原田芳雄さん　生前の願い「被災地でライブやりたい」　通夜に１２００人

　肺炎のため１９日に７１歳で死去した俳優原田芳雄さんの通夜が２１日、東京・青山葬儀所で営まれ、石橋蓮司（６９）、岩下志麻（７０）ら交流があった多数の著名人を含め１２００人が弔問に訪れた。

　弔辞を読んだのは、１６日に公開されたばかりの遺作となった映画「大鹿村騒動記」のメガホンを取った阪本順治監督（５２）。１１日に原田さんが車いすで舞台あいさつに臨んだことを振り返り「映画の一場面のようでした。余命を知りながらカメラの前に立った。演出するのはきつかったです」と声を震わせた。

　さらに「次の作品も、次の次の作品についても語っていた。被災地でライブをやりたいともおっしゃっていた」と志半ばだった原田さんの無念を思いやり、「本当によく頑張られました。もうクランクアップです。さようなら。取りあえずのさようならです」と涙声で呼びかけた。

　祭壇は「大鹿村騒動記」の美術スタッフの発案で、映画を愛した原田さんのために、映画のスクリーンをイメージ。白い花６０００本をあしらい、横長の長方形のデザインになった。その中央には原田さんがほおづえをついてこちらを真っすぐに見すえる遺影が置かれた。０９年の映画「ウルトラミラクルラブストーリー」の製作発表時に撮影されたもので、本人のお気に入りだったという。

　祭壇の横には、ブルースシンガーでもあった原田さんが愛用したアコースティックギターと、赤いタオルの掛かったマイクスタンドが置かれた。さらにウイスキー好きだった原田さんのため、今年２月の誕生日に長男のミュージシャン原田喧太（４１）がプレゼントした「Ｉ．Ｗ．ＨＡＲＡＤＡ」という特注ラベルのウイスキーが供えられた。

　告別式は２２日正午から同所で行う。ファンの献花台も用意されている。

　喪主で長男の原田喧太は通夜の後に会見。原田さんと交わした最後の言葉について聞かれると「（亡くなる）２日前に『もうダメだ』と。そんなことは言ったことがありませんでした」と明かした。１１日に車いすで舞台あいさつに臨んだ経緯は「医者は『９９％無理だろう』と言っていたが、本人の真剣さに心を打たれて協力してくれた」と説明。「まだまだやりたいことはいっぱいある。時代劇をやりたい、と言っていました」と亡き父の思いを代弁した。１２００人もの弔問客が訪れたことに「父はいつも『血縁だけが家族じゃない』と言っていた。こんなにたくさんの家族がいたんだな、と思いました」と驚きつつ、映画のスクリーンをかたどった祭壇を見て「まだ映画の中にいるようでかっこいい。感無量です」といとおしそうに語った。

　地井武男（６９）の話　俳優座時代の同期でした。昔はお互い貧乏でね。当時のエピソードなんかありすぎて、話せないぐらいたくさんある。映画を愛し、映画に命をささげた人だった。今は戦友を亡くした気持ちです。数年前に俳優座の同窓会で会ったのが最後になりました。入院しているとは聞いていましたが、そんなに悪いとは思ってなかった。そういえば、彼には昔、５００円を貸したままでした。そのうち返すよって言っていたけど、いつ返してもらえるのかな。

　原田美枝子（５２）の話　昨年のＴＢＳドラマ「新参者」で共演をしたのが最後に。いま思えば現場でお別れできたのが良かったかな、と。ギリギリまで仕事をして、最後は主演で終えるなんて見事だと思う。いつも見守ってくれた先輩で本当に寂しい気持ちでいっぱいです。

　内田裕也（７１）の話　昔は（松田）優作と３人で酒をよく飲みました。映画の話もよくしたかな。ブルースもうまかったね。オレとは同じ年、先に逝かれちゃったな。７０代になってもっといい仕事ができたんじゃないかな。きょうはバーボンを１本持ってきた。言葉はいらないだろうって思ってね。安らかに休んでほしい。仲間のジョー山中も重篤だけどおれはもう少し頑張るよ。ロックンロール！

　◆主な参列者　【俳優】役所広司、竹中直人、夏八木勲、石橋蓮司、西田敏行、奥田瑛二、杉本哲太、勝村政信、松田龍平、中村獅童、妻夫木聡、中居正広、木村拓哉、香取慎吾、松岡昌宏、松本潤　【女優】岩下志麻、桃井かおり、原田美枝子、風吹ジュン、夏木マリ、宮沢りえ、夏川結衣、熊谷真実、京野ことみ、ＹＯＵ、上戸彩　【ミュージシャン】宇崎竜童、内田裕也、未唯ｍｉｅ、白竜、布袋寅泰　【映画監督】阪本順治、若松孝二、行定勲、大森一樹　【映画関係者】大谷信義（松竹会長）、岡田裕介（東映社長）