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2011年7月23日(土)付

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民主党謝罪―代表選へ論戦を始めよ

とっくの昔に、謝るべきだった。どうしてここまで時間がかかるのか。菅直人首相や政権幹部らが、民主党のマニフェスト(政権公約)について謝罪した。首相は[記事全文]

ギリシャ支援―ユーロ圏全体で守れ

欧州連合(EU)を揺るがす財政危機の最大の地震源であるギリシャが再び窮地に陥り、ユーロ圏17カ国の首脳が協議し、1590億ユーロ(約18兆円)規模の2次支援策をまとめた。[記事全文]

民主党謝罪―代表選へ論戦を始めよ

 とっくの昔に、謝るべきだった。どうしてここまで時間がかかるのか。

 菅直人首相や政権幹部らが、民主党のマニフェスト(政権公約)について謝罪した。

 首相は「財源などの見通しがやや甘かった」と反省し、「不十分な点があったことを、国民のみなさんにおわび申し上げたい」と語った。

 政権交代から、はや2年になる。2度も予算を編成すれば、無駄の根絶などで16兆8千億円をひねり出すという公約が、いかに現実離れしていたかに、気づかないはずがない。

 なのに野党に尻をたたかれ、夏を迎えても赤字国債の発行を認めてもらえず、立ち往生してから謝る。いかにも遅い。

 公約のすべてが間違っているわけではない。子どもを重視する方針をはじめ、大切にすべき主張はたくさんある。

 問題の根っこにあるのはむしろ、公約に向き合う姿勢ではなかったか。「政権に就いたら実現させる目標」というよりも、「政権をとるための道具」のように思っているから、じっくり練り上げる作業を怠る。財源を軽んじ、あれもこれも並べる。

 子ども重視を貫くには、今の子ども手当の形で良いのか、代わりに何を削るのか。公約の見直しとは、本当に大切なもの、めざすべきものを見極め、選び取る厳しい作業なのだ。

 公約不履行をわびた民主党は、その見直しを急がねばならない。だが、まもなく交代する執行部にやりきれる仕事ではない。いまの公約堅持を訴える人が次の代表に選ばれたら元のもくあみになりかねない。

 逆にいえば、代表選で議論を重ねて、見直しを掲げる候補が勝てば、党内合意を確立したことになる。バラバラな党内を固める好機になりうる。

 それなら、菅首相が辞任の時期を明示するのを、のんびり待っているわけにはいかない。代表選に向けた議論を、すぐに始めてはどうか。

 「我こそは」と思う者は名乗りを上げる。公約の見直しはもちろん、震災からの復興と日本の針路、エネルギーの将来像も含めて政策と路線をはっきり示す。政権の枠組みや、野党との連携の道筋も提示する。

 そんな論戦を始めればいい。

 ほかの政党も口を挟んだらどうか。だれが代表なら手を組めるのか。その条件は何か。これまでのように、菅首相が悪いから協力できないというばかりでは不毛だ。

 「菅おろし」に時間と力を使うより、前向きな論議を望む。

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ギリシャ支援―ユーロ圏全体で守れ

 欧州連合(EU)を揺るがす財政危機の最大の地震源であるギリシャが再び窮地に陥り、ユーロ圏17カ国の首脳が協議し、1590億ユーロ(約18兆円)規模の2次支援策をまとめた。

 昨年5月の1次支援が行き詰まり、善後策が必要になった。ギリシャは財政引き締めで経済が収縮。歳入減や利払いで、政府の資金繰りの展望が再び閉ざされたのだ。

 2次支援のポイントは、民間銀行にも協力を求めた点だ。最大の支援負担国のドイツが「民間銀行にも応分の負担を求めないと国民が納得しない」と譲らず、盛り込まれた。

 ギリシャ国債を持つ銀行には新たに発行される長期の同国債への借り換えに「自主的に」応じてもらう玉虫色の措置だ。しかし、これが一種の債務不履行(デフォルト)に当たる可能性がある、と米国の格付け会社が警告して話がもめた。

 デフォルトした国債は、欧州中央銀行(ECB)が融資する際の担保として認めないため、多くの銀行が資金繰りに窮する。同時に、すでに支援を受けているポルトガル、アイルランドの国債の信用も揺れる。スペインやイタリアにも財政不安が飛び火しかねない。そんな「7月危機」への懸念が募った。

 ユーロ圏首脳会議は結局、格付け会社の警告を退け、当初の方針を貫いた。格付け会社がこれを正式にデフォルトと見なすかどうかで当面の影響は分かれる。たとえデフォルト扱いになっても、欧州中銀はギリシャ国債を担保として認めるべきだ。EUとも連携して、金融危機は断じて防がねばならない。

 2次支援は時間稼ぎであり、問題の先送りに過ぎない。本来はギリシャの財政問題を金融市場の荒波から切り離し、ユーロ圏全体の信用で守りながら更生を図るべきだ。その中でギリシャの自助努力で返済できる範囲に債務を減額する。損失は加盟国が実力に応じて分担するほかないのではないか。

 一連の支援論議の中で、その方向への芽も育ちつつある。欧州安定化基金が問題国の既発の国債を買い入れることができるようにした。基金は資金調達のため、主要国の信用をテコに債券を発行している。これは将来の欧州共同債につながる形と見ることもできる。基金債で問題国の国債を置き換え、問題国の財政再建はユーロ圏の政府間の監視の下で進めればいい。

 このような支援の延長線上に、通貨はひとつだが財政はバラバラというユーロの根本的な矛盾を解く方策もある。

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