ちまたの旬な話題から、日本の未来像を問うテーマまで。


平成の「悪党」はこう作られた

制服向上委員会の「フジロック狂言」始末

絵文録ことのは

松永英明 プロフィール

数々の疑惑



そもそもキヨシローがいたフジロックがそんな転向をするものだろうか。夕刊フジの7月19日の記事にもこうある。
「大きなステージだから電力は使う。でも送電される電力ではそもそも足りず、ほとんどすべてが自家発電なんです」(日高代表)

 自家発電で二酸化炭素(CO2)を排出するため、フジ・ロックでは「自然との共生」をかかげ、植林や森林整備などに取り組んできた。今年は原発事故を受け、自然エネルギーへの転換を目指す反核・脱原発イベント「アトミック・カフェ」を開催。シンガー・ソングライターの加藤登紀子(67)や斉藤和義(45)らが登場予定で、日高代表は「原子力について考える場になれば...」と話す。
加藤登紀子や斉藤和義がよくて制服向上委員会がいけないという理由はまったくない。反核・脱原発イベントをフジロック内で開催するのに、制服向上委員会が「脱原発」を理由に降板させられるというのは、100%あり得ないといえる。

改めてFUJI ROCK FESTIVAL '11|フジロックフェスティバル '11 【オフィシャルサポーター】のページを見てみよう。当該ページはロゴのみでわかりにくいので、文字で列挙してみる。

  • オフィシャルメディア:tv asahi、フジテレビ、Inter FM、J-WAVE、FM802

  • オフィシャルサポーター:BEAMS(衣料品・雑貨)、Columbia(アウトドア用品)、Heineken(オランダビール)、HMV(レコード販売店)、POCALI SWEAT(スポーツドリンク)、TOWER RECORDS(レコード販売店)、象印マホービン(調理器具)、Nikon(カメラ)
  • 協賛:CHUMS(チャムス)、MERRELL(メレル)、OSHMANS(オッシュマンズ)、Timberland(ティンバーランド)......いずれもアウトドアブランド
  • サポートTV:SPACE SHOWER TV、MUSIC ON! TV、MTV、Sib.tv(シブヤテレビジョン)
  • サポートラジオ:AIR-G'(FM北海道)、Date FM(エフエム仙台)、FM PORT(にいがた県民FM)、FM-NIIGATA、TOKYO FM、ZIP-FM、α-STATION(エフエム京都)、FM COCOLO、LOVE FM
この中に「脱原発を理由として降板させる動機を有する大企業」が一つでも存在するだろうか。わたしにはまったくそうは思えない。むしろ、アウトドア企業が多く、原発推進との接点はまったく見られない。

このなかで物理的に圧力をかけることがあると思われるのは、せいぜい象印マホービンの圧力炊飯ジャーの中くらいだ。上記リストに東芝EMIが含まれていたならともかく、脱原発つぶしの圧力をかける必要のある企業は一つもない。

また、「制服向上委員会みたいなアイドルグループがそもそもロックフェスに呼ばれないだろ」というような指摘もネット上では見られたことを補足しておく。

結論:制服向上委員会の炎上覚悟のデママーケティング



したがって、わたしは「フジロックが大手スポンサーの意向により、脱原発ソングを歌うグループを排除した」という制服向上委員会の公式発言には、真実は一つも含まれていないと判断する。

制服向上委員会は、公式サイトにおいて虚偽のデマを流すことにより、フジロックおよびそのスポンサー企業、さらには他の参加アーティストに対する名誉毀損・信用毀損行為を行なったと言っても過言ではない。

おそらく、先日の「反原発運動に参加しているので降板させられた」という山本太郎氏発言を念頭に置き、自作自演の被害者デマを流すことで注目を集めようとしたのではないかとも推測される。そうではなく、もし橋本美香会長や制服向上委員会の事務所が本気で「脱原発が原因で圧力がかかった」と勘違いしていたのだとしたら、そういう不正確な情報を公式として流したことについての大きな責任がある。なぜなら、たとえ仮に意図的ではなかったとしても、企業の信用を毀損したという結果は明らかに生み出しているからである。

そして、この情報をもとにフジロックを批判した人は深く反省していただきたいと思う。

(7/22 10:30追加)時系列タイムライン



  • 6月16日:フジロックで、NGO VILLAGEおよびGYPSY AVALONステージを利用して、1982年にスタートしたエネルギーシフトをめざす反核・脱原発イベント「アトミック・カフェ・フェスティバル」が復活することが決定。自然エネルギーを重視する社会への転換を応援するとともに、ソウル・フラワー・アコースティック・パルチザン、加藤登紀子、MANNISH BOYS(斉藤和義×中村達也)によるパフォーマンスも実施されると発表。

  • 7月13日:All Idol Songs Awards(初台TheDOORS、18:30開演)に制服向上委員会が出演。この模様はUstreamでも流れた。ここでフジロック出演が決まったことを告知した。ただし、この重大決定について制向委の公式サイト・公式ブログ・公式ツイッター等ではまったく告知されなかった。
 杏奈「告知なんですが、7月31日にFUJI ROCK FESTIVALに出演することになりました。アイドルなのにロックのイベントに出ます」(A.I.S.A制服向上委員会 7月13日(Ustream視聴)|☆制服アイドル応援日記☆
  • 7月14日:日付が変わってすぐの時間帯にフジロック最終ラインナップ発表(ナタリー等でも報じられている)。制服向上委員会の名前は一切掲載なし。ここまでの発表の中で、フジロック側から「制服向上委員会」の名前が出たことは一度もない。
  • 7月15日:制服向上委員会「ダッ!ダッ!脱・原発の歌(英詞付バージョン)」が公式サイト内にアップされる(サイトの更新がされているのに、フジロック出演に関する告知はなされなかった)
  • 7月20日14時48分:橋本美香委員長の「出演出来なくなってしまいました」ツイート。そこからリンクされているブログ記事は日付が未来のものであるが、このツイートの前に公開されたものと思われる。また、公式サイトトップページ内にもブログ記事と同じく「圧力によってフジロックに出演できなくなった」のアナウンス。
本文でも述べたとおりだが、この時系列から浮かび上がる疑問点を列挙しよう。
  • フジロックへの出演を「告知」した翌日(実際はわずか数時間後)に発表されたフジロック「最終ラインナップ」に含まれていない。
  • 頻繁に情報更新されており、13日から20日までの間にも実際にサイト更新があったにもかかわらず、公式サイト・公式ブログ・公式ツイッターのいずれでも最終決定しているはずのフジロック出演が「告知」されていない。
  • 「告知」から約1週間後に「脱原発を理由とした圧力によって」出演できなくなったというアナウンスが掲載されている。
つまり、制服向上委員会は、フジロックという大イベントへの参加について、ファンの前での口頭での告知だけしか行なっておらず、通常のサイト上での文字による告知は一切しなかった。にもかかわらずです、「圧力がかかって出られなくなった」ということを、最終ラインナップに含まれていないことが判明してから約1週間もたってから公式サイトやブログやツイッターで拡散した。これはいささかおかしいとは思いませんか?

あぁ、それから最後にもう一つだけよろしいでしょうか? 念を押しておきますが、「スポンサーのスポンサーが東電」というような弱いつながりは単なる相関図陰謀論であって、考慮するに値しません。なぜなら、そんな力があるとすればフジロックの脱原発イベントや脱原発派の他のアーティスト(あるいは脱原発イベントそのもの)も同様に圧力がかかって当然ですからね。加藤登紀子や斉藤和義や坂本教授はよくてPANTA/制向委はダメというのであれば、「脱原発」が理由ではないということになります。

というわけで、公式アナウンスを楽しみにしています。
123

コメント / 簡単コメント | みんなのコメントを見る(6)

注目のテーマ

尖閣衝突の船長に起訴議決

昨年9月に、尖閣諸島沖で起きた中国漁船の衝突事件で、海上保安庁の巡視船「みずき」などに衝突した中国人船長が強制起訴されることになった。

「悪党」の元秘書VS特捜部

小沢一郎氏の元秘書である石川知裕・衆院議員に、検察側は禁錮2年を求刑した。判決の行方に注目が集まっている。

盗聴事件でついに死者、英首相も危機

盗聴の告発をした元記者が遺体で発見されるなど事態が深刻化。英首相の友人たちが続々逮捕、イギリスのメディア・警察・政治の闇とは…

BLOGOS 編集部

» 一覧

BLOGOSをスマホで見よう

スマートフォン版
アプリ版BLOGOSをダウンロード(無料)
ケータイ版
QRコード
携帯サイトのQRコードはこちら
http://m.blogos.com/

BLOGOS メルマガ

close なぞり検索

検索リスト

この機能をOFFにする