◆東日本大震災・大津波大震災・福島第1原発大事故に対する復旧作業が、菅直人政権の政治力のなさで、後手後手になっていたけれど、「3・11」から132日(4か月と10日)過ぎたいまごろになって、ようやく本格始動してきた。
国からの「瓦礫撤去予算」(7000億円)のうち3500億円が、すったもんだの末に、岩手、宮城、福島各県を通じて、瓦礫撤去作業の直接発注者である市町村に支給されているという。
この瓦礫撤去作業では、放射性物質が含まれている瓦礫を撤去して別の地域に移動させることにより新たに発生する問題と、もう1つ、「アスベスト」の粉塵を含んだ瓦礫の撤去に伴い、多くの住民がこれを吸引してしまう問題とがある。
いま現在、大問題になりつつあるのは、後者である。もちろん、各市町村が、「アスベスト」の粉塵対策を無視しているわけではない。住民に対して、「マスク」を配っているからである。
だが、この「マスク」自体が、大問題となってきているのだ。それは、市町村が配っている「マスク」が、何と風邪を引いたときに使うようなごく普通の簡易マスクだからである。アスベスト粉塵を吸い込まないためには、もっとしっかりした防塵マスクでないといけない。このまま放置しておくと、瓦礫撤去が、「第2次被害」を引き起こしかねないのである。
7月21日の参議予算委員会で、瓦礫撤去に伴うアスベスト粉塵被害問題を取り上げた質問者がわずかながらいたけれど、「マスク」の種類について質問した議員は、1人もいなかった。7月19日の衆議院予算委員会でも、やはり「マスク」の種類まで政府を追及する場面なかった。つまり、これは、衆参両院ともに、被災している現地に密着したところで発生している国会議員が、いかに少ないかを如実に示していることを物語っている。被災者の健康が脅かされている現実に目が向いておらず、また、関心を持っていないということの現れである。
これから真夏にかけて、瓦礫の山もカンカン照りの太陽光線を受けて、乾燥した瓦礫に含まれているアスベストの粉塵が、風に舞って、飛び散り、被災地の住民を襲い、体内に吸引されていく危険性が、ますます高まる。この意味で、関係する市町村は、菅直人政権や各県と密接に連絡を取り、簡易なマスクではなく、しっかりと口や鼻を防御できる防塵マスクの支給に一刻も早く切り替える決断が求められている。
◆「瓦礫の山」に関しては、このブログでも早い時期から、さんざん警告していたのだが、案の定、菅直人政権の決断が遅かったうえに、低レベルの政治力=人、モノ、カネを動かす力がなく、何かにつけて、やること成すことが「トロイ」のが原因して、被災各地の瓦礫のなかからウジがわき、蝿や蚊が大量に発生して、避難所や仮設住宅で生活している被災民や地域住民を悩ましている。対処が遅いと、伝染病が発生する危険が高まり、最悪の場合、大量の死者が出てくる。2次被害どころか、3次被害が蔓延しかねない。これに立ち向かうのは、またもや、組織力旺盛な我らが陸上自衛隊だ。消毒液を散布していく防疫専門部隊である。
だが、蝿や蚊の退治に動員されるのは、わずか150人というから、「あの南北500キロにも及ぶ縦に長い地域の防疫詐業にたったの150人程度で間に合うのか」と各地の地域住民から危ぶむ声が出ている。これでは、「蚊取り線香」がいくらあっても足りないに違いない。まだ冬の名残りが支配的であった「3.11」直後には、避難生活の長期化を予想して「蚊取り線香」などを救援物資に含めることは、国民の多くが考えもつかなかったかも知れない。
しかし、被災地の本当の苦労は、復旧復興が長期化していくなかで、ボランティアの数も減り、また、被災者の自立が求められていくなかで、これから始まるとも言える。