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経団連:「民間主導で成長」提言 政府には頼らず

経団連フォーラム終了後、「民主導の経済成長を実現する」と強調する米倉弘昌・経団連会長=長野県軽井沢町で2011年7月22日、宮崎泰宏撮影
経団連フォーラム終了後、「民主導の経済成長を実現する」と強調する米倉弘昌・経団連会長=長野県軽井沢町で2011年7月22日、宮崎泰宏撮影

 長野県軽井沢町で開かれていた経団連の夏季フォーラムは22日、特区創設など東日本大震災からの復興策に加え、日本経済の再生に向けて電力確保や経済連携推進などを求める提言「アピール2011」をとりまとめて閉幕した。震災対応や経済連携策などで立ち遅れが目立つ政府には頼らず、民間主導での経済成長を目指すことで一致。今秋にも、エネルギー政策や経済連携の推進を盛り込んだ民間版の成長戦略を策定することも表明した。【宮崎泰宏】

 米倉弘昌会長は閉幕後の記者会見で「政府の姿勢や考え方が停滞しており、復興の取り組みが遅いので民間でどんどん進めないといけない。政府には危機感と緊迫感を持ってほしい」と注文した。

 この日のエネルギー政策についての意見交換では、菅直人首相が表明した「脱原発」方針に批判が集中した。

 渡文明・JXホールディングス相談役は「産業を活発化させ、国民生活の豊かさを保つには現行の3割の原発依存率が必要」と発言。日立製作所の川村隆会長は「震災後も海外から質の高い原発が欲しいといわれている」と強調したうえで、菅首相が原発輸出戦略の見直しを表明したことに対し、「菅さんが何と言おうと原発の海外展開はやっていく」と反論した。

 三菱商事の小島順彦会長も「国連の常任理事国はすべて原発を保有している。日本で原発がなくなり、輸出もやめれば技術の継承が滞る」と産業立国・日本の弱体化を懸念した。

 また、菅首相が表明した約1000万戸への太陽光パネル設置についても、東芝の西田厚聰会長は「20兆円の巨額なコストがかかる一方、需要に占める発電量はわずか3・6%」と批判。新日本製鉄の宗岡正二社長は、原発の再稼働を巡る安全評価(ストレステスト)をめぐって閣内で意見の違いが表面化したことなどから「公開で議論すべきだ」と政策決定過程の透明化を求めた。

 経団連が原発を推進する背景には、円高や進まない貿易自由化など「五重苦」といわれてきた厳しい経営環境が、電力不足で「六重苦」になったことへの危機感がある。しかし、政治の混乱で提言実現の見通しは立たず、経済界のいら立ちは頂点に達している。

 米倉会長は会見で、「9月ごろにはある程度(政権が)ちゃんとしてくると思う」と早くも菅首相退陣後の新政権への期待感を口にし、今後策定する民間版成長戦略も、新政権への提言となることを示唆した。

 ◇経団連の「アピール2011」の主な内容

<震災復興>

・復興庁を創設し、復興特区制度を早期に導入

・東北の主要産業である農林水産業の復活、強化

・経済活動や後世代負担に配慮しつつ、早期に復興財源を手当て

<経済の再構築>

・原発に対する信頼回復を図り、中長期的視野に立ったエネルギーのベストミックスを実現

・TPP(環太平洋パートナーシップ協定)交渉早期参加

・社会保障給付効率化を図り、消費税率を段階的に引き上げる。法人実効税率は引き下げ

・経済界は民主導で新たな市場や雇用を創出

毎日新聞 2011年7月23日 0時10分(最終更新 7月23日 0時13分)

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