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くらし

餌汚染牛肉問題 食品の放射線量計測が大原則  

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山内知也教授

山内知也教授

 福島県の肉用牛農家が餌として与えた稲わらから、高濃度の放射性セシウムが検出された問題で、兵庫県内でも汚染の可能性がある肉が食肉販売店や飲食店などに入荷し、一部が消費された。「人体への影響は軽微」と国や自治体は説明するが、全国各地に出荷された事実は重い。かねてから放射線の危険性を指摘している神戸大大学院の山内知也教授(放射線計測学)に聞いた。(黒川裕生)

 ■大阪府内で流通した福島県産の牛肉から国の暫定基準値(1キログラム当たり500ベクレル)を超える4350ベクレルの放射性セシウムが検出された。基準値は仮に1日200グラムを1年間毎日口にしても、一般人の年間被ばく量の上限(1ミリシーベルト)に達しない目安といい、国や自治体は「数回食べても問題はない」として、冷静な対応を求めている。

 「『食べても直ちに影響がない』という説明はやめるべきだ。放射線に安全なレベルはなく、少量でもそれなりにリスクはある。放射線の感受性は個人によって異なるので、高いか低いかはそれを食べる人が決めること。暫定基準値は諸外国と比較すると決して低いものではない。それを超えたものが日本各地に流通してしまったことを重く受け止めなければならない」

 ■牛肉の汚染が発覚して以降、福島県では出荷を自粛しているが、国は19日、同県に対し、正式に肉牛を出荷しないよう指示を出した。

 「当該の地域の農家に、事故を起こした当事者が賠償することをまず明確にするべき。農地や牧草地は広大で、その除染は簡単ではない。セシウムの半減期は137ならば30年と長く、同様の汚染レベルはこれから長期にわたり続いていく。このことを国や県が深刻に受け止め、農家に丁寧な説明を行う責任がある。除染に要するコストも明らかにしなければならない」

 ■兵庫でも食の分野で放射性物質の問題が身近になったことで、消費者の危機感が強まっている。

 「放射線は目に見えないので計測するのが大原則だ。スーパーで野菜や肉、魚などを見ても(産地の)県名しか書かれていない。消費者が食品の放射能レベルを理解できるような表示が最低限必要だと考える。セシウムの汚染は今の世代が生きている限り続く。食品流通の施設や自治体などが主体となって、独自に食品からの放射線を計測できるような体制をつくる必要がある」

 ■山内教授は市民団体などの依頼で、福島市だけでなく首都圏の放射線量を調査。東京都内では、母親たちが自治体に環境放射線の計測を強く求め、実現した。

 「福島市の人に、東京都内の放射線量を計測した話をして、感謝されたことがある。福島に比べて低いとしても、放射線被ばくを避けようとする取り組み自体が、福島での被ばく低減のための努力を後押しする意味があるとのことだった。兵庫県内でも、自治体に食品の放射線レベルを計測させるような働きかけが必要ではないか」

(2011/07/23 11:31)

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