ち切る。
 容赦のない攻勢でラミアの群れを斬り裂いていくが、ちっとも抵抗を感じない、武器が強すぎるのだ。
 ラミアの防御力もそれなりな筈だが、そんなものは問題にならないほどに圧倒的に武器の性能が高かった。
 やはりシークレットウェポンの双刀は、こんな所で使う物ではないなと考え、途中からアスラとマーナを2本の鋼鉄のロングソードに持ち替え、群れの残りを狩っていく。
 ロングソードの扱いには若干違和感を覚えるが、それでもスレイの特性で上昇した剣技と、闘気術と魔力操作の併用による強化を加えれば、大した違いは無いに等しかった。
 自分に向かってきていたラミアの群れを全て狩り終え、血糊を振り払い、剣を鞘にしまう。
 3人も自分達に襲い掛かって来ていたラミアを連携して倒し終わっていた。
 やはり特に魔闘術を習得したルルナの活躍が終始目立っていた印象を覚える。
「大丈夫だったか、ルルナ、エミリア?怪我などは無いか?」
「おいおい、俺のことは無視かよ?」
 ルルナとエミリアにかけた心配の声に、無視された形のアッシュが文句を言う。
「男は心配するまでもなく自分でどうにかして当然だろう、それに自分の女を特に心配するのの何が悪い?」
 ふざけ半分の掛け合いではあるが、スレイの自分の女発言に、ルルナとエミリアは頬を赤く染めて羞恥を見せる。
 そんな2人に軽く笑い、スレイはすぐにカードを確認するも経験値が5しか得られず、未だ次のLvまでは15必要な事を見てもどかしく思う。
 スレイが倒した群れとアッシュ達が倒した群れ、計算するとラミア三体につき僅か経験値が1の計算だ。
 経験値を4人で共有しているとはいえ、全然話にならない効率である。
 だが、あと僅かでクラスアップが可能になることと、この迷宮の最下層は地下25階でありそこにA級ボスモンスターがいるという話なので、このままこの迷宮を最後まで突き進むことにする。
 何よりアッシュ達3人の戦闘を見る限りはまだこのくらいの迷宮が適当だと思えた。
 そもそもLvというものは高いLvになればなるほど、次のLvに上がるまでの期間が長くなっていき、このような経験値の効率も当然のことなのだ。
 逆に非常識なスレイが居ることで、アッシュ達3人も非常識な効率でLvアップしていると言える。
 それにまあ、限界Lvは人によって決まっており、限界Lvに達すれば、途中で経験値が0になる。
 つまりLvアップできなくなるという話も聞いているので、それに比べれば今の成長速度でも遥かにマシかと考える。
 神々が創り上げた迷宮システム、人間などの弱い種族を強くする為のシステムの中でさえ限界は存在し、Lv90代に辿り着けるのは、本当に選ばれた者だけなのだ。
 更にLv99となり、称号:勇者を得るまで辿り着けるのはその中でもほんのごく一部。
 その勇者となれる者とてLv99が限界Lvなのだから、自分にはまだまだ可能性があるのだと考えることにする。
 ただやはり、今の敵の強さが物足りなく感じるスレイは、中級職にクラスアップしたら、次はソロで上級者の迷宮に潜るべきかと考える。
 その為にもまずはLv25を目指す事にする。
 この階層にはもう敵の気配を感じず、再び発生するのにも時間がかかる為、軽く物思いに耽っていたスレイだったが、次の階層への階段を見つけると3人に声をかけ、そのまま次の階層へと下りて行くのだった。

【毒蛇の巣穴】地下25階(最下層)“大蛇の間”最奥の広間
スレイ
Lv:25 
年齢:18
筋力:B
体力:B
魔力:B
敏捷:SS
器用:S
精神:EX
運勢:G
称号:不死殺し(アンデッド・キラー)、神殺し(ゴッド・スレイヤー)
特性:天才、闘気術、魔力操作、闘気と魔力の融合、思考加速、思考分割、剣技上昇、炎耐性、毒耐性、邪耐性、神耐性、炎の精霊王の加護
祝福:無し
職業:剣士
装備:紅刀アスラ、蒼刀マーナ、鋼鉄のロングソード×2、革のジャケット、革のズボン、革の靴
経験値:2402 次のLvまで98
預金:10100コメル

アッシュ
Lv:25
年齢:18
筋力:B
体力:B
魔力:E
敏捷:C
器用:D
精神:C
運勢:C
称号:エルシア学園卒業生
特性:狂化、戦技上昇、炎耐性、毒耐性
祝福:戦神アレス
職業:戦士
装備:ダマスカスのバルディッシュ、ダマスカスのプレートメイル、重量軽減のアミュレット
経験値:2496 次のLvまで4必要
預金:104000コメル

ルルナ
Lv:25
年齢:18
筋力:B
体力:B
魔力:E
敏捷:B
器用:C
精神:C
運勢:D
称号:纏う者、エルシア学園卒業生
特性:闘気術、魔闘術、格闘技上昇、炎耐性、毒耐性
祝福:闘神バルス
職業:魔闘士
装備:ダマスカスのガントレット、ダマスカスのブレストプレート、絹の服、絹のズボン、革の靴
経験値:2487 次のLvまで13必要
預金:14820コメル

エミリア
Lv:25
年齢:18
筋力:D
体力:D
魔力:A
敏捷:D
器用:C
精神:B
運勢:C
称号:森エルフ、エルシア学園卒業生
特性:魔力操作、思考加速、思考分割、魔法上昇、精霊の祝福、炎耐性、毒耐性
祝福:森神ルディア
職業:魔術師
装備:祝福の杖、エルフのローブ、エルフの靴
経験値:2467 次のLvまで33必要
預金:15310コメル

 ここまでの道程で、スレイはとりあえずの目的であるクラスアップできるLv25には到達し、アッシュ達3人も自分の力を実戦の中で把握し殆ど扱いこなせるようになっていた。
 現在スレイ達が居るのは最下層の最奥の広間の手前である。
 ここにはA級ボスモンスター、ジャイアント・ワームが出るはずである。
 目的を果たしたとはいえ、わざわざここまで来たのに何もせずに帰るのもどうかと思い、ジャイアント・ワームを倒すかどうか考え込む。
 アッシュ達3人の現在の能力も考え、スレイはジャイアント・ワームと戦うことを決める。
「アッシュ、ルルナ、エミリア、まだ余力はあるか?もし無いなら俺一人で戦おうと思うんだが」
「何言ってやがる、まだ全然余裕だぜ」
「わたくしもまだまだやれますわ」
「見縊らないで下さい、まだ行けます」
 3人の威勢の良い声を聞き苦笑すると、スレイは3人に回復薬や魔力回復薬などで、万全の状態を作らせる。
 そして万全の状態になった3人を伴い、スレイは一気に最奥の広間へと突入していった。
 
「ほぅ」
「でけぇ」
「大きいですわ」
「大きすぎます」
 それは大きかった、あまりにも巨大であった。
 かつて見た、イリナの竜化した姿に比べたならば小さいかもしれない。
 しかしそれでもその巨大さは、強いインパクトを持ってスレイ達の脳裏に刻まれた。
 直径が10メートル程、全長は、地面に潜っている部分もあるから正確には分からないが、地上に出ている部分だけでも20メートルはあるだろう。
 顔だけはドラゴンのそれだが、脚も持たずただ地面から生えているその姿は、巨大なミミズにも見える。
 だがワームとは本来、大蛇を表す言葉である。
 この最下層の名は、そういう意味では正しいという事になる。
 ともあれ、初級者用や中級者用の迷宮のボスモンスターは唯一の存在では無く、普通のモンスターより強いとはいえ世界を探せば何体も存在しているモンスターである為、毎回召喚の魔法陣で召喚されている。
 同じ種類のモンスターであっても、探索者に倒された後に召喚される個体は、当然前の個体とは別の個体である。
 となれば、この巨大さは恐らく自分の運勢:Gが原因で引き当てたのだろうと、軽い予測を付ける。
 だがまあ、どんな敵であろうがスレイのやることに変わりは無い。
 ただ敵を倒す、それだけのことである。
 スレイはジャイアント・ワームが動きだすその前に、アスラとマーナを引き抜き、シェルノート戦後、発動が一瞬でできるようになった闘気術と魔力操作の併用で、一瞬でトップスピードに乗る。
 なんの影も残像すらも残さず、亜光速でコマ落としの映像のように、一瞬で敵を攻撃範囲に捉える位置に現れる。
 静止するその一瞬前に魔力操作を解く事で亜光速のままに空気抵抗を受けるが、闘気術で強化した肉体で何とか耐え、その反動で空間を歪めて衝撃波をジャイアント・ワームに叩きつける。
 一瞬でズタボロになり苦痛に蠢き鳴き声を上げるジャイアント・ワーム。
 スレイは未だ敵の頭が高い位置にある為、また闘気術と魔力操作を併用し影も残像すらも残さず跳び上がる。
 一瞬で敵の頭の高さに出現すると、双刀の部分のみ魔力操作を解除し、刀を振るう空間を歪めるほどの衝撃波で以て、敵のその直径すらも無視し、頭から身体までバラバラに切り裂いていく。
 だが、敵の体液を僅かに浴びた服の一部が溶け煙を上げるのを見ると、今度は先ほどと逆のコマ落としのように、その立ち位置を一瞬で、ジャイアント・ワームの体液を浴びない位置まで後退させる。
 ここまでの展開のあまりの早さにアッシュ達3人は半ば呆然としていたが、見るも無惨な有様へと成り果てたジャイアント・ワームを見て、気を取り直すと、アッシュがスレイに呆れ混じりの称賛の声をかける。
「なに一人であっさり倒しちまってるんだよ、この!本気で半端ねぇなスレイは、あの巨体を瞬殺かよ」
 ジャイアント・ワームの、ドラゴンのようだった頭部はもはや存在せず、ミミズのように見えたその巨大な身体も、地面から10メートル程出ている部分を残し、残りの10メートル分は、スレイにバラバラに切り裂かれ、ただの肉片と化していた。
 誰もがこれで終わりかと思ったその時、その10メートル程出ている胴体の切り裂いた切り口が突然うごめき始める、かとおもうとその一瞬後には体液を撒き散らしながら、頭部と残り10メートル程の身体が生えて再生していた。
「ほう」
「なっ?」
「嘘っ」
「そんなっ」
 信じられないような再生力である、というかこんな再生力を持つジャイアント・ワームなど4人は聞いた事もない。
 今度はこちらに襲い掛かってこようとするジャイアント・ワームを、スレイの雷撃の魔法とエミリアの水の魔法で牽制しながら、考えを巡らす。
 スレイは自分ならば剣で倒す方法も幾つかは思いつくが、ここは丁度良いので、炎の精霊王の加護の力を試してみようと、炎の魔法で敵を焼き尽くす事にする。
 アッシュ達3人には隠し事の一端を見られる事になるが、この3人なら問題無いだろうとスレイは決断した。
 とりあえずは様子見に、炎の初級魔法を使ってみることにして、思考加速と思考分割により高速で魔法の構成を組み立て最低限の呪文を唱えると、炎の精霊達が楽しげに親しげに自分に近付いて来るのを感じる。
 そうして放った炎の初級魔法は、……信じられない程の業火を生み出していた。
 圧倒的な熱量、火力、威力は、以前自分で使った事のある炎の中級魔法すらも圧倒的に超越していた、それどころかもはや、魔術の師が使ってみせてくれた炎の上級魔法も軽く越えている。
 それでいながら、スレイ達4人は何も熱さを感じることはなかったし、広間の中も高温にさらされている様子は無い。
 ただ標的たるジャイアント・ワームのみを再生の間さえ無く焼き尽くし、地面の中にある残りの身体までもを焼き尽くすように炎も地面へ潜って行く。
 そうして炎が消え去った後、先ほどまでの灼熱の世界は何も無かったかのように、ジャイアント・ワームのみを消し去り、そこには何もない、地面中央に巨大な穴が開いただけの広間と、ただ唖然とする4人のみが存在していた。
 ボスモンスター召喚の魔法陣にも何も影響はなく、周囲の土壁や地面も何も変わった様子は無い。
「これは、性能で言えば非常に使えるんだが別の意味で使えないな。……炎の魔法は暫く控えるか」
 そうスレイは1人ごちると、何やらおねだりをするような雰囲気の炎の精霊達に感謝の念を伝える。
 すると喜びながら精霊達は去って行った。
 と言っても全部が去る訳ではなく、元々そこに在った炎の精霊達は今も残っている訳だが。
 それはともかく、とスレイは唖然としたまま動かないアッシュ達3人を見る、するとアッシュがいきなりスレイの肩を掴むとガクガクと揺さぶり、怒涛の如くまくし立ててくる。
「お、おい今の何だよ、炎の最上級魔法か何かか?ちょっとありえないだろう?!」
 アッシュの様に直接問い質すようなことはしないが、ルルナやエミリアも何やら物言いたげな視線を向けてくる。
「分かった、分かったから、教えるからまずは落ち着け」
 スレイはアッシュを宥め、何とか肩から手を放させると、自分でも確認の意味を込めて、カードの全能力値を3人に見せる。

スレイ
Lv:26 
年齢:18
筋力:B
体力:B
魔力:B
敏捷:SS
器用:S
精神:EX
運勢:G
称号:不死殺し(アンデッド・キラー)、神殺し(ゴッド・スレイヤー)
特性:天才、闘気術、魔力操作、闘気と魔力の融合、思考加速、思考分割、剣技上昇、炎の精霊王の加護、炎耐性、毒耐性、邪耐性、神耐性
祝福:無し
職業:剣士
装備:紅刀アスラ、蒼刀マーナ、鋼鉄のロングソード×2、革のジャケット、革のズボン、革の靴
経験値:2521 次のLvまで79
預金:10100コメル

 とりあえず、予定より一つ多めにLvが上がってしまったが、強くなる分には困る事では無いだろうと思う。
 記号としてのステータスが上がって無くても、その記号が示す能力値の範囲の中では間違いなくステータスは上がっているはずだから。
 何よりクラスアップの儀式を行い、より強くなる事が今は何よりも思考を占めているので、一刻も早くとスレイは考えるのだが、3人はそうはいかない。
 あまりの非常識な単語をスレイのカードの中に見出し思わず3人は問いかける気配を見せる。
 その機先を制してスレイは言った。
「すまないが、細かい事は詮索しないで欲しい。俺としても色々とあってな、なるべくなら隠しておきたいものなんだ。お前達なら信用できると思って見せたが、これについては他言も無用で頼む」
 スレイが頭まで下げて真摯に頼むのに、流石に追求する訳にもいかず、信用を裏切る訳にもいかない3人は、どこか納得がいかない表情をしながらもそれぞれ頷く。
 そして4人は飛翼の首飾りで迷宮を脱出するのだった。


面白いと思ってもらえたらどうぞ宜しくお願いします。



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