「オールスター第1戦、全セ9‐4全パ」(22日、ナゴド)
虎のルーキー左腕が夢舞台で真っ向勝負だ。阪神・榎田大樹投手(24)が三回から登板。全球直球を投げ込み、2死走者なしから稲葉に右翼席へ運ばれた。プロ初被弾とはなったが、しびれるマウンドだった。試合は全セの逆転勝ち。MVPには、五回に勝ち越し3ランを放ったヤクルト・畠山が選ばれた。
◇ ◇
宝刀カットボールも、魔球スクリューも封印した。1番から始まる好打順の全パを相手にオール直球勝負。榎田が力試しの13球で、豪華絢爛(けんらん)の球宴初マウンドで躍動した。
「全部、直球でした。こういう機会じゃないと、なかなかこういうことはできない。今後に生きると思ったので、ブルペンで(捕手の)相川さんに『打たれるまでは、直球でいきたい』と話しました」
返り討ちすら糧にした。真っ向勝負を挑んだ新人に対するオールスターの洗礼は、2死走者なしからの稲葉の一撃。高め136キロ直球を完璧にはじき返された。キャンプ中の紅白戦で岡崎に打たれて以来、開幕後は“プロ初被弾”となる弾丸ライナーを右翼席へ運ばれた。
悔いはない。「まさかホームランになるとは思いませんでしたが、甘い逆球。でも、それ以外はコースにしっかりと決められた。真っすぐでも抑えられることが分かりました」。お客さま気分のままチームに帰るつもりは、みじんもなかった。
三回から3番手で登板した。落合監督から「緊張しないで、楽しんで」とボールを渡され始まった夢のマウンド。先頭の川崎は直球で二ゴロにねじ伏せ、続く本多も捕邪飛に仕留めた。被弾後も小久保を140キロ直球で遊ゴロ。記念すべき球宴初登板は1回1失点とほろ苦かったが、パ・リーグ首位チームの中心打者を3つのアウトに変えたことに価値がある。
「ソフトバンクの3人を抑えられたのは、よかったと思います」
ポストシーズンを見据えれば、ソフトバンクは意識すべき相手。交流戦で対戦しているとはいえ鷹戦士を抑えた自信、そして本塁打を打たれた反省が、球宴で得た価値ある経験だ。
バックネット裏で見守った母・きよ子さん(48)も「もっと打たれるかと思ったけど、1点で収まってよかった。この3日間で何かをつかんでもらえたらいい」と期待する。
その思いを知ってか知らずか、左腕はスターたちと過ごす時間を血肉へと変えていく。球宴は残り2戦。後半戦に向けて、1秒たりとも無駄にはしない。
ソーシャルブックマーク・RSS・google+1・twitter・Facebook