佐野眞一氏「改めて怒りが」…東電OL事件の新展開で

2011.07.21

 「東電OL殺人事件」(新潮社)で、ゴビンダ受刑者の無罪を主張してきたノンフィクションライター、佐野眞一氏の話

 また一つ、日本の司法のどうしようもなさが露呈した。改めて怒りがこみ上げる。事件当時、遺体発見現場の空き部屋の鍵を(受刑者が)大家から借りていた事実が逮捕の決め手だったが、鍵は事件3日前に同居人から大家に返却されていた。しかし、警察は、不法滞在者である同居人にサラ金の仕事を斡旋してまで、鍵の返却日を事件翌日と証言するよう強要している。

 7メートルも離れた場所にいた目撃者の「東南アジア風の男と被害者」という証言もあいまいで、トイレに捨てられていた(受刑者のものとされる)コンドームも、精液の状況から事件当日のものでない可能性が極めて高いにもかかわらず、高裁は新たな証拠もない中で有罪と断じた。

 事件当時、4歳だったゴビンダ受刑者の娘は、数回の来日を経て現在は18歳になったはず。改めて歳月の残酷さを感じる。物的証拠が何一つない中、十数年間にわたって異国の刑務所への収監を余儀なくされた彼にとって、今回の鑑定結果が大きな希望となると信じたい。

 

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