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土曜コラム けいざい道標
公共交通機関を使おう 松村豊大   2011/7/16 12:07
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 「本県においては公共交通機関が未発達であり、県民生活は、通勤・通学や地域の経済活動、救命救急活動等、あらゆる分野において自動車交通に大きく依存している」-。

 2008年11月に徳島県から国に提出された「『地方の道路整備』に関する徳島の提言・要望」の冒頭文である。作成された方には申し訳ないが、この文では、公共交通機関であるはずの「乗り合いバス(路線バス・高速バス)」の位置付けが不明である。

 徳島県の鉄道路線は単線非電化で、海岸部と吉野川沿いに通じているのみであり、今以上の高速化や運転頻度の向上は望めないだろう。おのずと県内の移動は「自家用」自動車交通に依存せざるをえないことになる。時間の制約がほとんどなく、「Door to door」の移動を実現できる文明の利器の利便性を享受するためには、道路整備は必須の要件だ。

 6月26日付の本紙で既報のとおり、「高速料金休日1000円」終了後の県内の観光客の数は激減した。悪天候の影響を割り引いても、その減少は、観光産業に大打撃を与えること必至である。「観光立県とくしま」を目指す本県にとっては死活問題だ。

 このような事態になったのは、県内の著名な観光地への足が、自家用車以外ほとんどないことが原因ではないだろうか。県外からのお客さんが、高速バスや航空機で徳島県に入って来られても、県内の著名観光地へ行くには、接続の悪い列車と路線バスを乗り継ぐ以外移動方法がない。

 「車があるでないで」は、徳島に住んでいるからいえるセリフであって、県外のお客さんには通じない。徳島県内各地に散らばる「地域資源」を生かし、「観光立県とくしま」を実現するには、まず地元に住む我々が、普段から公共交通機関である路線バスや列車を利用して、観光地へのアクセスを提供する事業者に「利益」を上げてもらっておくことが必要となる。

 公共交通機関を利用している時間は、自由な時間である。徳島の四季折々の景色を眺めてもよし、読書にいそしんでもよし、また仕事を片付けてもよし。何でもできる時間だが、自分で自動車を運転している時間はそれができない。経済学でいう「機会費用」を損失していることになる。いま一度、公共交通機関の利用を考えてみてはどうだろう。(徳島文理大学教授)

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