原発賠償の現状と問題点
学校法人は支払いの対象外?
東京電力は、6月から、福島県内の中小企業に1社当たり最高250万円の仮払いを始めた。ところが、学校法人や社会福祉法人、医療法人は法律上、中小企業に該当しないとし、補償の対象外としていることが7月に判明した。しかし、この点、文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会は、4月の1次指針で、救済対象の事業者を「営業被害などを受けた多数の事業者ら」と幅広く定めており、中小企業に限る法的根拠はない。そして、後日、こうした批判を受けてか、東京電力は学校法人へも7月中にも申請の受け付けを開始することを明らかにした。額や対象など、詳細は今後検討する見通しだ。
個人への仮払い100万円を決定するが・・・
東京電力は4月中ごろ、個人への仮払いを決定した。しかし、これも順調とは言いがたい状況だ。問題点として、県外避難者に仮払いの情報が十分に伝わっていないことがある。例えば、原発事故の被害を受けた被災者の多くは、県外に避難している。しかし、県外避難者の所在を把握していなければならない福島の地元自治体も被災しており、震災対応に追われ、避難者の所在確認まで手がまわっていないという状況だ。
他の原因として、仮払いの関連情報を載せているホームページなどが被災者にとって分かりにくいなど、東京電力や政府の広報にも問題がある。さらに、仮払いを受けるためには自己申告しなくてはならず、避難者自身もなれない避難生活のなか、十分な情報もなく申請まで行えない方も少なくないだろう。
どこまで支払えば・・・、疑心暗鬼の東電
現在、原発被害は、観光業や食産業など広い範囲に及んでいる。そのため、東京電力もどこまで賠償の対象としていいのか、具体的に決められない状況だ。例えば、福島原発に近い日光や那須などの観光地は、原発事故以降、ホテルなど予約キャンセルが相次ぎ、観光地全体でも観光客が減少するなど、大きな被害が生じているこうした被害を受け、日光の旅館組合は東京電力に賠償請求を行うことを表明している。
総評
原発の被害が甚大で、被害がどこまで拡大するかの予測がつかず、東京電力もできるだけ賠償額を抑えたいという思惑が見て取れる。一方、政府としては、原発賠償支援法案や原発賠償仮払い法案など、国と東京電力の責任の範囲を明確にするための法案の審議も進んでおり、 原発被害者のためにできるだけはやく賠償の範囲や時期などを明確にすることが必要だ。
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