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<東日本大震災>送迎手間取り25人死亡…宮城の自動車学校

毎日新聞 7月22日(金)22時42分配信

<東日本大震災>送迎手間取り25人死亡…宮城の自動車学校
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津波に襲われた常磐山元自動車学校(左奥)。余震による津波に警戒しながら、消防隊員らが行方不明者を捜していた=宮城県山元町で2011年3月14日、丸山博撮影
 宮城県山元町の常磐山元自動車学校は、送迎のワゴン車など7台のうち5台が津波にのまれ、10代の教習生25人が死亡した。防災無線が大津波警報を告げ、避難を呼びかけていたにもかかわらず、学校が送迎車を出発させたのは地震から40分余りたってから。しかも、車は通常の送迎ルートをたどった。遺族は「対応の遅れと不適切さが最悪の事態を招いた」と指摘、裁判で責任を追及する構えだ。【鈴木美穂】

 ■騒 然

 「先生、早く(車を)出して!」「やばい」。3月11日午後3時半すぎ、教官の運転で自動車学校を出たワゴン車が国道6号交差点に差し掛かった時、車内は騒然となった。3人の教習生と乗り合わせていた山元町の川越美幸さん(19)が振り返ると、黒い波が迫っていた。しかし、信号は停電で消えており、2台のトラックが立ち往生して道をふさいでいた。

 「やばいのは分かってる」。教官がアクセルを踏んで急発進し、国道を山側に突っ切って逃れた。川越さんは「停車は一瞬だったが長く感じた。生きた心地がしなかった」と振り返った。

 ■待 機

 3月は免許取得のピーク時期。自動車学校は高校を卒業したばかりの若者ら約40人でにぎわっていた。午後2時46分の地震発生後、建物の倒壊などを心配して外に逃れた教習生らは、寒さをしのぐため前庭に停車中のバス内で待機していた。学校が「午後4時から教習を再開する」と呼び掛けていたからだ。

 角田市の斉藤瞭さん(18)は、亘理町の早坂薫さん(当時18歳)とバス内に並んで座っていた。既に車内のラジオやサイレンを鳴らした車が高台への避難を呼び掛けていた。

 学校側が教習を打ち切り、送迎車で送り届ける方針を打ち出したのは、午後3時半ごろだった。教官から自宅の方向ごとに乗り換えるよう指示があり、斉藤さんは教習生3人とともに別のワゴン車に乗り込んで先発した。早坂さんの送迎車は同乗者が多かったため振り分けに手間取り、なかなか出発する気配がなかった。早坂さんに手を振った斉藤さんは「明日もまた会える」と思った。

 ■漂 流

 斉藤さんを乗せた車は、海沿いの相馬亘理線を走った。学校から約1キロ進んだ時点で海の方を見ると、白い煙が立ち上っていた。

 「火事じゃね?」「津波!」。同乗の友人とそんな会話をした直後、ゴーッという地鳴りとともに「海が勢いよく迫ってきた」。教官がハンドルを切った途端、近くに止まっていた無人の車が波に流されて突っ込んできた。同乗の女子教習生2人がすすり泣いていた。その間にも、車は50〜60メートル流された。ガラスが割れ、車内に泥水が入り込む。二波、三波と襲われ、車は次第に横転し始めた。

 「外に出ろ」。教官が叫び、斉藤さんは割れた窓から水中に飛び込んだ。車内に濁流が流れ込み、2人が沈んでいくのが見えた。斉藤さんも水中でもまれ、木や金属とぶつかりながら漂流し続けた。びしょぬれになって民家の上にいたところを救助されたのは、12日午前3時ごろだった。

 ■後 悔

 「あの日、教習所に送り出さなければ」。早坂薫さんの母由里子さん(47)は悔やんでいる。11日午前、薫さんと2人で就職祝いのスーツを買いに出かけ、送迎バスが来る駅に送り届けたからだ。

 午後4時10分すぎ、父満さん(49)と薫さんの携帯電話が1度だけつながった。ゴボゴボと水の音がして、男みたいな声がした。「混線かな」と切ってしまったが、「もしかしたら娘だったかも」と激しい後悔に襲われた。以来、娘の携帯が通じることはなかった。薫さんは6日後の17日に遺体で発見された。

 「お子様を守りきれず申し訳ない」。自動車学校の岩佐重光社長は遺族に謝罪したが、4月中旬には弁護人を通じ「損害賠償責任は負わないと判断される」との文書を送りつけてきた。早坂さん夫婦は「生徒の安全を守るのが学校の責務。せめて高台に避難させてくれていれば」と話す。

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最終更新:7月22日(金)23時20分

毎日新聞

 

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