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ノルウェー:連続テロ 「平和の国」衝撃 政治的要因、背景か

 【ロンドン笠原敏彦】「邪悪が我が国を震わせた」(ストルテンベルグ首相)。ノーベル平和賞のホスト国で政治的暴力とは縁遠いと見られてきた北欧の国ノルウェーが22日、官庁街での爆弾テロと青少年キャンプでの銃乱射テロという卑劣な連続攻撃に襲われた。発生当初は国際テロとの見方も出たが、乱射事件の現場でノルウェー人の男が逮捕されたことで、極右など国内過激派の関与が疑われ、事件はノルウェー社会に深い傷痕を残しそうだ。

 米国で01年9月に起きた同時多発テロ事件は、2棟の超高層ビルが相次いで攻撃され、「衝撃」の後にさらに大きな「衝撃」が続いた。今回の事件もこれを連想させる展開だった。オスロの官庁街の首相府が入るビルの近くで、自動車爆弾と見られるテロがまず発生。その死者数が増える中、「オスロ郊外の青少年キャンプで銃乱射」の一報が飛び込んだ。キャンプは、首相が党首となっている労働党の主催で、首相周辺が標的になった可能性が一気に高まった。

 ストルテンベルグ首相はこの間、電話でテレビ局のインタビューに答え、「閣僚は全員無事だ」と話した上で、警察から自身の居場所は明かさないよう指示されていると説明。事件の背景に政治的な要因があることを強くにじませた。

 事件の背景は不明だが、ノルウェー警察当局はイスラム過激派などによる国際テロではないとの見方だ。標的を定めたテロの手法も、国際テロ組織「アルカイダ」による米同時多発テロやマドリード(04年3月)、ロンドン(05年7月)の同時テロ事件などのような犠牲者の最大化を狙ったやり方とは異なる。

 報道によると、乱射事件のあったウトヤで逮捕されたノルウェー人の男は、オスロの爆弾テロ現場でも目撃されている。オスロからウトヤへは車で約1時間の距離。事件の組み合わせは、綿密な計画性をうかがわせるもので、組織的な背景の有無も捜査の焦点になりそうだ。

 ◇キャンプの若者、湖飛び込み避難

 「まさかこの国で」。犯人は警察の制服姿で、オスロであった爆発事件の捜査を装い、青少年キャンプに集まった若者たちに近づいた。乱射を逃れようとした若者たちは叫びながら夕暮れの湖に飛び込んだ。島は湖に浮かぶ全長500メートルの小島。日没後もサーチライトによる水上捜索が続いた。

 救助された若者の1人はAFP通信などに「乱射が起き、人々は岩陰などに隠れようとしたが、多くの人が撃たれた。男は一時、20~30メートルの距離まで迫ってきた」と語った。

 一方、オスロを直撃した爆弾テロは、普段は静かな官庁街を一瞬にして恐怖に陥れた。

 在オスロ歴40年で元会社役員の金子進さん(67)は電話取材に「ここはノーベル平和賞の授賞式を行うほど平和な国。これまでテロ事件とは無縁だったのに」と驚きを隠せない様子で話した。

 金子さんによると、知人の女性が現場から約80メートルの職場におり、心配になって電話したところ、女性は「大通りを多数の市民が駅に向かって逃げていた。怖くて怖くて仕方なかった」と話したという。

 外務省によると、10年10月時点でノルウェー国内には日本人が838人住んでいる。

毎日新聞 2011年7月23日 東京夕刊

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