EU:原発検査厳格化 飛行機墜落も想定

2011年5月25日 20時35分 更新:5月25日 21時51分

 【ブリュッセル斎藤義彦】欧州連合(EU)は25日、域内の原発143基のすべてについて6月1日から安全性検査を行うと発表した。毎日新聞が入手した検査の概要説明文書によると、地震や洪水のほか、高温、豪雨、飛行機の墜落、付近のタンカーの爆発まで「テロに比肩する損傷」を含めて検査を行うとしている。EUの安全検査は原発運用に大きな影響を与えるとみられる。

 エッティンガー欧州委員(閣僚、エネルギー担当)が25日に発表した方針によると検査は12年4月末に終了、結果を発表する。

 概要説明によると、福島第1原発事故でEUは「考えられない事態が起こることを学んだ」として、マグニチュード6以上の地震が起こったことのある地域にある原発にはそれ以上の地震への耐性を求める。また、複合的な要素で原発の冷却機能が失われる事態に対応できるか調べる。

 さらに「テロによって起こったかどうかに関係なく」、飛行機の衝突に関する格納容器の耐性をみる。また飛行機が炎上した場合や、付近のガスタンクが爆発した場合などの耐性も検査する。

 検査はまず、各原発の運営会社が実施、次に各国の当局が行ったうえ、他の加盟国の専門家がチェックする。検査結果で問題があれば加盟国が対処法を決める。もし閉鎖しない場合はEUが説明を求める。

 ただ、検査からは「テロへの耐性」の項目は外され、「専門家委員会」を別途設置して調査する。テロの項目を加えると、多くの原発を閉鎖しなければならないことを恐れた原発大国フランスや英国が反対したという。

 エッティンガー委員は「日本の事故を見れば、欧州には厳しい安全基準が必要だ。原発の安全性、透明性を高めたい」と述べた。

 EUは安全検査についての方針をフランスで26日から開かれる主要8カ国首脳会議(G8サミット)で表明、各国の賛同を取り付ける意向だ。また、来月にはロシア、スイス、ウクライナなど原発を抱える周辺諸国を招き、「世界で最も厳しい」と自負するEU検査基準の適用を求める。

 ドイツは17日に発表した専門家による安全検査の結果、南部にあるビブリス原発など4基が、飛行機の墜落に構造的に耐えられないと判定。4基は、廃炉になる見通しが強まっている。

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