菅直人首相は21日の参院予算委員会で、原発の海外輸出について「より安全性を高めて進めていくという考え方をベースにしているが、もう一度きちんとした議論がなされなければならない」と述べ、見直しも含め検討する考えを示した。だが、枝野幸男官房長官と海江田万里経済産業相は継続姿勢を示し、内閣の不協和音が露呈した。核燃料サイクルでも首相は「議論すべきだ」としているが政府方針は不明確なままで、首相の「脱原発」発言のもろさを示す形になっている。
政府は原発輸出を新成長戦略の柱にしており、昨年にはベトナムへの輸出が決まった。だが、首相は「新成長戦略の見直しの検討の中で議論していきたい」と表明。だが、脱原発路線に沿って輸出をやめるとは明言せず、「議論したい」を繰り返した。
これに対し、枝野氏は「国際間の信頼関係を損なわないということは、従来の約束はしっかり守っていくのが前提になっている」と継続する考えを示し、海江田氏もベトナム、トルコ両政府が「引き続き進めたい」としていることを紹介したうえで、「しっかり特派でも派遣して説明してくる必要があろう」と語った。
核燃料サイクルでは、首相は20日の衆院予算委員会で「従来計画に沿って進めるか見直すか、予断なく議論すべきだ」と見直しの可能性に触れたが、見直しに向けた政府内の議論はしておらず、海江田氏は当面は必要との立場だ。
海江田氏は21日の参院予算委で「首相の発言が閣内で一致しているなら泰山(高く大きな山)より重い。いつも泰山より重いものであってほしい」と当てこすった。【西田進一郎、横田愛】
毎日新聞 2011年7月21日 21時14分(最終更新 7月21日 22時05分)