ここはとある中学校。
『うさ耳』をつけた、心身ともに発育不全の女教師との騒がしい時間も終わり、時は夕暮れ。
部活動の時間も終わり、生徒たちは帰路を歩くのみである。
先に述べた教師を筆頭に、とにかく変な教師、生徒の多いこの学校。
その中でも、一際異質な生徒が『幼馴染の眼鏡君』と一緒に下校していた。
その生徒は実家のパン屋の看板娘であり、この学校では一番可愛い美少女として知られている。
彼女の名は『片岡瞑(つむり)』。
ウェーブの掛かったショートヘアに大きな瞳、リボンつきスカートの制服、そして多少(?)天然の入ったおっとりとした性格もあり、学校の内外で彼女に声をかける男は後を立たない。
しかし彼女……
否!
彼はれっきとした『男』であった。
無論、彼は好き好んで女の子の格好をしており、女の子と勘違いした多数の男子を絶望させたり、道を踏み外させたりしている。
先に述べた彼の幼馴染の眼鏡、『大鎌霧』は彼のボディーガードのようなものであり、悪い虫がくっついてきてはそれを追い払う日々に若干うんざりしていた。
言うまでもなく、この日も霧君はつむりに言い寄ってくる道を踏み外した男どもを、ちぎっては投げちぎっては投げを繰り返していたわけで。
「ったく…面倒くさいな……」
「いつもごめんね~」
あくまで面倒くさがる霧と、半笑いで謝るつむり。
まあ、こんなことさえも日常茶飯事であるため、この学校はオカシイ。
「ねえ、霧ちゃん」
「な…なんだよ」
このいちいち人に話しかける際にも首をかしげる様は―――
圧倒的ッ……反則であり、霧も動揺せざるを得ない。
「今日体育の時間、指すりむいたでしょ?」
「あ…ああ……」
この日の体育の時間はバスケであった。
まあ、察する方は察しているとは思うが、バスケットボールがつむりの顔に当たりそうになったところ、済んでのところで霧が左手でボールを叩き落したのである。
さすがはつむり専用ボディーガード…ナイス過保護っぷりである。
「指見せて。早く治るようにおまじないしてあげるっ」
「いや、いいって…(すりむいただけだし…)」
「いたいのいたいのとんでけ~~~」
「………」
正直、これほどまでに無意味な時間は存在しないと思われ。
しかし、このつむりの天然ともいえる花満開の笑顔を前に、霧は顔を赤らめるばかりで反論の余地がない。
霧…ッ!屈服…ッ!屈服せざるを得ないッ!!
何度も言うが、これが男女であれば何の問題はない。
いや、それはそれでいろいろと突っ込まざるを得ないものがあるが…
しかしつむりは男であり、その上、そんな霧に嫉妬する男子が多いものであるものだから、もはやいろんな意味で救いのない学校であろう。
…おまけ…
「ねえ、霧ちゃん。なんか指を舐めるとイイ…っていうけど…」
「やらんでいい!!!」