2011年5月24日 19時49分 更新:5月24日 20時30分
函館高専(北海道函館市)の学生サークル「埋蔵文化財研究会」が、60年前に知内町で発見された「涌元(わきもと)古銭」の中に、14世紀のベトナム陳朝が鋳造した貨幣「開泰元宝(かいたいげんぽう)」が1枚あることを突き止めた。日本でこの古銭が出土したのは初めてで、メンバーは「当時、北海道と東南アジアを結ぶ海の道があったのでは」と思いをはせる。
知内町郷土資料館によると、涌元古銭は1951年、民家の石の下から漆を塗ったかごに入って見つかった。室町時代に本州から移り住んだ武士の館で埋められたとみられ、大半は交易で使ったと思われる中国製の貨幣だという。
研究会は08年、同資料館が保管する997枚を預かり、和紙に表面を写し取ったり、電子顕微鏡で成分分析したりして種類を調べてきた。このうち1枚は4文字のうち「泰」の1文字が当初判読できず、桜木晋一・下関市立大教授(日本貨幣史)と三宅俊彦・専修大講師(中国考古学)に鑑定を依頼。その結果、ベトナム陳朝の開泰年間(1324~29年)の貨幣であることが確認された。
古銭は直径22.7ミリ、重さは約4グラム。成分は銅が約65%を占める。三宅講師は「中国との貿易で日本に入ってきた中国銭の中に開泰元宝が含まれ、それが日本海ルートの交易で道内に送られたのでは」と推測する。研究会メンバーの渡辺恵太さん(20)は「今まで地道にやってきたことが報われた。今後は流通経路なども調べたい」と話している。【近藤卓資】