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大田・くらやみ坂通り:車はゆっくり走って! 歩行者と軽微な接触事故相次ぎ /東京

 ◇地元住民が呼びかけ

 大田区山王地区の住宅街にある約900メートルの区道で、歩行者と車の軽微な接触事故が相次ぎ、地元住民が区道を「くらやみ坂通り」と名付け、車にゆっくり走行するよう呼びかける取り組みを始めた。【黒田阿紗子】

 区道沿いにあるマンションの管理組合理事長、中島敏さん(49)は、すれ違う車に買い物袋や傘をぶつけられた経験が数え切れない。「いつ大事故にあうか分からない」と危険を感じてきた。

 区道は、一部を除き一方通行で、制限速度20キロ。道幅は一番狭いところで3・8メートルだが、JR大森駅前の都道421号から環状7号線に抜ける近道として、タクシーや住民以外の自家用車が次々通過する。住民は「時速40キロ出ている車も珍しくない」と感じている。大森署によると、昨年にこの区道で起きた人身事故はゼロで「過去にさかのぼっても事故の認知件数はほとんどない」という。一方で住民は、けがに至らない軽微な接触事故やヒヤリとするような車と歩行者のすれ違いが多発していると証言する。

 中島さんは、4~5年前から個人的に区に要望し、マンション前に安全のための白線塗装や支柱の設置が進められたが、効果は限定的だった。所属する山王3、4丁目自治会に相談したところ、鈴木英明会長が「ほかの自治会も広く巻き込んで動くべきだ」と応じた。

 「行政に任せきりにせず、住民が主体となって改善策を考えよう」。区道沿いに住む人に協力の署名を呼びかけると、「腕を車にぶつけられて転んだことがある」「子供の通学が心配」などの意見が寄せられた。今年1月、沿道の主な4自治会を基礎とした「ゆっくり走ろう運動」が始まった。区道の愛称は「くらやみ坂通り」に決定。区道の入り口の坂がかつて樹木で覆われ昼でも暗かったことから「闇坂」と名付けられているのにちなんだ。

 6月には、区と大森署が連携し、路上でチラシを配って運転手に速度抑制を呼びかけた。今月8日に、区がこの通りを実験道路に指定し、ハードとソフトの両面から住民と対策を進めるよう提案書を出した。通りに愛着を持ってもらうため、沿道の住宅に花を植えることも検討している。

 運動の副代表、萩原千史さん(47)は「生活道路で同じ悩みを抱える地区は少なくない。大事故が起きてからでは遅い。外部の車を排除するのではなく、『あの通りはゆっくり通行しなければ』という認識が広がれば」と話す。

 山王地区は大正末期から昭和初期にかけて川端康成、北原白秋ら多くの文人が住んだことで知られ、この通りも「馬込文士村散策の道」の一部として観光コースになっている。運動の事務局長となった中島さんは「ここを歩くと車の音がするたびにビクッとして壁に張り付くような体勢になる。のびのびとまち歩きができるような道になってほしい」と願う。

〔都内版〕

毎日新聞 2011年7月20日 地方版

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