先週から話題になっている、放射性物質に汚染された稲わらを食べていた可能性のある牛が、全国で1000頭を超えた。
参考:http://www.jiji.com/jc/eqa?g=eqa&k=2011072000871
最初に高濃度の放射性セシウムを含んだ肉牛が見つかったというニュースを見たときは、エサの稲わらが屋外に放置されていたことに驚いた。
北関東の葉物野菜の放射性物質が問題になったのは原発事故直後の3月。その後、静岡の茶葉、そして土壌の放射性物質による汚染が問題になり、5月には牧草の放射性物質汚染が発表された。牧草汚染が発表された際には、牛の放牧と牧草を与えることを控え、輸入飼料を使うよう指示が出ていたと記憶している。
だから、素人考えでは、稲わらに関しても汚染は十分想像できることで、屋内に保管するなどの手を打っているに違いないと思っていたからだ。つこの件に関して、そもそもは原発事故を起こしてしまった東電に責任がある。そして、国の管理が甘かったことも間違いないだろう。
農水省では、3月19日付けで「原子力発電所事故を踏まえた家畜の飼養管理について」という通知を出している。大気中の放射線量が通常よりも高いレベルで検出された地域においては、
* 乾牧草を給与する場合は、事故の発生前に刈り取り・保管されたもののみを使用すること
* 事故の発生時以降も屋内で保管されたものを使用すること
* 放牧を当面の間行わないこと
というのが、その内容だ。
「乾牧草」に「稲わら」も含まれるとしなかったことや、この通知が畜産農家向けのもので、稲わらを生産する稲作農家には指導がなかった(稲わらは倉庫に保管されるものと考えていたため、チェック体制はとっていなかった)のは農水省の落ち度だろう。実家が農家の知人に聞いてみたところ、稲わらは外に置いておくのが普通だということだった。この点について、現場をきちんと把握できていない農水省の責任は、否定できない。
また、この通知の存在を知らなかった畜産農家が複数存在するとのことだが、こういったことを周知徹底させなかったのは、県(あるいは農協?)の落ち度といえるのかもしれないしかし、農水省以外の当事者たちは、屋外に放置していた稲わらが危険だとは想像できなかったのだろうか?
宮城県で屋外に放置していた稲わらを販売した稲作農家や、購入した畜産農家、流通業者は、モラルや危機管理意識に問題があったのではないだろうか。もしこれが農家ではなく企業なら、袋叩きにあっているに違いない。稲わらに関しては、検査を義務づけられていなかったというが、義務がなくても検査した野菜の販売業者は存在している。国ではなくても、県や農協や地域単位、あるいは農家で自主検査ができなかったのだろうか。
生産者は、自分たちには何の落ち度もなく、例年どおりに行動しただけと言うのかもしれない。しかし、何でもお上頼みで、いわれればやるけれど、そうでなければ面倒なことは避けるという体質なら、消費者の側が「危うきには近づかず」という行動を取っても、やむをえないように感じる。真面目に対応している農家がとばっちりを受けるのは、理不尽だとは思うが・・・
ところで、宮城県産の稲わらは、全国生産の7割を占めるという。
参考:http://www.bitway.ne.jp/bunshun/ronten/ocn/sample/keyword/110721.html
(以下、引用)
「今回、福島ほか3県産の肉牛から放射性セシウムが検出されたのは、牛の餌にしていた稲わらが高濃度の放射性セシウムに汚染されていたのが原因だった。この稲わらは、おもに宮城県で生産、販売されたもの。ちなみに宮城県産の稲わらは全国生産の約7割を占める。」
果たして汚染された牛は、1000頭だけなのだろうか。そして、乳牛には稲わらが与えられていないのか? 牛乳は大丈夫なのか、チーズやバターはどうなのか?
7月17日付の読売新聞では、大桃洋一郎・環境科学技術研究所特別顧問は、「仮に1キログラムあたり650ベクレルの牛肉を、1日200グラム、1年間食べ続けたとしても人体への被曝は0.6ミリシーベルトにとどまる。一般人の年間限度1ミリシーベルトにも届かず、数回食べたくらいで心配する必要はない」としている。
しかし、府中市の肉からは1キロ当たり3400ベクレルと上記のケースよりかなり高濃度の放射性セシウムが検出された。更に、食べるのは牛肉だけではない。牛乳や魚、野菜など食物全体ではいったいどうなるのだろう?せめて、この秋に収穫される米については、毎日食べるものだけに、きちんと管理してほしい。