石巻がれきマラソン実行委員会のブログ

この度は、当イベント企画に対して数々のコメントをお寄せいただき、誠にありがとうございました。
皆様からお寄せ頂きましたコメントは、当ブログ以外でお寄せ頂いたものも含め、我々実行委員会で全て拝見させて頂きました。

我々実行委員会としては、お寄せ頂いた多数のご意見に対し、いち早くコメントを発表したい気持ちで一杯でしたが、
何より我々の見解を発表するにあたり、実行委員会や関係者が全て集い、誠意を持ってお答えをするために
時間が必要であったことは、何とぞご理解ください。

この度お寄せいただいたコメントの中では、特に当イベント企画のネーミングに対するご意見を多数頂きました。
それについては、実行委員会で何より真摯に受止め、今一度検討させて頂きたいと考えております。
また運営についてのご指摘も、見直すべき点についてのご助言を多数頂いたと受け止め、併せて検討し直したく考えております。

その上で、我々が今回のイベント名称をつけた理由と企画そのものを思い立った原点については、我々も説明責任があると考え、
本日は発起人かつメンバーである、石巻在住の藤田の想い（以下）を通して、ご説明させて頂きたく思います。

また当イベント企画は、藤田の想いに賛同したボランティアメンバーが集い、この度共に実行委員会を立ち上げ、
活動を始めたところです。

我々は当イベント企画の「実行委員会」という団体として、その活動全てを団体のオーソライズを経て行っております。
全ての活動は、決して個人レベルでやっていることではなく、ブログなどでのコメントも勿論同様です。
ごく一部に見受けられる、実行委員会の個人に向けた誹謗中傷は、どうか以上をご理解いただき、やめていただきたくお願い致します。

では以下、少し長くなりますが関心をお寄せいただきました皆様には、どうか最後までお読みいただけますよう、お願い致します。

(発起人　藤田より）

皆さん、はじめまして。石巻市在住の藤田と申します。

今回の巨大な地震と津波の直撃を受けて、私は母と２人の叔母を失いました。
家も壊滅し、総てを失ったと言えると思います。

数日間は地区全体が水没したままで、警察や自衛隊も救助に来ることができない状況でした。
飲み水もない、当然食べる物もなく、携帯電話は不通であり、停電のためTVで自分たちが現在どのような状況に置かれているのかすら判断することもできなかった。
「今、世界はどうなっているのか？」途方に暮れる毎日だったのです。

石巻市が避難所に指定した渡波小学校や鹿妻小学校まで、海水の中を立ち泳ぎしながら食料と水を求めて歩いたものの、
全く何も無い状態です。しかも暖房するための灯油も底を付いていたため、避難所はとても寒い状態でした。

日本は「先進国」ですよね？違いましたか？なぜ、そんなことを言うのかといえば、数日経っても食べる物が「無い」のです。
１週間経過しても２週間経過しても、満足な食べ物が供給されない。水も満足に供給されない。

 私は、唯一生き残った叔母の家に避難をすることにしました。叔母の家も１階は水没しており、生活できる状態ではありませんでした。
３／１１当時は雪が降り、気温も例年に比較して寒く、暖房もない叔母の２階での生活は本当に厳しいものでした。

お風呂に入ることは「不可能」であり、私は震災直後は海水で体を洗い（しかし海水に重油、ガソリンが混じり始めたために中止）、
その後は渡波小学校のプールの水をバケツで汲み取り、それを家まで持ち帰り暗くなるのを待ってから降雪する中で体を洗ったのです。
（日中は裸になることは視線があるので不可。しかし夜であれば停電しているので、視線を気にすることなく体を洗うことができたという意味です。）

お風呂に入ることも叶わず、手を洗うことも満足にできない日々のなかで３／２０過ぎに出所不明の「オニギリ」を頂きました。
「食べても大丈夫なのかな？」という不安はよぎりましたが、でも「食べるものがない」のだから、食べるしかないわけです。
後日「加熱してから食べるべきだった」のにと指摘する人もおりましたが、それはナンセンスです。そもそも「ガスが使えなかった」から。
あの当時、加熱してから食事していた被災住民は、少なかったはずです。

私はその出所不明のオニギリを食べた数時間後から嘔吐が始まり、その後下痢に苦しむことになりました。
おそらく「ノロウイルスであろう」というのが医師の判断でした。医師は「藤田さん、安静にする以外に、治療法はないんだよ」と助言してくれましたが、
私は休める状態にはありませんでした。米軍などが物資を供給を開始していたこともあり、物資の搬送・荷降ろしに参加する必要があったため、
どうしても休むわけにはいかなかったんです。

また３月末ごろの話ですが、私はたまたま黄金浜区域を自転車で通行しました。
その時、その地区の方が「助けてくれないか。もう食べるものがない。底を付き始めた・・・」と言ってきたのです。黄金浜地区には、必要な物資が届いていなかったんです。
「これは大変なことになっている」と直感し、ピースボートさんに「炊き出し」を要請して、翌日から煮込みハンバーグのような温かい炊き出しを提供していただけました。
それは３／２８頃になってのことと記憶しています。

その当時の【東】黄金浜区域の被災住民からは「ああ・・・、藤田さん。ピースボートさんの炊き出しを食べることができたので、餓死しなくて済みそうだよね」。
それが当時の、被災住民の「本音」だったのです。

皆さん、「餓死しなくて済みそうだ」という感覚が理解できますか？でもその当時はそれが真実だったのです。
こうして東黄金浜区域にピースボートさんの炊き出しが提供されるようにはなりました。

しかし一方で、「【南】黄金浜地区は、どうなっているんだろうか？大丈夫なんだろうか？」という不安がよぎってきました。
なぜかといえば、【東】黄金浜と【南】黄金浜地区を結ぶ道路が「瓦礫」で埋まり、さらに冠水の影響もあってスムーズな歩行は不可能になっていたからです。
私は、民家のブロック塀をのり越え、瓦礫の上を歩いて【南】黄金浜地区を訪ねました。そして「石巻市からの物資配給は来ていますか？」と質問をすると、
「いや、全く届いていない。そもそも行政区長さんがご夫婦で亡くなってしまったから、石巻市と交渉する人が不在になってしまった」と言うのです。
そこで副区長さんと相談をし、再度私が石巻市と交渉を開始して【南】黄金浜地区への支援開始を要請し、かつピースボートさんにも【南】黄金浜地区でも炊き出しを
いただけるよう要請をしました。ようやく【南】黄金浜地区の被災住民からも「ああ、とても美味しい。温かい食事が採れるなんて、夢のようだね。これで飢える心配はなくなったのかな？」
という言葉が発せられたのです
皆さん、４月に入って「ようやく」食べ物の確保が可能となった区域だってあったのですよ。

では、現在はどうなのでしょうか？私たちは、看護師集団で構成されるNPO「キャンナス」さんのご協力を得て、「民間版の国勢調査」のようなものを今回行いました。この７／５、６にです。
そしてデータを集計して驚くべき数字が出てきました。黄金浜地区の世帯数は約１０００世帯であるのですが、現存している世帯数は「１３４世帯」です。
１世帯当たり４人家族と考えると、３／１１以前の黄金浜地区の人口は、凡そ「４０００人」。しかし現在は、「５００人程度」でしょう。また高齢者が多いのも黄金浜地区の特徴です。

この数字から見えてくることは、黄金浜区域を「復興」させようと意気込む人が存在したとしても、人口が８分の１にまで減少した区域は圧倒的にマンパワーが減少しており、
「簡単に復興を口にできるような状態ではない」ということです。

事実、瓦礫の撤去、側溝掃除（いわゆるドブ掃除）、地域住民による炊き出し、物資の配布などが「やりたくてもできない」状態に陥っているわけです。
高齢者が多い区域であると先述しましたが、その高齢者の方々と会話すると『藤田さん、リフォームをするに必要な代金請求額は１０００万円だそうだよ。
自分たちは年金生活者だから、そもそも銀行はローンを組んでくれないよね。それから新天地を求めるといっても、１０００万円程度の貯金で土地と家を購入することも不可能でしょう。
だとすれば津波が来る可能性の高い、この地に「しがみついて」生きていくより他ないわけさっ』と。

また５０歳を超え、家族がいて子供も未成年という黄金浜地区在住の被災住民の方がいます。
この方も『再就職を求めて何度も職安活動を繰り返しているけれども、極めて厳しい状態にあるよ。石巻市で再就職ができる可能性は、ほとんど無いと考えている。
「３年後であれば、再就職出来るかもしれない」と言われたけれども、冗談じゃないよ！そんな悠長なことを言える状況には無いんだよ。俺は女房と子供を抱えているから喰わせていかねばならないし、
家もリフォームしなければいけない。でもさ、再就職の可能性が殆ど無い石巻市で、家のリフォーム代金に１０００万円を投資する価値があるのかな？
むしろ秋田県などで再就職をし、土地を買い、家を建て、その際に１０００万円を頭金として利用するほうが、よほど賢い選択なんじゃないか？」と。

さらに会話は続き「俺たちには、身体障害を持つ兄弟がいる。その兄弟を預かってくれるという福祉施設も無いんだ。安心して兄弟を預かってくれる施設を見つけるまでは、
再就職が見つかったとしても、この石巻市を離れることもできない。にっちもさっちも行かないんだよ」と。

以上の実例は「ほんの一部」です。再就職の可能性は、石巻市では「極めて困難」なのが現状です。だから最低でも「炊き出し」が必要なんです。最低でも物資配布も「必要」なのです。
高齢者が多い被災地区では、炊き出しの列にならぶこと自体が体力を使うし、時間も浪費する。物資配布の列に並ぶことも同じです。
でも、少ない貯金からやりくりしていたら早晩貯金は底をつく。貯金はどんどん減ってきている。その上にわかに再就職はとても望めない現状。
では貯金が底をついたら、我々は「どうすればいいのですか？」

どなたか、答えを教えてくれませんか？

私は有志の協力を得て、まず小さいボランティア団体を結成しました。そして瓦礫の撤去、側溝の掃除（溝掃除）、炊き出しの応援、NPO団体などが黄金浜地区にて活動する際のコーディネーター、
メディカルサポートの提供、物資配布、電子図書館サービスの提供などなど、様々な支援提供をしてきております。
ただ、こうした日々の活動を通して痛感することは、「なぜ、石巻市の復興は、遅々として進まないのか？」という疑問です。

目前には「倒壊寸前」の家屋が解体されることもなく放置されたままなのです。道路はマンホールの蓋が「デベソ」のように地上に飛び出したまま放置されており、修復される気配もない。
また地割れした農地、土地には陥没があり、そこには海水や雨水が大量に溜まったままであり、「プール」化した陥没部分にはボウフラとハエが大量発生している・・・。

我々は更なる活動として、こうした現地でしか知りえない事実を自分たちの手で伝えてゆこうと考え立ちました。
そして日本中は勿論、世界中からも石巻の災害と現状に関心がある人々を現地に招待し、来て頂いた方々のその「目」でありのままを見てもらうことにしよう！と考えたのでした。

ドブ掃除、あるいは床下のヘドロ出しはじめ、活動いただける領域は数え切れないほどあります。でもそんなハードワークをするだけでなくて良いんです。
「マラソンでいいじゃないか！」と私は考えたのです。「楽しみながらマラソンをしてもらい、結果として石巻の惨状を知ってもらえれば、それでいい」と考えたわけです。
マラソン「だけ」を目的として走ったとしても、石巻に来れば「瓦礫」の爪あとや倒壊寸前の家屋が放置されたままであること、また漁港までドライブをすれば魚介類の腐敗臭をすさまじさを、
あるいは、ちょっと車で移動すれば、壊滅した町町の惨状なども、そのの目で見ていただけることができる。「百聞は一見にしかず」です。

私の知人など「石巻市のために、何かをしてあげたいのだけれど、でも、一体何をしていいのか分からないので、どうしても足が一歩前にでないの」と主張する人は事実いっぱいいます。
でも私は思うんですよ・・・、「特別に何かをしなくてもいいんですよ。でも、まず現地石巻に一度来てみるべき」だと。

来てもらって「みなさんの目で」見ることがとても重要なんですよ。瓦礫を見て、炊き出しの列に並んでいる光景を目撃して、可能であれば現地の被災住民と「話をしてみる」べきです。
そうすれば「現状のままでいい」と思う人なんて、一人も存在しないはずです。一人でも多くの人が石巻を訪問し、「ありのまま」を見てくれる。
そして石巻の現状を見た皆さんが、一人一人ジャーナリストとなっていただき、広めていただく。ある人はFacebook、またあるいはツイッターなど。

こうした意識の高い皆さんで構成される草の根の活動こそ、世の中の善良な人々の心を鷲掴みにできるのではないか？

そう思いをめぐらせる中で、この「瓦礫」マラソンを思い立ったのです。
 
私自身は「瓦礫」の石巻市の中で、今も生活しています。街は今も砂埃が舞い、道路はデコボコのままで車は損傷し、ガラス破片で自転車はパンクをし、倒壊寸前家屋は解体されることもなく放置され、
農地には回収困難な車が放置されたままです。この「ありのままの事実」を、「どうか皆さんにみてもらいたい。いや見てもらうべきだ！」と判断したわけです。
石巻は今でも、「復旧が始まった」などとは、とてもじゃないですが言えない現状にあるのです。
 
皆さん、自分の力で見にきたいと思いませんか？そして、その「見る」契機が「瓦礫の中を走るマラソン」であっても良いではありませんか！
 車を走らせて、コースを視察いただき、町町の様子を視察いただくだけでもボランティア活動だと考えますよ。そこで衝撃を受けたのであれば、その「想い」こそをFacebookやツイッターで言ってくれればいい。
皆さんの「想い」は、ネットを経由して全世界に発信される。そして「瓦礫」マラソン当日も、アスリートとして走りたいという人は「ぜひ走ってほしい」し、「走れない」という人は土嚢袋を担いで、
路上の空き缶、ゴミ拾いをしながら、のんびりと石巻の風景を楽しみながら歩いてもらえたらいい。

とにかく「現場に来ること」、そして「見ること」「感じること」「匂いを嗅ぐこと」から全ては始まるのです。来れば「何かが見えてくる」からです。
見てから、皆さん一人一人が「何をしたらいいのか」をご判断いただきたい。
 
何度も言いますが、そのキッカケが「瓦礫」の中を走るマラソンでもいいと考えるんです。
そして敢えて「瓦礫」という冠をつけた理由は、私たちが今でも「瓦礫」の中で生活しているというか「生きている」からです。例えば「石巻ベイサイド・マラソン」という名称であれば、批判を「回避」できるかもしれません。
でもそんなお為ごかしは「やめたほうがいい」と私は考えるんです。真実は、私たちは未だ「瓦礫」の中で生きているのだから。その真実を世界中の人々に「認識」してもらうために「瓦礫マラソン」という名称を採用したのです。
「真実をみるべきだ」というのが私の意見です。

このブログを見て頂いている皆さんに話しておくべきことは、「瓦礫」マラソンという名称は、今現地石巻市に在住している私、藤田が選択したという「事実」です。
選択した理由は述べた通りです。ただし、私は頑迷なつもりはないです。聞く耳を２つ持っています。ですから皆さんのご意見、ご感想も踏まえて、より良い名称、会の運営を考えてゆく所存です。

批判することは簡単です。私は現在小さいボランティア団体を結成して日々活動していますが、「言うは易く行なうは難し」を実感しています。
自分の体験を踏まえて、今なにかしら批判を頂いている方々に対してお願いしたいことは、「批判いただく体力や気力、そして時間を、どうか我々にお貸しいただきたい。」
どうか「瓦礫」マラソンにこめた意図をご理解いただき、その実現に向けて「一緒に運動いただけませんか？」という提案を、ここでさせていただきます。
 
以上、長々とした文面で失礼致しました。最後までお読みいただきましたこと、心から感謝申し上げます。
藤田