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[21751] 提督が往く!(R-TYPE TACTICSⅡ二次)【完結・外伝投稿】
Name: ヒナヒナ◆2a9fd0bf ID:9c1447a0
Date: 2011/07/19 00:18
チラ裏からお引越ししてきました。
アルカディアで初めて小説書かせていただきますヒナヒナと申します。

R-TYPEの小説が読みたい、でも少ない。
ならば、自分で書けばいいじゃない。
という思考のもと、本作を連載せていただきました。

チラシの裏で前編を連載していたのですが、
長くなりそうなので後編からはこちらにお引越しさせていただきました。



・前編 :グリトニル攻略戦まで。ギャグ主体、登場人物はかなり壊れています。
連載初期の為、文章が安定していません。作風に迷いが見られます。
・後編 :琥珀色の風まで。前半はギャグ色が多少、後半はシリアス重視です。
・番外編:挿話をオムニバスとして読んでください。連載中。時系列が不安定です。


下記の事項にご注意ください


・R機が活躍しないR-TYPE二次小説 提得小説です。

・作者にはメカ、戦術、軍事に関する知識が不足しています。
・作者はR-TYPE tacticsⅡしかプレイしていません。
 初代R-TYPEとR-TYPE⊿をPSPで試しましたがあえなく途中で撃沈しました。
・基本はSLGのR-TYPE tacticsⅡに準拠しますが、設定などがSTGのR-TYPEシリーズ等と混ざっています。
・故意に似せることはありませんが、他作品から影響を受けている可能性があります。
・キャラが壊れている恐れがあります。(特に前半)
・ネタバレがあります。
・作者の妄想成分が含まれます。(特に番外編)
・前編と番外編はもはや別物です。



暖かく見守っていただけると幸いです。



※2011.5に本編完結しました。不定期で外伝を上げる予定となっています。




ひっそりとドロップアウト作品『プロジェクトR!』をチラ裏に投稿しました。
超不定期更新です。



[21751] 1 プロローグという名の世界観説明
Name: ヒナヒナ◆2a9fd0bf ID:9c1447a0
Date: 2010/11/05 01:24
遠い未来の話…

異相次元探査艇フォアランナにより銀河系ペルセウス腕の中央付近で超束積高エネルギー生命体‘バイドの切れ端’を採取。出港から20年をかけて帰還する。
同時期に地球からフォアランナ探索地点で未知の生命体が観測された。
この生命体群は膨張と増殖を繰り返していた。
そして指向性が見出されるに至り、この生命体への人々の関心は強まった。
探査艇フォアランナの持ち帰った‘バイドの切れ端’を調査すると、
非常に強い排他的攻撃性をもつ生命体であることが判明した。
バイドの群れは脅威的なスピードで増殖移動を繰り返し、太陽系があるオリオン腕に進入した。
人々は戦慄した。
広大な宇宙で無限に進路のとりようがあるにもかかわらず、
太陽系を横切るような進路をとっていたのである。
未知の生命体への強い関心は、この時バイドという名の恐怖に変わった。


バイドの侵攻を食い止めるべく統一政府地球連合は対バイド兵器の開発を急いだ。
Team R-TYPEと呼ばれる開発組織によって開発された次元戦闘機Rは、
その機動性と戦艦の主砲並みの「波動砲」、
そして、バイドを利用した兵器「フォース」によって、
バイドとの戦いでめざましい戦果をあげた。
しかし、局地的な戦闘の積み重ねでは、
大挙するバイドの攻勢を退けることはできず、
大局的には人類は追い詰められていった。

人類はバイドを討つため、
最後の希望と、残された僅かな兵力を若き司令官に託し、
バイド星域の奥深くへ送り込んだ。
それから数ヶ月、数年が経つうちに、太陽系に現れるバイドの数は減っていった。
人類はようやく訪れた安らぎの日々に歓喜した。


…しかし、それは長くは続かなかった。


バイドを人類の兵器として利用する、“フォースシステム”。
バイドとの戦いが少なくなってからも、
地球連合軍はこの強大な兵器を手放すことができなかった。

バイド兵器を巡って世論は二つに割れた。
未知なる敵からの侵略に備え、
積極的にバイド兵器を保持・開発し続けようとする地球連合軍と、
バイド兵器を破棄すべきだと主張するグランゼーラ革命軍とに。
お互いの主張は噛み合うことなく、対立は深まっていった。

そして皮肉なことに、人類同士の戦争が始まった。

二つに分かれた人類は、新たな兵器を開発し続け、命を奪い合った。
戦いは泥沼化し、戦火は太陽系全域に広がっていった。




________________________
はい、TACⅠ,ⅡのOPですね。
R-TYPEシリーズはその難易度と、
どうあがいても絶望な世界観が売りなので、
めちゃくちゃ重いプロローグになってしまいましたが、
本編ではもっと軽くなるのでご安心を



[21751] 2 隊長と演習
Name: ヒナヒナ◆2a9fd0bf ID:9c1447a0
Date: 2010/09/13 00:17
・隊長と演習


私は地球連合軍で特別連隊隊長を務めている。
地球圏の平和のためにグランゼーラ革命軍の連中と戦うのが、仕事のはずなのだが…
私と私の連隊は現在、演習に参加せよとの命令を受けて地球上空に向かっている。
そこで詳しい連絡を受けて地球極東地区の海上で演習をするとのことだ。
連隊といっても、ヨルムンガンド級輸送艦が1隻のみの寂しいものなのだが。
ちなみに地球連合軍では艦が複数あれば、その指揮官を提督と呼んでも差し支えないらしい。
輸送艦隊を指揮する提督ってなんかやだなぁ。


「隊長、作戦空域に到着しました!」
副官のジェラルド・マッケラン中尉が必要以上の大声で報告する。
今まで副官をしていたホセ中尉が負傷で艦を降りたため、
この暑苦しい新副官を使わざるを得ないのだ。
しかも、初の副官業務ということで、気負っているのか、
ただでさえ大きい声が、さらに大きくなっている。
…そういえば昔の拷問で大きい音を聞かせ続けるというのがあったな。
私は、今部下から拷問を受けてるのだろうか?

「よし、本部に連絡。演習とはいえ作戦だ、各員漏れの無いようにチェックをしておくように」

私は澄ました顔して命令を出した。
ちっ、マッケランの声が大きすぎるから私まで大声になってきたじゃないか。
だいたい、大規模任務で神経をすり減らしたと思ったら、いきなり演習とか、あり得ない。
こうなったらこの苛立ちをすべて、演習相手にぶつけてストレス解消だ。

早く攻撃をぶっ放したいぜ。
…ヨルムンガンド級は輸送艦だし牽制用の機関砲しか付いていないから、
実際にぶっ放すのは艦載機のR戦闘機だけどな。

「提督、今回の演習相手の極東防衛分隊から通信が入っています。」
「わかった。正面スクリーンに回せ。」
正面スクリーンがまたたく。
「今回はお手柔らかに頼むよ。我が分隊は見ての通り艦も旧式だし、R機も廃棄処理寸前なんだ。」
気のいいおじいちゃんといった風体の相手間の指揮官からあいさつがある。
極東はサタニックラプソディーで壊滅的被害を受けたからな。
大方、人員が足りなくて退役した軍人と、よそで廃棄寸前になった機体を防衛につけたのだろう。
「演習とはいえ任務ですから、手抜きというわけには行きませんよ。ではよろしくお願いします。」
ハハハ。と爽やかに見えるように笑いながら無難に応えて通信を終えた。

演習相手はR機も引退寸前…
ある考えが浮かぶ

マジでやっちゃっていいよね?

そもそも、本部からの命令は『実戦形式でやれ』だし、相手R機は引退寸前。
それならせめて演習用ペイントではなく波動砲で最後の華を咲かせてやるのが人情ってものじゃないか?
波動砲だけ出力を絞っておけば完璧だな。もちろんコックピットに当てるのは禁止だが。
私のストレス解消のため…ではなく、部隊練度の上昇と士気上昇のため命令を下した。

「各員に命令を伝える。今回の演習についてだ。現在地球圏は危機に瀕しており、遊ばせておく戦力は無い。また、本部からの命令は実戦形式でとのお達しである。そこで、演習モードではなく実戦と同様の訓練を行う。実弾を装備し機体設定を切り替えよ。」

艦橋にいるスタッフが一瞬ぽかんとした表情をしたが、すぐに復唱して作業に取り掛かる。
普段から表情を出さずに真面目顔しているお陰で、
誰も私の暴走している事に気が付かないぜ。
実際に仕事は真面目にこなしているしね。

私の横では熱い(むしろ暑い)男マッケランが、なにやら感動していた。
「そこまでお考えとは…自分は感動しました!」
…いや、副官は止めなきゃダメだろ。
私の心の冷静な部分が突っ込みを入れたが、
ここで止められても興ざめなので口には出さない。

演習前の最終打合せで相手のおじいちゃん指令に、
実弾でやりますよー。と一応了承をとるためににこやかに言っておいた。
おじいちゃん指令が笑いながら、何か言っていたが
マッケラン中尉の報告に遮られて何も聞こえなかった。
マッケラン…通信を遮るなよ。おじいちゃん何言ってるか分からなかっただろ。
しかし面倒なのでそのまま、適当に流して通信を終了した。
さて、演習の始まりだ。


___________________________


「! 実弾!?うわー」とか
「反乱か?応答せよ。」とか
「機体がっ…脱出する。」とか


通信機からもれて来たが、実戦で敵通信は感知できないから、
無視して作戦遂行しなきゃねー。
しかし迫真の演技だな。こんなに上手なら演劇の道に進めばいいのに。

怒号や悲鳴が聞こえる中
マッケラン中尉は張り切って戦果を報告しているが、
通信士などは引きつった顔をしていた。



さて、残った敵輸送機のデコイも破壊したし、
輸送艦に射程外からチャージ済みR機で脅して、終了だな。

「おのれ、貴様ら革命軍の内通者だったか。しかし極東は渡さん、こうなれば道連れに…」

おじいちゃん指令が物騒なことを言いながら輸送艦で迫ってくる。
…あれ、マジで?おじいちゃん、実弾演習てさっき言ったじゃん。
混乱している私を余所に、おじいちゃん指令の命令で輸送艦はR機にタックルをかます。
さすがにR機は横に逃げるが、その挙動にビビったのか、
1/2出力の波動砲を発射してしまう。
そして輸送艦船腹のぺラペラの装甲を波動砲が貫通するのが見えた。


「あ」
やべ、殺っちゃった?
そして、ゆっくりと極東の海に落ちて行く輸送艦…


相手の輸送艦に搭載されていたR機はすでに無く輸送艦内はからであったので、
死者は出さずに済んだ。
なんか人が海に大量にぷかぷか浮いてて非常に怖い光景だったが、私達は彼らを救助し、
戦闘反応に驚いて急行してきた、民間の警備組織に、
おじいちゃん指令達を押しつけて、その場をあとにした。


______________________________



演習報告
特別連隊隊長発 統合司令本部宛

本部命令どおり実戦形式での演習を完了。
仮想敵戦力の輸送艦、R機は旧式であり、
また、仮想敵との事前打合せにより
廃棄が前提とのことであったので、
連合軍資材の有効な活用を行うため、
実弾での演習を行った。
この演習により、両部隊とも練度の上昇と、
後方部隊特有の油断を払拭できた事を確認。
仮想敵部隊は対反乱訓練を行った模様で、
司令官以下迫真の演技で、両部隊の
士気を高めた事を評価したい。
今回消費した資材は…


______________________________



私は、報告書を本部に送りつけ海洋上を逃走した。
部下の前では当然だといった顔をしていたが、
内心すごく焦っていた。
この前、デモ隊への攻撃を拒否した大佐は処刑扱いだったし、
さて、軍事法廷への召喚をどうやって避けよう。

しかし、二時間後に本部から命令が届き、お咎めが無いばかりか、
そのまま、次の命令に従えと書いてあった。
あんれー。何も無いの?軍事法廷は?
反乱認定されたら革命軍に逃げ込もうと逃走経路まで考えていたのに。


そんなことより、逃走のため演習場所を離れたので、
補充予定であった副官を乗せ損なってしまった…







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ビタチョコの演習ってどうみても撃墜してますよね。
映像処理でディスプレイ上はそう見えるって設定だと思うけど。
本来この段階での副官の呼びかけは「艦長」なのですが「隊長」にしてあります。
だって、ゲーム画面をみると輸送艦には別の艦長が乗ってますし。
作者の中でⅡ提督は真面目ぶっているけれどクレイジーというイメージです。
ひとえにゲーム中の選択肢がおかし過ぎるせいですね。

そして、クレイジーな提督はteam R-TYPEの目に止ってしまいましたとさ。



[21751] 3 提督と副官(前篇)
Name: ヒナヒナ◆2a9fd0bf ID:4de07f09
Date: 2010/09/13 00:17
・提督と副官(前編)


極東での演習のことで少し反省した私は、
その後粛々と任務をこなし、地球上のA級バイドを撃破したり、
月面での演習でのキチンと行ったり、真面目そうな仕事が評価されたのか月面演習後に、
統合作戦本部から私は将官への昇格が内定したことを通達された。。
それとともに私の「艦隊」へ火星方面の防衛の任が下った。
まだ、輸送艦一隻なのに、本部に「お前ら今日から艦隊だから」と
無茶振りされたせいで、ついに私も隊長から提督になった。
身の丈に合った呼び名って重要だと思う。
本部め…いつか見ていろよ。


あと、艦艇が増やせないかわりに、新型機を導入してみた。
今回私の艦隊に配備されたのは、長射程の波動砲を持つRwf-9D “シューティングスター”と、今まで我が隊の主力だったRwf-9A‘アローヘッド’の上位機種Rwf-9A2“デルタ”だ。


先日、やっと副官が補充された。
そう、極東演習でおいてけぼりを食らった副官で、
ヒロコ・F・ガザロフ中尉という女性士官だ。
早速暑苦しいマッケラン中尉の変わりに副官に抜擢した。
やはり、副官は女性だな。


しかし、連合軍の女性士官服は色気がある。
白を基調として、胸を強調するジャケットに、タイトスカート、ブラウンのストッキングは指定、靴はパンプスだ。
男物は、初めて着た時白の詰襟とかどこの訓練兵だよと思ったが、
あれだな、デザイナーは女性士官服に全力を傾けて、
男性用はやっつけで作ったに違いない。
デザイナーとしてはダメダメだが、男としては褒めてやりたい。


かわいい子は得だ。
遅刻常習犯だとか、ミサイル発注書の取りまとめを頼んだら何故か大量のペイント弾頭が届いたりとか、演習日程を間違えて演習宙域まで第一戦速で向かうはめになったりとか、命令の入ったデータディスク割ったとか、こけて紅茶をぶっ掛けられたとか全然気にならないし。
頬のスレイスレモンを引っぺがし、茶色く染まった提督服をクリーニングボックスに放り投げながら思った。
…そう、ガザロフ中尉は天然だった。
士官学校の主席がこんな小さい部隊の副官とか、他所でなんかやらかしたのだろうか?


______________________________


ガザロフ中尉を副官にして数日、
私は精神的には癒されたが、書類などの実務は増えていた。
マッケラン中尉は暑苦しくて横にはおいておきたくないが、
書類仕事などはなかなか優秀だった。
でもガザロフ中尉に「提督、ありがとうございます」とか言われると、
すべてを許してしまう私がいる。
本当にかわいい子は得だな。


そんなことを、真顔で書類を読みながら考えていると、ガザロフ中尉が
「提督、指令が届きました。どうぞ。」
といって指令文章の入ったデータファイルを指令席の端末送ってきた。
「基地建設システム“シヴァ”か」
私は周囲に聞こえないようにこっそり呟いた。


_________________________________



「さて、今回の任務は基地建設システム“シヴァ”の運用実験の護衛だ。
ちなみに“シヴァ”は最高軍事機密であるので、外には漏らさないように。
“シヴァ”はコアと呼ばれる施設を元に簡易軍事拠点を短時間で建設できる。
もちろん簡易システムなので、永続的には使用できないが、
一回の戦闘の間くらいは十分に耐える強度をもっている。
問題は“シヴァ”の運用には工作機が必要なことと、
資材として高密度のソルモナジウム結晶が大量に執拗なことだ。
コアについては運用試験の結果次第で、要所に配備されるのだろう。」


ここまで言って紅茶で喉を湿らす。
私は今、会議室で副官達や艦長に今回の作戦の概要を説明をしていた。
普通、こういう説明は副官や技術関係の士官がするんだけど、
今回の件は機密もあるし仕方ない。
「“シヴァ”運用中に敵襲があると考えてもよろしいのでしょうか!?」
とマッケラン中尉。
機密なんだから、せめて普通の声の大きさで話せよ。
普通の人が話しても声はもれないけど、お前はダメだ。
防音壁?そんなもの輸送艦にはありません。
輸送艦とは、いかに効率良く荷物を運べるかに特化した船体なんだから。


「あれだけの規模だ。“シヴァ”の情報がグランゼーラ側に漏れている恐れがある。万が一、敵襲を受けた場合は、そのまま実証試験に切り替わることも視野に入れておこう。」
“シヴァ”は撒き餌で私たちはモルモットなんじゃないのか。
そう思ったが、もちろん口には出さない。
いかんな、最近二重人格化が進行している。
「では敵襲に備えての配備はどうしましょう?」
「輸送艦は第一コアの側でR機とともに待機。工作機にはRfw-9Aあたりを直衛に回す。あとはコアの中にも何機か入れておこう。これで、敵襲があっても戦闘可能だ。」
ガザロフ中尉の疑問に私が答えた。
その後も、いくつか質問があり作戦をつめていった。


ちなみに、ガザロフ中尉がこの会議に焼いてきてくれたスコーンはなぜか、変な味がした。
紅茶の助けで、何とか飲み込めたが、しょっぱいしなんか臭いし…


会議後に聞いてみると、元気良く応えてくれた。
「あ、分かりました?おばあちゃんから貰ったミソペーストを隠し味に練りこんでみました。どうでしたか?」
「…もちろん、美味しかったよ。」
「本当ですか。次回はもっといっぱい作ってきますね。」
私は、いつもの表情偽装スキル使用しながら、心で涙を流した。
君とは隠し味の定義から話すべきだな。









================================
前回はマッケランだったので、今回はガザロフ中尉です。

はい、前書きで基本一話完結と書いたのに、3話目にして破りました。
スミマセン。

個人的には地球連合よりグランゼーラの制服の方が好きなのですが、地球連合のあのデザインはあれで好きです。
よくスペースオペラもので女性士官がヒールを履いていますが、あれで戦闘したら足を捻ると思うんです。いくら無重力でも踏ん張れません。その点、ちゃんと地球連合はヒール無しのパンプスだし、スカートもスリットでなく、マチ(っていうのかな)が付いているもので、動きやすく見えないようになってます。機能美ですね。



[21751] 4 提督と副官(後篇)
Name: ヒナヒナ◆2a9fd0bf ID:37288319
Date: 2010/12/16 21:52
・提督と副官(後編)

私は“シヴァ”が建築されていく様を輸送艦の指令席から眺めていた。
デルタ小隊を護衛につけた工作機が忙しそうに飛んでいる。
そろそろ実験開始時刻だ。
これからユニットと呼ばれるレーザー、ミサイル、レーダー、ドックなどの
付属設備を建造し、それが有効かを試すらしい。



暇だ。
私はあのソルモナジウム鉱石をどうやって瞬間的にあんな形にするのか。とか
ドックとか中で誰が整備すんだよ。とか
レーザーは要らない子。とか
艦内で色々考えていた。


正直、問題も起き無いうちは仕事が無いのだ。
もちろん、周囲の警戒は続けているが、これだけの宙域を私たちのみで警戒するのは無理があるのだが…
しかし、デブリ帯とはいえ、これだけの大きなものを作っているからには、
いつグランゼーラが嗅ぎ付けてもおかしくない。
早期警戒機R-E1‘ミッドナイトアイ’で周辺を偵察させているが、
現在のところ、何も捕らえていない。
もちろん部隊の目をつぶされてはたまらないので、遠くには行かせられない。
あんな紙装甲では出会いがしらの一発で、全滅しかねないからな。


しばらく、順調に基地が増産されるのを見ていた。
その時、偵察していたミッドナイトアイから緊急連絡があった。
私は、うむ、とうなずいた後、何があったのかガザロフ中尉に尋ねた。
「提督!敵襲です。敵はグランゼーラの艦艇。」
ガザロフ中尉がてきぱきと報告する。
「索敵外のため、戦力は不明ですが、艦隊規模かもしれません。」


敵戦力が発見された方角を見て顔をしかめる。
あちらには、“シヴァ”の別のコアがある。
こちらの兵器を奪われて、やられたら目も当てられない。
ここは多少の被害を承知でR機で即効勝負を決めるべきか?
いや、敵戦力が分からないから、機密とはいえ“シヴァ”を利用するべきか…?
私がとりあえず戦闘準備をさせながらそんなことを考えていると。
「提督、敵はおそらく小型艇で構成された艦隊です。R機だけでは被害が出ます。“シヴァ”を使用し、敵戦力を殲滅することを提案します。」


緊張しているようだがはっきりした声で、ガザロフ中尉が発言した。
「ふむ、ガザロフ中尉。小型艇というのはどこから推定したのかな?」
「はい、この宙域はデブリ帯に囲まれており大型艦の運用は困難です。この宙域に来るまでに基地の側を通らなければなりませんがこれも大型艦には無理です。画像では戦闘機のような影もかなりの数映っており、とても小型の艦艇一隻には搭載できる量ではありません。このことから小型の艦隊ではないかと推測しました。」
「わかった。君の案を採用しよう。」


私はマイクを握ると艦内に放送した。
「諸君、現在グランゼーラの艦隊が護衛対象である基地システム“シヴァ”を奪取せんと仕掛けてきた。グランゼーラ軍は“シヴァ”システムの一部をすでに乗っ取っていることが予想される。よって我々も“シヴァ”を使用し迎撃・敵戦力の殲滅を行う。R機は当方工作機の護衛と、敵工作機の破壊を行う。“シヴァ”の相手は“シヴァ”にさせる。総員健闘を祈る。」
なるべく自信満々に聞こえるように作戦を伝える。
しかし、天然のガザロフ中尉がこんなにしっかりしているとは意外だった。彼女は実戦型の人間だったようだ。




私はデルタ隊を主力とした本隊と、基地に伏せておいたシューティングスター隊で、散発的に仕掛けてくるグランゼーラの戦闘機を排除しながら基地の建設を急いだ。


グランゼーラ戦闘機の主力は、可変戦闘機TXw-T‘エクリプス試作機’と爆撃機R-9B1‘ストライダー’だ。
エクリプス試作機はようは加速機構が付いたアローヘッドで、
波動砲を装備しているのだが、奴らは味方の被害をものともしないでぶっ放してくる。
別にエクリプスに限ったことではないのだが、クレイジーな奴らだ。
実はグランゼーラのパイロットは頭をTeam R-TYPEに弄られた戦闘狂で、
Team R-TYPEに復讐を誓ってグランゼーラに参加したのだ。というジョークを聞いたことがある。
Team R-TYPEという言葉が入るだけで、どんな与太話もあり得そうな気がするな。
さすがは変態科学者集団。


ストライダーは長射程・高威力の核弾頭ミサイル、バルムンク試作型を装備しており、うっかり敵の索敵に引っかかると、もれなく核弾頭が飛んでくる。
バリア弾も驚異だ。波動砲などは防げないが、並のミサイル、レーザーなどはそのエネルギー障壁によって阻まれる。
もともとバリアの構想はTeam R-TYPEでもあったらしい。
なんでもバリア波動砲なるものを作ろうとしていたとか、結局、技術的問題だかで使い物にならなかったそうだ。
そしてグランゼーラに転向した科学者がバリアをいう構想のみ受け継いでバリア弾を作ったというわけだ。


バルムンク型ミサイルはその大きさから一発しか搭載されていないのだが、ヒット&アウェイでバルムンクを連発してくる。POWアーマーに搭載できる量ではないし、輸送艦を潰しても沸いてくる。
やはり“シヴァ”のコアを乗っ取り、補給基地として利用しているのだろう。



「提督、敵機地ユニット群を発見しました。」
基地ユニットが敵陣に向かって伸び、相手の基地ユニット群とぶつかる。
基地システムは互角、戦闘機戦力もなんとか互角に持ち込んだ。
互いに一進一退して譲らない。打開策が必要だ。
我々地球連合軍の長所はフォースがあること、波動砲が標準装備であることだ。
瞬間的な突破力には非常に優れている。
しかし、波動砲はチャージ時間がかかるし、フォースも遠距離への攻撃には向かない。
ピンポイントで弱点を攻撃しないとならない。


「R機で基地ユニットを破壊せよ。攻撃をコア近くの連結部に集中せよ。当方基地ユニットはR機を援護せよ。」
基地ユニットからミサイルやレーザーが飛び交っている。
私が指揮している輸送艦からもデルタとシューティグスターが続々と補給を終えて飛び立つ。
敵の猛攻をかいくぐったシューティングスター部隊が遠距離から目標連結部を撃つ。
…さすがに腐っても基地。波動砲の一撃にも耐えた。
2隊ほど、迎撃されて被害を出しているが、
その間から、デルタが肉薄し、波動砲を撃った。
連結部が吹っ飛び、そこから伸びていた基地ユニットが崩壊する。
ミサイルやレーザーが止み、空白が生まれた。


「コアユニットの奪還が最優先だ。全機工作機を援護せよ!」
コアユニットさえ取り返せば、あとはR機で殲滅できる。
残ったR機が波動砲で牽制をしてエクリプス試作機を近づけさせない。
高速で飛び回るエクリプス試験機にはなかなか当たらないが、
敵も回避に必死でコアに近づけないようだ。
「提督!コアユニット制圧しました。我々の勝利です。」
「いや、まだだ。“シヴァ”は最高機密だ、情報を持ち帰らせるわけにはいかない。残存勢力を殲滅せよ!」
そう、私のクビが掛かっている。
ちなみに場合によってはクビではなく、「首」が掛かる。
また、軍法会議召喚の危機か…
しかし、エクリプス試験機は作戦失敗と見るや、踵を返して逃げた。
波動砲はチャージが間に合わず、デルタやシューティングスターで回りこめない。
「ミサイル斉射だ。逃がすな!」
R機のミサイルの雨がエクリプスに降り注ぐ。


次の瞬間、もはやエクリプス試作機の面影はなかった。
そこにあったのはピンク色に染まった、なんともファンシーな戦闘機だった。
「は?」
艦橋から疑問符が溢れかえる。
「ペイント弾!?どういうことだ?」
みな呆けてしまった。その隙にエクリプスはブースターを再点火し、
私達の攻撃範囲外に逃げていった。


「…どういうことだ?」
今度は微妙に声が震えていたと思う。
私の声に応えるように、艦橋中の視線がガザロフ中尉に集まる。
「あの…、もしかしたら、先日私が誤発注してしまったペイント弾頭が装備されてしまったのかと…ごめんなさい!」
「そんなこともあったな。送り返したのではないのか?」
「整備班長に相談したら、あとで盛大に部隊内演習でも開くから良いと言われまして。」
「…」


頭を下げ続けるガザロフ中尉をよそに、
私は遠い目をしていた。
最高機密ばれたわけだしな…軍法会議かな。
本当にグランゼーラに転向するか?
ダメだよなぁ、たった今グランゼーラの艦隊を撃破したばかりだからな。


ばれた時怖いので、偽装するわけにも行かず、
私は報告書と、戦闘データを統合指令本部に提出した。
今回はR機にかなりの被害が出ているので、
基地内で修理が終わるまで、この場を離れるわけにもいかない。


とりあえず先任副官として、マッケラン中尉にガザロフ中尉の事務処理教育を任せて、
私は事後処理を行いながら沙汰を待っていた。



本部からの通信で、次の指令が来た。
火星に向かえとの命令だが、
“シヴァ”についてなんにも触れてこないのが逆に怖い。
そればかりか、補充人員まで付いていた。
本部は何をしたいんだ?




==============================
そういえば、R-TYPEと冠しているのに2話目とかR-9もアローヘッドという名前すら出てこなかったんですね。反省しました。
2話目でR機とあるのはRwf-9A“アローヘッド”のことです。
STGのR-TYPEではたしかアローヘッドの型番はR-9でしたが、
TACTICSではRwf-9Aに変更されています。wは波動砲(wave cannon)を、fはフォース(force)をそれぞれ装備しているという意味みたいですね。



[21751] 5 提督と休暇(訂正版)
Name: ヒナヒナ◆2a9fd0bf ID:80eae712
Date: 2010/09/21 22:33
・提督と休暇


先日の“シヴァ”襲撃事件の後、新しい艦長が補充された。これで艦隊が組める。
地球連合の艦長は、パイロットなどと同じく技能職だ。
緊急時ではない限り、一般士官が艦長に付くことはない。
ちなみに艦は付いてこなかったので、自前でやりくりしろと言うことらしかった。
今のところの予算の範囲内で、私は駆逐艦UFDD-02 ‘ニーズヘッグ’を導入した。
この艦はR機の積載能力は無いが「亜空間バスター」と呼ばれる特殊兵装を装備している。
その名の通り、亜空間にいる敵に対して絶大な効果がある。
グランゼーラでは亜空間機の開発が遅れており、今のところ脅威ではないが、
バイドの中には亜空間から襲ってくるものが確認されている。
対策を行って置くのも、良いだろう。
やっと輸送艦暮らしが終わる。


…と思っていたのもつかの間、
戦闘艦の中では一番小型の駆逐艦といえど、優に輸送艦の倍はある。
火星に向かうに当たっては、デブリ宙域などがある場所を通る必要がある。
万が一グランゼ-ラに待ち伏せされた時、
駆逐艦では動き回るのは骨だし、R機を搭載出来ないので逆に戦力に不安が出る。
駆逐艦で戦闘指揮をとるのは危険すぎる。
という内容を航海担当士官に提言された。
私は泣く泣く指揮を輸送艦でとることとなった。
いましばらく輸送艦暮らしは続きそうだ。

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船乗りという職業は休日というものが無い。
一度航海に出るとぶっ続けで働き続け、港に帰ると長期の休暇を満喫するのだ。
一応航海中にも非番の日というのはあるのだが、
何処にいけるでもなく、ただ仕事が無くなる日を指す。
もちろん時代が変わり宇宙航行艦と呼ばれる乗り物になっても同じだ。


私は久々の非番を取り、提督業務を艦長に一時譲渡してきた。
そういえば、何故か私の艦隊には参謀がいない。
艦長らと副官たちが一応参謀扱いになるのだが、私が戦死したらどうするんだ?


本を読むのもいいが、せっかくの非番だ、普段行かないところでも見て回るか。
新しい人員も増えたことだし、探索してみるのも悪くない。
私はいつもの将官服と提督帽ではなく、作業用ジャケットを羽織って部屋を出た。


さて、普段行かないところといえば、格納庫だな。良し行ってみよう。
私は居室から船体後部にある格納庫に向かう。
しかし、誰も私が提督だと気が付かないな。
いつも提督帽を目深に被っているからか?
普通の格好しているはずなのに、変装しているみたいな気になってくる。


格納庫はR機が待機しているハッチと、後方の整備ドック、弾薬庫からなり、それらに付属するパイロットのブリーフィング室、シミュレーター室などがある。
この輸送艦はそもそも輸送任務なんてほとんど行わないので、ほぼR機専用になっている。
ちなみにフォースは隔離区画にコントロールロッドを天井に向けて固定されている。
フォースが禍々しいという人もいるけど、私にとってバイドに対する希望の象徴だし、純粋に美しいと感じる。


ブリーフィングルームではガザロフ中尉とマッケラン中尉が事務処理練習をしていた。
なぜか発声から練習をしており、副官の心構えと書かれたホワイトボードがあった。

「常に胸を張って、姿勢正しく!」  
「報告は発声を正しく、良く聞こえるように!」
「服装はいつ何時呼び出されてもいい様に!しっかりと!」 

もっともだがそこじゃないぞ、マッケラン。
なぜ、形から入るんだ。
私がガザロフ中尉に教えて欲しいのは、
事務処理の優先順位とか、書類の通し方とか、チェックの仕方とか、そういうこまごまとしたコツだ。
…心の中で突っ込んだものの、異様な空気だったので、つい無視してしまった。
すまない、ガザロフ中尉。


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しばらく歩いていくと弾薬庫の前に、巨大なコンテナの山があった。
「ペイント弾頭。第二次ペイント弾祭り資材のため使用禁止! 整備班長」
アレか。ペイント弾祭りってなんだ。しかも第二回って…
もしかして“シヴァ”襲撃事件のが第一回にカウントされているのか?
第二回は模擬戦の類と思うが、ペイントを落とすのは整備斑なのでは?
自分で自分の仕事を増やしてどうする。何を考えているのか。


POWアーマーだった。なぜか磨き上げられてピカピカだ。
補給機POWアーマーは第一次バイドミッションから現在まで現役のもっとも歴史ある機体のひとつだった。
ぼんやり見上げていると、後ろから声をかけられた。
「若いのにPOWに興味があるとは感心だ。」


振り向くと、油だらけの作業着に、白の入り始めた髪を短く刈った、妙に存在感のある中年男性だった。
「見慣れないが、補充された技術士官かなにかか?」
「補充された訳ではないのですが、私は…」
「名前なんていらんいらん。どうせ士官の名前なんて覚えてられん。オレはここで整備班長をやっている。おやっさんと呼ばれているな。おやっさんていうのは伝統的に整備班長のことを指す敬称だ。こう呼ばれて初めて整備員をまとめられるんだ。」
聞いていないのに一気にしゃべられた。
しかし、補充士官って…、ああ士官服のズボンに作業ジャケットだからか。
ちなみに私は部屋着以外の私服はこの艦に持ち込んでいない。
私服なんて着る機会がまったく無いからな。


「そうですか…。気になったのですがなぜPOWアーマーだけピカピカなのですか?」
非番かつ相手が明らかに年上なので敬語を使っておく。
「機体はPOWに始まってPOWに終わる。POWほど美しい機体はない!」
渋いミドルからいきなり電波を受信したようなテンションになった、おやっさん。
はぁ、と間の抜けた相槌しか打てなかった。
「そういえば、POWアーマーの上位互換機種が開発されているらしいですね。」
とりあえず、食いつきそうな話題を振ってみる。
POWの互換機種として開発中のサイバーノヴァだ。機動力の高いR機に合わせて、機動性を高くした機体だ。命綱のデコイはそのままだが、意外と空間を取る情報網介入システム…いわゆる占領機能はオミットされるということ。実戦投入はまだだがすでにテスト機が実働しているらしい。
「ほお、若いの、良く知っているな。」
「立場上知らないといけないので。」
苦笑しながら言う。おやっさんの中で私は新米技術士官と決定したらしい。
まぁ、面白そうな人だからそのままでいいか。
いつの間にか私とおやっさんは工具箱に座ってPOWについて語っていた。
おやっさん仕事はどうした。


「まだ若いな!POWの魅力はあの潔さだ、補給機能にデコイ徹底して戦いを避けつつ最前線へ進むあの姿…それがPOWだ!」
おやっさんがつばを飛ばしながら語る。
おやっさんと私はかれこれ2時間ほどPOWアーマー談義を行っている。
いつのまにか整備員のギャラリーが集まり、なぜかコーヒーや茶菓子まで用意されている。
「しかし、おやっさん。サイバーノヴァの利点である機動性も捨て難いぞ。補給機が動ければ、その分R機は前線との往復距離が減り、時間当たりの戦力が増強されるだろ。」
もはや、敬語でなくなっている私。
なんか地が出ている気がするが、どうせ非番だからいいさ。
しかし誰も自分達の提督の顔を知らないらしい。
まぁ、誰も整備ドックの片隅で作業服着た提督がいるとは思わないか。
「POWの造形美を見ろ。あのセンサー、つぶらなキャノピー、無駄を廃した優雅な曲線を!」
おお。という感嘆の声が聞こえる。
もはや、会話でなく演説に近くなっている。むしろ新興宗教のたぐいか。
整備員という人種はかくも変態でなくてはなれないのか。


「班長~。酒保の使用許可くださ~い。」
若い整備員がボード式データ端末を持ってやってきた。
「ちょっといい?」
整備斑が盛り上がっていて気づいていないので、ちょっと見てみる。
どうやら職場の長に酒保の時間外利用許可を取りに来たらしい。宴会か何かだな。
これから、会計担当と酒保担当に交渉しに行くのだろう。
会計は強敵だ。私にだって食らい付いてくる。若い兵には厳しい戦いだ。


私は、端末のカードリーダーにIDカードを通して、引き上げ処理をしてから端末を返した。
整備員はちょっと驚いた顔してから、ありがとうございますといって走っていった。
一次許可者が提督なんだから、会計・酒保担当もすんなり通るはず。
この前補給したばかりで余裕もあるからな、これくらい良いだろう。



私は、何か熱血している整備員たちに声をかけてその場を辞した。
中堅の整備員が「おう、兄ちゃんまた来いよ。」といっていた。
もはや何も言うまい。
この雰囲気は嫌いじゃない。また来てみるか。


___________________________________


翌日
「提督!おはようございます!指示をどうぞ!」
ガザロフ中尉が恥ずかしそうに大声、かつ熱血気味に副官業務していた。
後ろでマッケラン中尉がうんうん頷いていた。
私は穏やかに笑って、二人におやっさんのところで一日働くように命令しておいた。
おやっさん、人が足りないとぼやいていたからな。

さぁ、次は火星だ。





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あーあーあー、やらかしたので修正しました。

修正前は駆逐艦には積載機能がないと自分で書いておいて、
この話の舞台を駆逐艦内に設定していました。
積載機能が無いのに、整備がいたり、POWがいるとは是いかに?

ご指摘ありがとうございました。
きっと作者はバイドから精神汚染を受けていたんだネ。
新たな矛盾が発生していないかビクビクしている作者からのお詫びと言い訳でした。


そういえば副官のアッテルベリさんを登場させ忘れていました。
影薄いからしょうがないよね…



[21751] 6 提督と火星基地
Name: ヒナヒナ◆2a9fd0bf ID:ec2c350f
Date: 2010/12/16 21:54
・提督と火星基地


輸送艦の船外カメラの映像に火星が映る。
火星は革命軍が発足した火星都市グラン・ゼーラを擁する惑星だ。
「火星に特別感じるところはないな」と呟いたら
副官のアッテルベリ中尉に小官もですと呟き返された。ちょっとびびった。


このアッテルベリ中尉は格納庫に一日修行に出ているガザロフ中尉とマッケラン中尉の代わりを務めている。
ともかく影が薄い男だ。何でもそつなくこなすし問題があるわけでもないのだが…


そもそも月面演習後に配属される予定だったのだが、
彼の乗る輸送艦が予定時間に遅れたことと、人事担当すら彼が来ることを忘れていたため、配属しそこなったとのことだ。
私も月面演習後、副官が補充されるとは聞いていたのだが、同じく前々回の演習で置いてけぼりを食ったガザロフ中尉が配属されたため、もう一人副官が補充されることに気が付かなかったのだ。


その後、私の艦隊を追って、補給艦に乗って追いかけてきて
つい先日の補給の際に私の艦隊に副官として着任した。
…しかし、この艦隊に副官3人とか必要あるのか?
まともに戦艦を運用するような艦隊なら分かるのだが…
まったく本部の考えることは分からない。


ちなみに、アッテルベリ中尉が乗ってきた輸送艦から、シューティングスターの後継機である中距離支援機Rwf-9DH ‘グレースノート’を5機まわしてもらった。

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さて今回は火星基地チューリンの攻略戦だ。
目標チューリン基地火星地下にある軍事基地で、地上構造物もあるが、
機能の大半が地下にある広大な洞窟にある。
地球連合の基地だったが今はグランゼーラの手に落ち、敵勢力圏となっている。


私達は注意深くチューリンに進入した。
今回の相手は亜空間機をもたないグランゼーラ軍であることと、
狭矮な回廊が続く地形ということで、やっぱり輸送艦での作戦行動となった。
今回の指令では敵戦力ヴァナルガンド級の巡航艦を撃退せよとの命令を受けている。


「提督…作戦地点に到着しました。ご命令をどうぞ。」
「今回の目的はチューリン基地の奪還だ、前衛をデルタ隊、援護をシューティングスター隊・グレースノート隊、後衛を旗艦ヨルムンガント級輸送艦として当てる。」

通路にはバリケードが築かれており、敵本隊がいると予想される地点には迂回しないといけない。アッテルベリ中尉から情報が入る。
「あのバリケードは波動砲ならば破壊可能であるようです」
「あの独特の発射音は良く響くから敵に気付かれる可能性がある。こちらの意図を読まれて、無チャージ状態の機体を待ち伏せされたら無駄な犠牲が増える。今回は迂回路を取る。」


私の艦隊は隊列を組み、チューリン基地の内部に潜っていく、
そうしてチューリン基地の底に到達する。直前にレーダー反応を感知。
アッテルベリ中尉が淡々と報告を続ける。

「敵機を発見しました。POWアーマー1、デコイ判定不明」
「デコイの恐れがある。接触せずに撃破せよ。」
敵POWアーマーはフォースに接触しても攻撃をせず、ただ浮いている。
おそらくデコイだろう、そこまでの脅威はないが、自爆されるとやっかいなので、ミサイルなど遠距離から攻撃させた。前衛組のミサイルが直撃し、POWを破壊する。
「敵POWアーマー撃墜、後方に人型兵器アキレウス、POWアーマー発見。」
「この先には基地司令部がある。敵を撃破し、補給基地として占領する。」
POWアーマー破壊のため接近し過ぎていたデルタ各機は、近接戦闘専用機体であるアキレウスの姿を認めると、散会して後退していた。
しかし、地下通路が狭いため後退速度が鈍っていた。爆発が2つディスプレイに写り込む。期を逃さずとアキレウスが一気に詰めよりデルタを撃墜したようだ。
2機を犠牲にデルタは後退し、輸送艦に着艦した。
「デルタ補給に入ります。シューティングスター隊が前進、波動砲発射しました。」
「POWを出せ、基地指令部を解放せよ。」
「基地の開放に成功しました。提督、指令部に立てこもっていた連合兵がいたようです。グレースノートで参戦する許可を要求しています。」
「許可する。前面の人型兵器を撃破せよ。その後各機に基地、輸送艦で一時補給を行わせよ。」


アッテルベリ中尉は表情が無い顔で、淡々と報告するし、私も基本的に感情を表さないタイプだ。もちろん司令官なので多少士気高揚のために演技はするが、基本表情は固定だ。
音量を絞った外部マイクからは、ひっきりなしに爆音や波動砲の音が聞こえるが、私とアッテルベリ中尉はひたすら淡々と指揮を続ける。
空気というのは伝染するもので、初めは叫ぶように報告していた、通信係りや、艦長達も怒鳴るのをやめて淡々とし始めた。
戦闘中の指揮所とは思えない落ち着きすぎた空気。
シュールな空間だ。


「提督、目標捕捉しました。ヴァナルガンド級です。」
「うむ、あの位置は不味いな。デコイでつり出せ」
最奥に待機していたヴァナルガンド級を発見、輸送艦のデコイを使っておびき出し、クロスファイア地点に誘導する。グレースノート隊が敵の索敵外からの波動砲で艦首砲を黙らせる。そしてデルタ隊、シュティングスター隊なども波動砲をぶつける。、
ヴァナルガンド級は黒煙を吐きつつチューリンの底に墜ちた。
R機の通信からヒャッハ-とかヒーハーとかネジが飛んでそうなセリフが聞こえたが、それに便乗するには指令室の空気は冷え切っていた。


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敵巡航艦ヴァナルガント級の武装解除を行っていた。ヴァナルガンド級は撃墜された時、低空にあったので、乗組員は比較的無事で捕虜として捕まえた。正直捕虜は扱いが難しいし、面倒なので取りたくないのだが、逃がすわけにもいかないし殺すわけにもいかないので、私の隊で預かる形となった。
ヴァナルガント級は多少修理すればまだまだ使えそうなので、修理させている。


しかし、どうにかこの副官の無表情を変える事が出来ないだろうか?
能面のような顔という比喩があるが、
アッテルベリ中尉の場合は適切ではないだろう。
能面は笑っていたり、憤怒であったりといった感情を表しているものが多いように思う。
彼の場合は何を考えているのか、これっぽっちも分からない。


チューリン基地の回復作業中に、無表情副官のアッテルベリ中尉が呼びに来た。
なんでも、私に捕虜の対応を決めてほしいとのことだった。
捕虜の中で最高位の比較的若い少佐(敵方の提督・艦長らは戦闘中に死亡したらしい)が型通りに「自分が責任をとるから部下の処遇は…」みたいなことを言っていた。
まぁ、普通に監視をつけて後方基地に輸送するのがいいだろう…と思ったが、
その前に、ここはひとつブラックジョークを…


「拷問だ ともかく拷問せよ。」
ぼそっと隣に立つ副官のみに聞こえるように呟いてみた。
これなら嫌悪なり、驚きなり表すだろう。横に立つ副官の顔をちらりと見る。
「了解しました。では自白剤と鞭と蝋燭の用意を…」


待て!何を了解してる!?
というより鞭って何だ?
いつの時代だよ?
そもそも、艦内にそんなものないだろ!
あれ?…もしかして私物?私物なのか!?
誰かの部屋の前を通ったら、音とか聞こえてきたらどうしよう?
よし、アッテルベリ中尉の部屋は、他の士官とは隔離だ!
蝋燭は他の用途があるけど、
そもそも、一部区画を除いて宇宙航行艦は裸火禁止だから!
スプリンクラー回るし!
はっ、まさかその行為は、格納庫とかで行われているのか?
そんな!開放空間でなんて怖すぎるぞ。
うっかり見てしまったらトラウマ間違いなしだ。
自白剤だって普通艦隊には無いだろ!
そんなのを使うのは、諜報部隊か、Team R-TYPEくらいだろ!
ま、まさかアッテルベリ中尉はあの狂科学者達の仲間なのか!?


一瞬の内にそんな考えが浮かび、混乱と妄想で真っ青になる私。
それを見てアッテルベリ中尉が、例の感情のない顔で聞いてくる。
「提督、お疲れなら小官のほうで処理しておきますので、お休みになられた方が…」
「い、いや!冗談に決まってるだろ。アッテルベリ中尉。彼らには条約に基づいた処遇を!」
処理って何だ。そんな考えを振り払い、
早クチで改めて命令する。
うっかりするとこの副官は実行してしまいそうだ。


それから、私は怒涛のごとく基地機能の回復や、捕虜の輸送、艦艇・R機の修理について命令を出した。
とくに、捕虜の処遇には気をつけて丁寧に扱い、早急に後方基地に送った。
落ち着くと、余計なことを考えてしまいそうだった。


基地機能の回復と艦隊の整備に数日間チューリンに留まったのだが、
私は寝不足と、過労で寝込んだ。


_____________________________________________


私が目を覚ますと、金縛りのように体が動かない。声もなぜか出ない。
首だけ巡らして周囲を見ると、そこは私の居室ではなくどこかの基地の一室みたいだった。
金縛りと思ったのは、手術台みたいなものに四肢と首を固定されているせいだった。
どうにかならないかと拘束をはずそうとしたり、助けを呼ぼうとしたが無駄なようだ。
頭がクラクラする。体が火照って熱っぽい。
どうして、こんな場所にいる。
私は疲れが溜まっていたので居室で早々に休んだはずだ。
それからの、記憶が無い?
グランゼーラの残党に拉致されたのだろうか?
いくら疲れて寝てても、拉致されて起きないほど私は鈍感ではないぞ。どうなっている?
遠くから規則正しい足音が近づいてくる。
救援か?マッケラン中尉かガザロフ中尉が気づいてくれたか。
それは扉の前で止った。
扉が開き現れたのは助けでなく、何故か士官服の上に白衣を着たアッテルベリ中尉だった。
出ない声にイライラしながら、アッテルベリ中尉を見やる。
アッテルベリ中尉が無表情のまま、声だけ楽しそうに語りかけてきた。


「おはようございます提督。気分はどうですか?自白剤を使ったので記憶に混乱があるかもしれませんが、じきに薬が抜けますからご心配はいりません。しかし提督、様子がおかしいと思ったら小官がTeam R-TYPE所属だなんて、良く気付きましたね。その推理力は大変すばらしいと思います。しかし、残念ながら我々の研究の障害になるものは取り除かなければなりません。安心してください、艦隊の皆さんには栄転で、本部の所属に変わったと伝えますから。もちろん提督の献身も無駄にはしません、ちゃんと小官が新型試験機のインターフェイス実験に貢献させてあげます。 さぁ、実験開始です。」


私の上にあるライトが一段と明るくなる。
アッテルベリ中尉が私の顔を覗き込むように迫ってきた。
逆光で表情は分からない。
そして、いつの間にか持っていたメスを私の眉間に…


























_______________________________________________


…そんな夢を見た。


起床時間よりだいぶ早い。
ものすごい汗をかいて、気持ちが悪い。口の中がからからで喉が張り付くみたいだ。
しばらくしても体の火照りと眩暈が取れないので、医務室に行ったら、
軍医から過労から来た風邪だから寝ておけば直ると言われて、解熱剤を貰った。
現在、担当の副官はまだアッテルベリ中尉だが、彼に連絡するのは、非常に躊躇われたので、
先任副官ということでマッケラン中尉にメールを送り、ダウンしたことを伝えた。


私はしばらくアッテルベリ中尉を避けつつ提督業務を行っていた。
例の品々を秘密グッズとして、購買の下士官が売っているのを知り、アッテルベリ中尉への疑惑が晴れたのは1週間後のことだった。
しかし、自白剤だけは売ってないみたいなので、恐る恐るアッテルベリ中尉に聞いてみたら、チューリン基地の規模なら、尋問室か医務室に置いてあるとの事だった。
…なぜそんなことを知っていたのか。
また疑問が増えてしまった。





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前回出し忘れに気付いたアッテルベリ中尉の回です。

はい、反省しています。
プロットでは、こんな話ではなかったはずなのですが…
アッテルベリ中尉は空気だったはずなのに、なんか濃ゆくなっちゃった

このまま、
提督失踪→ワイズマン配備→「この機体って、パイロット見ないよね」
っていう流れでも良いような気になったのは秘密です。
ある意味、その方がR-TYPE的には正しいのかもしれないですけど。
結局、話が明後日の方向へ飛んでってしまったので、最終兵器「夢オチ」を使いました。

…ところで、正直この小説って戦闘描写必要ですか?



[21751] 7 提督とグルメさん
Name: ヒナヒナ◆2a9fd0bf ID:ec2c350f
Date: 2010/09/21 22:52
・提督とグルメさん


火星基地チューリンでの奪還任務を終えた我々への次の任務は、
要塞ゲイルロズの奪還だ。
この任務に私は腑に落ちないものを感じた。
何故なら、我々がチューリンを確保している間に、
政治犯収容施設を含む火星都市‘グラン・ゼーラ’が、グランゼーラ軍に奪われたからだ。
惑星の反対側のこととはいえ、火星方面防衛艦隊である我々が、向かうのが普通だと思うのだが、
本部は火星方面防衛の任を解き、わざわざ、木星―土星間にある要塞ゲイルロズの奪還に向かえと言っている。
グランゼーラは外惑星に多くの拠点を持ち、土星圏はすでにグランゼーラの勢力圏内だ。


なぜ、あの時期に演習を立て続けに行ったのか。戦争中にも関わらずだ。
なぜ、元々R機連隊であった我々に不相応な任が当てられるのか。
なぜ、その他の艦隊を差し置いて、最新機が優先的に配備されるのか。
なぜ、極東演習の件や‘シヴァ’襲撃事件での失態が見逃されているのか。
なぜ、小規模艦隊である我々の元に、将来有望な副官が次々に送り込まれるのか。
なぜ、私が准将なのか。いくら戦死者が多いといってもこの若さで将官は異常だ。


これではまるで、英雄ジェイド・ロスの辿った道のようではないか。
本部は、士気高揚のため英雄でも作ろうとしていのだろうか。
そのわりに宣伝工作は行われていないようだし。
一艦隊でちまちま攻撃するより、艦隊を派遣して一気に片をつけた方が盛り上がる。
しかし、各艦隊は地球周辺の防衛任務に就き、守りを固めている。


本部は何を考えているのか?
我々に何をさせたいのだろうか?


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そんなことを考えながら、ガザロフ中尉の淹れてくれた紅茶を飲みながら居室で資料をまとめていた。
…スコーンの山は後で、整備斑にでも差し入れよう。
ここは火星で手に入れたヴァナルガンド級の居室だ。
ヴァナルガンド級は艦首砲のヴァーン砲や各種武装を装備した巡航艦で
ちゃんとR機の積載機能がある。


私の艦隊はそろそろ木星圏に突入しようとしている。
ここに来るまでにアステロイドベルト帯とイオで2戦あった他は今のところ静かなものだ。
要塞ゲイルロズは今まで何回か他の艦隊が攻撃を仕掛けたが奪還できなかった。
要塞の名前は伊達じゃないらしい。激戦が予想される。
そのため、弾薬を節約するために木製の雲の下を通り、グランゼーラ軍から隠れて進軍する。


火星のチューリン基地を出る前にだいぶ戦力強化を行った。
木星衛星イオの地熱発電施設でも、人員と戦力の補充を受けた。
新たな副官と艦長とパイロットチームだ。
新しい副官はディアナ・ベラーノ中尉という大人の魅力を振り撒くお姉さんだった。
彼女は着任そうそうに値踏みするような眼で私の事を眺めていたが、
にっこり笑って声を掛けてくれた事を考えると、彼女のお眼鏡にはかなったようだ。


このヴァナルガンド級を鹵獲したのをはじめとして、
単機での亜空間突入が可能である強化戦闘機Rwf-9Ac ‘ウォーヘッド’を回してもらったし、
木星衛星イオでは対バイド戦において高い攻撃力を誇る火炎武装機Rsf-9Sk1 ‘プリンシパリティーズ’、同型機がバイドミッションへの参加経験をもつ武装試験機RXwf-10‘アルバトロス’を受領した
弾薬も大量に補給した。


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さて、艦隊は木星大気に突入した。この辺はまだグランゼーラの艦艇はいないみたいだ
このまま木星の雲に隠れて行ければいいのだが。…そうも行かないみたいだ。
「提督、バイド反応を確認しました。大赤斑にバイド集団がいる模様です。」
ベラーノ中尉が報告する。落ち着いている。


私は戦闘準備を始めさせる。グランゼーラかと思ったがバイドがいるとは…
第一~三次バイドミッションに参加したようなベテランは人数が圧倒的に少ない。
大概は戦死しているからだ。それだけ以前はバイドの攻勢が激しかった。
我々の艦隊もバイドとの戦闘経験は少ない。私自身もバイド戦の経験はそんなに多くない。


そもそも、バイドとは太陽系外からきた敵性生命体だ。いや生命体なのかも怪しい。そして、生命や人類に対し異様なほどの敵意をもっている。
粒子と波動両方の性質を持ちあらゆるものを取り込み、変質させる。
バイドに取り込まれることをバイド化と呼んでいる。
バイドのもっとも恐ろしいのはバイド化だ。
機械や無機物をはじめ、生物をも取り込みあの生理的嫌悪を催す姿に変えてしまう。
汚染体がひとつ、人類の生存圏に存在することさえ、人類の生存を脅かす。


まずいな、バイドを見て浮き足立っているようだ。
横目でベラーノ中尉を見るとにっこり笑って爆弾を投下した。


「これだけバイドがいると、ちょっと美味しそうに見えてきますよね。」


はい?なんと言いましたか?
緊張を和らげるために言ったのでしょうが、逆にスタッフが凍っている。私も表情を保つのに苦労した。
「あら、冗談ですよ。提督。」
ベラーノ中尉がみんなに聞こえるように言うと、みなホッとしたように動き出した。
うまいな。と感心し、ベラーノ中尉に小声でささやく。
「私の役目を代理してくれて、ありがとう…しかしショッキングすぎないか?」
「こういうものは衝撃が大きいほど効果があるんですよ。」
上目遣いで笑うベラーノ中尉。反則だ。


ショックから立ち直った指令室スタッフが、私の命令に従ってR機に指示を出してゆく。
ベラーノ中尉もその後は普通に報告を行い。補佐してくれた。
ジョークセンスが微妙なだけで、まともな副官だ。
木製の強風に流されないようにしながら、大赤斑に到達する。
さぁ、行こうか。


襲い来るバイドの群れを、波動砲でなぎ払いながらじりじり前進する。艦隊。
再生機構を有するバイドはミサイルやレーザーでは決定打にならず、
直進する通常の波動砲では、すぐに別のバイドが埋めてしまいなかなか、前へ進めない。
その中でプリンシパリティーズは目覚しい戦果を挙げていた。
スクリーンでは豆粒にしか見えないR機が、火炎波動砲を撃つたびに、膨大な熱が生まれ火炎に呑まれたバイドはほとんど形もなく消え去っていく。


じきに、他のR機がミサイルでバイドの動きをけん制し、
プリンしパリティーズが焼き払うというパターンを作り掃討した。
バイドは基本的に戦術を弄することはない。
待ち伏せのようなことはするのだが、こちらの意図を読んで作戦を変えることは無い。
物量や恐ろしさは圧倒的だが、作戦という意味ではやりやすいのが救いだ。
そんなことを考えているうちにプリンシパリティーズがバイドの輸送艦ノーザリーに肉薄している。おそらく、あれがバイドの旗艦だろう。
バイドの例にもれず嫌悪感をもたらす造形だ。
プリンシパリティーズがノーザリーに火炎の洗礼を降らすと、
その外側の装甲が剥離したノーザリーが燃えていく様子が見て取れた。


「焼きノーザリーて、バーベキューのウインナーみたいですよね。」
「ベラーノ中尉、やっぱり…」


普通の副官が欲しい。


_________________________________________________________


ちなみにその夜の夢には、

ファストフード風のカウンターから
「はい、バイドバーガーセットですね。セットメニューはノーザリー串で、お飲み物は地球の水でよろしいでしょうか!」
と、ベラーノ中尉の声でしゃべる、ユニフォームを着たドプケラドプスが出てきた。
とりあえず暫くハンバーガーは食べたくない。




================================
ギャグ路線で書くと、登場人物がことごとく色物になりますね。
ベラーノ中尉もご愁傷様でした。
しかし、基本的にこの小説は提督の妄想日記なので、
実は変人は提督だけで後は普通なのかもしれません。

ちなみに最後のは、某動画をインスパイヤしました。ファストフード店ではないのですが



[21751] 8 提督と第二次基地戦争
Name: ヒナヒナ◆2a9fd0bf ID:ec2c350f
Date: 2010/09/21 22:54
・提督と第二次基地戦争


現在、木星-土星間にある要塞ゲイルロズはグランゼーラ軍に占拠されている。
攻略にあたり木星方面の艦隊との共同作戦に参加するようにと本部から指令が入った。
また、火星基地チューリンの時のように、1艦隊だけで特攻させられるのかと思ったが、
そこまで本部も鬼畜ではなかったようだ。
その作戦の一環として、我々の艦隊は土星宙域に確認された“シヴァ”に似た敵方基地建設システムを破壊する。後方かく乱を行い、ゲイルロズ攻略戦で万全を期すためだ。


土星に向かおうとしていたとき、事故が起きた。
保安のハヤシダ隊員が貯水槽を誤って破壊してしまったのだ。
どうやったら巡航艦の貯水槽を空に出来るのか。…外壁を爆破でもしたのか。
水の補給のために、木星衛星エウロパに寄るはめになったのだが、
水の補給中にグランゼーラ軍と鉢合わせになってしまい。小規模の戦闘が起きた。
戦闘終了後、水上攻撃艦エーギルの設計許可書が送られてきたが、なぜ今更。
本部の考えることは本当に分からない。


戦闘も無事に終わった後に、ハヤシダ隊員に対する処罰を命じた。
宇宙航行中に水槽を破壊とか、テロに匹敵する行為なのだが…
「宇宙空間で水を失うということは部隊全員の命に関わる重大な失態だ。しかし、故意ではなく今までの勤務態度も良いと聞いている。ハヤシダ隊員、反省文の提出を持って処罰とする。詳細は追って通達する。」
ハヤシダ隊員は明らかにホッとした顔になり、それからまた顔を引き締めていた。
あまりに、厳罰を下すと隊員達の心が離れるからな。反省文あたりが落としどころだろう。
…後で、反省文について、期限3日、400字詰め100枚分と通達しておいた。
100枚の反省文とか、どんな作文が上がってくるか楽し…きちんと確かめなくては。


土星宙域に我が艦隊は進軍した。
しかしここまで“シヴァ”と同じものを作るとは…あのファンシー戦闘機のせいか。
あいつのせいで、私のクビが飛びかかったのだ。
この基地建設システムは何があっても破壊する。そう心に誓った。
ちなみに今回の副官は前回“シヴァ”襲撃事件でやらかしたガザロフ中尉だ。
汚名を‘挽回’すると言っていたが本当に大丈夫だろうか。


2度目の基地戦は基地対基地の戦闘になった。
初めこそ、R機が何機か出てきていたが、それらも今はいない。
両軍とも大規模な戦闘を前に、R機や艦艇の消耗を嫌ったからだ。
そういえば、嫌な思い出のあるエクリプス試作機が居たので破壊してやろうとしたのだが…
どこにいったのだろう?





ひたすらに成長した基地が2つ。
敵は前回の教訓から、基地の連結部がネックと判断したのか、複数の連結を持つ一塊のずんぐりむっくり型の基地群を形成した。おそらくあのユニットの塊のどこかにコアが隠されているのだろう。
一方、我々はにょろにょろと3本の枝を伸ばした形になった。この枝を敵コアユニットの側まで伸ばし、その先に陽電子砲ユニットを作成し、敵コアユニットをぶっ飛ばせれば作戦成功だ。


うむ、千日手になった。
我々の基地ユニットの枝はコアユニットにたどり着く前に、敵ミサイルユニットに剪定され、
敵の基地ユニットの塊は射程が足りないため、我々の基地ユニットの基部を断ち切るには至らない。末端のユニットを潰すので精いっぱいだ。
お互いに基地を作っては潰され、潰されは作ってと、暫く続いた。


「何か、打開策がないと…ガザロフ中尉、君の考えはあるか?」
「私の作戦…ですか?」
丸投げではない。私もちゃんと考えた。
ハヤシダ隊員を含む保安隊に白兵武装させて、敵基地に突っ込ませるとか。
突入してすぐに、保安隊のいる基地ユニットを解体・爆破されるし、
他の隊員が可哀想だから、この作戦は私の心の中だけに留めておくことにする。
「提督。基地の連結ユニットの内部をRユニットで進軍、敵コアユニット近くまで一気につめ寄り波動砲でコアを破壊するのはどうでしょう?基地内部は幅ギリギリですがR機が飛べないことはありません。」
「ふむ、このまま敵勢力圏内に長く留まるのは良くないな。やってみよう。」


「全艦隊へ作戦の変更を伝える。R機で基地ユニット内部を通って、敵に肉薄し、波動砲でコアを破壊する。現在、我々の基地ユニットは敵機地コアユニットに向かって、3本の枝の様に伸びている。敵コアユニットがあると予想される座標は3つ、見方基地ユニットの内部をつたって、それぞれコアユニット想定座標付近まで進軍し、波動砲でコアを破壊する。」

私は言葉をいったん切る。指令室内では不安そうな顔がちらほら見える。
しかし幸いにも、パイロットらからダメ出しは来なかったようだ。

「この作戦で使用する基地ユニットの通路について、目標コアの近い順に第一、第二、第三トンネルと呼称する。一番近い第一トンネルはウォーヘッド隊、敵の壁が厚い二番トンネルはグレースノート隊、もっとも遠い第三トンネルは足の速いプリンシパリティーズ隊に任せる。自信の無いパイロットは今すぐ申し出ること………いないな? では、波動砲チャージが済み次第、各自基地ユニットの通路を通って敵コアユニット予測座標に向かえ。」

パイロット達から気合の入った声が聞こえた。
彼らの負けん気に火がついたようだ。
全機、波動砲をチャージし終えてトンネル潜りに向かった。


「第一トンネル、ウォーヘッド隊目標座標を射程に収めました。」
「波動砲斉射!」
第一トンネルの近距離かつ足の早いウォーヘッド隊が目標一番乗りだった。
コアユニット予測座標に波動砲をたたき込むのが見える。
拡散波動砲が目標を包み込むように破壊する。
「波動砲範囲外のユニットは健在。敵コアユニットは他の地点です。」
「次!」

次点は第三トンネル、足の速いプリンシパリティーズ隊が到着した。火炎波動砲は機械にはそこまで効果が高くないが今回は問題ないだろう。
「第三トンネル、プリンシパリティーズ隊目標地点に到着しました。」
「波動砲!」
「基地群健在…こちらも違うようです。」
「第二はどうなった。」
「あと10秒で目標地点に到着します。……グレースノート隊到着を確認。」
「よし、これで最後だ。波動砲斉射!」


グレースノートの長距離射程の波動砲が、基地ユニットの壁の奥にあるコアユニット予想座標を打ち抜く。
一拍置いて、基地群のそこかしこで爆炎が起こり崩壊してゆく。艦橋スタッフも沸き立った。
その光景をみて私は、作るのも壊すのも一瞬のこの基地システムは、破壊と再生の神“シヴァ”の名に相応しい。しかし、このネーミングをした奴はかなりの皮肉屋に違いない。そう思った。


そういえば、あのエクリプス試験機は結局最後まで出てこなかったが、
基地ユニット群の崩壊に巻き込まれたのだろうか?
もし、生き残っていたら、今度こそミサイルでぼこぼこにしてやるのだが…
私は飛び跳ねて喜んでいるガザロフ中尉を横目に考えていた。
ガザロフ中尉。なんでもいいから、早く被害報告あげてくれ。


ガザロフ中尉が戦勝祝いにクッキーを焼いてくれた(いつ焼いたのか?)。
身の危険を感じたので、今日の一番の功労者であるパイロット達にあげても良いかと聞いたら、
快く了承して格納庫に持ってってくれた。危ないところだった。


私は事後処理をして、ゲイルロズに進路をとってから居室に戻り、航海日誌をまとめた。
今日はぐっすり眠れそうだ。



==============================
TACⅡ原作での話しですが、基地ユニットのあるHEXを通過するときは、
デブリがあろうと地形効果無視になりますよね。
あれって、基地内の通路を戦闘速度でぶっ飛ばしていると思っていました。その妄想から出来た話です。
あとは映画大脱走とかエスコンの名物、トンネルくぐりも脳裏に…
ちなみに実際に移動デモを見ると基地通過時もちゃんと外を飛んでいます。



[21751] 9 提督と幽霊
Name: ヒナヒナ◆2a9fd0bf ID:ec2c350f
Date: 2010/12/16 21:55
・提督と幽霊


来るべきゲイルロズ攻略戦に備えるため、今日くらい早めにベットに入って寝よう。
艦隊自体は急がせるが巡航速度なら私が指揮所にいる必要はない。
久々の8時間睡だ…まどろんだ所で携帯用端末から呼び出しが掛かる。緊急用の呼び出し音だ。すぐに覚醒する。端末からのマッケランの声が耳に突き刺さる。
「提督、非常事態です!すぐに司令室に上がってください!」
ハンガーに掛けてある将官服に、提督帽を身につけ司令室に急ぐ。
40秒は切っている。非常召集要員もびっくりの速さだ。非常召集要員は当番制なのに提督は毎回だからな。


「何があった。」
もしかして、ハヤシダ隊員が反乱でも起こしたのか。
それとも、パイロットが全員クッキーに当たったか。
そんな、アホな妄想をしながら、勤めて冷静に振舞う。
指揮官が慌てると伝染するからな。
「提督!ゲイルロズ攻略のために集結していた我が軍の主力艦隊と、グランゼーラのゲイルロズ駐留艦隊が戦闘に入った模様です!」
「主力艦隊が先に戦闘に入っている?我々の到着を待たずにか!?不測の事態か…グランゼーラの駐留艦隊は精鋭と聞く、主力艦隊とて荷が重い。全艦第一戦速。進路、軍事要塞ゲイルロズ!」


要塞ゲイルロズは木星―土星間に浮かぶ巨大な建設物だ。
バイドミッション中には防衛の要として最前線となった要塞である。
大きさこそ冥王星基地グリトニルに譲るが、グリトニルは外宇宙ワープ施設を兼ねているのに対し、軍事基地としてゲイルロズは破格の大きさだ。
我が艦隊がゲイルロズの後方である土星をかく乱し、味方主力艦隊と合流後、
一気にゲイルロズの司令室を奪い返し、開放するという作戦だったはずだ。


私の目の前には味方の艦艇、R機などの残骸が散らばっている。
この残骸は私達が合流するはずだった主力艦隊のようだ。まだ戦闘があって間もない。
敵部隊も被害を出しただろう事が残骸から分かる。
敵の体制を整えない内に突入した方が良いのは分かっていたが、
救難信号が発信されているのに無視は出来ない。
私は各艦に救助を行うように命令した。


敵を警戒しながらの救助は思うようにはかどらない。
旗艦ヴァナルガンドでも生き残りの収容ををしていたところ、レーダー手が報告をした。
「熱源反応多数!」
索敵は出来ない距離だが、グランぜーラの艦艇が見える。
「収容作業は一時中止せよ。戦闘配備!」
ここは士気を上げていかないと持たないな。
熱いのは得意でないけど、ビシッと決めないと。
久しぶりに演説モードに入ろう。そう思ってマイクをもって全艦につなげる。


「ゲイルロズからの攻撃が始まろうとしている。
だが現在、我々に残された力は少なく、ゲイルロズ駐留艦隊の力は強大だ。
それでも我々は戦わねばならない。
なぜなら、我が艦隊は敵に後ろを見せないからだ!
残された戦力を結集して、ゲイルロズに最後の攻撃をかける 。
総員、戦闘開始せよ!」

E・U・F! E・U・F!!


どこかで聞いた演説をもじってみたのだが、意外とみんなノリが良い。
突っ込みどころ満載なはずなのだが、そういう野暮な人間はいない様だ。
主力艦隊が打ち減らしてくれたお陰で、だいぶ敵戦力も減っている。
後は戦意が下がらない内に、突入するだけだ。
「全艦、突入!味方艦隊の犠牲を無駄にするな。」
冷静に、でも士気を下げないように命令を下す。


旗艦ヴァナルガント級で敵やデブリを蹴散らしながらゲイルロズのドックを目指す。
いまさらなのだが、このデブリって味方艦隊の残骸だよな。
進軍の邪魔なので躊躇なく破壊しているのだが、生存者とかいない…と信じたい。
ゲイルロズは3段ドックの先に輸送艦がぎりぎり波入れる位の通路があり、そのさきのメインシャフトを抜けると司令室がある。巡航艦ヴァナルガンドは通路を抜けられないため、ドックまでしか入れない。


よし、ここから煽…指揮をするか。
艦隊司令官のなかにはわざわざ輸送艦を旗艦にして、最前線で指揮を取るものもいるそうだが、わざわざ正面に行くなんて理解できない。
R機も何機か直衛に回さなければならないし、輸送艦なんて波動砲でほぼ一撃だし、戦死したら士気に関わるし、壊走しかねないだろう。逆に邪魔だと思うのだが…。


突入前に煽ったお陰で、R機パイロットたちはいい感じにキマってる。
脳内麻薬とかドバドバ出ているのだろうか、トリガーハッピー風なやつが多いな。
ああはなりたく無いが、はっちゃけられない私としては少しうらやましい。


途中から現場指揮に任せたため、正直余りやることが無くなった。
私の出した命令は単純「1機に、2機以上でかかれ」だ。
戦争は物量が物をいう。不利な攻撃側で、主力艦隊を欠く我々は戦力が小さい。
どうするか、局所的に戦力を集中して、そこだけ物量で勝ればいい。
昔から言われてきたことだが、いまだに有効な手段だ。
フォースやデコイで釣って、出てきたところを波動砲やミサイルでぼこぼこにする。
コツは戦場を限定して余計な敵を呼込まないこと。


突入から3時間に及ぶ激戦の後、司令室を占拠したと連絡があった。
グランゼーラの士気が下がり、一部の敵は脱出を始めたようだ。
我々の戦力では追撃までは手が回らない。


ゲイルロズ奪還後、我々は生存者の救助に向かった。
救難信号がかなり減っている。エアーが持たなかった者や、戦闘に巻き込まれた者…
ゲイルロズの入り口付近で、しばらく、救助を行ったが救助できたのは、
主力艦隊の規模に比べると、生き残りはほんの一握りだった。


その夜、戦勝で沸いた艦内だが、一部では「もうしわけありません」とつぶやくような声を聞いたという者が多数現れた。無念のうちに死んだ主力艦隊の隊員の幽霊だ。などという噂が、広まった。人の出払った居住室のあたりや、その奥の医務室あたりで聞いたという。いつの間にかゲイルロズの幽霊などという名前まで付いていた。なんでもゲイルロズで救助するも死んでしまった主力艦隊の隊員が、自分のミスで死んでいった仲間に「もうしわけありません」と謝り続けていて、自分が死んだこの艦にくっついてきてしまったらしい。
良く考えるものだ。


私も常ならば一笑に付していたのだろうが、実は私も聞いていた。ぶつぶつと呟くような声だ。大勝利に艦内の乗組員のほとんどが酒保や食堂などで盛り上がる中、人気の無い居住区の通路で聞いた。その時は気にも留めなかったのだが、後でゲイルロズの幽霊の話を聞いて、あれがそうかと思った程度だった。


「もうしわけありませんでした…」
「提督、このたびは部下の不始末でご迷惑をおかけし申し訳ありません。」

任務中に貯水槽を破壊したハヤシダ隊員だった。そういえば反省文の提出期限か。
死んだ魚のような目をしたハヤシダ隊員と彼の上官が反省文を提出に来た。
ハヤシダ隊員がやばい感じだったのでとりあえず下がらせた。
反省文100枚分はやりすぎたか。と引きつつメモリーを受け取った。


紅茶を飲みながら、ボード型端末で反省文を読む。
活字中毒というほどではなくても、活字を読むことは楽しい。
さて、どんな反省文になったのやら。
必死に尺を稼ごうとしたのか、事故に至るまでの理由や要因、行動についての考察や、分析が書いてある。刺激の足りない艦内では面白い読み物だと思う。
謝罪文が20枚分くらい続いた後、突然

もうしわけありませんもうしわけありませんもうしわけありませんもうしわけありませんもうしわけありませんもうしわけありませんもうしわけありません…

ホラー小説か。
たまに誤字がみられるので、コピー&ペーストではなく真面目に打ち込んだのだろう。
400字詰めで80枚分…10文字なので、3200回も書いたのか。
端末に、もうしわけありません。と延々と打ち続けるハヤシダ隊員…
怖すぎる。


後でマッケラン中尉にハヤシダ隊員の部屋を調べさせたら、
ゲイルロズの幽霊出現スポットの真ん中だった。


ゆうれいの しょうたいみたり かれおばな



===============================
ゲイルロズ攻略という重い話に耐え切れず、
つい出来心で、地球防衛軍3ラストの演説パロりました。
しかしおかしい、序盤の難関ゲイルロズが空気だ。

本日の睡眠時間は30分だったので、
8時間睡眠の提督いいなと思って書いてました。眠い

今更に、提督とか司令官が戦闘指揮する場所は艦橋ではなく指令室ではないかと、
思い立った。修正してきます。



[21751] 10 提督と思い出話
Name: ヒナヒナ◆2a9fd0bf ID:ec2c350f
Date: 2010/09/27 23:39
・提督と思い出話


要塞ゲイルロズを奪還したのもつかの間、報告書を上げるとすぐに次の指令が届いた。
土星内部でバイド反応が確認されたので、その確認と、バイドが確認された場合は撃破せよ。というのが内容だ。
まぁ、バイドをほうっておく訳にもいかないし、土星に一番近い舞台は私達だから仕方が無い。
グランゼーラ軍の中核であったゲイルロズも奪還したし、あと一押しで休戦に持ち込めるだろう。
いっそ、戦争が終わったら退役するか。


ところで、地球連合軍には提督は退役できない。という恐ろしいジンクスがある。
連合軍では40歳過ぎのベテラン将兵は貴重な存在だ。
これは、かつてバイドの攻勢の激しかった頃、多くの艦隊が壊滅し、
現場の将兵のほとんどが戦死したためだ。


当時の艦隊司令官らは、自分達の命を含む全ての戦力の投じて地球を守りきったが、
その代償としてバイド反攻作戦であるバイドミッション発動までに、
地球連合艦隊はその戦力の7割を喪失した。
軍は数度に及ぶバイドミッションを発動。バイド中枢へ攻撃を行った。
損害は大きかったが一時的に地球圏へのバイドの圧力を減じることに成功。
その機を逃さず地球連合軍は軍の再編成を行った。


防衛線の内側である木星以内では工廠などの設備被害が軽微であったため、艦艇やR機は比較的早くに補充できた。
またこのとき、主力戦艦ヘイムダル級を基に改良したテュール級、新たに設計したヨトゥンヘイム級などの戦艦を開発している。
このとき艦隊の無人化などの案も出たそうだが、バイドの無機物、特に機械類への侵食の早さはすでに知られていたため、却下された。
無人艦隊がそのまま敵に回ることを危惧したためだ。
当時すでに、人間やその他の高等生物は比較的バイドの侵食に抵抗性があり、低濃度であればバイド汚染下での一定時間の暴露に耐えるという結果が、Team R-TYPEからもたらされている。これは人間が運用する機械類にもなぜか適用されるらしい。
…どうやってそれを調べたんだ?想像できるけどしたくない。


しかし、艦艇を運用するには経験が物をいう。
艦艇は揃ってもそれを運用する将兵が圧倒的に足りなかった。
実戦経験のある将官はほとんど戦死し、残っているのは新兵、事務要員、予備役ばかりといった有様だった。
このため、軍は指揮官養成プログラムを作成し、指揮官の急造を図った。
新兵の中で適性があるものに、このプログラムを受けさせ、小規模部隊で経験を積ませて急造の指揮官としたのだ。
‘若き英雄’ジェイド・ロスもこのプログラムで指揮官教育を受けた提督だ。

現在、艦隊司令艦は現場各地を渡り歩いたベテランではなく、技能職となっている。
私の頃には士官学校に入ると適正を判断し、入隊と同時にプログラムを受けるようになってた。


私ももちろんこのプログラムを受けて指揮官になったわけだが、英雄ジェイド・ロスにあこがれていたので、自分に指揮官適正があることが分かったとき本当にうれしかった。
その時から私の「クールでカッコいい指揮官になろうぜ」作戦が始まったのだ。
…決して無個性すぎると教官に言われたから、人格改造に走ったわけではない。


まず、第一条件であるちょっとやそっとでは動じない度胸を身につけようと、私が思い立ったのはバンジージャンプだった。その発想はどうかと自分でも思うが、当時はいい考えだと思っていた。私は休日ごとに各地にジャンプしに行き、ついには表情を変えずナチュラルにジャンプできるようになっていた。
同期達に「クレイジージャンパー」だのと恐れられたが、
クールな指揮官はそんなことを気にしてはいけないのだ。

またあるときは発声練習を行っていた。
指揮官に必要な技能として、部下を命令する技術が必要と考えたのだ。
このときマッケランの様に大声ではなく、威厳があって、安心する声であることが重要だ。早口でも聞取りやすく記憶に残るように話さなければならない。怒鳴るなど論外だ。
この時期は隣室の同期達に避けられていた。
クールな指揮官はそんなことを…

またあるときは演説を聞きまくっていた。
指揮官は隊の士気を高めるために、部下を鼓舞することも重要だからだ。
伝記物を読み漁り、演説シーンのある映画やマンガを見て勉強した。果ては街頭演説を聞いたりしていた。反政府派の演説を聞いていたことがばれたときは、さすがに教官に怒られた。
しかし理由を説明したら、すごく微妙な顔をして納得された。「ミスターマイウェイだからなぁ」
クールな指揮官は…

またあるときは、整備科の授業に紛れ込んだ。
艦隊指揮官は各種兵装の運用に詳しい必要があると思ったからだ。
運用に整備の授業はあまり必要ないと思うが、当時の私はそうは考えなかったようだ。
実技前の教官の手本や説明を聞いていたが、一度こっそり実技も参加してみた。
そのときは整備実習で、皆でPOWアーマーを一度バラして、組みなおすというものだった。
不慣れでチームにかなり迷惑をかけたが、終わる頃には何故か仲良くなっていた。
整備科の連中曰く、「機械を愛する熱い心を持っていれば通じ合える」とか言っていた。
POWアーマーに愛着が沸いたり、ドックの機械油の匂いが好きになったりした。
ちなみに私は普通にしていると存在感が無いため、最後まで他兵科の訓練兵であると気付かれなかった。
クールな…


座学やシミュレーションなどの実技も妥協せず、同期では一二を争っていた。
その代わり射撃や、白兵といった科目は常に赤点だった。体力は人並みには鍛えているし、鈍くさいわけではないので、適性とやる気が無かったせいだろう。
ついでに、一人称は「俺」から「私」に改めた。今では私生活でも「私」だ。


ちなみにその後、輸送艦部隊の副官として配属された。
危険の小さい後方部隊で、経験を積ませるためだ。
書類事務は出来る方だったので問題なくすごせたが、現実を知りへこみ、
着任して1年で、はじめの理想もどこへやら、思いっきり腐っていたわけだ。
後方部隊のせいか規律も緩いし、おまけにその頃はバイドの襲撃自体が減っていた。


指揮官候補は、左官までは階級が上がるのが異様に早い。
転任を何回か経験して、階級も上がり、部隊をまとめる立場になった。
相変わらず、やる気の無さを引きずっていたわけだが、
士官学校で身に付けたスキルで、表向きはクールな指揮官だった…はず。


――――――――――――――――――――――――――――――――――


柄にもなく昔の事を思い出していたのだが、
現在、私の艦隊は廃棄された土星基地、グリーズに来ている。
内部からA級バイドの反応が検知されたのだ。
今日の副官アッテルベリ中尉に命じて、考えられるA級バイドを検索させたのだが。
検索結果で一番確立が高いのは…

生ける悪夢“ドプケラドプス”

もはや、バイドの代名詞として伝説的とさえ言える存在だ。
私は‘若き英雄’にあこがれて軍人になったが、今までその夢を諦めていた。
決してバイドの来訪を望んでいたわけではないが、
人間とではなく、バイドと戦えるならば軍人冥利に尽きる。
もしも、相手が生ける悪夢であるならなおさらだ。
そう、つまり今まで人間相手だったり、理想と違ったりで欲求不満だったが、
やっとクールでかっこいい提督になれる時が来たのだ。

「さぁ、行こうか。」

部下達にというより自分自身にそう言って、私は悪魔の巣穴に艦隊を進めた。





==============================
あれ?また分割だ。もはや短編連作とか嘘ですね。
次回はみんな大好きドプケラさんですが、
提督がギャグ要員を離脱してしまいそうな流れなので、
オチを模索中です。また、マッド・アッテルベリか?
全然R機の出てこないR-TYPE二次とか、本当に誰得小説ですね。



[21751] 11 提督と土星の悪夢
Name: ヒナヒナ◆2a9fd0bf ID:ec2c350f
Date: 2010/12/16 21:59
・提督と土星の悪夢
 ※今回ギャグ分が足りていません。


「さあ、行こうか」


その言葉を合図に、土星の放棄基地グリーズへほぼ全艦を突入させた。
輸送艦1隻と数機のR機は入り口に残した。退路を経たれない為だ。
この基地の最奥「大広間」からバイド反応があるのだが、そこをA級バイドに塞がれている場合に袋小路になってしまう。


今までのデータによると、A級バイドは大型化しているものがほとんどだ。
大型化に伴い、攻撃の威力や射程距離、耐久力が大きいことが予想される。
一撃必殺の波動砲をもってしても、数回の斉射が必要になるだろう。
そんなことを考えながら地獄の門をくぐった。


________________________________


基地グリーズの内部は廃棄基地とは思えないくらいにきれいだった。
きれい過ぎる。廃棄された基地ならもっとガラクタなり何なりがあるはずだ。
索敵には掛からないが、バイド反応から見るに小型のバイドもかなりいるようだ。
基地と同時に廃棄された兵器類はバイドに侵食、取り込まれたのだろう。


「提督、全艦突入完了を確認。戦闘はいつでも可能です。」
「R機部隊を出せ。ミッドナイトアイは先行して索敵。ウォーヘッドはチャージ後亜空間潜航し、強行偵察を行う。他のR機はチャージして待機。」
索敵を行わないことには動けないので、慎重に索敵を行うように指示。
この奥にはA級バイドがいる。ここは拙速よりも巧遅で動くべきだろう。
ちなみに、今回の副官はアッテルベリ中尉。私はベラーノ中尉にしようと思ったのだが、基地グリーズの攻略とA級バイドのことを耳にしたアッテルベリ中尉が志願してきた。普段は目立つことをしない男なのだが、珍しいことだ。


「提督、小型バイドを発見しました。リボーとピスタフともに多数です。」
「索敵は続行。小型バイドには先行のR機とフォースで当たらせよ。」
波動砲はまだ温存しておくべきだ。
もともと、戦闘能力の乏しい小型バイド達はフォースに次々と飲み込まれていく。
とくにRXwf-12‘クロス・ザ・ルビコン’のテンクタルフォースの威力はすばらしい。
触手型のコントロールロッドという異様なフォースだが、小型バイドと誤認しかねないほどバイド係数を高めてあり、攻撃的だ。
またしてもTeam R-TYPEから送られてきた機体とフォースだ。
ちなみに、あまりにR機ばかり送られてくるので、「ハンガー無いから戦艦くれ」と連絡したら今度型落ち戦艦のへイムダル級を回してくれる。とのこと、なんで研究機関が戦艦を所持しているのか…
R機でもルビコンでなくアウルライトをくれ。偵察機は消耗率が高いんだ。
しかしまぁ、せっかく貰ったことだし使えるものは全て使うこととしよう。
…しかし、不穏な名称だ。Team R-TYPEの悪趣味は今に始まったことではないが、彼らはルビコン川の彼岸に何を求めているのか?


小型バイドをあらかた片付け、前進する。
「ウォーヘッド各機、チャージ完了しました。亜空間に潜航します。」
「ウォーヘッド各機は敵機との接触に注意して先行偵察。全艦微速前進。索敵範囲から飛び出さないようにしろ。」


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「この辺には基地の防衛システムがあったはずだが…」
内部に進入する外敵を殲滅させる軌道砲台があったと資料にはある。
「提督、A級ではありませんが大型バイドがいます。名称ゴンドラン、弱点は青く発光するコアです。」
アッテルベリ中尉が検索もかけずに報告する。バイドマニアなの?
画像には通路の内壁を回る蛇のような砲台ユニットが見えた。
コアの後ろに数珠繋ぎに砲台ユニットが連なっている。
「あの砲台群の内側は集中砲火を浴びます。無視しての通過は難しいと思います。」
「コアさえ破壊すればいいか。こんなところで油を売るわけにもいかない、チャージの済んだ機体で一気に破壊だ。」
グレースノートで外側から一斉射を浴びせるとコアが砕けて、後に続く砲台群も爆散した。
早期警戒機を先行させ、雑魚を掃討しながら慎重に進軍した。


__________________________________


タブロック、ゲインズを片付け、大広間の前まで来た。
この通路をくぐれば、A級バイドの反応のある広間だ。
「R機で突出すると総攻撃に合う。ウォーヘッド亜空間索敵。大広間のA級バイドについて偵察を行え。」
「艦隊は大広間入り口まで前進、索敵を待つ。…一応デコイ艦を先行させろ。」
輸送艦のデコイを前面に出し、陣形を組んで前進した。


「提督、デコイ輸送艦消滅。何らかの攻撃を受けた模様です。」
「この距離から?デコイを一撃だと!?全艦停止。」
旗艦のヴァナルガンド級が大広間への通路に差し掛かったときだった。
先行させているデコイ艦が大広間の入り口付近を底面に沿って通行中に一瞬で破壊された。
ギリギリまで進軍するつもりだったが、思ったより近くにバイドがいたか。
そう思ったときには次の報告が来ていた。
「ウォーヘッドより通信、巨大バイドを感知。広間最奥の壁一面にいる模様。バイド照合結果でます……! 提督、“ドプケラドプス”です。」
「ドプケラドプス…」
さしものアッテルベル中尉も一瞬声を詰まらせる。
もしやと思っていたが、本当に生ける悪夢とは…。


「映像来ます。」
亜空間偵察特有の揺らぎと色調の画像には、大広間に悠然と君臨する生ける悪魔が写っていた。
長い2本の尾をくねらせている。どうやら底面沿いに移動していたデコイ輸送艦はこの尾に破壊されたらしい。過去の戦闘データでは頭のように見える器官と胸部の器官は砲台となっていて、コアではないはず。コアは…

「提督、過去の戦闘データから、ドプケラドプスのコアは腹部にある可能性が高いです。」
「尾や、頭部の砲撃を避けながら、腹部に攻撃か…難題だな。」
アッテルベリ中尉、またも検索もしないで弱点を即答とは、本当に博識だ。
「アッテルベリ中尉、過去のデータと索敵結果、あとデコイ艦の攻撃された状況から、ヤツの攻撃範囲を割り出せ。」
「了解しました。メインディスプレイに反映します。」
「っ!広いな。コアに攻撃するには懐に飛び込まなくてはならないが…」
頭部、胸部の砲台の射程範囲は思いのほか広く、並みの機体では近づく前に攻撃される。
一斉射では斃しきれないだろう。つまり、懐に飛び込めば頭部・胸部砲台、コアからの攻撃にさらされることとなる。
A級バイドの攻撃力は大きい。全滅はしなくとも、何機かは帰還できなくなるだろう。
「アッテルベリ中尉、君はバイドについての情報に強いようだ。正直私より詳しいだろう。ヤツの攻撃を掻い潜りつつ、波動砲を打ち込む方法はあるか?」
「小官のですか?」


考えだす副官を見やりながら、他の副官達の反応を想像してしまった。
マッケランは前のめりに突貫を進言するな。無謀ってわけではないんだが正面にこだわる。
ガザロフ中尉は少し考えた後、いいアイディアを出し、それを上回るポカをする。
ベラーノ中尉は…美味しそうって言うのかなぁ、正直今は聞きたくない。
私は…デコイで少しでも砲台の注意をそらして、腹部に強行するくらいか。情報が足りないな。しかも確実にパイロットの何名かは死ぬだろう。死ぬのが前提の策はもはや特攻だ、作戦とは呼べない。


「提督、ディスプレイを。」
「先ほどの射程範囲図だな、」
ものの数十秒だったが、アッテルベリ中尉が考えをまとめたらしい。
促されて、私はサブディスプレイを見る。どうやらこの少しの間に、データを打ち込んでいたようだ。
「はい、ドプケラドプスは上方の頭部砲台、中層は胸部砲台の射程範囲が広がり、迂闊には近づけません。コアも広範囲を巻き込むドプルゲンMax-Oと呼ばれる兵器を所持しています。よって、残る下方から進撃し、コアに攻撃を与えます。」
「しかし、アッテルベリ中尉。床近くは尾に攻撃される。デコイとはいえ輸送機を一撃で粉砕する威力だぞ、R機ではひとたまりもない。」
「いえ、あれは厳密には攻撃ではありません。多少複雑ですが規則的な機動を描いています。頭部や胸部と違い能動的には動きません。」
「尾の機動を読んで、避けながら進軍し腹部コアに波動砲を撃つという意見か。」
「ええ、尾の軌道データを入力しました。これをR機に転送すれば、少し先の予測位置を表示できます。また、コアの広域兵器の方もチャージ時間がかかりますし、射線は固定されているようですのでデコイでの空撃ちか、範囲外からの攻撃でチャージキャンセルさせれば良いと思います。」
「ふむ、君のお陰で部下に死ねと命令しなくて済みそうだ。全R機に軌道予測データを送信してくれ。」
「はっ。」


指令席のマイクを握る。実はピンマイクもあるのだが、私は全軍に命令を伝えるときには手持ちのマイク(有線で無駄に丈夫に作られている)を使用することにしている。昔の記録映画でみたシーンがなんとなくカッコよくて、真似しているうちに癖になってしまった。


「全軍、現状を維持したまま聞いて欲しい。作戦を伝える。分かっていると思うが今回の敵は生ける悪夢“ドプケラドプス”だ。このバイドは、頭部・胸部より砲撃を、腹部コアより広域兵器を発射する。尾も当たれば艦艇さえ破壊する威力がある。」

指令室のスタッフから呻き声が聞こえる。みなドプケラドプスの名前にのまれているのだろう。

「弱点であるコアは腹部にある。ここを波動砲の斉射で破れば斃せる。しかし、上方と中層は砲撃の射程内で進入できない。よって下方から攻撃をしかける。 下方にあるドプケラドプスの尾は当たりさえしなければ害はない。先ほど全機に尾の軌道データを送った。チャージ済みのR機編隊で下方より接近。腹部のコアに波動砲を撃ち撤退、これを繰り返し斃す。作戦名は…」
チラリと横にいるアッテルベリ中尉を見やる。
「作戦名はOp.Mad Docだ。さぁ、生ける悪夢をたたき起せ。」


攻めあぐねていたR機は、明確な方針を得て動き出した。
まず下部に突入したのはプリンシパリティーズとデルタだった。
生体バイドの弱点である火炎を武器にするプリンシパリティーズは、その波動砲の熱を放熱するために極限まで装甲を削っている。そのため脆いが、意外と俊敏な機体だ。
デルタ隊とプリンシパリティーズ隊は2本の尾を掻い潜りコア直前にまで迫る。
デルタ隊が広域兵器ドプルゲンMAX-Oの射線外からミサイルを撃ち込むと、コアは紫の粒子を拡散させた。

「提督、コアエネルギー密度低下。広域兵器のチャージキャンセルを確認しました。」
「広域兵器で一網打尽にされる恐れはなくなったな。波動砲は?」
「プリンシパリティーズ隊、火炎波動砲発射します。」

高熱を伴った波動砲がコアのある腹部を焼く。
閃光のあとには、外部の生体装甲が焼けただれ、コアのむき出しになったドプケラドプスがいた。
ドプケラドプスにも痛覚のようなものがあるのか、尾の軌道に乱れが生じる。
後続のシューティングスター、グレースノート両隊が尾の軌道変化についていけず、コアへの進入経路を外れて退避する。その際に、何機かが上方に飛び出し、頭部・胸部砲台の餌食となる。先行したデルタは帰還出来たが、プリンシパリティーズ隊からは被害が出たようだ。


「アッテルベリ中尉!」
「了解しました。尾の軌道データ修正。R機各機に再送信します。」
「R機は攻撃後の尾の軌道変化に注意せよ!」
指令室スタッフを追い出して、オペレータ席に陣取ったアッテルベリ中尉が淡々と業務をこなす。
隊形の乱れた2隊に代わり、ルビコン隊が突入。
デルタ、プリンシパリティーズと入れ違いに2本の尾の隙間からむき出しのコアへと向かう。未だ煙を上げるコアを直線に捉えた。
クロス・ザ・ルビコンの前方の空間が紫に発光し始める。
ルビコン隊が圧縮炸裂波動砲を撃つ。紫の光弾がコアに着弾する前にルビコン各機は反転、退避を始めた。
炸裂音・閃光とともに尾が暴れだす。尾を避けるために床と接触、中破した機体はあったが今回は何とか全機帰還した。


「奴は…生きている、まさに悪夢だな。」
「ドプルゲンMAX-Oチャージ開始しました。チャージ完了まで後15秒。」
「!?まだ、撃てるのか。」

私は、急いで周囲に波動砲チャージ済みの機体を探す。
…が、ドプケラドプスの周りには発射済みか、機体を損傷しチャージ出来なくなった機体しか見えなかった。ミサイルを撃つにも遠すぎる。

「誰でもいい、波動砲が撃てる機体はいないか!」
「提督、亜空間反応あり。ウォーヘッド通常航行に復帰します。」
「!亜空間機がいたか。コアを破壊せよ。」
「ドプルゲン発射まで8、7、6…」
ウォーヘッドが通常空間に転移し、チャージ済みの波動砲が収束する。
「5、4、3…」
波動砲がコアを包み込むと同時に閃光で目が眩む。


「コアエネルギー急速に拡散。」
ディスプレイの光量には限界があるとはいえ、まだ目の前がチカチカする。
メインディスプレイには腹部に穴のあいたドプケラドプスが崩れて行く様子が映し出された。


指令室内も、外部通信もしばらく無音だった。
「ドプケラドプス撃破を確認しました。作戦は成功です。」
アッテルベリ中尉の声に、指令室内の空気が一気に緩む。
歓声と安堵、放心して座り込むものもいる。みな緊張の糸が切れたようだ。
「本時刻を持ってOp.Mad Docを終了とする。みんなよくやってくれた。」
私が隊員たちを労うと、どこからともかく‘ドプケラバスター’と囃す声が聞こえた。


‘ドプケラバスター’


生ける悪夢ドプケラドプスを撃破した者に与えられる称号だ。
別に誰かから授与されるわけでなく、なんとなくそう呼ばれるという、
エースパイロットなどにつけられる二つ名のようなものだ。


気づけば私もかなり緊張していたらしい、だいぶ汗をかいていた。
「提督、お疲れ様でした。」
「ああ…ありがとう。」
そう言ってハンカチを差し出す。アッテルベリ中尉。
あまりに普段の彼らしくない意外な行動だったので面喰ってしまった。
しかし、今回の作戦は、彼のバイドの知識があってこその勝利であると思ったので、
「アッテルベリ中尉、部下を特攻させなくてすんだよ。君のお陰だよ、博士。」
そう言って彼の肩をたたいた。
私も大概いつのも私じゃないな。ネジが緩んで地が見え始めている。


ただ、肩をたたいた時にアッテルベリ中尉がビクリとしていたのは何故だろう。




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今回はギャグが難しそうだったので、
いっそのことと、熱さと戦闘シーンの練習を兼ねました。結果は…

拙作では活躍してる風のルビコンですが、正直使えないっス。また本部の罠か。
みんな大好きドプケラさんも登場ですが、
作者は、面倒くさくなったのでR機を使い捨てにしながら波動砲でやりました。
指揮官失格? 作者は指揮指向が果敢MAX、利己的MAXでしたから。

副官は登場頻度が偏るので、当番制ってことにしてみました。
また、アッテルベリ中尉が明後日の方向に暴走しています。
おかしいな、火星基地から変な設定がくっついてきてる。
夢落ちにしたはずなのになぁ。



[21751] 12 提督と掘削機
Name: ヒナヒナ◆2a9fd0bf ID:80eae712
Date: 2010/12/16 22:02
・提督と削掘機
―今週のびっくりどっきりメカ☆―


土星基地グリーズでドプケラドプスを倒し、本部に報告したら、
本部からもドプケラバスターと呼ばれるようになっていた。
ついでに、Team R-TYPEから戦艦ヘイムダルと駆逐艦フレースヴェルグを送ったと言う連絡を受けた。


ホントにくれるの?
ハンガー足りないって文句言ったからか?
やっぱり戦艦と駆逐艦をくれてやってでも、実地試験をやらせるってことなのか?
最新鋭機ばかりというわけでもないから、単純に試験部隊という分けではないと思うのだが、
他の艦隊の人たちに聞いても、Team R-TYPEから直接機体を受領することは異例らしい。
Team R-TYPEに目をつけられる覚えはないのだが…。
私は今この歳で少将になった。異例の出世ではあるが、
この出世ラッシュが始まる前から微妙に優遇されていた。それが原因ではあるまい。
むしろ、何らかの理由で優遇されたから、艦隊を任されて出世したという方がしっくりくる。
本部はともかく、Team R-TYPEは良い噂を聞かない。
単に試作機の試験を任されているとは思わず、アンテナを張ったほうがいいだろう。


で、結局は元グリーズ基地で戦艦ヘイムダルと駆逐艦フレースヴェルグの受領をした。
ついでに、技術整備班も配属された。私は基本新しい艦や大きい艦が好きなので、もちろん戦艦へイムダルを旗艦にした。
さぁ、引越し引越し。

戦艦ヘイムダル級。
第一次バイドミッションから活躍していた戦艦で、地球連合軍といえばこの艦を思い浮かべるものも多い。現在は改良型のテュール級や、新造のムスペルヘイム級などが主流になっている。更なる新造戦艦を開発しているという話も聞くが、まぁ私が受領することは無いだろう。
駆逐艦フレースベルグ級。
ニーズヘッグ級の改良版で、さらに出来るようになった亜空間バスターⅡと艦載機能が特徴だ。ちなみに交換でニーズヘッグ級は持ってかれた。改装してフレースヴェルグ級にするらしい。
技術整備班。これが曲者だ。
ようはTeam R-TYPEの技術者と試作機などの整備を担当する人間だ。フォースの管理を一括して任せられるので、R機整備班の負担は減るんだけどなぁ。秘密主義過ぎて困る。


新たな指令も持ってきた。
ゲイルロズに帰還せずに、グリーズに留まるように言われたあたりで分かってたさ。
今度の任務は天王星衛星オベロンの反乱の平定。
オベロンは鉱物資源に恵まれており、星全体が採掘場のようなものだ。
そこで、地球連合政府に反対する勢力が採掘をストップ。ストに入ったとの事だ。
採掘用機器を乗っ取っているという情報もあるので、我々が派遣される。
ぶっちゃけ、スト起こしている労働者(思想犯)を武力で脅して、働かせるという事だ。
なんという強制労働。なんか鞭で奴隷を打っている想像が…これ以上はトラウマだ。
また、長期休暇が遠退いたな。

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オベロンに行くまでに、グランゼーラの奇襲を受けたので、サボっていたレーダー係をしばいた。
反省文は前回やり過ぎたと思ったので、マッケランの特別講習を受けさせた。
やっぱり声が大きくなって帰ってきた。やめとけばよかったか。


五月蝿いレーダー係がオベロンで防衛システムが稼動していることを報告してくる。
「提督!目標は攻撃態勢を取っているようです。ご命令を!」
「総員、第一種戦闘配備。内部構造から進入する。第一目標はコントロール施設の占拠。続いて敵戦力の殲滅だ。居住区は間違っても攻撃するな。ヘイムダル級は外部で待機。一時的に旗艦をフレースヴェルグに移す。」


関係者の処分は任せるといわれているが、私は軍人として法規に則って処分するつもりだ。
しかし、だ。
誤射ハシカタナイデスヨネ。
私の長期休暇を奪いやがって…本当に一発くらい至近弾を食らわせるか。


今回の副官はマッケラン中尉だ。熱血筋に…人一倍正義感の強い彼は今回の反乱には思うところがあるのだろう。いつもより2割り増しの声で報告してくる。


「提督!内部構造よりバイド反応を検出。防衛システム・掘削機器が侵食を受けているようです。」
「目標変更。第一目標は敵バイド体の殲滅。第二目標は生存者の救出だ。」
ひどい様だが、バイドは広がるので最優先で叩かなければならないのだ。
シェルターには対バイド侵食外壁があるので、1週間くらいは立てこもれる。
これだけの規模の汚染では、シェルター外は考えるだけ無駄と言うものだ。
別に長期休暇の恨みと言うわけではないが。


「提督!救難信号です。地表面シェルターから救助依頼が届きました。オベロンの労働者達のようです!」
「バイド侵食は?」
「外壁侵食率…76%。このままでは後1日程度で影響が出ます!」
「1日あれば十分だ。作戦変更は無し。先に大本を叩く。」
別に長期休暇の恨みではない…


ヘイムダルが外に待機させてあるけど、
緊急に援護をお願いしなければならないかもしれないし。
そのときに、内憂を抱えていたくない。数の暴力は怖いからだ。
戦闘中では洗浄措置もちゃんと取れないだろうし、
下手に接触させてバイド素子を持ち込まれたらたまらない。
…ヘイムダルとか戦艦がバイド化するとどうなるんだろう?
まぁ今はそんなこと関係ない。


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目標の坑道は縦深くに伸び、地下部で他の坑道とつながっている。
上部は広く、下に潜るほど狭くなる構造だ。ちょうど中間にバイド反応が見られる。
地上部の入り口から戦艦へイムダルで突入しようとも考えたのだが、
対空砲火が激しいく、とても近づけないため、我々は側道から進軍した。
対空砲火というか、資源運搬用の大型レールカノン20門とか無理すぎる。
もちろん防衛システムはバイド化している。
もうこのパターンにも慣れてきたな。
いっそ、バイド化した次点で自爆する機構を付けてはどうだろう。


「提督!作戦地点に到着しました!ご命令をどうぞ。」
「今回の目標はバイド化した採掘機器と防衛システムを殲滅すること。生存者の確保、暴動をおこした労働者の拘束だ。生存者確保には時間的余裕があるため、バイドの殲滅を最優先目標とする。坑道内を掃討しながら上昇していくが、中間地点に比較的大きいバイド反応が感知されている、留意すること。では作戦を開始せよ。」


「ミッドナイトアイを先行、索敵させよ。」
「了解ミッドナイトアイ前進しま…提督!ミッドナイトアイ撃破されました!」
「なんだと!?どういうことだ。」

早期警戒機を先行させたら、一瞬で防衛システムにやられた。なんぞこれ。
この狭い空間でレーザー砲台4門とミサイル砲台2門のクロスファイアとか尋常じゃないぞ。
どうやら、オベロンの労働者たちが反乱を起こすための下準備として、
防衛システムを強化、坑道を要塞化しようとしていたらしい。
ちっ、この思想家崩れのブルーカラーどもめ。後で覚えていろよ。


「亜空間索敵に切り替えだ。砲門に接触しないように壁面から索敵させよ。」
「索敵結果。壁面一定間隔で砲台があります!メインディスプレイに投影します。」
「上方の砲台はミサイルで、水平方向の砲台は波動砲で潰せ。急がなくていい確実に行え。」
シェルターの労働者? 間に合うさ、たぶん。
別に長期休暇の恨みでは…


遠距離からミサイルや波動砲でチマチマと砲台を潰しつつ、
上昇してゆく。たまに採掘機を取り込んだバイドが現れるが、
地味に地味に撃破してゆく。
集中砲火が怖いし、同じミスをするのはさすがに嫌過ぎる。
それでも、R機の消耗が酷く、駆逐艦フレースヴェルグと輸送艦のハンガーとドッグは修理に追われているようだ。
先ほど機体は大事に扱えと整備班長のおやっさんに怒られた。
さすが、おやっさん…提督にも関係なく怒鳴るんだな。
というより何故、司令室へ直通通信を入れられる?


順調に敵の砲台を潰し進軍し、目的地まで半分くらいのところで、
コントロール施設を見つけた。バイドには侵食されていないが、
反政府主義のブルーカラーどもに制御を奪われているようだ。


…ちょっと脅すか。


「マッケラン中尉。コントロール施設の周囲の武装を破壊させろ。」
「はっ!分かりました!」


…マッケランお前はもうちょっと、上官の判断に疑問を覚えるべきだ。
もっともらしい理由をつけて、ここの労働者を始末するといったら、普通に従いそうで怖い。
当たっても全然痛くない対人機関砲にむけて、
対バイド・対R機用のバルカンを打ち込ませる。
ちなみにバルカンとは通称で、実際は連射の利くレールガンだ。
コントロール施設の周囲の壁に穴が開いていく。

―地球連合軍に逆らうからだ!―

一度言ってみたいセリフを心の中で呟いてみた。もちろん顔は真面目モードのままだ。
今日ばかりはそういう気分だったのだ。私の長期休暇…
そろそろ、占領しようと指示しようとしたとき。
ボスンという鈍い音とともにコントロール施設の一部から煙が上がる。
周囲を撃てといったのに施設に当てたな。エアは漏れていないようだが…

『システムダウン、システムダウン。外部レールカノン1から20まで電力供給を停止します。』

「なにが起こった?報告せよ。」
「提督、コントロール施設内の変電設備にあたった模様です!」
「作戦に影響は?」
「これは!?地表の運搬用レールカノンが停止しました!」

よし、レールカノンが無くなればヘイムダルを呼び寄せて、上空から挟み撃ちに出来る。
これぞ棚ぼた。問題は今から呼んで間に合うかだ。

「ヘイムダルへ連絡。バイド反応のあるポイントの上方に移動させよ。間に合わなくてもかまわん。」

そんなことをやっている間に、POWアーマーがコントロール設備を開放する。
中にいたのは、コントロール設備の一室に閉じ込められていた連合軍のパイロットや、反乱に反対した人たちだった。
コントロール室からの通信で確認を行った。下手人たちはとっとと逃げたらしい。
そうだね、普通こんなバイドだらけのところには残らないよな。
パイロットたちの顔は引きつり、女性の非戦闘員などちょっと涙目になっている。
そんなに、酷い扱いを受けたのかと思っていたら、バルカンの至近弾の音が怖かったらしい。

………まぁ怪我が無くて何よりだ。
しかし、バイドだらけの坑道に人を監禁して、あまつさえ女性を泣かすとは、思想犯どもめ、許すまじ。
私は反乱を起こした労働者に対する怒りを感じた。


「マッケラン、捕虜の解放はPOWにまかせる。我々は上方に向かう。」
「了解です。」


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最終通路が見えた。あそこに身を隠せばレーザー砲台をしのげるだろう。
この坑道の目的地であるバイド反応のある広い空間に向かう細い通路が見えた。
先ほどから撃ち漏らしたレーザーがチクチク痛かったのだが、通路に入れば直進しかできないレーザーをかわせるだろう。
しかし、かなりゆっくり進撃したので、タイムリミットが近い。
「各機、レーザー砲台は無視してよい。ミサイル砲台だけ破壊して最終通路まで一気に突破せよ。しかし通路を決して出るな。」
ドプケラの悪夢が頭をよぎった。また、頭を出した瞬間破壊されたら困る。
時間もないし、誘導性のあるミサイルだけ潰しておけば、最終通路は安全なはずだ。
最終通路で体勢を整え、索敵してから大型バイドに攻撃を仕掛ける。
とりあえず、始めに撃墜された偵察機の代わりにデコイPOWで様子見といこう。


デコイPOWが通路をでて、坑道名内部の巨大空間にむかった…一気に視界が白くなる。
巨大空間全体が発光たかと思ったら、POWは跡形もなかった。
…光の残滓の向こうに、巨大な機体と、その周囲に浮かぶ浮遊砲台が見えた。
資料では、ここオベロンで運用されている掘削機ミヒャエルのようだ。
ミヒャエルの屈折式掘削レーザーがデコイを消し飛ばしたらしい。


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「お前の様な掘削機がいるかっ!」
ついつい地が出てしまった。
冷静になればR機だってもとは作業用機体だし、波動砲は掘削用のアステロイドバスターだ。
しかし、アレはやりすぎ。
兵器として改良されたR機の波動砲より強い掘削レーザーってどういうことだ?
というよりあのほぼすべての空間を埋めつくすレーザーの量は何なんだ?
技師たち、R機を軍用に取られたからって、魔改造しすぎ。
いっそ軍が彼らを雇うべきだ。


「ウォーヘッド、補給でき次第亜空間索敵だ。」
「前方よりミサイル来ます。ウォーヘッド2番、3番機損傷しました。すぐには修復できません。」
こちらの攻撃の届かない位置から誘導ミサイルが狙っていた。通路の向こう側にも配置されているとは。死角に設置されたミサイル砲台を潰すには、ミヒャエルの射程に身をさらさねばならない。
ウォーヘッドに限らず亜空間に突入する際は、前方に亜空間への入り口を発生させ、飛び込む。この亜空間の入り口は不安定なため少しの衝撃でも閉じてしまう。そして、亜空間突入の前は回避行動が取れず、また機動も読みやすいため敵の格好の餌食となる。
だから、敵機にちょっと弾幕を張られるだけで、亜空間への突入が阻まれてしまう。


「ミサイル砲台を破壊せよ。」
「死角になって波動砲とどきません。こちらのミサイルも射程外です。」
下がってもレーザー砲台があるため、後ろに下がっても亜空間潜行できない。
どうするか…?


「その役目は我々が引き受けよう。」
「誰だ。」
サブディスプレイに現れたのは、連合のパイロットスーツを着用した人物だった。
聞いた事のない声だ。こんな隊員いたか?
「所属マーカー…オベロン駐留部隊です!機体はワイズマン5機!」
「オベロン駐留R機部隊ワイズマン隊だ。助けてもらった礼はしないとな。…ワイズマン隊出撃する。」

コントロール設備に監禁されていたパイロットだった。
どうやら、労働者たちでは扱いきれず、機体もここの放置されていたらしい。

「よろしい。ワイズマン隊、最終通路の奥の外壁にあるミサイル砲台を破壊してくれ。我々のR機では障害物があって届かない。」
「了解だ。」


Rwf-9w要撃機‘ワイズマン’
賢者という名前は誘導式波動砲という特殊な波動砲から来ている。
パイロットの思考制御によって波動砲の進路を変えられる非常に使い勝手の良い武装だ。
しかし、この機体は悪名高い試験管型コックピットを採用している。
波動砲の制御その他に多大な精神力を使用するため、
パイロットが疲労でコックピットを自力で降りられなかった。その対応策としてTeam R-TYPEはパイロットが降りなくてもいいようにコックピットごと新しいパイロットに換えるという荒業を編み出した。ラウンド型コックピットから、換装が簡単な試験管型になったのだ。
負荷を減らす方向に思考が向かわないのが、非常にTeam R-TYPEらしい。


ワイズマンの誘導式波動砲ならば、死角の敵に届く。
ワイズマンがミヒャエルの射程ギリギリまで近づく。
「チャージ完了、波動砲発射するぞ。」
奇妙な軌跡を描き波動砲が壁の向こう側へ飛び込む。


「ミサイル砲台、破壊確認しました!」
「よし、ウォーヘッド隊亜空間潜行、ミヒャエルの懐までもぐりこんで攻撃、チャージキャンセルをおこなえ。他のR機はチャージして、待機。チャージキャンセルしたら突撃する。目標、中央のミヒャエル本体だ。」


ウォーヘッドが亜空間から脇目をふらずに、突入。
ミヒャエルの目の前で通常空間に復帰。ミサイルを撃ち込む。
「ミヒャエル、屈折式掘削レーザーチャージキャンセルを確認!次のチャージ完了まで15秒です。」
「全機、ミヒャエルに攻撃チャージ時間を与えるな。」

細い通路から、デルタ隊と、プリンシパリティーズ隊が飛び出してくる。
じきに波動砲の射程に捕らえ…ると思ったところで背後の壁面からレーザーの乱射を受けた。
波動砲は発射したが、体勢を崩したためミヒャエルの砲塔ユニットには当たらなかった。
壁面の死角にはミサイル砲台だけでなくレーザー砲台もあったらしい。
早期警戒機を破壊された弊害がこんなところで!
しかし今更、砲台を破壊している余裕はない。


「敵チャージあと10秒です!」
「次のR機!」


鈍足のクロス・ザ・ルビコンとグレースノートで間に合うか?
ワイズマンも危なっかしくふらふらとミヒャエルに向かっているが、間に合わない。
その時レーダーに味方を示す光点があらわれる。
あれは…?間に合ったのか、あの射程ならいける。


「通信手。上方のヘイムダルに通信。」
「ヘイムダル!全砲門開け。目標ミヒャエル。急げ!」


まったく存在を忘れていたヘイムダルがここまで進軍してきていた。
ヘイムダルの艦長は即座に了承。すでにミヒャエルを狙っていたらしい。反応が早い。
ヘイムダル級戦艦の艦首砲‘ブルドガング’を放つと、巨大な白い光がミヒャエルを飲み込む。
ついでとばかりに、12連装誘導ミサイル‘ギャラルホルン’も発射している。
やっと追いついたルビコン隊とグレースノート隊も、ダメ押しで波動砲を打ち込む。


メインディスプレイが巨大な光量に負けて暫くマヒする。
もちろん私は前回の失敗を踏まえて、閃光防御のためのサングラスをサッとかける。
エネルギーの乱流に翻弄されて、ミヒャエルの近くにいたR機が激しくシェイクされる。
ディスプレイが回復した後にミヒャエルの姿はなかった。


「目標を撃破!!作戦成功です!!!」


マッケランがオープンチャンネルで味方に報告する。
耳痛い…横で聞いていて耳がキンキンする。今のスピーカーがハウってたぞ。
いつもの3倍くらいの声だ。次回はサングラスだけでなく耳栓も必要か…。
そういえばエネルギーの乱流に巻き込まれたR機はいないか?

「各機、被害報告を。」

R機隊の隊長らが点呼を取り無事を報告してくる。

「ウォーヘッド隊、2,3番機小破、全機います。」
「プリンシパリティーズ隊、レーザーで2機撃墜、しかし脱出を確認しました。」
「デルタ隊、同じくレーザーで4機中破、全機揃っています。」
「クロス・ザ・ルビコン隊、オールOKです。」
「グレースノート隊、全機無事を確認。」
「…」

「ワイズマン隊…?応答してください。ワイズマン隊。」

オペレーターの呼びかけに反応しないワイズマン隊隊長機に、強制通信を開く。
ディスプレイには頭を垂れ微動だにしないパイロットが映し出された。
ワイズマンのパイロットの中には、精神衰弱で死亡したものもいたはず。
長時間の監禁の後、いきなり戦闘して誘導式波動砲を撃ったりすれば…


「工作機!ワイズマン各機をヘイムダルに収容せよ。」



________________________________________________________________________



私は反乱を起こした労働者の拘束と、敵残存戦力の無力化を指示した後。
司令室スタッフと副官のマッケランを連れて旗艦ヘイムダルに戻った。
ヘイムダルに移るとすぐに医務室に連絡を入れ、あのワイズマンパイロット達の容態を聞いた。医者の回答は過度の過労と神経衰弱ということで、点滴をして寝かせていると連絡を受けた。
とりあえず、一安心した私は残務処理をし、辺境警備隊に労働者たちを引き渡した。処分はあちらで、決定するとのことだ。
人的・物的に被害が広がっており、厳正な処分を望む。と言い添えておいた。
私の長期休暇の恨み…


私は今回の作戦の簡単な報告をして、居室で詳細な報告書を作っていた。そのとき医務室からワイズマン隊のパイロット達が起きたとの連絡があったので、私は医務室に向かった。
マッケランは医務室でも大声を出しそうなので置いてきた。
私が医務室に入ると軍医と病人用の緩い服を着た男が話していた。
男がこちらを見てすぐに敬礼し名乗ったので、私も答礼してあいさつをし、楽にするように言った。さすがに病人を立たせて話すわけにもいかない。
「さて、バイド素子が一掃されるまで、オベロンの守備は他の艦隊が預かることとなった。それに伴い、現在のオベロン駐留部隊は解体、君たちは私の艦隊に異動になった。」
「はっ。ワイズマン隊以下5名、着任します。」
事務連絡を済ませると、気になっていたことを聞いてみる。

「そういえば、試験管型戦闘機とはそんなに消耗するものなのか?あまり酷いなら予備パイロットを用意する必要があるのだが。」
「いえ、我々が搭乗しているのは、後期型のワイズマンです。インターフェイスも普通の神経接続式のものですし、負荷自体も初期型に比べ格段に軽減されていますので、普段の戦闘で倒れることはありません。ただ、今回は長時間閉じ込められていた際の疲労があったため、誘導式波動砲の発射で意識が飛びかけまして…」
「飛びかけた。と言うことは直接原因が別にあるわけだな。」
「…その、神経接続式のインターフェイスは情報が直接感覚神経に伝わるのですが…」
「それで?」
「いえ…あの、戦勝報告をしたあの大きな声が直接頭に響いて…それからの記憶がありません。」


マ ッ ケ ラ ン お 前 か 。


とうとう直接被害を出すとは…恐ろしい男だ。
私はパイロット達を労い、休息をとるように命令すると、
司令室に戻りマッケランを呼びだした。


「マッケラン中尉、命令を伝える。本日本時刻よりジェラルド・マッケラン中尉をR機パイロット候補として、新設偵察機部隊アウルライト隊に一時的に配属する。これは部隊を新設するにあたって士官を配属し部隊の規律を正しく保つためだ。君が将来部隊を率いる際にこの経験がプラスになると思う。」
「提督…!はっ!ジェラルド・マッケラン中尉。アウルライト隊パイロット候補として着任します!」

だからマッケラン、上官の言葉を少しは疑え。
深呼吸をして、良く考えるんだ。
偵察機隊とか一番死亡率高い部隊だから。
理由ももっともらしく言ってるけど、意味不明だから。
これが懲罰人事だって気付けよ。
…そこまで張り切られると私が負けた気分になる。


翌日からマッケランの無駄に大きい声がハンガーに響き渡った。





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みんなのトラウマ、ミヒャエルさんの回でした。
ミヒャエルさんはとってもシャイなので、
射程に入った瞬間に顔も見せずに消し飛ばしてくれます。

ゲームだと今回のような設定の敵(迂回して4HEX以上の距離で、横方向、障害物有りの場合)には、ワイズマン先生の波動砲は届かないんですよね。壁にくっついたら撃てないし。ちなみに中の人は五体満足の普通の人ですよ。
しかし、ワイズマン隊め、モブのくせして生意気だ。
今、作者がエスコンをプレイしているせいで、パイロットが優遇されているんだと思います。

にしても着実に1話1話が長くなっている…。



[21751] 13 提督と光学兵器
Name: ヒナヒナ◆2a9fd0bf ID:ec2c350f
Date: 2010/12/16 22:06
・提督と光学兵器
―それってソーラ・○イじゃ…―


我々はオベロンでの反乱平定後バイド反応を追っかけて天王星のバイドを駆逐した。
調子こいたせいだろうか。
本部から言い渡された指令は、長期休暇ではなく、冥王星基地グリトニルの攻略だった。
グリトニル…本部はここで勝負に出るらしい。
グランゼーラ革命軍の本拠地となっている基地だ。
そこを我々だけで落せとは…本部め。


最短距離で直線的に冥王星へ向かう事を選択した私は、今氷だらけのカイパーベルト帯にいる。
進んでも進んでも氷の風景にうんざりしてきた頃、窓から対バイドの切り札‘ウートガルザ・ロキ’が見えた。
切り札なんていう割に実際に使用したのは1回のみだ。
まぁ、そうそうバイドの大攻勢があってはたまらないからな。
‘ウートガルザ・ロキ’は集光式のソーラー兵器だ。
地球周辺から得た太陽エネルギーを、中継地点を経由しながら、集光ミラーに集め、さらにウードガルザ・ロキへと注ぎこみ、その円筒形の砲身で指向性を持たせて兵器としたものだ。
フルチャージすれば太陽系の端まで届く射程を誇る。


…またレーダー係が騒いでいるな。なにやら窓の外を指さしながら興奮している。
ちょっと、普通では無かったので聞いてみると、集光ミラーが輝いているという。
騒ぎを聞きつけた別のスタッフが、本体も照度が上がっており、チャージ準備が始まっているという。
本来外宇宙を睨んでいるべき砲身は、現在我々…地球方面に向けられている。
とりあえず、緊急連絡だ!


「緊急事態。総員、第一種戦闘配備に移行。総員、第一種戦闘配備に移行。」
「提督から総員へ、‘ウートガルザ・ロキ’が発射準備に入っている。地球方面に射線が向けられており、人間が住むエリアに照射される恐れがある。よって‘ウートガルザ・ロキ’の無力化作戦を行う。なお、グランゼーラの攻撃が予想されている。総員戦闘準備に移れ。」


艦内が一気に慌ただしくなる。
「ガザロフ中尉、ウートガルザ・ロキの発射までのカウントを頼む。」
「はい提督。チャージ完了まで7分強と予想されます。」
「R機の出撃準備が済むまで、へイムダルで近づけるところまで近づく。」
「レーダー係、グランゼーラの敵影がないか注意せよ。」
「防衛部隊がいるはずだ。早期警戒機に索敵をさせろ。進路上だけでよい。」
「索敵範囲クリア。」
「艦隊前進を止めるな。」


「提督、あと7分で発射です。」
早期警戒機が氷塊に隠れながら、艦隊の進路を確保する。
時間短縮と囮として目立つため、氷塊のない直線進路を取っている。
ウートガルザ・ロキの射線上だ。
低出力で試射を行ったらしく、射線上は氷塊が無くなっている。
ロキが発射されれば、艦隊が消し飛ぶ危険があるが、背に腹は変えられない。
万が一でも太陽系内の居住区域に被害が及ぶことが考えられる以上、発射は絶対に避けなければならないからだ。


R機を先行させるべきだな。出撃させ氷塊の中を進軍させた。
「ヘイムダルは囮として、中央を進み、R機は奇襲働隊として、氷塊に隠れてロキまで向かわせる。」
ロキを沈めるには波動砲の斉射が必要だが、あまり戦力は割けないので、ロキの射線外から、とモーニングスター隊を1隊進軍させる。

ちなみにモーニングスターは技術整備班がシューティングスターを勝手に改造していた。まったく許可取ってからやって欲しい。

ともかく最悪、ロキ本体にある集光機構を破壊すれば、集めたエネルギーが拡散しチャージをキャンセルできるはずだ。
これには本体最奥にある部分を狙撃する必要があるので、長射程を誇るR機を送った。
囮が少なくなればそれだけ敵が警戒する。だから奇襲働隊は1隊、敵にばれればすぐにでも落とされる程度の戦力だ。
いかに敵の目をこちらの囮本体に引き付けるかに掛かっている。
R機を出撃させ手隙になった輸送艦の整備班やドックの担当に、ミサイルの配置などについて少し連絡をいれておく。ちょっとした事だが何もしないよりマシだ。


「あと6分です。」
時報、もといガザロフ中尉が告げる。
まだ敵機は現れない。
私が焦ったところで、どうなるわけではないので、
ポーカーフェイスを守っているが、内心焦っている。
ヘイムダル遅い。索敵能力は非常に優れているが本当に遅い。
ロキが発射フェイズに入ってしまえば、射線から外れることは不可能だろう。
とりあえず、囮として目立つようにデコイで頭数を増やし、近場の氷塊を破壊しながら進軍する。
氷割りちょっと楽しい。最近ストレスが溜まることばかりだからな。


「あと5分で…」
「索敵に反応、グランゼーラ軍早期警戒機です。」
時報女ガザロフ中尉を遮って、レーダー係が報告。
やっと来たか。
こちらの作戦を看破されて、奇襲機側に戦力を向けられたらどうしようと思っていたところだ。
ちなみに奇襲部隊はすでに本隊の索敵外にでており、通信不能だ。
「よし、敵の目をこちらに引き付ける。ヘイムダル主砲、敵早期警戒機に発射せよ。間違っても全機撃墜するな。」
早期警戒機を残して、こちらに増援を呼んでもらわなくてはならない。
早期警戒機を狙い打つと、やはり周囲からグランゼーラ軍がワラワラと沸いてくる。
「囮本隊全機、進軍速度は落とすな。敵の守備部隊を引きずり出す。砲撃開始。」


「あとよんっふ、ンきゃっ!」
時報中にガザロフ中尉が舌を噛んだらしい。涙目になっている。
激しい振動のためだ。すでに囮本隊は乱戦に突入していた。
波動砲、艦首砲のチャージは出会い頭のミサイルプレゼントでお互いにキャンセルされた。
接近戦は今のところフォースのあるこちらが有利だ。
ともかく、押して敵を圧倒する。
装着状態のフォースを次々にシュート。敵戦力を削る。
フォースは破壊されてもパイロット居ないから、思う存分に突っ込ませられる。
…そろそろ奇襲部隊が所定の位置にたどり着く頃だが。


「あと3分です。」
ちらりと、ウーロガルザ・ロキを見やると、明らかに照度が増している。
砲身がこちらに向いているため、眩しい。私は眩しいのは嫌いだ。
「ウートガルザ・ロキの照射を回避するには、あと30秒以内に行動を開始しなければなりません。提督、命令を!」
ガザロフ中尉がそう宣言し、司令部スタッフが息をのむ。Point of no retuneというわけだ。
しかし、ここで逃げるわけにはいかない。なぜなら…
「その進言は却下する。今退けば囮であることを勘付かれる恐れがある。さらには、我々が回避すれば、本来のターゲット…軍事基地か連合派の都市に狙いを合わせる恐れがある。」
もしグランゼーラが居住地域を狙っていれば億単位の人間に被害が出ることになる。

「照射回避不能域に入りました!…提督命令をどうぞ。」
ガザロフ中尉は腹を決めたらしい。スタッフの動揺も収まってくる。
…数名、目が据わっている者もいるが仕方ない。パニックになられるよりは良い。
今のところ、奇襲部隊が撃墜された報告は無い。
奇襲部隊は索敵外だが、さすがに一部隊5機が撃墜されれば、爆発が観測できる。
ロキの照射を回避する選択肢がない以上は、奇襲部隊を援護するしかないな。
「ガザロフ中尉、第一輸送艦に総員退避を勧告せよ。」
「しかし提督、すでに照射範囲外に回避できません。今輸送艦から出ても同じです。」
「今から爆破する艦には人を置いておけない。」
「爆破?デコイではなく輸送艦の方をですか?」
「ああ、やっておきたいことがあってね。」
「了解しました。」


「提督!1分切りました。」
「レーダー係、奇襲部隊は?」
「まだ…いえ、ウォーヘッドの索敵に反応、モーニングスター隊を確認しました。敵はまだ気づいていないようですが、じきに氷塊宙域を抜けます。これ以上は目視されます。」
「第一輸送艦を外部コントロールでロキの砲身前に出せ。」
「自爆ですか?ロキに隣接する前に破壊されると思いますけど。」
「自爆ではない目くらましだ。」
やっとアレが役に立つ時が来たのだ。
前衛に出しておいた第一輸送艦をさらに無理やり前進させる。

「第一輸送艦、集中砲火を浴びています。撃沈され…何ですか、あれ?」
輸送艦がロキの前面、敵部隊の密集地帯で敵防衛隊のミサイル攻撃を浴びて誘爆すると、ピンク色の靄があたり一面に拡散する。
「説明は後だ。レーダー係は現状報告を。」
「モーニングスター隊所定の位置に付きます。」
「提督後30秒です!」
「モーニングスター、波動砲発射した模様。」
煙幕でこちらからも様子が伺えないため、みな固唾を飲んでレーダー係の報告を待つ。
「ウートガルザ・ロキ、エネルギー収束率75%で停滞、…エネルギー拡散を確認。成こ…」
「提督!作戦成功です。」
今回、時報しかできなかったガザロフ中尉がレーダー係の報告の上にかぶせてくる。
言わせてやれよ大人げない。


「提督、グランゼーラ軍残存兵力が投降を申し出ています。」
「もうこの場で戦う意味もないだろう、武装解除を条件に受諾せよ。」
「…グランゼーラ軍、武装解除の開始を確認しました。」


「それより、提督。あの輸送艦の爆発はいったいなんでしょうか?」
「輸送艦整備班に用意させていた演習用ペイントミサイルを利用した煙幕爆弾だ。」
「ペイント弾って、まさか…」
もちろん‘シヴァ’襲撃事件のときの余り分だ。前に第一輸送艦にいた整備班長…おやっさん(今はへイムダルにいる)がどうせだからと積みっぱなしにしていた奴を、第一輸送艦の整備員に命令して、誘爆で飛び散るようにしてもらった。前に聞いた話では、演習の時にでもデコイに積んで、花火にしようと企んでいたらしい。そのままの形で、輸送艦で使わせてもらった。ちょっと輸送艦がもったいないような気もするけど、さすがにデコイに移す時間は無いし、輸送艦を一隻犠牲にして、本隊とターゲットとなったかもしれない都市が1つ救われるのなら、問題ないだろう。
替わりに今回拿捕したグランゼーラの輸送艦を使わせてもらおう。基本構造は同じなのでカラーリングを変更すれば特に問題は無いはずだ。


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グランゼーラ軍の全武装を解除して、直近の基地方面に送り出した後、我々はグリトニル攻略戦に向けて準備を始めた。
部隊の損傷、特に囮本隊にいたR機の損傷がひどかったため、技術整備班に現在できるR機の改修と改造を指示した。
指示しなくてもやる気がしたが、手綱を握るという意味で、設計書をまず提示させた。
こいつらTeam R-TYPEの技術者は放っておくと何をするか分かったもんじゃないからな。


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「提督、お疲れ様です。紅茶をどうぞ。疲れを取るには糖分摂取が一番ですのでロシアンティーにしてみました。」
「ありがとう、いただくよ。」

口に入れた瞬間に異様な味が広がり、ゲホゲホとむせかえった。

「大丈夫ですか?提督。」
「ガザロフ中尉…これはロシアンティーなのか?」

絶対に違う。学生時代に飲んだロシアンティーはこんな邪悪な味じゃなかった。

「ええ、レシピ通りに紅茶にジャムをいれました。」
「…」
「あ、これですか。母方のおばあちゃんが作ってくれた梅干しジャムなんです。酸味が効いて、おいしいんですよ。」
「…」


突っ込むのにも疲れた。
私は紅茶もまともに飲めないのか?




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名前倒れのウートガルザ・ロキさんでした。
チャージ7ターンって…
せめて、どこぞのイデ○ンガンみたいに、攻撃範囲がマップの2/3とかだったら、もっと緊張感あったのに。

突っ込みどころ満載の回でした。
ミサイルの組み込み・総員退避はきっとジョバンニが1分で…

あ、ちなみに設定はtactics準拠なので、フォースは破壊可能です。ゲーム中に具体的に描写されていないので、破壊すると、バイドの種子に戻るということにでも…

ロシアンティって紅茶にジャムを入れるんじゃなくて、
本当はジャムを舐めながら紅茶を飲むって聞いたけど、どうなんだろう。まぁいいや。

次回は全国のR-TYPERに地獄を見せてくれたグリトニルです。



[21751] 14 提督と副官ズ(グリトニル突入編)
Name: ヒナヒナ◆2a9fd0bf ID:ec2c350f
Date: 2010/12/16 22:12
・提督と副官ズ
―外伝小説?そんなものは知りません―


・sideガザロフ中尉

私は今、冥王星基地グリトニルへと向かう旗艦ヘイムダルの通路を、作戦会議室に向かって走っています。
…実はうっかり遅刻をしてしまって提督や他の副官の皆さんを待たせてしまっているかもしれません。大事な作戦前の会議なのに。
そうこう考えている内に、作戦会議室前までたどり着き、息を整え、入室します。


「ヒロコ・ガザロフ中尉です。」
扉がスライドし、作戦会議室に入る。やはり私以外の出席者は揃っているようでした。
「ガザロフ中尉、作戦会議に遅刻は困るわ。」
「すみませんでした…」
「まぁ、揃ったことだし作戦会議を始めよう。」
提督の一声で会議が始まります。

ちなみにまだ、グリトニルまでは距離があるので、紅茶を飲みながらの作戦会議です。
事前に私が用意しておいたおやつ、スコーン、クッキーと、補給の嗜好品セットに入っている御菓子類が机に並んでいます。
だれもおやつには手をつけません。緊張しているのでしょうか、さすがにグランゼーラ革命軍との決戦ですので私も緊張しているのですが、普段あまり感情表現の激しくない提督や常に仏頂面のアッテルベリ中尉まで…ここは一度関係ない話を振って緊張を和らげてもらうのがいいでしょうか?

「あ、みなさん、今日もお菓子を焼いたので食べてくださいね。提督、スコーンは…」
「いや!実は昼食が遅かったため余りお腹がすいていないんだ。…でもせっかくだから甘くないものを頂こう。」
提督が嗜好品セットのお菓子に手を出す。だいぶ汗をかいていて、本当に緊張しているようです。逆に気を使わせてしまったかしら?
「みなさんもスコーンいかがですか?クッキーも人気だったんですよ。」
「糖分は女性の敵だから、紅茶だけ頂くわ。」
「い、いえ。自分は…そう、早期警戒機に乗ることになるかもしれないので、腹8分目でやめておかなければならないのです!」
「小官も結構です。」

ベラーノ中尉、マッケラン中尉、アッテルベリ中尉が断る。
そうですよね。提督が食べていないのに副官だけ食べるわけにも行かないですよね。
私も気の遣いかたを覚えなくちゃ。

「ガザロフ中尉?その…人気だったというのは?」
「以前、ゲイルロズの作戦前に提督に食べてもらおうとしたクッキーなんですけれど、パイロットの皆さんには人気で。」
「ありえない、何かの間違いではないのか?」
「いえ、パイロットの皆さん、みんな涙を流しながら美味しいって褒めてくれましたよ。」
「…」
みんな遠い目をしていましたが、どうしたんでしょう?

再開した会議ですが、難航しました。
一個艦隊(といっても戦艦、巡航艦、駆逐艦が一隻ずつと輸送機が複数。)では単純な正面突破は無謀だし。迂回路を行くのも暗礁領域が邪魔をします。

グリトニルは難攻不落です。ここを攻略したのはバイドと英雄ジェイド・ロス提督、グランゼーラ革命軍だけ。
意外と多いようですが、バイドはその異常な物量で、グランゼーラは内部からの離反があったため、グリトニルを墜せたと言われています。
正面から破ったのは英雄ジェイド・ロス提督の率いるバイド討伐艦隊のみなんです。
かの英雄は私達に負けず劣らずの寡兵で打ち破ったとの話なので、
この作戦が成功すれば、私達の提督も英雄と呼ばれる人の仲間入りです。


「提督…私に案が。」



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「配置はどうしますか。」
「ヘイムダルは足が遅い。あまり機動力の高い機体を配置しても意味が無いだろう。」
「Rwf-9Wワイズマン、Rwf-9D2モーニングスター、Rwf-9DH2ホット・コンダクター、RXwf-12クロス・ザ・ルビコン隊の配属を進言します。」
アッテルベリ中尉が提案します。この人はあまりよく分かりません。でも話してみるとバイド、R機、各種技術などのことを教えてくれます。技術マニアでしょうか。
「では、他の艦隊は残った、レディラブA、B、ドミニオンズ、サンデー・ストライク隊、あとは早期警戒機アウルライトですね。」
ベラーノ中尉は頼りになるお姉さんです。
周囲を良く見ていて、失敗したときなどフォローを入れてくれます。
この後、作戦の細部を詰めて行きます。


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「提督、作戦名を決めましょう。」
提督が周囲を見渡して、あるもので目を止める。
「苦いチョコレート作戦はどうだろう?」
私が復唱する。
「Op.Bitter Chocolate!」

こうして、グリトニル攻略作戦 オペレーション・ビターチョコレート が始まりました。




・sideマッケラン中尉

自分は今いる4人の副官の中では一番早くから提督付きとなった。
この艦隊の前身である特別連隊であったとき、負傷で退役したホセ中尉から、後任の副官へ推薦されて以来、主席副官だ。
ホセ中尉は士官養成プログラムを受けて副官になった自分達と違い、今は珍しいたたき上げの40代の副官だった。
提督はあの部隊で始めて指揮官になったから、お目付け役だったのかもしれない。
そんなことを考えていると、格納庫についてしまった。

オベロンでの戦闘後に早期警戒機部隊のパイロットを経験して来いと言われて、ここに来た。
研修ということで出向していたのだが、オベロンで早期警戒機隊のベテラン達が粗方死傷しており、自分が階級的に一番上ということであったので暫定的にアウルライト隊の隊長機に乗ることとなってしまった。
正直小型機などスポーツ用のスペースプレインしか乗ったことがない。
そう正直に隊員達に告白すると。
複雑な操作は全部機械と自分達がやるから、
基本的に隊長がやることは索敵ルートを決めるくらいとのことだった。
そんな簡単では無いと思うが、おそらくルーキーの隊長を怖がらせまいと言っているのだろう。良い人たちだ!
パイロットスーツに身を包み、搭乗、早期警戒機はおそらく一番最初に戦場に出ることになるのだろう。部隊内通信を開き号令をかけると、隊員たちが応える…しかし、物足りない。

「もっと大きな声で。我々の目的は?」
『全機そろっての帰艦です。』
「もっと大きな声で!」
『全機帰艦します!』
「もっと大きな声!!」
『全機帰艦します!!』
「もっとだ!!!」
『我々は全機帰艦します!!!』
「よろしい!」


自分が学生時代の部活で学んだことは
‘声の小さいヤツには誰も付いていかない’
だった。


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今回の作戦では旗艦ヘイムダルを含む部隊が上方ルート、その他の艦艇が下方ルートを通りグリトニルを挟撃する。グリトニル周辺は峡狭な宙域であるため、大規模部隊を展開できない。なので、敵の防衛艦隊の主力は空間的余裕のある上下ルートの合流地点にいると予想される。こちらの艦隊を迎撃しようと部隊を分けてくれれば良し、分けなくても挟撃を行える。作戦前にそう、ガザロフ中尉は提案していた。


自分はこの作戦を聞いて、耳を疑った。
ただでさえ戦力の少ないのに、さらに部隊を分割することは不可能だと思ったが、
提督はいくつか確認をして少し考えてから、それでいこう。と言った。
ショックを受けた。作戦内容ではなく、作戦を一から提案するということにだ。
提督の仕事をやりやすくするのが副官の仕事と思い補佐に徹していたが、
立案も重要であると考えさせられた。
副官は指揮官の卵として、指揮官の下に配属される。いつまで経っても立案や意見を出さない自分を見かねて、提督は自分を指令室から出し、リーダーが不在の早期警戒機隊に配属したのだろうか…
いや、そうに違いない。
であれば、自分に求められる事は指令に従うことだけでなく、それ以上を考えて実行することだ。


早期警戒機は1部隊のみ、上下の両ルートの索敵は出来ない。上方ルートのヘイムダルは索敵能力に優れているので、下方ルートの別働艦隊の索敵に回るのが、求められていることだ
それ以上の結果を出すには…


「アウルライト1より隊全機に通達。我が隊は中央ルートを選択。カロンの内部から索敵を行う。」
「下方ルートではないのですか?」
すかさずアウルライト2、副隊長機から通信が入る。
「下方ルートはサンデーストライクの亜空間索敵で出来る。中央のカロン内部は隠れる場所が無く亜空間索敵は難しい!もっとも怖いのは背後からの奇襲だ。だから、まわりこまれる恐れのあるカロンの内部を索敵、その後合流地点の敵艦隊の索敵に移る!なお敵機に捕捉された際は足の速さを活かして振り切る。交戦しようとするな。」
「アウルライト2了解。あまりに無謀なことを命令するようなら止めようと思っていたのですが、その必要もなさそうですな。」
副隊長が認めると、他の隊員からも声が了解の声があがる。
「では、アウルライト隊全機発進準備!!」
『了解』

作戦開始まで後少し。



・sideベラーノ中尉


「提督、全艦作戦配置につきました。」
「作戦開始時刻まで待機する。」
「みな緊張しているようですね。」
「そうだな、我が艦隊発足以来の大規模作戦だからな。」
「ええ、ここは私が緊張を和らげて…」
「ベラーノ中尉…。その、助かっているのだが、女性があのような冗談はどうかと思うのだが…」


提督も雰囲気を和らげようと、作戦前にジョークを言うようだけれど、
普段真面目顔でいることが多いため、気付かれずに無視をされています。
良く観察していると、無視されたあと憮然としているのが可愛いです。
そういう時は、私がフォローを入れて場の雰囲気を和らげるようにしています。
ただ、緊張はとれるのですが、私のことを微妙な顔でみてくるんです
ジョークなので、本当にそう思っている訳ではないのだけれど…
食べ物系ジョークは控えようかしら?


「提督、作戦開始時刻です。」
「ああ、Op.Bitter Chocolate開始!」


私達の乗る旗艦ヘイムダルは上方ルートに向かいます。
下方ルートからはその他の艦艇が進攻しているはずです。
ちなみにヒロコちゃん…ガザロフ中尉は、作戦発案者として、下方ルートの巡航艦ヴァナルガンド級に乗っています。上方ルートは提督が指揮を取り、下方ルートはガザロフ中尉が指揮の補助に付く。という形になっています。
「あら?提督、アウルライト隊が中央ルートに向かっています。」
「マッケラン中尉が?…かまわん続けさせろ、下方ルート部隊には亜空間機サンデーストライクがいる。障害物の多い空間なら亜空間索敵の方が役立つ。それにカロン内部を早期警戒機が行くならこちらの索敵範囲と合わせて、かなりの広域をカバーできる。」


障害物をミサイルとレーザーで排除しながら進みます。
障害物のせいでいつもの索敵能力が発揮できませんが、
それでもヘイムダルの索敵能力なら先制攻撃を貰うことは無いでしょう。
ひたすらひたすら障害物を砕く単調な作業ですが、提督はなんだか楽しそうです。
良く提督が何を考えているのか分からないと、隊員が言っているのを聞きますが、
そんなことはありません。表情は変わりませんが、行動に少し現れます。
指揮杖(提督はポインタに改造しています)を弄りだしたら機嫌の良い証拠です。


「提督敵機を発見しました。エクリプスです。まだこちらには気付いていないようです。」
「エクリプスか。障害物の陰に他の部隊がいる可能性が高いな。」
「つり出しますか。」
「いや、ここで敵部隊をたたけばどの道、ヘイムダルの進軍ルートを推定される。それなら敵本体から観測されても艦首砲で一気に敵機をけずろう。」
「あら、提督、意外と大胆ですね。」
「…艦首砲発射用意。」
大胆を下品にならない程度に強調して言ってみたら、おもいっきり視線を外されてしまいました。顔はそのままですが照れているようです。ちなみに恥ずかしがっている時の癖は提督帽を取って髪をかき上げる仕草です。
弄ると楽しいですね。


「ブルドガング砲発射!」
「エクリプス他、数部隊が消滅した模様です。新たにステイヤー、パトロクロスを発見。こちらに向かっています。」
「R機発進。ヘイムダルはミサイルで牽制せよ。」
「レディラブ、ルビコン、モーニングスター、ホットコンダクター各隊発進しました。」
「ここで手間取ると本体から援軍が来るぞ。一気に畳み掛けろ。」

艦首砲の先制で、敵部隊がだいぶ減っていたこともあって。すぐに撃破出来ました。
しかし、レーダー手が報告を上げます。
「アウルライト隊、敵着奇襲部隊と接触した模様です。」
「やっぱり奇襲部隊を用意していたのね…。提督、援軍を送りますか?」
「いや、ここでさらに部隊を戦力を割るわけには行かない。…あえて中央ルートを選んだんだマッケラン中尉も理解しているだろう。上手くこちらか、下方ルートに敵を引っ張ってこれれば援護できるのだが…ヘイムダル攻撃範囲に入ったら援護せよ。」
提督は意外とあっさりと決断しました。心配していると思いきや意外と普通です。
主席副官のマッケラン中尉は前回の作戦のあと早期警戒機部隊に一時出向になりました。
彼は何をしたのかしら?


「提督、敵防衛艦隊の本体を捉えました。」
「敵の索敵範囲は?」
「えーと…」
「敵艦隊の索敵外です。」
影が薄いアッテルベリ中尉が助け舟を出してくれます。

「全艦停止。下方部隊が来るまで一時待機。」
「全機停止を確認。下方部隊は無事でしょうか。」
「無事と思うしかないな。もし全滅しているようなら撤退するしかない。ヘイムダルだけではグリトニル攻略は不可能だ。」




・sideアッテルベリ中尉


以前の一件以来サブオペレーター席が私の居場所となりました。
「提督、下方ルートよりヨルムンガント級、視認しました。」
指令室スタッフが報告する。ディスプレイに拡大し過ぎて乱れた拡大画像が移ります。
かろうじてヨルムンガント級とわかる画質ですが、機体色からして当方のものに間違いが無いようですが、敵艦隊より攻撃をうけ、回避のためか緊急回頭しようとしています。あれは…

「ヨルムンガント級、敵防衛艦隊の砲撃を受けています!」
「提督、こちらも援護を!」
ベラーノ中尉が味方の援護を進言します。

「いえ、提督あれはデコイです。」
私が席から告げます。提督がこちらを見ます。
「データリンクが切れて区別が付かないが、なぜそう言い切れる。」
「デコイ艦は側面スラスターの一部について形はありますが、実際には装備されていません。本物ならば、あのような緊急機動をとる場合は、側面スラスターも使うはずです。しかしあれは側面スラスターが動いていません。」
「確実か?」
「十中八九は。」
「よし、ヘイムダル、前方ヨルムンガント級デコイが破壊された直後に、艦首砲発射。その後R機による攻撃を加える。なお、下方艦隊からの砲撃・進撃も予想される。味方誤射に気をつけろ。」
今までの所属では、私が進言すると煙たがられる事が多かったのですが、この提督は真摯に受け止めてくれます。ことバイドと機体のことに関しては。
…信頼されているのでしょうか。余り、そういう感覚とは縁遠い生活をしていたので分かりません。


敵防衛艦隊が目の前のヨルムンガント級を落すと、ヨルムンガント小規模な爆発につつまれ消えます。デコイなので破片も残りません。
艦首砲ブルドガングが敵艦隊を貫きます。ほぼ同時に下方ルート側からも幾条もの光が伸びます。
「中尉の言った通りだったな。」
挟撃が上手くいったお陰で、敵艦隊はすでにぼろぼろです。
敵艦隊の最後の一隻を落すと、グリトニルが視界に入ります。
敵艦隊を破りはしゃぐ指令室スタッフですが、こんな簡単に…おかしい。
「提督、接敵した敵兵力が少なすぎます。グリトニル周辺に伏せられていると予想されます。おそらく特機に分類される兵器でしょう。」
「たしかに、手ごたえが薄いが…特機、射撃偏重型のヒュロスか、あるい…」
「パイルバンカーシリーズがいるかもしれません。」


_________________________________


「グリトニルにケンロクエンが多数配置されています。」

Gw-PB3ケンロクエン。
決戦兵器として名高いパイルバンカーシリーズの最新作です。
R機の数倍はある巨体の内部にしまわれているパイルバンカーは、直撃時の破壊力は艦首砲並みであると言われています。
動きは鈍重で、当たらなければどうということは無いのですが、乱戦時に大型艦艇に近づかれると非常に厄介です。
戦闘機にパイルバンカーを取り付けるという発想は、今は無きアジアの一角の治安維持部隊の技術者の発案であったと言われています。


POWアーマーでグリトニル入り口を制圧したいのですが、接近すればパイルバンカーの餌食になってしまう。R機の多くはヒュロスにやられ修理中です。
へイムダルのミサイルでチャージキャンセルを行っていますが、手数が足りません。
「提督、亜空間機で引き付けましょう。」
「何、接近すればパイルバンカ-に貫かれるぞ。亜空間機といえど敵機に隣接すれば、通常空間に戻ってしまう。」
「正面から攻撃するように接近しパイルバンカーを誘い、亜空間潜行します。パイルバンカーの使用準備に入るとケンロクエンはその他の攻撃手段をとれません。また、敵機に接近され過ぎる前に、亜空間機は撤退させます。機体に接触すれば亜空間から引きずり出されますが、パイルバンカーの射程の半分はエネルギーをぶつける非物理的攻撃です。杭自体にさえ当たらなければ、回避は可能です。」

…久しぶりにこんなに長く話した気がします。
この作戦実は、パイルバンカ-発射ぎりぎりまで粘り、亜空間へパイルバンカーから逃れるという、チキンレースです。
どうしたのでしょう。普段の私ならこんな確率的要素の強い策はすぐに棄却していたのですが…

「よろしい、サンデーストライク隊に配置に付かせろ。POWも準備を」
「サンデーストライク前面に展開。」
「発進!」
サンデーストライクが一直線にグリトニル上のケンロクエンに向かいます。
ケンロクエンも赤い巨体をこちらに向けて、パイルバンカー使用形態になります。
「相対距離接近、3…2…1…!」
サンデーストライクの機影がかすみ、パイルバンカ-のが光とともに撃ちだされます。
どちらが早かったのか、私の目では見えませんでした。
しかし、そんなことより残りの機体・艦艇でケンロクエンに接近してミサイルやレーザーで一気に攻撃能力を奪います。

「!提督、一機パイルバンカー撃っていません。こちらへ向かっています。」
「緊急回避を!」
急制動に指令室も揺さぶられます。しかし、ケンロクエンは振り切れません。
パイルバンカーに光が集まり…

次の瞬間、閃光がケンロクエンを貫きました。
亜空間潜行したサンデーストライクがUターンして戻ってきたようです。
皆の口から安堵のため息が漏れます。
なんにせよグリトニル周囲には敵がいなくなり、POWアーマーが占領工作を行います。
POWの作業率が100%になると、艦内や、無線から歓声が上がりました。


グリトニルの入り口付近を制圧し、小官らはようやっとグリトニルの内部に踏み入る権利がもらえました。
未だ歓声は上がり続け、指令室スタッフ、パイロットも作戦自体が成功したかの様な様子です。
まだ、作戦の半分なのですが…しかし、私がそれを言うことはありません。
わざわざ士気を下げる必要もありませんし。
提督も少し笑っていますが、周りには流されていませんし問題ないでしょう。
むしろ、何か考え込むような仕草をしています。すでにグリトニル内部での決戦について、考えているのでしょうか。


隊員の体力に限界が来ていたので、このまま少しの休息をとり、機体の応急修理を行った後に、グリトニルに突入することになりました。



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難産なグリトニル突入篇でした。
外伝小説?そんなものは知りません。
提督主観で進めると自分の中で決めていたのですが、また破りました。自分に甘い作者です。

副官主観ということで実験作的な意味合いの強い話となりましたね。
ひとりベラーノ中尉が空気です。
主人公スゲー的な勘違い物は大好きですが、ちょっと食傷気味なので、そのような描写は抑え気味にしています。(マッケランは除く)


・予告編
防衛艦隊を蹴散らして、ついにグリトニルに突入した提督たち
基地を埋め尽くす敵機
吹き上がるブースター
待ち構える親衛隊
そして、爆炎をあげるグリトニル
オペレーション・ビターチョコレートの結末は? 
次回、最終話「Op.Bitter Chocolate」
提督の魂の叫び、その想いは届くのか?


…ごめんなさい、嘘です。



[21751] 15 Op.Bitter Chocolate
Name: ヒナヒナ◆2a9fd0bf ID:ec2c350f
Date: 2010/12/16 22:15
・Op.ビターチョコレート


刻々と開始が迫っているグリトニル攻略戦最終局面
―Op.Bitter Chocolate―
略して、ビタチョコ作戦
威厳が半減した。略さなければ良かった。
まぁ、私の食べかけのチョコが元ネタだから、威厳なんてもともとないのだけれど。


私は司令席に座り、外部を眺める。
今いるのはヘイムダル級戦艦の指令室だ。
思ったよりも艦艇・R機の損傷がひどかったため、グリトニル突入前に応急整備をしている。
包囲された敵は籠城の構えで、R機一機も出てこない。
本来なら、勢いがついたところで一気に攻め入りたいところだが、
難攻不落のグリトニルに満身創痍で突入などごめんこうむりたい。


グリトニル
グリトニルとは北欧神話で神々の法廷として用いられた神殿の名前らしい。
アッテルベリ中尉が作戦前に教えてくれた。
法廷に攻め入るとはクーデターでもない限りなかなかあるまい。
もっとも、元々グリトニルは地球連合政府の基地であったものを、
革命軍の手から取り戻すのだからクーデターではなく、正当な武力の行使なのだが。


そんなことより


現在、私の副官を勤めているのはディアナ・ベラーノ中尉。
悪魔料理人…もとい、おっちょこちょいでかわいい系のガザロフ中尉と違って、
大人の魅力があるお姉さんだ。危ない発言は置いておこう。
実のところ私は、ベラーノ中尉に恋をしている。
ベラーノ中尉はどう思っているのだろう?
大人の女性だし、告白しても、軽くあしらわれてしまいそうだ。

「この作戦が終わったら大切な話がある」
「花束も買ってあるんだ」

なんてフラグは立てたくない。それは危険な兆候だ。
実際にこの作戦は、私の艦隊が行うのは荷が重い。
弱気なのではなく基地攻略戦に一個艦隊のみ
(しかも戦艦と巡航艦、輸送艦数隻しかない)
で攻略させるとは本部もそうとうご乱心だ。また、本部の罠か。
しかし、私も軍人なので命令を違えることはしない。
…曲解したり、文句は言うが。


それだけ期待をされているのだろうか?
私の艦隊がTeam R-typeのお気に入りなんて、恐ろしい噂もある。
その噂をはやし立てていた者の話では、最新鋭機が続々と配属されるのが証拠だそうだ。
私もそう思うので、非常に怖い毎日を過ごしている。


本部の考えはともかく、
今回限りは生きては帰れないかもしれない任務だ。
グリトニルは不落とまではいかなが、攻めるのが非常に難しい軍事要塞だ。
バイドの様な物量や、内部からの呼応が無ければ落すのは難しい。
しかも敵はグリトニルを失えば太陽系内に拠点がなくなる。
窮鼠猫を咬むという言葉もある。
鼠というには立てこもっているグランゼーラ軍は巨大過ぎる。
実際、この作戦でかなりの数の戦死者が出るだろう。
私だって他人事ではない。


この機会を逃がしてはならない。
私の知識を総動員してベラーノ中尉への告白法を考えていた。





よし、この手だ。
ベラーノ中尉が返事を保留できず、
かといって、私の本気を疑われないようにする。

大規模な作戦の前には、指揮官による訓示があるのが通例だ。
その最後に艦隊通信でベラーノ中尉に全力で告白しよう。
公私混同と怒られそうだが、
私には真面目人間補正がかかっているから大丈夫だ。きっと。
ビタチョコ作戦に成功すれば大目に見てくれるだろうし。

問題は、普段真面目人間の皮をかぶっている私が、
はっちゃけられるかどうかだ。
艦隊戦では大胆だが冷静沈着と評される私だが、
人間関係ではあまり内面を出せないチキンである。
表情偽装スキルなんて微妙な技能を覚えるほどだ。
その私が全艦通信でそんなことを言えるのだろうか…
緊張しすぎて変なことを口走ってしまいそうだ。


でも、最後かもしれないのだから、告白しよう!
決めた。もう変更なし!
よし、そろそろ、作戦開始時刻だな。


「みんな聞いてくれ。我々はついに革命軍を最後の砦グリトニルまで追い詰めた。
ひとえに諸君らの尽力があってのことだ。このグリトニル攻略作戦Op.Bitter Chocolateの成功は諸君らの双肩にかかっている。私も全力で、我々の勝利と地球圏の平和のため、そして諸君らが家族のもとに帰れるように勤めると約束しよう。…さて最後に言っておきたい事がある。」

訓示なんてどうでもよいとばかりに、
頭の中では二人の私がケンカしている。
―さぁ、今だ。告白だ!
―いやいや、これは公私混同だぞ。
―愛してる。ベラーノ中尉! そう叫ぶんだ。
―無理だから、全体通信で愛してるとか恥ずかしすぎる。
―言いにくいけど、ガンバレ私! さぁ!
―ムリムリムリムリッ!告白とか無理!
逃げに走るべきか、公開告白するべきか。
そして、私は胸いっぱいに息を吸い込み叫んだ。



「愛してるぜ、べ、ベイビーッ!」


艦内で大爆笑が起きた。
やっちまった…最後の最後で逃げに走ってしまうとは…
何だよベイビーって。
しかも、全力で…
今時、誰も言わないだろ…
ベラーノって言えないからって、ベイビーって………
テンションがドリルのように地下に潜っていく中、
今まで培った顔スキルで、私は自信満々の顔を維持して、
それっぽいことをしゃべっている私。

こうなればヤケだ…最後にもう一度。


「愛してるぜぇ、ベイビィィィー!」


_______________________________________


ついに始まったビタチョコ作戦でやりきれない思いをすべて敵にぶつけた。
作戦前の醜態を忘れようと、ともかく熱く熱く指揮しまくった。
指令室のスタッフが意外な顔してみている。というより引いているのか。
もうヤケだ。恥ずかしいと思ったら負けなんだ!


「サンデーストライクはチャージ後に亜空間よりグリトニル上部に侵入!司令室周囲の敵機を蹴散らせっ!離脱タイミングは各機に任せる。」
内部空間への侵入は亜空間機の真骨頂だ。
チャージをさせたウォーヘッド隊を司令室近くの壁にめり込ませる。
最重要区画は亜空間移動を阻害する装置が付いており、亜空間機で直接コントロール室には乗りこめない。
司令室周囲の敵を背後から襲わせ、少しでも敵の密度を減らすことにした。


「ヘイムダルと直衛は港湾設備上部、その他部隊は下部より突入!艦首砲、波動砲で港湾防御壁ごと撃ち抜き進入口を確保せよ!」
グリトニルの正面玄関といえる大型港湾施設は、大型の空母でさえ発着可能な規模を誇る。
R機も比較的自由に運用できる広さだが、艦艇をおいて待ち構えるにはうってつけだ。
おそらく、キウイベリィなどを移動砲台としてこちらを牽制し、R機編隊などで待ち構えているのだろう。
「全艦てぇぇっ!」
私の号令に合わせて、艦艇が艦首砲、R機が波動砲を発射する。
ちなみにいつもはこんなに叫ばない。
波動砲の一斉射撃で開閉ゲートが吹き飛ばされるが、有り余るエネルギーがゲートを貫通すると、その後ろで爆発が起きる。
ゲート付近にいたR機が破壊されたのだろう。爆煙が晴れると、やはりというか、斉射を逃れた敵機―キウイベリィとヒュロスがいた。
こんな所で足止めを食らうわけにはいかない。
まず、移動砲台キウィベリーを始末する。遠距離砲撃に優れる機体なので、フォースで潰す。
大型人型兵器ヒュロスは白兵装備とミサイルの遠距離攻撃手段を持つ、迎撃に特化した機体だ。
遠距離からヘイムダルのミサイル‘ギャラルホルン’やレーザーで打ち減らし、R機を突撃させ中距離からのミサイルで殲滅する。



グリトニルの入港口は2つ、奥で合流して1本になり、中央縦断通路に続く。
下方通路を通ってきた部隊と合流するが、R機編隊の一部で機体が欠けている。
敵ヴァナルガント級からの攻撃が激しく数機落とされたとの報告があった。
「ダメージを受けたR機隊は各艦に戻り、無事な隊は中央縦断通路への橋頭堡を作れ。」
一旦、隊形を整える。
次は中央縦断通路だ。ここは基地内の全てに通じるメインストリートで、
港湾施設、長距離ワープ施設、そのメンテナンス用の施設、そして指令室に通じる通路などに通じている。
通じる設備が多いということは敵が潜む場所も多いということだ。
通路自体にも敵が配備されているだろうが、横からの攻撃にも耐えなければならない。
隊形を整えてから進軍するべきだ。
「輸送艦ヨルムンガント改、POWが数索敵敵範囲にはいりました。デコイ識別不能です。」
「すべて潰んだ!デコイでもこの狭い空間では危険だ。」
へイムダルの主砲、レーザーや、R機のミサイルで敵の装甲を削り、フォースアタックで止めを刺す。


「提督、応急修理、補給完了しました。」
「よし、R機で先行し、中央通路に入る。索敵は怠るな。」
機体の欠けた部隊に予備パイロットと機体を隊に組み込むのも慣れたもんだ。
たび重なるバイドミッションで再編成に次ぐ再編成でやってきた連合軍では、
新しいパイロット・機体が配属されても特に問題なく集団戦ができる。
というより、そのように訓練している。
バイドミッションのころは、撃ち減らされたR機隊が着艦するたびに補充人員が増えて、作戦が終わるころには、パイロットがそっくり入れ替わっているとかもざらだったらしい。


「提督、中央通路に布陣しました。」
「早期警戒機を先行させる。慎重に行け、不要な敵機をひきつけるな。」
早期警戒機アウルライト隊が通路中央を進む。ちなみにマッケラン中尉は別動のヨルムンガント級に参謀として乗っている。さすがに副官を他に出している余裕はなくなったし、別の艦に居るならうるさくない。
「提督!敵機を発見しました。ヘラクレスです。アウルライト隊敵射程内に入っています。」
「回避させろ!間に合うか!?」
もちろん、そんな命令を聞く前からアウルライト隊は回避に移っている。
ヘラクレスの波動砲ユニットからライトニング波動砲が発射される。3機がかりだ。
一機目の波動砲は上方に回避できたが、続く2波で回避の遅れた1機が消し飛ぶ。
3波でさらに3機が藻屑となる。
残ったのは脇目を振らずに上方に逃げ切った一機のみだった。
「R機各!ヘラクレスを撃破せよ、波動砲のチャージが…「提督!」…こんどは何だ!」
ベラーノ中尉の声に、思わず声が荒くなる。
「エネルギー反応急速増加!ワープ施設からです!」
「ワープ反応か!」
中央通路を埋め尽くすエネルギーの奔流にアウルライトの最後の一機が飲みこまれる。

「アウルライト隊全滅しました。ワープ反応はありません。跳躍ブースタの噴射のようです。」
「っ。隔壁をわざと閉めずに罠として使ったか。」
ワープ時には閉じられているワープ施設後部の隔壁が開いており、跳躍ブースタの噴射が中央通路にまで届くようになっていた。異相次元に突入できるほどのエネルギーを作り出す推進装置だ。R機などひとたまりもない。へイムダルとて危ないだろう。

「噴射間隔が狭く、へイムダルでは通過前に巻き込まれます。」
「まずは目の前のヘラクレスだ。波動砲のチャージが終わらないうちに撃ち落とせ。」

偵察機隊は全滅。…何度目の全滅だったか。
任務上未帰還率が高くなるのは仕方ないが、いい加減予備パイロットがいなくなる。
ヘイムダルの索敵機能は偵察機を上回るが、足が遅い。
しかも、この先の指令室へと通じる通路は狭く戦艦は入れない。
突入隊の索敵はどうするか。
…ヘラクレスが黙ったな。


「ヘイムダルを跳躍ブースタの射程ギリギリに付けろ、ギャラルホルン砲で管制部を狙い打て、一時的にブースタへの制御も緩くなるはずだ。残弾と、噴射を妨害できる時間を試算せよ。」
「ギャラホルン砲算弾は3斉射分、噴射妨害継続時間は…3分強です。」
「3分…R機、輸送艦を通す事を考えると、ヘイムダルが通れるか微妙だな。」
「一応、ヘイムダルの装甲ならば一撃で撃沈されることは無いと思いますが。」
「無理やり通っても、あのエネルギーに晒されれば兵装がほとんど使い物にならなくなるし、索敵能力も落ちる。良いマトだ。」
「提督、R機隊、輸送機、突破準備整いました。」
「よろしい。ギャラルホルン砲斉射用意。目標アングルボダ級ブースタ制御部だ。良く狙え。」
「1-6番システムクリア。発射可能です。」
「てぇぇー!」


ギャラルホルン砲ミサイルユニットから大型ミサイルが飛び出す。
途中アングルボダ級の妨害電波にあって、明後日の方向に向かうミサイルもあるが、
数基が制御部までたどり着く。
「ミサイル3基命中。跳躍ブースタ、エネルギー低下しました。」
「先行部隊突破。」



前衛のレディラブ隊、ルビコン隊、ドミニオンズ隊がブースタ噴射エリアの向こう側にたどり着く。
続いて、モーニングスター隊、グレースノート隊、ワイズマン隊などが噴射エリアに入る。


「提督、跳躍ブースター再チャージを開始しました。」
「ギャラルホルン砲発射準備。味方機に射線に入らないように警告せよ。ベラーノ中尉、発射のカウントを。」
「了解、…5,4,3,2,1…」
「てぇぇぇ!」


「第二陣通過しました。」
「後は、輸送艦とPOW、ヘイムダルか。」
私がヘイムダル通過までの算段を立てたところでレーダー係から報告があがった。
「! 上方、敵機発見。爆撃機タイプを含む多数です。先行部隊と戦闘に入りました。」
「R機隊、通過を急がせよ。敵に当たらなくてもいい。見方に当てないように弾幕を張れ。」
不味いな。こちらは戦力が分断されている上に、早期警戒機がいない。
一方的に核ミサイルで攻撃されかねない。
バルカンでは届かない(一応付いているが、バルカンは戦艦において武装としてカウントされない)ので、主砲レーザーで弾幕という豪華さだ。
対費用効果なんて言っていられない。ともかく味方機が撃墜されないようにしなければ。
この先は通路も狭く、補給・修理も受けづらい。ここで戦力を減らされるのは痛い。


「ドミニオンズ隊2機、モーニングスター隊1機撃墜されました。」
「ヘイムダルはいい。輸送艦とPOWを先に通せ。」
「ブースタ再チャージ開始しました!」
「弾幕を緩めるな。ギャラルホルン砲用意!」
3回目の一斉射が終わる。輸送艦は向こう側にたどり着けたらしい。
ヘイムダルは入り口側に残った。
ここで後ろを守りながら固定砲台だな。


「通信手、艦隊全機に通信を開け。」
「了解しました。全機に発信します。」
「さて。艦隊隊員諸君。旗艦ヘイムダルはこの場に留まることとなる。第一輸送艦ヨルムンガント級で進軍し、亜空間機部隊と合流後、指令室を奪還せよ。グリトニル解放の最後の一手はパイロット諸君に譲ろう。R機各機、POWアーマーのエスコートを頼んだ。ここでグランゼーラとの決着を付けるぞ!各員健闘を祈る!」

私はこんな燃えキャラだったか。
なんか、もうキャラが違うとか気にしない事にした。
作戦前にもやらかしたし。


縦断通路の先にあるのが、指令室への通路だ。ちなみにここから先は防衛上、通路が狭く戦艦などの大型艦艇が入れない。また曲がりくねっているため、波動砲などの武装も使用を制限される。我々地球連合軍の最大の武器の一つである波動砲が使えないのは痛い。ここからはもう一つの武器フォースで押すこととなるだろう。
通路の最奥、R機隊がギリギリ通れる広さの最終通路の先に指令室がある。


基地の占領の方はR機とPOWに任せるしかないな。
前後から挟撃にあえば、すぐに押しつぶされるだろう。
だから、私の仕事は旗艦ヘイムダルで、彼らの後ろを守る事だ。


ワープ施設用の整備ドックからトロピカルエンジェルの編隊が続々と襲ってくる。
R-11S超高機動機トロピカルエンジェルは、通常のR機では考えられない機動力を武器に一撃離脱を加える機体だ。波動砲・フォースは装備されていないが、その攻撃回避能力は凄まじく、戦艦で対抗するには相性が悪い。あの機動力で先行のR機隊を追撃されたらすぐに追いつかれる。ここで食い止めなければ。
「ヘイムダルは中央通路で待機。砲台として敵の追撃を食い止めるぞ!」


__________________________________


「第一輸送艦およびR機部隊、指令室への側通路に侵攻を確認。」
「提督、敵トロピカルエンジェル部隊来ます。」
「無理に狙うな。火器管制、近接機をバルカンで牽制させよ。」
「この距離では当たらないと思いますが。」
「敵の攻撃が鈍ればいい。敵機はあのスピードで突っ込んでくるんだ。バルカンの弾といえど当たれば痛いはず。ばら撒け。」
「了解しました。」
副官や、レーダー係が怒涛のように戦況を報告してくる。
とりあえず火器管制に指示を出すが、打開策を練らないとな。
ひたすら耐えて待つだけって辛い。


__________________________________


「提督っ!艦首砲冷却装置破損。ブルドガング砲使用不可能です。」
「レーザー、ビームで攻撃。ミサイル補充まだか!?」
「第一輸送艦から通信。《我、亜空間機部隊と合流せり。R機、機体損失軽微。》とのことです。」
「よし、みな聞いたな。我々も踏みとどまるぞ!」
リアルタイムでの通信は不可能だが、外宇宙航行を想定されている戦艦へイムダルは、強力な通信能力を備えている。
それなりの通信機器を装備している輸送艦からの通信ならば、一方通行ながら、なんとか受信できる。そのため不定期ながら戦果報告を受け、状況を確認している。

「提督、トロピカルエンジェル隊が再出撃してきました。」
ベラーノ中尉が報告してきた。面倒なのが来たな。全滅させきれなかった部隊が補給を終え出てきたか…
別働隊からの通信で一時的に士気が上がったが、このままではジリ貧だな。
「火器管制、敵機各隊を全滅させずに数だけ減らせ。」
「提督、それではまた補給して再出撃してきます。火線を集中して各個撃破すべきです。」
「だからだ。ベラーノ中尉。」


__________________________________


「敵機、後退するようです。おそらく補給のためと思われます。」
「火線強化!敵機の帰還を妨害せよ!」
「了解しました。」

「整備通路から敵駆逐艦進出してきました。敵トロピカルエンジェル隊の母艦のようです。」
「よし、引きずりだせたな。敵駆逐艦を狙え!母艦がなくなれば敵機は燃料切れか、ドックまで後退せざるを得ない。」
「了解、敵フレースベルグ級に追尾ビーム、主砲レーザー発射。」


_________________________________________________________________


「敵駆逐艦撃破。トロピカルエンジェル多数発艦してきました。」
「提督、ヘイムダル残弾が10%を切りました。」
「使える武装はなんでも使え。通信手、攻撃隊から連絡は!」
「先ほど、亜空間機隊と合流したとの報が最後です…。いえ、第一輸送艦から受信。《レイディラブ隊、グレースノート隊、指令室前にて敵親衛隊と交戦中。ルビコン隊、ドミニオンズ隊全滅、ワイズマン隊離脱。》との報です。」
R機隊の全滅を聞いたスタッフが呻き声を洩らす。反応するのはそこじゃないだろう。
士気を上げないと。マイクを片手に
「現在、R機部隊がグリトニル指令室まで進撃した。後は指令室のコントロールを奪還するだけだ。…総員!ここが踏ん張り時だ。生きて帰還するぞ!」
司令部スタッフ達がはっと顔を上げ、気合いを入れなおしている。
本当にあと少しだ。
そのとき、レーダー係が悲鳴に近い声をあげる。

「提督!通路下方より新たな敵部隊が出現しました!」
サブディスプレイに新たなフレースベルグ級駆逐艦とR機の姿が映る。
もう、新たな部隊を相手にするほど、エネルギーも弾薬も残ってない。
ここまで来て…!
そのとき、強制通信が入る。


『こちら、地球連合軍、グランゼーラ討伐艦隊所属、第7R戦闘機隊。グリトニル司令室および、全システムを奪還した。グランゼーラ革命軍に投降を提示する。』


基地指令室からの全周波数帯への通信だった。
目前まで迫っていたグランゼーラの艦艇は戸惑ったように動きを止め、
少しの間を置いて、投降の意思を伝えてきた。
追って基地司令室からヘイムダルへ作戦成功の報告が入りグリトニルの奪還を確認した。
基地システムを奪い返し、隔壁や、防衛システムなどの障害を取り除くと、
未だ抗戦の意思を示していたグランゼーラの残党はほとんど降伏した。
彼らもこの人類同士の戦いに厭いていたのかもしれない。


グランゼーラの艦隊の武装解除を行い、陸戦部隊を基地内の残党処理にあたらせていたが、急に爆音が連続して轟く。
…どうやら基地の崩壊が近いらしい。基地そのものが爆発する事は無いが、
いくつかの区画は吹き飛んでもおかしくなさそうだ。こうなれば敵も味方もない。
私は基地内通信を使用し地球連合軍、グランゼーラ革命軍双方に退避命令をだす。
両軍の機体が出口に向かうのを確認して、私も脱出の準備にかかった。


敵味方ともに動ける機体はみな退避している。
基地内・基地外ともに両軍の艦隊・機体の残骸であふれかえっていた。
今回の作戦だけで何人が戦死したのか…。
へイムダルに戻り基地の外に退避する。
そこにはそこかしこから爆炎をあげるグリトニルの姿があった。



爆発を続ける基地にはワープ設備に立てこもるアングルボダ級の空母が残っていた。
拿捕しようと外部からR機や艦艇が近づくと、システムダウンしていると思っていたワープ設備が突然稼動し始める。
どうやらワープ設備だけシステムを切り離しておいたらしい。
ガイドビーコンが伸び、アングルボダ級にも再び火が入る。長距離ワープの余剰エネルギーから設備を守るための補助隔壁が閉まり、円筒形の空母を陽炎のような揺らぎが包み込む。さらにエネルギーが高まりアングルボダ級が光に包まれ見えなくなり…
一瞬のうちに光の固まりが宇宙空間に飛び立った。
続けて数条の光が飛び立つ。


やられた、グランゼーラの残党に外宇宙に逃げられたらしい。
…しかし、外宇宙には人類の拠点は無いはずだが、彼らは何処へ行くのだろう?


ヘイムダルからそれを見ていた私は、すでに当初の熱が冷めていた。
無謀な指揮をしたつもりはなかったが、少し強引だったと反省した。
しかし、戦死者は予想より少なかった。
どうやらパイロット連中は私のおかしなハイテンションに引きずられて、戦意が高く予想外の戦果だったらしい。


その後、私は部下達からからかわれた。
今までド真面目な提督だと思われていたので、一歩引いていたというのだ。
実は熱血でノリの良い提督だったと、笑われた。
おやっさんや、整備員の面々からアンタ提督だったのかと驚かれたが、
おまえら本当に気づいていなかったのか。
しかし、おやっさんがいつも通りに接しているのを見て、そのままド突いてきた。
後で覚えていろ。考査表に書くぞ。


基地の崩壊がひと段落した後、
私は地球連合軍の艦隊司令官としてグランゼーラ革命軍と停戦同意の手続きを行った。
そして、基地内の生存者の救出と、戦死した部下達の簡易葬儀を執り行った。
ここにグリトニル基地を奪回し、私はOp.Bitter Chocolateの終了を宣言した。


__________________________________________________________


革命軍にはすでに主要な拠点をすべて失い戦争の継続は不可能だろう。
唯一、キースン大将率いる太陽系開放同盟―グリトニルから外宇宙へ跳躍した集団―と名乗る革命軍の一派だけは逃がしてしまったが。
ともかく人類同士の戦争はこれで終結するだろう。

ベラーノ中尉のことは…
あとで改めて告白しよう…
はぁ、戦争より告白の方が度胸が必要だなんて、聞いていなかった。
…待てよ!?次の機会ってあるのか…?


_________________________________


私と私の艦隊はその後地球に戻った。
この後、地球連合政府とグランゼーラ革命政府の間で休戦協定を結ぶ運びだ。
やっと、人類同士の戦争が終わる。また人類が一丸となって人類の敵バイドに備えられる。
もっとも、若き英雄ジェイド・ロスの艦隊のお陰で、外宇宙から侵攻してくるバイドは激減している。
後は太陽系内のバイドを駆逐すれば、人類は本当の平和を手に入れる事ができるだろう。
これで彼の英雄と彼の率いる艦隊が帰還しても、胸を張って迎えられるな。


ちなみに私にはこの功績を鑑みて新しい艦隊が与えられることになるらしい。
栄転かもしれないが、私は少し残念だ。
この艦隊から離れるということは、ここの部下達とも離れるという事だ。
やっと、本音を語り合える部下達が出来たと思ったのだが。




戦争の終結は少しだけ苦かった。




=============================
コンテニュー地獄もとい、前篇最終ステージ、グリトニル攻略戦でした。
ここでセーブリセットをしまくったプレイヤーも多いはず。
またギャグ成分が足りていませんね。

しばらく行方不明になっていたのはエースコンバットX2にはまっていたからです。すみませんでした。

さて、このあと、ゲームではデモが流れて前編が終了するのですが、
デモ挿入歌の「Cosmos」がいいですよね。原曲の「手のひら」も一緒にしてCD出してくれないかなー。聴いたことのない人はぜひ一度聞いてみてください。

さて、誰が読んでいるかも分からない本当に誰得な小説ですが、一応前編を終わらせるという目標を達成しました。あとはオマケを1本書いて取り合えず完結です。
後編はどうしようか、思案中です。
明らかにギャグが許容されない話が増えてきますしねぇ。
書くなら、シリアス化してチラ裏からお引越ししようかと考えています。



[21751] 【誰得?】ネタばれオマケ座談会【提得!】
Name: ヒナヒナ◆2a9fd0bf ID:ec2c350f
Date: 2010/11/01 01:00
・【誰得?】ネタばれオマケ座談会【提得!】


※作者の自己満からなる、本編とは独立したストーリーです。
※基本会話のみで成り立っています。メタ会話がダメな人はご遠慮ください。
※この座談会は激しいネタバレを含みます。むしろネタバレがメインです。
※キャラ崩壊(バイド化)が激しいので注意してください。
※発言者は書いていないので、どのコメントが誰だか想像しながら読んでください。














「では、第一回座談会を開催します。司会は小官フリードリヒ・アッテルベリが勤めさせていただきます。まずはあいさつを提督から…」
「今回は古き善きライトノベルあとがき風の座談会だ。」
「ようはメタな話題で盛り上がりながら、作者の言いたいことを登場人物に言わせる企画ですね。」
「まぁ、わりとノリだけで進んでいくから進行役なんて必要ないと思うぞ。というか座談会まで一人称が小官とか、空気読め。もっとフレンドリーに。」
「あ、アッテルベリ中尉いたんですね。普段は影が薄いから忘れてました。」
「…」
「ヒロコちゃん、けっこう酷いわね。」
「アッテルベリ中尉は一番設定がぶっ飛んだキャラだな。超無個性副官で通そうとしたんだけど、暴走キャラに変貌していた。土星基地グリーズ攻略戦では、完璧に私を食っているしな。」
「14歳でアカデミー卒業の天才というフレーズと、参入が模擬戦後というだけで、良くあそこまで膨らんだものね。」
「始めは提督の妄想設定だったTeam R-TYPE疑惑に、作者が流されたのですね!」
「小官の何が悪かったのでしょう?」
「空気具合。あまりの空気っぷりに作者がプレイ中に全く使わなかったから、キャラ形成が暴走したのだろう。」
「…」


「次はガザロフ中尉だな。一番外部情報の多い副官だな。公式のおまけ小説もあるし。」
「本来、ステージ2で参入するはずなのに、なぜ遅れたのでしょう?お陰で自分は出番が増えましたが!」
「作者が忘れていたから。」
「ひどいです提督。それに、なぜ私はあんな扱いなんですか?」
「それはね、ヒロコちゃん。とりあえずかわいい系の女の子キャラの宿命、料理音痴を再現したかったからよ。」
「その設定が、あまりパッとしなかったのは、不味い料理を食べて失神とかいうラノベにありがちなシチュエーションが、作者が苦手であったからと、小官は聞き及んでいます。」
「ひどいって…私に言われてもな。一応、公式小説からの設定を引き継いで、作戦立案は出来る子になっているな。」


「マッケランお前はダメだ。」
「提督、何をいきなり!」
「脳筋副官で全ての説明が付きますよね。」
「ガザロフ中尉も何を…!」
「マッケラン中尉は『!』で声の大きさを表していますが、それがウザいそうです。」
「アッテルベリ中尉!」
「真面目で正義感が強いという設定が、提督の事なら何でも信じる頭悪い子になってたわね。」
「ベラーノ中尉まで…!」
「あれだ、腹筋シャワーイラストを見たときにすべてのイメージが固まってしまったんだ。」


「ベラーノ中尉は、ゲテモノ好き設定でしょうか?」
「才女のイメージを損なわない特徴をつけたらしいです。ただし、ただの優等生だと他の副官と差別化できないから、アクセントをつけたと作者が言っていましたよ。アッテルベリ中尉。」
「あとは、執筆中のBGMが『コンビニ』だったせいですね!某動画の影響です!」
「マッケランもう復活したか…。私としてはもっと絡んで欲しかったのだが、いかんせん、参入が遅いからな。まともに扱っている話が2話しかない。ちなみにベラーノ中尉はアニメ画推奨だ。」


「最後は私か…」
「提督、最後まで名前がありませんでしたが?」
「アッテルベリ中尉、提督は提督よ。」
「原作のイメージを大切にしようと思って、私の名前は出さないと決めていた。そのせい表現が微妙なことになった箇所がいくつも…」
「本当は私生活もまったく出さないようにしようと思っていたのですが、休日篇とドプケラ前編で投げたそうです。」
「表面上は真面目っていう設定も初期のイカレ気味な性格も、途中から空気になっていますね。」
「…」


______________________________________________


「ホントに今さらだけど、プロットの段階ではⅠ提督でシリアスの予定だったり、スパ○ボ×R-TYPE TAC Ⅰ+FINALだったりしたんだ。」
「もはや、R-TYPE以外に共通項がありませんね。」
「なぜギャグ路線になってしまったのですか!提督。」
「うむ。初投稿でシリアス長編とか絶対完結しないと作者が気が付いたからだな。あとロス提督はギャグタッチにするには、真面目過ぎる。」
「クロスの方は、長編になるのはもちろんの事、キャラは多いわ、Rはバランスブレイカーだわ、いつの間にか地球連合が敵になっているわで、収集が付かないのが目に見えていたからだそうです。ちなみにラスボスはコンバイラで黒幕はTeam R-TYPEです。」
「スパ○ボクロスは地獄の門を開くようなものですから。数多のss作家の屍が見えるようだわ。」
「Ⅱなら副官という名前持ちキャラもいるし、選択肢がアレだから落ちも付けやすいからな。性格設定もしやすいし、名言も多いし。」
「メイゲン違いでは?そういえば提督は果敢MAX、利己的MAXな性格でしたね。」
「ガザロフ中尉、それは私ではない。作者のプレイスタイルだ。」


_____________________________________________


「…ところで、ヒロコちゃん。次の目的地は水が豊富な惑星だそうよ。ついさっき偵察隊から先行連絡があったわ」
「わぁ、ほんとですか。水浴びなんて久しぶりですっ!こういう時でないとアレを持ってきた意味が無いですものね。」
「そうね。では、私とヒロコちゃんはアレの準備がありますので席を外しますね。」


「…マッケラン、我々も準備だ。」
「何の準備です提督?」
「何の…?水中偵察の出来る機体を用意するに決まっているだろう!」
「提督、自重してください。提督が言うと不純な動機に聞こえます。」
「止めるなアッテルベリ。目の前にパラダイスがあれば進み、拒むものがあれば斃すだけだ!往くぞ!」























水棲惑星の偵察に出ていた偵察隊が戻ってきた。
旗艦に詳しい探査結果を伝達しようとしていたのだが…


―…あのコンバイラは、ナぜひトリで盛り上ガってイるのダロう?―


アンフィビアン達は、奇妙な振るまいをする旗艦を眺めて、
しばしたたずんでいた。






==============================
はい、コメント発言者当てクイズ。
答えは『全部コンバイラ』でしたー!
皆さンは正解でキましタかー?

番外編の副官ズはステータスで階級が不明になっているわりに
セリフのタブは階級がそのまま付いているんですよね。
会話は提督主観だから階級付きで、ステータス画面はプレイヤー(第三者)視点だから、
階級不明なのかと妄想してました。それともただの仕様なのか。

妄想だけでストーリー関係無くブッ込んだネタ話です。
後編はともかく、番外編は書く予定が無いので、これがオチってことにしてください。
ちなみに、ベラーノ、ガザロフ元中尉っぽい何かが用意しようとしていたのはガスダーネッドで、提督が用意しようとしていたのはバタリアンです。


さて、とりあえずこれで拙作は完結です。
処女作であり読みづらい部分も多々あったと思いますが、
なんとか、前篇終了まで持ちこめて安心しています。
ご声援ありがとうございました。
それでは、機会(とやる気)があれば、後編でお会いしましょう。



[21751] 【後編開始】なかがき
Name: ヒナヒナ◆2a9fd0bf ID:ec2c350f
Date: 2010/11/02 01:57
こんにちは作者のヒナヒナです。

前編からの変更点としまして以下の点に注意してください。


・番外編は未定
・前編最終話で提督がはっちゃけたので、後編は性格が変わってくると思います。
・副官が倍に増えるので、各人の持ち話が少なくなります。
・たぶん、ギャグ混じりのシリアスになると思います。
・ギャグ色を薄くするので、キャラが多少普通の人に戻ります。
・艦艇には名前を付けていなかったのですが、逆に面倒なことになっていたので後編から名前をつけます。


ふつつか者ですがよろしくお願いします。



[21751] 1 提督と新艦隊
Name: ヒナヒナ◆2a9fd0bf ID:ec2c350f
Date: 2010/12/16 22:18
・提督と新艦隊


“貴官を大将に任命する。
また、この辞令を以て特別遠征艦隊の司令官に任命する”


嫌がらせか、これは。
南半球第1宇宙基地の統合作戦本部のとある一室で、
私は辞令書を睨んでから、なぜこうなったのか思い返す。


____________________________________


太陽系解放同盟
グリトニルから長距離ワープで離脱したアングルボダ級があったのだが、
そこにはグランゼーラ軍のトップ、キースン大将が乗っており、彼らは太陽系解放同盟を名乗った。
彼らは何故か両軍の兵器情報を手に入れた事を、両政府に言いふらしていた。
噂とは怖いもので、解放同盟がより強力な兵器開発に着手しているという噂が民間で流れるまで時間はかからなかった。
両軍から恨まれるようなことをして何がしたいのか。
さすがに謀将として大将まで上り詰めた人間が政治音痴ではなかろうが。


解放同盟を討伐したいが、休戦中とはいえ自軍の戦力を減らしたくない。
地球連合、グランゼーラのお偉方たちは、そんなことをグダグダと一カ月近く協議していた。
そして妥協の結果、両陣営の混成艦隊が創設されることになった。
そんなかわいそうな艦隊の初代司令官は…

_____________________________________


私は辞令書をきれいに畳んで戻し、見なかった事にしてみた。
もともと、一個艦隊というには戦力の少なかった私の艦隊に、
革命軍を加え。大艦隊として生まれ変わった特別遠征艦隊!
うん、そうだな。規模は大きいけど、どうみても寄せ集め部隊だな。
特別ってところに、お前ら軍の主流じゃないんだよ。っていうメッセージを感じるんだけど。
終戦の英雄の名前でまとめろって、私は革命軍側からしたら宿敵じゃないか。
…また、本部の罠か


無理やりにでもポジティブに考えてみよう。私の精神衛生のために。
まず、元の部下達とまた戦えるというのは素晴らしいことだ。
たぶん良く話せば、グランゼーラの兵士たちもそんなに悪いやつらじゃない。
人間、共通の敵がいれば手を取り合えるさ。
やっと本部が新しい戦艦くれるって言うし、
Team R-TYPEもまた実験機を…いや、これは聞かなかった事にしよう。
なにはともあれ、新しい艦隊、新しい部下達が私の指示を待っている。


私は終戦の英雄として祭り上げられ、大将という破格の地位を貰ったけど、
まぁ、どうせ艦隊では提督としか呼ばれないし、階級で特に変わることもないな。
艦隊の編成作業か。書類事務が大量に…
そういえば、副官のマッケラン中尉を早期警戒機に乗せてみたことについて、人事部よりお叱りを貰った。
指揮士官の育成にどのくらいの時間と金が掛かるのか分かっているのかとネチネチ言われた。
これだから地上勤務は嫌いなんだ。

 
__________________________________


さて、討伐艦隊の指令官を押し付けられた私は部隊編成のため、
あれから一か月くらい統合作戦本部に詰めている。
今度は受領することになっている戦艦を見に行かなくては。工廠は遠いな。
そんなことを考えながら基地内の廊下を歩いていると、整備班長のおやっさんが現れた。
この人も新艦隊の隊員へと私が指名した。

「なんだ、若いのか。暇なのか。」
「いや、暇なわけではないのですが。新艦隊の旗艦を受領しに行くところです。」
「じゃあ、工廠に行くのか。若いの良いものを見せてやるから付いて来い。」
「まぁ、方向は同じですから一緒に行きましょうか。」


この人もすごい人だな。統合作戦本部のある基地内で将官相手にタメ口とか、不敬罪を問われてもおかしくはないぞ。
私は艦隊の編成作業とかあるから決して暇ではないのだが、少し付き合うくらいの時間はある。
おやっさんは部品や機体受領のために来たのだろうか?
話しながら工廠まで行ったのだが、すれ違う人が怪訝な顔をしている。
そうだよな、将官服の若造と、油だらけの作業服を着た壮年の下士官の組み合わせはミスマッチだ。


工廠についたのだが、通常通路ではなく作業通路に進んでゆく、見張りがいるがおやっさんが声を掛けると、笑い返してすんなり通してくれた。
一応低レベルながらも機密があるのでは?セキュリティはどうした。
一般工廠を横切り、奥の機密区画に私達は到着した。将官だって許可が必要な区画だ。
おやっさんがそこから出てきた技術士官を捕まえて、何事か話している。
暫くすると技術士官が折れて、中に案内してくれた。それでいいのか?
区画に入って見上げると、そこには巨大な戦艦が建造中だった。
塗装もまだしていないが、現主力戦艦ムスペルヘイム級に見られる槍状構造を持っている。
艦首砲ユニットもまだ組み込まれていないが、かなりの大型だ。


「閣下、これが我が軍の最新兵器。戦艦ニブルヘイムです。」
「これが…噂は聞いていたが、大きいな。」
「ええ、地球防衛の要となるべく設計・建設されました。地球防衛艦隊から順次配備されていく予定です。」
ということは、私の艦隊に回ってくるのはだいぶ先だな。
今回私が受領するのはヘイムダルを改装した、テュール級戦艦だ。
ムスペルヘイム級などの主力艦は最精鋭である地球防衛艦隊に優先的に配備されていくから、こちらには回ってこない。最新艦など絶対にもらえない。
邪推だが、私の艦隊にはグランゼーラ出身の隊員が多数いるから、
本部としては余り最新兵器を回したくないのではないだろうか。


「ん?あちらは何だ?」
「あ、閣下。あっちはダメです。Team R-TYPEの研究開発区画です。」
「Team R-TYPE…だからあんなに警備が厳重なのか。」
「ええ、彼らは研究者と独自の技術者、整備員を持っていて、我々本部の技術士官は入れないんです。共同で開発すべきと思うのですが。」
「やつらの秘密主義は今に始まったことではない。」
技術士官は残念そうな顔で、おやっさんはムスっとしてコメントした。
なんかあったのか。周りの反応を見るにおやっさんは昔ここに居たようだが。


「彼らは実験機を次々に戦場に送り出してデータを収集しています。戦力として開発するのではなく、データを収集すること自体が目的かの様です。」
そうだね。私の艦隊も付きあわされたね。
しかし、軍開発部とTeam R-TYPEは独立して研究開発をしているのか。
だから、あんな変な配備だったんだな。可笑しいと思っていたんだ。
Team R-TYPEのお気に入りと呼ばれて、最新機が続々と送られてくると思いきや、
本部の管轄である、艦艇や主力機は配備が遅れる。
…今まで私の艦隊がどう扱われていたが、よく分かる。
本部は捨て駒か時間稼ぎ要員、Team R-TYPEは良い実証部隊として見ていたのだな。


「…オフレコですが、彼らが実験機を次々に送り出しているのは、ある機体を作るための技術実証であると、噂されています。」
「ある機体…?」
「それ以上の噂は伝わってきません…」


R機の開発運用はバイド殲滅の手段であるはずなのに、Team R-TYPEでは違うらしい。
戦争が手段に、R機の開発が目的になっている。
戦争を望んでまで兵器を開発する…その歪んだ思想の先に何をみているのか。
人類は何処へ向かっているのだろう…


__________________________________


艦隊の編成を済ませて、いよいよ太陽系開放同盟の討伐に向かうことになった。
私は修繕された冥王星基地グリトニルで、遠征前の最終準備を行っている。
キースン率いる太陽系開放同盟は外宇宙へのワープ空間に留まっていることが観測されている。
我々も敵を追ってワープ空間に乗り込むことになる。
長距離ワープは初めてだ。


そこにグランゼーラの小豆色の士官服を着た男女が4名やってきた。
私を見つけると。一列に並んで敬礼する。

「エマ・クロフォード中尉です。」
切れ長の瞳と怜悧な顔が相まって、冷たい感じのする女性だ。
仕事は出来そうだが、ジョークとかで笑ってくれるだろうか。
エマ中尉は前に見たことがある。地球連合政府とグランゼーラ革命政府の休戦協定を結ぶとき、グランゼーラ側の士官として場に居たと思う。


「リョータ・ワイアット少尉です。提督、お願いします。」
こちらは若い男性士官だ。大きい青い瞳と色素の薄い金髪を持つ青年…というよりは少年といった感じだ。童顔もあって士官学校を卒業したてと言った印象を受ける。お姉さんらから好かれそうだな。


「アイリ・ヒューゲル少尉です。これからよろしくお願いしますっ!」
元気の良い感じでよろしい。長い金髪をツインテールにしていて、こちらも女性士官というよりは少女といった感じだ。笑顔が良く似合う。
ところで、ヒューゲルとはバイドミッション時に作戦参謀として活躍した名将ヒューゲル中将と何か関係あるのだろうか?


「クロード・ラウ中尉です。お見知りおきを。」
こちらは、前の2人と違って落ち着いた感じの男性だ。グランゼーラの士官服を見事に着こなしていて伊達男といった様子だ。余裕のある態度を崩さず軍人としての自負が見て取れる。
しきりに眼鏡を触るのはクセか。



「以上4名、ただ今をもって副官として着任いたします。」
「了解した。我々特別遠征艦隊は、君たちを歓迎しよう。ようこそ、特別遠征艦隊へ。」


____________________________________


さて、新戦艦と補充されたR機、人員も大幅に増員されたところで、出発しよう。
その前に私は遠征前に総員の前で演説を行う。


「かつて、地球人類は滅亡の縁に立たされていた。多くの都市が壊滅し、勇気ある軍人たちが戦死した。人類はバイドの恐怖におびえていた。この危機を救ったのはR機と若き英雄ジェイド・ロス提督だった。彼の英雄は一個艦隊でバイド中枢に進軍して、地球圏に平和をもたらした。彼らは人類の生存、平和という崇高な使命のために命を賭して、外宇宙へと旅立っていったのだ。
さて、この艦隊には地球連合とグランゼーラ双方の隊員が乗っている。ついこの前まで戦争を行っていた地球連合、グランゼーラ両軍だ。しかし我々は和解し手を取り合った。もちろんまだまだ問題はある。しかし、人類の平和のために一丸となって任務に当たることが出来ると私は信じている。そして、人類の和を乱す太陽系開放同盟とその指令官キースン大将を打ち取ったそのときこそ、真に地球人類が一つにまとまるときだ。我々の目的は太陽系開放同盟の討伐、そして人類が再び一つになったことを示すことだ。いつの日か帰ってくる英雄たちを、人類全体で迎えようではないか。」


私は目の前に整列する隊員や艦隊内中継しているカメラを一度見渡す。みな真剣な表情だ。
私は自信に満ちた顔を意識して、彼らに語りかける。




「さあ、行こうか。」




==================================
見切り発車の後編1話目です。
作者の場合、とりあえず思いついたときに出さないと、永久に書かないので。

後編に突入するに当たってチラシの裏から引っ越してきました。
後編…副官が8人に増えて、キャラ付けが大変だ。
副官って将官に2人くらい付けばいいような気がするのですが…。


以下、後編開始時の艦隊編成

○艦隊編成
旗艦 テュール級戦艦  ‘エンクエントロス’
ガルム級巡航艦     ‘ブスカンド’
フレースベルグ級駆逐艦 ‘レーニョベルデ’
アングルボダ級宇宙空母 ‘エストレジータ’
ヨルムンガント級第一輸送艦 ‘リャキルナ’
ヨルムンガント級第二輸送艦 ‘ルミルナ’


○R機編成

・レディラブ隊A (発展途上の中間機、ピンクのキャノピーが可愛い、通称へきる号)
・レディラブ隊B  
・ウォーヘッド隊 (R-TYPEⅡの自機、亜空間機。いないと難易度がすごいことに…)
・サンデーストライク隊(Super R-TYPEの自機(?)、亜空間機だが今一ぱっとしない。)
・ワイズマン隊(皆大好き試験管機。誘導波動砲のお陰で大活躍。射程が5あれば…)
・モーニングスター隊(開発打ち切りの砲台、索敵外から敵を消し飛ばすのが楽しい)
・ホットコンダクター隊(砲台その2。なんで指揮者がコンマスより下なの?)
・ドミニオンズ隊(使い勝手の良い灼熱波動砲のお陰で、バイド戦でなくとも使えます。)
・クロス・ザ・ルビコン隊(残念機。タクティクスでは渡河に失敗した模様です。)
・アウルライト隊(紙装甲早期警戒機、ゲーム後編では戦艦や、亜空間索敵のお陰で影が薄い。)
・ステイヤー隊(バルムンクの砲台。意外にバリア弾が優秀で生き残る。)
・アサノガワ隊(浪漫機体。石川県警所属の我らがパイルバンカー。)
・ラグナロック隊(R-TYPEⅢの自機。拙作では幼体固定されてません。)
・エクリプス(強化仕様)隊(可変戦闘機、試作機からパワーUPしてきたが微妙)
・ピースメイカー隊(その移動力で敵陣に突っ込みZOCにつかまるのはお約束。)
・ナルキッソス隊(人型。武装が中二病であることにさえ目を瞑れば優秀な機体。)
・パワードサイレンス隊(ジャミング無双機。これがないと一気に難易度が上がる。)
・工作機(採掘専用機。鈍足で良く置いてかれる。アームがぴくぴく動いてキモい。)
・POWアーマー(我らがマスコット。1機はバルムンク専用機になるのが常。)



[21751] 2 提督と異相次元考
Name: ヒナヒナ◆2a9fd0bf ID:ec2c350f
Date: 2010/11/03 17:47
・提督と異相次元考
※今回の話は途中ものすごく理屈っぽくなっています。読まなくてもたぶん問題はないと思われるので、嫌な人はパパッと読み飛ばしてください。


『跳躍施設稼動中』
『ワープ施設内総員退避』
『補助加速器エネルギー充填完了』
『跳躍システムオールグリーン』
『後方補助隔壁閉鎖、』
『ガイドビーコン点燈、前方隔壁開放します。』
『最終確認終了』
『グリトニル基地からワープ艦艇へ、ブースタへの点火準備をしてください。』
『旅の無事をお祈りします。』



『3.2.1.Let ‘ s go!!』



___________________________________


私は今、旗艦のテュール級戦艦‘エンクエントロス’の司令席にいる。
たぶん真っ青な顔をしているだろう。
別になにか悪いものを食べたとか、熱があるとかではない。
敵に不意打ちされたとかでもないし、今のところ艦隊内で事件も起きていていない。
なぜこうなったかというと…


____________________________________


ワープ空間というのは特殊な空間だ。
我々人類が普段知覚出来ない異相次元のうち一つで
通常空間を繋ぐバイパスとして機能するものをそう呼んでいる。
理論上では異相次元は、異なる次元同士や、時間の壁をも破って繋げられるらしい。


ウォーヘッドなど亜空間機が入り込む亜空間もこの異相次元の一種だ。
この亜空間は異相次元よりさらに不安定で、存在するだけでエネルギーを使う。
亜空間機は完全に異相次元に入るのではなく、
通常空間の一枚裏側というのだろうか、
ともかく通常空間と異相次元の隙間に無理やり入り込んでいるのだ。
そのため通常空間を観測しながらも、通常空間の大体の物体を透過できる。


透過出来ないものとは亜空間防御された施設とかバイド体や戦闘機、特機などの高エネルギー体だ。
これらは、そのエネルギーの高さゆえに存在が亜空間まで干渉していることがあり、
そこに触れると、不安定な亜空間から、安定した通常空間に引き戻される。


通常空間を地球の表面、亜空間を地球重力圏、異相次元を宇宙空間と例えると分かりやすい。
地球の表面は安定している。地面の張力と重力が釣りあい立っていられるからだ。
宇宙空間も安定している。無重力だからだ。加速度を加えなければ状態は変化しない。
ただし、宇宙空間と違って異相次元は無数にある。
地球の重力圏(非地表)は不安定だ。地球重力圏に留まるには、第二宇宙速度を超えない程度に、なおかつ墜落しない程度に出力を調整する必要がある。
高エネルギー体は険しい山だ。高度8000mを維持していようが、エベレストの山肌に接触してしまえば、そこは地球の表面だ。もちろん途中で燃料が尽きれば墜落する。ちなみにこの例えでは衛星軌道を周回して高度を維持することは考えない。ラグランジュポイントもだ。
例えは例えなので違う部分は多々あるが、理解の助けとして考え出されたものだ。
そのくらい目くじらを立てるものではないだろう。


ただし、特殊なことに空間(…というより世界というべきか?)は矛盾を嫌う。
亜空間機の引き戻される座標に別の強固な物体(大気や水、微小な物体は無視される)が存在すると、通常空間に復帰できず亜空間に留まるになる。すでにその座標が占有されているから、戻れないのだ。つまり亜空間から引き戻されないためには、機体が建造物や大小の天体にめり込んでいればいいわけだ。


話を戻そう。
不安定な亜空間に対して、異相次元はそれなりに安定しており、次元を超えるとき、
つまりワープインするときと、ワープアウトするときのみエネルギーが必要になる。各種法則が強固な通常空間を割って異相次元に行くのにはエネルギーが多量に必要だが、法則が軟弱な異相次元から通常空間に移行するのは、そこまでエネルギーを必要としない。長距離ワープする艦艇は帰りのワープイン・アウト分のエネルギーブースタを持って行くこととなる。高出力な戦艦などでは主機をフルドライブすれば、ワープアウトに足るエネルギーを得ることが出来ることもあるが、空母や輸送艦など出力の小さい艦艇ではワープアウトにもブースタが必要だ。

なお、異相次元航行能力を持たない物体は異相次元に存在できない。
何かの拍子に入ってもすぐに時空の歪みに飲み込まれるのだ。
ちなみに異相次元戦闘機であるR機や、現在就航している宇宙航行艦は異相次元航行能力を備えている。


この空間では物理法則の一部が乱れているように観測されるらしい。
艦艇の姿勢制御も非常に難しく、艦隊の隊列も乱れっぱなしだ。
人間の方も、おかしな感覚に晒される。
四方八方から引っ張られたり押されたりするように感じるのだ。
そんなに強いものではないが、まともな三半規管をもっている者はまず間違いなく酔う。
…パイロット達は普段から酔止め措置をうけているから大丈夫…らしい、のだが…私は…


…………


えずいていたら、今回の副官ワイアット少尉が背中をさすってくれた。
つまり、私は見事にワープ酔いになったわけだ。
出航前の手続きに追われて酔い止めを飲まなかったのがよくなかった。
さっき飲んだのでもうすぐ効くと思うのだが…。
うっ…


__________________________________


何とか、ワープ酔いから持ち直せた。
「助かったよ、ワイアット少尉。少尉はワープ酔いしていないようだが?」
「はっ、僕…小官は酔わない性質なんですよ。実家が月面都市セレーネにあるのですが、月面車で都市外を走るのが両親の趣味だったので、揺れとかには慣れてしまいまして。」
「僕でいいさ。うらやましい、この不快感が後何日も続くと思うと………う。」
「提督?大丈夫ですか、また顔色が…」


いかん、余計なことを考えたら、不快感がぶり返してきた。


「! 警報!?」
「状況を知らせ。」
「ワープ空間内に敵影発見。接触まで15分です。」
「第一種戦闘配備!演習通りにやれば問題ない。」
「敵、太陽系開放同盟小規模部隊と思われます。」

新規の混成艦隊ということで、我々は演習を重ねていた。
スタッフたちは新しい艦になれるのに必死だし、パイロット達も設計思想の違う機体と連携を取ろうと訓練を重ねてきた。成果を確認する時だな。


_________________________________


私は酔っていない。私は酔っていない。私は酔っていない。
よし、たぶん大丈夫だ。
さっき、失った信用を取り戻すぞ。

「船体制御の難しい大型艦は後方で待機。フレースベルグ級駆逐艦‘レーニョベルデ’、第一、第二輸送艦‘リャキルナ’‘ルミルナ’で当たれ。」
「了解しました。」

比較的小さい駆逐艦や輸送艦、R機はワープ空間の歪みに捕らわれにくい。

「前哨戦だ。一気に片付けるぞ。」
「了解しました。」


____________________________________


戦闘は意外と苦戦した。開放同盟は先にワープ空間入りして、この空間になれている。
対して私の艦隊は基本的に跳躍空間は初めてで、隊員らが機体制御に戸惑っていたからだ。
しかし、10分くらいすると次第にこちらのパイロットも慣れはじめた様だ。
ミサイルを明後日の方向に飛ばしていたのが次第に相手を捕らえ始めたし、
フォースシュートも着実に相手の機体を削り取っている。
それを見た私は横に立つ副官に小声で話す。


「ワイアット少尉。」
「はい、なんでしょう提督。」
「君はやはり、フォースが人類相手に使われているのは、不快か。」
「残念なこととは思いますが、僕はフォースにそこまで強い忌避感はないのです。」
「君はグランゼーラに参加していたのでは?」
「僕は元々は連合の士官でしたが、グランゼーラに亡命したんです。グランゼーラ革命政府に賛同した人全てが、フォースを嫌っているわけではないんです。…こんな事言うのは失礼かもしれませんが、グランゼーラにいた人たちは、地球連合政府のやり方に不満を持っていたのだと思います。」
「なるほど、地球連合を嫌っていた人々は、地球連合に明確に反対姿勢を示していたグランゼーラ革命政府に参加したのか、反フォースはその分かりやすい旗印だったわけだ。」
「僕の個人的な考えに過ぎませんが。」
「みなが皆、フォース使用に反対でないと知って安心した。艦体内で離反者は出したくないからな。」


私達は旗艦エンクエントロスの指令室で、輸送艦リャキルナのカメラが捉えた映像を見ている。
損傷したR機が一機戻ってきて、強行着艦し、船外カメラの目の前で辛くも停止する。
ディスプレイに大写しにされたフォースからもたらされる光が、
戦闘照明で薄暗くなった指令室をオレンジ色に染める。
バイド種子から作られたフォースの光を見て
私はまるで夕日のようだ。と場違いなことを考えていた。


_____________________________________


そんなことをやっているうちに、波動砲が敵旗艦を打ち抜き爆発させる。
…外に投げ出された人は、歪みに捕らわれて消えて行く、どこに行くのだろうか。
敵反応がなくなったことを確認してから、救助に向かわせる。
ワープ空間内で、はたして救助可能な人がいるだろうか。
私はパイロット達や戦闘に出ていた駆逐艦、輸送艦の乗員を労って、いくつか指示を出した。
そして事後処理をワイアット少尉に任せて、自室に戻った。


別に、今更、倫理的な悩みを抱えたわけではない。
地球は少し前まで、バイドと生きるか死ぬのかの生存競争を繰り広げてきたのだ。
人間対人間用に培われてきた、旧来の倫理感ではやっていけない。
そんなもの、軍人ならみんな分かっている。
私が気にしているのは…


そう…また、ワープ酔いがぶり返してきたのだ。
キモチワルい。
これはワープ酔いだけではないな。
絶対、このところの艦隊編成や遠征準備で…
追われていたのがっ…、一気に、きた…んだな。


…………


緊急連絡以外繋ぐなと言っておいた。



=================================================

シリアスで行くといったのにもうこれですよ。
作者はテレビで緊迫したシーンが続くと、
耐えられなくなってチャンネルを換えるタイプです。

調子に乗って書いている内に、半分は異相次元考察になっていますね。
たぶん提督酔ってるから、現実逃避しているんです。
そういうことにして置いてください。

艦の名前は覚えなくてもいいように書くつもりです。
ただ文章上あった方が自然な事が多かったので、付けてみただけです。
隊の名前も普通に機体名です。
アンタレス隊とか、グリフィス隊とか付けようかとも思ったのですが、
どうみても、エスコンです。ありがとうございました。



[21751] 3 提督と巨大戦艦
Name: ヒナヒナ◆2a9fd0bf ID:ec2c350f
Date: 2010/12/16 22:21
・提督と巨大戦艦




緊急連絡以外で呼ぶなといったら、本当に緊急連絡で呼び出された。




敵襲とのことだが、ともかく指令室に行かなくては。
連絡してきた副官はワイアット少尉ではなく、ヒューゲル少尉だった。
勤務交代するほど、私は寝ていたのだろうか。
時計を見ると6時間ほど経過している。
ベッドに倒れるこむ前に飲んだ酔止め薬のお陰で、今のところワープ酔いは気にならない。
よし、大丈夫だ。
30秒で着替えて指令室に向かう。寝癖は提督帽でカバーだ。


指令室のディスプレイは緑だった。
緑色の巨大な船体、駆逐艦ならすっぽり入ってしまいそうなバーニア。巨体の表面を覆うがごとく取り付けられている砲門。一番近い言葉を当てるなら戦艦だ。


「これは先行偵察に出ていた早期警戒機からの映像です。早期警戒機はこのあと、随伴しているバイドの攻撃にあって、離脱しました。この巨大戦艦からはバイド係数が観測されています。」
「バイドか。接敵時間は?」
「試算では10分後です。」


ヒューゲル少尉が顔に似合わずきびきび応える。
ただのお嬢様と言うわけではないようだ。
しかし、こんなバイドがいたのか…


「グリーンインフェルノ。」


アッテルベリ中尉の声だ。あの戦艦の名だろうか。
アイコンタクトで続きを促す。


「あれはグリーンインフェルノと呼ばれている巨大戦艦です。かつて、長距離ワープを頻繁に行っていた頃に、跳躍空間に出現する巨大戦艦があるという噂が立ちました。《出会ったが最期》などと言われていたようです。ワープ中に緑の地獄にあったら生きては帰れないと。軍が根も葉もない噂としたので、都市伝説の類とされていますが、実際には軍の偵察機なども数度接触しています。我々とは別の高度な文明がつくった戦艦であるというのが非公式な見解です。」


「対処法は?」
「偵察機は逃げたようですが…。ここでは迂回路もありません。」
「我々はこの先に進み開放同盟を討伐しなくてはならない…。総員、第一種戦闘配備につけ!目標、巨大戦艦グリーンインフェルノ。なお、小型バイドとの戦闘も予想される。R機隊出撃準備を。」


口々に了解という声を上げる指令室スタッフ。
あいかわらず、妙な知識が豊富だなアッテルベリ中尉。
そういえば、何でいるの。今回のシフトに入ってたっけ?
聞いてみると、何故かヒューゲル少尉が答える。


「実は、私、この艦隊への着任が遅れたせいで、引継ぎが終わっていないんです。副官みんなでミーティングして、それじゃあ、今まで提督についていた副官と新しく来た私達グランゼーラの副官と2名で補佐につこうという話になりましたっ。」
「昨日、定例会議を開いたのですが、提督は体調不良と…」
「提督はワープ酔いでダウンしているってリョータ君が言っていたので、暫定的に副官のみで決定しました。」


良くしゃべる子だ。しかし、余計なことは言わなくてもよろしい。
あとアッテルベリ中尉、上位者なんだからセリフを奪われたら怒ってもいいんだぞ。


「提督、布陣はどうしましょう。」
「アッテルベリ中尉、敵の弱点は?」
「データにありません。今までの記録では逃げるか殲滅されるかです。」
「提督、敵は戦艦です。遠距離からではどのような兵器で攻撃されるか分かりません。R機を使って接近戦を仕掛けましょう。大きなものほど近寄って攻撃せよ。っておじい様もいっていました。」

おじい様?やっぱりあれか。3世か。
まだ時間はあるし、ここらで副官の性格はつかんで置きたいな。試してみようか。

「ヒューゲル少尉、もう少し詳しい説明を。」
「はいっ、索敵の結果、目標の近距離砲はそこまで強力では無いようです。小型バイドにさえ注意すれば撃破可能です。船体のどこかに主機かそれに通じる通路があるはずです。そこをR機で撃破します。」
「あの巨体では、接触するだけでR機など潰されかねん。ワープ空間の壁と船体に挟まれれるおそれがあるが?」
「下方バーニアの噴射から未来位置を予測可能であると思います。また、凹凸のある形状をしていますので、予測さえできれば敵船体の影に隠れられます。」


結局それしかないだろうな。
どのみちあの巨大戦艦の装甲にこちらの武装が通じるとは思えない。
であるなら、敵武装を潰しながらR機で弱点探しか。
また私は、旗艦で指示するだけだな。


「ヒューゲル少尉、作戦投入部隊の選定を。アッテルベリ中尉は敵行動予測データの作成を急げ。」
「了解っ!」
「了解しました。」


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旗艦エンクエントロスは、グリーンインフェルノの索敵範囲外に残り、輸送艦リャキルナ、ルミルナで目標グリーンインフェルノの下方を進軍する事となった。
レディラブ隊、ラグナロック隊、サンデーストライク隊はフォースを装着して先鋒となる。
爆撃機ステイヤー隊、POWアーマー、ナルキッソス隊、ワイズマン隊などが続く。
ドミニオンズは生物系バイドがたぶんいないのでお休み。


ヒューゲル少尉の発案は、
まず、突破力のあるフォース装備機体で目標下部に侵入。邪魔なバイド機を破壊し橋頭堡を作る。
次に、補給の要となるヨルムンガント級輸送艦2隻を護衛する形で、ステイヤー、ナルキッソスを突入させる。ステイヤーは戦術核ミサイルバルムンクで敵機を破壊しつつ、バリア弾で輸送艦を護衛する。POWはバルムンク補充係だ。
これを繰り返してグリーンインフェルノの弱点を探しながら艦首に回り込み、弱点を破壊する。
というものだ。
私はいくつかの事項を付け足して、採用した。


今のところ問題なく進んでいる。
懸念された、グリーンインフェルノの体当たりだが、こちらが接近しても、ただワープ空間を上下に浮動しているだけだった。これならばパターンを計算して注意するだけだ。
砲台も3部隊が同時に進行しているので、一隊だけが集中砲火を浴びるということもなく進んでいる。
ただし相応のダメージは受けており、フォースを盾に進んでいるが、特に先方3隊の機体蓄積ダメージはかなりのものになっている。そろそろ安全地帯を確保し、修理をしなければならないだろう。


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「提督、そろそろ、グリーンインフェルノ艦首部にたどり着きます。輸送艦に着艦させ補給修理を受けさせた方が良いと思います。」
ヒューゲル少尉がそつなく補給の進言をしてくる。
意外ときっちりとした副官だ。
「そうだな、しかしその前にやっておくことがある。」
「何ですか提督?」
顎に手を当てながら小首をかしげる様子が可愛い。
「デコイ索敵だ。」


閉所から広所に出る箇所は誰しもホッとして気が緩む。
今までの経験から、そういうところには罠が張ってあることが多い。
罠でなくても、気が緩んだ隙に撃墜ということも有り得る。要注意だ。
私も何機の早期警戒機を、デコイを破壊されたか分からない。
ドプケラとか、ミヒャエルとか、グリトニルとか…


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「提督、デコイが破壊されました。ゲインズです。」


ほらね。
ゲインズはバイドの砲手ともいえる機体だ。
ラグナロックと同じくらいのチャージ時間で、R機隊を消し飛ばすくらいの砲撃を撃ってくる。
しかし、索敵さえ出来れば恐るるに足らず。
射線の外からミサイルで攻撃され、フォースシュートを食らい、
バルムンクミサイルで攻撃され、最後に波動砲で消し飛ばされるゲインズの姿が映った。
補給前だからってやりすぎ。


砲台を落として安全空域となった艦首部で、R機を一度輸送艦に入れて、補給修理を行う。
各機とも作戦行動には問題がないようだ。


旗艦エンクエントロスの指令室も一息つく。
「しかし提督。弱点は何処でしょう。」
「なぜ私に聞くのか。ヒューゲル少尉。」
「だって、提督はあの終戦の英雄でしょ。どう考えているのか気になるわ。」


グランゼーラの士官たちに早く打ち解けてもらうために、
作戦前にヒューゲル少尉達に、そこまで硬くならなくて良いといったら、
ヒューゲル少尉は本当に態度を崩してきた。
一時休息とはいえ、さすがにそれはどうかと思うが。


「終戦の英雄ね…。余り大きな声では言えないが、上層部は私の艦隊がここまでするとは思わずに、指令を出していたと思うんだ。しかし、大方の予想に外れて勝ってしまったからな…」
「…これだけ多くの人が死んだんだもの。せめて最後に勝った人を英雄に祭り上げないと世論が許さないってわけね。」
「妙に真に迫っているね。少尉。」
「おじい様もいっていたわ。自分よりもっと頭の良い奴や、もっと勇敢な奴がいたって。でも皆死んでしまって、最後に生き残った自分だけが英雄だのと持ち上げられている。って。」
「第一次バイドミッションの英雄。名将ヒューゲル参謀長か。」


ヒューゲル少尉の話は独白のようだった。
つかの間の休息時間なのに重い、重すぎる。この空気のまま戦闘突入は嫌だ。
助けを求めてアイコンタクトをする私。
(アッテルベリ中尉、なんか言え。この空気を振り払うんだ。)


「小官は、上部にあると思います。」
「?」
「グリーンインフェルノの弱点です。」


さすがだ、アッテルベリ中尉。
これまでの話をまったく無かった事にするとは、予想の斜め上を行く返答だ。
しかし、この男のことだ、この発言にも理由があってのことだろうな。


「理由を聞こうか?」
「はっ…現在、目標は待機していますが、過去の報告ではかなりの船速を出せるようです。主機の出力もかなり大きいでしょう。そうなれば放熱の必要があります。主機に続く開口部か、比較的脆弱なラジエータが存在するはずです。船底部にはそれに類するものはありませんでした。ならば船体上部にあるはずです。主機を破壊するか、オーバーヒートさせれば良いと思います。」


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「通信手。輸送艦リャキルナに回線を開け。」
「はっ」
「補給中失礼するよ。補給終了後の作戦を伝える。司令部では船体上部に敵艦の主機かその冷却装置があるとの結論に達した。しかし、船尾側からは入れない。艦首側から回って目標の破壊を命じる。」
「了解しました。」


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改めてR機たちが輸送艦を飛び立つ。
輸送艦はその場で待機だ。
敵機の攻撃が激しい。
しかし、補給したてのR機がミサイルの雨で黙らせる。
複雑な構造物のせいで波動砲は使えない。
ワイズマン隊だけは障害物の間を縫う様に誘導波動砲を発射しているが、
何しろ敵は巨大だ。なかなか砲台は減らない。


ラグナロックが急降下爆撃機よろしく、一気に砲台につめ寄り爆雷を投下して離脱する。
ラグナロックの爆雷は誘導性の無いミサイルなので、敵にかなり近づかなくてはならないが、補って余りある破壊力を持つ。
ただ戦闘する空間が非常に狭いため、苦慮しているようだ。


Rwf-9Øラグナロック 
過去のバイドミッションにおいて、バイド中枢に突入したワンオフ機体がベースとなっている。人工フォースであるシャドウフォースを装備する。
オリジナル機はTeam R-TYPEが開発したため、例によって仕様がおかしい。
オリジナル機にはハイパードライブシステムが搭載されており、
凄まじいまでの連射機能があったが、オーバーヒートなどの問題が多く、
また、コストを度外視していたため、量産されることは無かった。
しかし、グランゼーラ革命軍はバイドに依存しない機体という観点から、
いくつかの機能をオミットして量産機として再生産した。
このため、ハイパー波動砲は連射ではなく、チャージ時間を短縮したものと変更されている。


人型接近戦機ナルキッソスは近接戦闘の専用機だ。デコイ機能を持ち、攻撃・迎撃性能に優れる為、援護に近接攻撃にと大忙しだ。用途の広いビームラッシュと呼ばれる武装を持っている。BR神聖制裁(攻撃パターンに名前つけた技術者出てこい!)で一つ一つ砲台を潰しながら前進している。


そして、グリーンインフェルノの中枢と思しきものが見えてくる。


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「あれ…だよなぁ。」
「確かに砲台には守られているけれど…。」
「空冷?にしたって、もう少しやりようがあるのでは。」
「分かり安すぎて躊躇われますね。」
「なぜ、主機が攻撃してくるのか。」


ディスプレイを見た司令部スタッフのボヤキが聞こえる。
そこにはR機の機載カメラや、輸送艦の船外カメラの映像が映っている。
今、映っているのはグリーンインフェルノの主機のようだ。
そしてヒューゲル少尉がみなを代表して言う。

「なんで主機が丸出しなの!?おかしいでしょ!」

そんなヒューゲル少尉の叫びも空しく、バルムンクミサイルが主機と思しき物体に命中する。
船体のほぼ中央で爆発が起り、船体が二つに割れる。
やはり主機だったらしい。
地球とは別の高レベルな文明が作り上げた艦艇だというが、彼らが何を考えて主機まるだしの設計にしたかは永久に分からないだろう。


「提督、なんか納得いきません。」
「…納得のいく戦争なんてものはないだろう。ヒューゲル少尉。」


そんななか、アッテルベリ中尉は黙々とグリーンインフェルノのデータを編集していた。




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グリーンインフェルノ…ひたすらめんどくさかった覚えが。
BGMは大好きなんですけどね。初代3面のアレンジ。
後編では逆流空間の曲とかも好きです。

旗艦が蚊帳の外に置かれているせいで戦闘描写しにくい。
なんかグランゼーラの副官と友好を暖める話になってる。
いっそのことゲームと同じくヨルムンを旗艦にした方が書きやすいのだが。

それにしてもR機の活躍しないR-TYPE小説ですね…
いっそR-TYPE小説とか言わずに、提得小説とか名乗りましょうか。


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編成がいまいち分かりにくいみたいでしたので、後編開始時の編成を乗っけます。艦長そんなにいないだろっていうのは、ゲームみたいにちょくちょく艦長達が乗り換えるわけにもいかんので許して下さい…。テュール級も原作ではまだ開発出来ないですが、提督が本部からかっぱらってきました。戦闘機については改造したり、受領したりで、たまにバージョンアップします。

○艦隊編成(でもゲーム中はぶっちゃけ戦艦と輸送艦だけで十分だったり)
旗艦 テュール級戦艦  ‘エンクエントロス’
ガルム級巡航艦     ‘ブスカンド’
フレースベルグ級駆逐艦 ‘レーニョベルデ’
アングルボダ級宇宙空母 ‘エストレジータ’
ヨルムンガント級第一輸送艦 ‘リャキルナ’
ヨルムンガント級第二輸送艦 ‘ルミルナ’


○R機編成(隊名は煩雑になるだけだと思うので、無しで)
・レディラブ隊A
・レディラブ隊B
・ウォーヘッド隊
・サンデーストライク隊
・ワイズマン隊
・モーニングスター隊
・ホットコンダクター隊
・ドミニオンズ隊
・クロス・ザ・ルビコン隊
・アウルライト隊
・ステイヤー隊
・アサノガワ隊
・ラグナロック隊
・エクリプス(強化仕様)隊
・ピースメイカー隊
・ナルキッソス隊
・パワードサイレンス隊
・工作機
・POWアーマー




[21751] 4 提督とBBS
Name: ヒナヒナ◆2a9fd0bf ID:ec2c350f
Date: 2010/12/16 22:23
・提督とバイドバインドシステム


バイドとは…
バイド素子で汚染された物質、またはバイド素子そのものを指す。
数ある天体のなかから、太陽系をめがけて進路変更してきた点や、
拙いながらも戦術のようなものを行使することから、思考という概念はあるようだ。


バイドはその驚異的は侵食性をもって、全ての物質を自らの体、バイド体とせんとして襲ってくる。
バイドに汚染された、物体は無機物であろうと、有機物…生物であろうと変質してあの生理的嫌悪を催すバイド体と成り果てる。そして、汚染されたモノはバイドとして他の物体・生命を襲う。
極めて強い排他的攻撃衝動持ち、文明や生命に対し悪意を持っているのではないかと言われるほど苛烈に侵略…いや侵食する。


バイド素子は波動と粒子両方の性質をもつ。
波動の性質を持つがために、物理攻撃が非常に効きにくい。
まったく効かないわけではないのだが、汚染物質を完全に破壊しなければならない。
また、素子自体も耐久性があるので、一定期間は素子のままでも生存できる。
バイド素子は汚染物体を‘乗り物’として、次々に他の‘乗り物’を増やしてゆく。
また、初期研究から二重螺旋構造をもつことが解明されている。


「対バイド戦における最も有効な攻撃、それはバイドをもってバイドを制することである。」
Team R-TYPE所属、バイド研究所所長の有名な言葉である。
地球連合軍の対バイド戦略はこの考えが根底にある。


バイド種子を純粋培養し、バイドの性質を攻撃・防御に利用するフォースシステム。
バイド素子そのものに攻撃を加えることの出来る波動砲。
そして、その2つの兵器を運搬・運用するR型異相次元戦闘機、通称R機。


この3つが、地球連合軍の対バイド戦略の基本構想だ。
戦略構想に必要不可欠な研究をするのがTeam R-TYPEである。
地球連合政府直下の組織として、当然、権力なども集中する。
軍でも、兵器開発で密接に関わっており、その影響力は計り知れない。


疑問が浮かぶ。
なぜ二重螺旋構造なのか。安定性は劣るがRNAのように一重でも良いはず。またはまったく別の構造も取り得るはずだ。
なぜ太陽系に固執するのか。わざわざ外宇宙から進路を変えてまで地球を侵略する意義は。


Team R-TYPEの研究者達はでこれらの答えを知っているのではないか。
そんな考えが頭をよぎった。


バイドとは何なのだろう…


バイドとは…

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「……とく。提督。」
「ん?どうした、クロフォード中尉。」
「あまり司令席でぼんやりされるのは、いかがなものかと思います。」
「…ごもっとも。」


グリーンインフェルノとの戦闘から4日たった。
1日目こそ、戦闘後の処理で慌しかったのだが、3日目で書類もなくなったので休みを貰った。
巡航中では実機訓練もできないし、太陽系開放同盟の本隊はまだ数日掛かる距離にある。
事務はすでに終わらせてしまったし、やること無いからって、司令官が何日も連続で休むわけにも行かないだろう。
そう思って、私は指令席でワープ空間を眺めながら、バイドについて考えていたのだが、
クロフォード中尉に注意されてしまった。


エマ・クロフォード中尉。
情報ではグランゼーラ革命軍の名将故ハルバー提督の副官であったらしい。
フォース事故で両親を失っており自ら進んでグランゼーラ革命軍に参加したとのこと。
フォースシステムに反対なのだろうな。
クロフォード中尉の笑った顔とか見たことが無いのだが、
仕事中は笑わない人なのだろうか。


「提督、もしお時間あるなら。シミュレータ模擬戦の評価をお願いしたいのですが。」
「かまわないが、誰のだ?」
「私とエマ中尉のです。」


クロフォード中尉の後ろから来た、ガザロフ中尉が発案してきた。
聞いてみると、ガザロフ中尉とクロフォード中尉がシミュレータで艦隊戦を行ったので、評価を貰いたいとのことだった。
うん、勉強熱心だな。副官は指揮士官だから将来は艦隊指令官かもしれないしな。
私は了承すると、会議室へ場所を移し、ログを端末に呼び出し双方からレポートを貰った。


彼女達が行ったシミュレーションは小規模艦隊による遭遇戦で、R機の運用と索敵が鍵にとなる設定だ。
結果的にはガザロフ中尉とクロフォード中尉は2勝1敗でガザロフ中尉の辛勝だった。
ガザロフ中尉はひらめき型で、戦闘中でも思いついた戦法があると、すぐさま実行する。
クロフォード中尉は基礎に重きを置くタイプで、地味ながら堅実な戦法を好む。


「ではシミュレーションの評価を行う。」
「はい。」
「お願いします。」


「まずは、ガザロフ中尉。」
「はいっ。」
「今回2勝1敗での勝利ということだが、少し冒険的要素が多いな。模擬戦であっても実行する前に良く検証すること。艦隊指令官の命令一つ一つに隊員の命が掛かっているのを忘れないように。しかし、大胆な発想を考え付くこと自体は良いことだ。」
「はいっ、ありがとうございます。」


ガザロフ中尉は作戦後にポカミスをしなければ、優秀な副官だ。
しかし、隊員の命が掛かってるって、要は少数を犠牲にしても最終的に損害が少ない方を取れってことなんだけど、分かってるかな。


「次にクロフォード中尉。」
「はい。」
「非常に堅実な戦法だな。応用が利いて相手のとれる手段も限られる優秀な作戦だ。ただし基礎に忠実な分、相手に予想されやすい。相手の行動にいつでも対応できる様にしておく事。」
「はい。」

クロフォード中尉が眉一つ動かさずに言う。
クロフォード中尉の1回戦目でガザロフ中尉の奇策にはめられ1敗している。
もう1敗は3回戦、R機に波動砲を撃たれて戦線に穴が開き、崩れたのが原因だ。


「では、講評は以上だ。」


ガザロフ中尉が部屋を出てったあとクロフォード中尉を呼び止める。


「クロフォード中尉、この3回戦目の中盤だが、R機同士の戦闘の際にR機を狙わずにフォースを落としているのは何故だ?R機を狙っていれば波動砲をキャンセルできたタイミングだ。」
「…特に意味は有りません。ご教授ありがとうございました。」


一礼して部屋を出て行くクロフォード中尉。
やはり、中尉はフォースが嫌い…いや憎んでいるらしい。
その感情が、フォースを運用する地球連合への反意へと繋がらなければいいが。


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「提督。敵影を発見しました。太陽系開放同盟と思われます。」
「規模と、接敵時間は?」
「巡航艦クラスと攻撃部隊と思われます。10分程度で接敵です。」
「R機出撃準備。早期警戒機アウルライトを先行出撃。危なくなったらすぐに戻らせるんだ。」
「了解しました。」


クロフォード中尉とガザロフ中尉に指示を飛ばす。


「襲われているのでしょうか?」
「これは…」


早期警戒機アウルライトからもたらされた映像不可解なものだった。
光学式の望遠映像なので見づらいが、ワープ空間の真ん中に機影が見える。
太陽系開放同盟のものと見られる巡航艦と機体、その横に並んでいるのは
…バイドだった。
バイドに襲われているようには見えない。
バイドは目の前に敵が無防備でいるのに、ただ待っているなんて有り得ないことだ。
機体の方もバイド化しているようには見えない。
なんだこの状況は。


「! 敵に気付かれました。早期警戒機撤退します。」
「戦艦は無理だな。ガルム級駆逐艦ブスカンドを先頭にR機隊を編成せよ。」


「提督、索敵範囲に入ります。」
「バイドがR機と隊列を組んでいるようです。」
「それとバイドから生えているのは…」


コントロールロッドだった。
コントロールロッドはフォースについている生体部品だ。
一見機械製の器具に見えるが、生体部品が組み込まれており、
それが、バイド体であるフォースの破壊衝動を抑制し、
R機からの命令に従ってフォースを誘導する。フォースシステムの要だ。


そのコントロールロッドと思しき物体がバイドに何本も突き刺さっている。
幾本ものコントロールロッドに貫かれたようなバイドは、
粛々とR機とともに進軍してくる。


「まさか、キースン…!」
「クロフォード中尉?」


ぎりっ、と歯軋りが聞こえた。
クロフォード中尉がディスプレイを睨みつけている。
キースンとは太陽系開放同盟の指令官キースン大将のことだろうか?
クロフォード中尉はこのバイドのことを知っているのだろうか。


「クロフォード中尉。落ち着きなさい。」
「…失礼しました。提督。」
「あれを知っているならば、教えてもらいたいのだが?」
「あれは、バイドは人類の敵です。それだけです。」


ずいぶん興奮している。今たずねてもまともな答えは帰ってこないな。後で聞くか。


「ガザロフ中尉、R機隊に発進準備をさせてくれ。」
「はい。」
「総員、今回の目的は開放同盟軍機とバイド体の殲滅だ。」
「提督、R機を一機鹵獲しましょう。あの棒だらけのバイドの情報を聞けるはずです。」
「…いや、危険だ。バイドとともに行動しているあの機体は内部まで汚染されているかもしれない。そんな機体を鹵獲するわけには行かない。」
「そうですか、分かりました。」


___________________________________


戦闘自体は短時間で片がついた。
解放同盟機がバイド汚染されている事も考慮して、すべて殲滅した。
今回の戦闘中、バイドは解放同盟機を襲わず、解放同盟機も隣に並んでいるバイドに目もくれずに我々を襲ってきた。
解放同盟がバイドと手を組んだとでもいうのか。
ありえない。
艦隊のみなも、不気味に感じているようだ。
この件について知っている人間に聞くしかないな。


ガザロフ中尉に戦闘データを解析に持っていくよう頼み、見送った後、
クロフォード中尉に後で私の居室に来るように命じた。


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私が今回の戦闘の記録を端末で確認していると、インターホンが聞こえた。
「提督。エマ・クロフォード中尉です。」
「ああ、入ってくれ。」
「失礼します。エマ・クロフォード中尉出頭しました。」
「他人の目もないし、格式ばらなくても良いよ。どこかその辺に掛けてくれ。」


私はベッドに座り、クロフォード中尉に椅子を勧め、紅茶を入れる。
少し逡巡したあと、立ったままだと私を見下ろす格好になるのにきづいたのか、椅子に浅く腰掛けた。


「おそらく予想していただろうが、あのコントロールロッドの刺さったバイドの件だ。君はアレを知っているな。」
「はい。」
「アレは何だ。」
「バイドバインドシステムと呼ばれるものではないかと思います。」
「バイドバインドシステム?」
「BBSと呼ばれていました。バイド体そのものにコントロールドロッドを挿入し、操る技術です。」
「BBSか…。君が知っているということは、グランゼーラ革命軍で研究していたのか。」
「違いますっ!あれはキースンが勝手に…」
「中尉。」
「失礼しました。BBSはキースン大将と、その下にいる技術者が研究していました。フォース制御技術を使ってバイドを自らの戦力にしようとしたのです。」
「しかし、いくらなんでもグランゼーラはバイド技術を嫌い、フォースに反対する人が集まったのだろう。バイドを自軍戦力にするなど本末転倒ではないか。」
「当初グランゼーラ革命政府は穏健的にフォースを手放そうとする人々、ハルバー提督などを中心とする集団でした。しかし、弾圧が始まり連合との戦争が始まったあたりから徐々にグランゼーラは変質していきました。フォースではなく、地球連合に反対した者、追われた者が多くなってきました。気づくとグランゼーラの敵は地球連合になっていました。」


お茶で口を湿らせてクロフォード中尉が続ける。


「そして、キースンが現れました。当初大佐であった彼は地球連合軍の内部抗争で軍を追われてグランゼーラ軍に加入しました。軍才はあったのでしょう。順調に快勝を続けました。彼は徐々に自分のシンパを広げてグランゼーラ軍を内部から乗っ取ろうとしたのです。そのために邪魔なハルバー提督を陥れて、連合軍の捕虜としてグランゼーラ軍から遠ざけたのです。」


「同じく連合から追われた技術者たちを囲って、あの研究を始めたのです。」
「それがBBSか。」
「はい、ハルバー提督が捕虜となった後、私もグランゼーラ革命軍の中央から左遷されたので、詳しい事は分かりません。しかし、キースンがBBSの実験を繰り返している事は聞こえてきました。」


私はクロフォード中尉にこの件について口止めすると、太陽系解放同盟がバイドを戦力として使用しているとみられる事を指令室スタッフと艦長ら、R機隊隊長達に伝えた。


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連合軍でフォースに使用するバイド種子は突き詰めると一つの大本に行き当たる。
異相次元探査艇フォアランナが採取した‘バイドの切れ端’だ。
すべての始まりとなったこの物体は少々特殊だった。
おかしな表現だが、他のバイドより大人しいのだ。
バイドは常に進化しており、採取した状況、場所によって少しずつ違いがある。
ほとんどは分からないくらいの差だが。
‘バイドの切れ端’から培養した種子は、他のバイド体から
培養した種子にくらべて、比較的言うことを聞きやすい。
計測するとバイド係数は同じなのに、コントロールロッドの効きが格段に良いのだ。
なので、基本的にフォースを作るときはこのバイドを基にする。
‘バイドの切れ端’のオリジナルは木星で事故を起こした後、ギャルプⅡにあったというが、
ギャルプⅡが閉鎖された今どこにあるのだろうか。


___________________________________


しかしバイドバインドシステムか…
バイド体はフォースよりバイド係数が高く、凶暴なため非常に操作が難しいだろう。
正直フォースより、ずっと危険であるように思うのだが。


しかし、バイドを完全に戦力として加えたとするならば、
太陽系解放同盟はグランゼーラ革命軍、地球連動軍、そしてバイドの3勢力の戦力を備えている事になる。
一軍人を頭に据えた不安定な武力組織に、この力は強大すぎる。危険だ。
太陽系解放同盟は何があろうとここで潰さなければならないな。
決戦が近い。


=================================
ガザロフ中尉空気。
ゴメンネ。でも前編でいっぱい出たからしょうがないよね。


ワープ空間戦闘が単調すぎる。
なんか、エマさんがえらく感情的になっちゃった。
もっと感情を出さない人だと思うのだけど。



[21751] 5 決戦!太陽系開放同盟
Name: ヒナヒナ◆2a9fd0bf ID:ec2c350f
Date: 2010/12/16 22:25
・決戦!太陽系開放同盟


おかしな事となった。
戦いの後、太陽系開放同盟の連絡艇とその護衛機が来た。
通信すると、壮年の男性がディスプレイに映った。
男は太陽系開放同盟次席参謀のカトー大佐と名乗り、会談を求めた。
私は連絡艇が非武装であるのを確認して、着艦を許可した。


旗艦テュール級戦艦エンクエントロスの会議室に通し、私も副官らを連れて行った。
互いに名乗りあった後にカトー大佐が切り出した。
「我々は地球連合軍に降伏し、救援を求めます。」
「降伏?救援?カトー大佐、あなたが我々に投降するという意味ですか?」
「違います。私個人ではなく太陽系開放同盟自体が降伏するという意味です。」
「本隊が姿を見せ武装解除していない以上、この場での降伏は承諾しかねます。」
「ええ、そのことなのですが、エネルギー切れで本隊が移動・ワープアウトできないのです。」
「ブースタパックを往復分もっていか無かったのですか。」
「…すでに見られたと思いますが、我々はワープ空間でバイドバインドシステムの研究をしていました。」

カトー大佐はチラリとグランゼーラ軍出身の副官達を見遣る。
副官達には、感情的にならないように事前に言い含めて置いたので、無反応だ。

「あのシステムの研究には莫大なエネルギーが必要でして、BBSは完成したのですが、我々にはワープ空間を脱出するだけのエネルギーが無いのです。」
「…だから、我々に降伏して救助を請うというわけですか。」
「はい、そうです。」
「カトー大佐。腑に落ちない点があります。我々はグリトニルで見たアングルボダ級には、大型ブースタ…行き帰り分を負担できる大きさの追加装備がなされていました。ブースタにまで手を出したわけではないでしょうに、どうして、ワープ空間を脱出できないのですか。」
「…事故です。キースン大将が乗るアングルボダ級空母‘ジャコギート’のBBS研究区画で爆発事故があり、空母ジャコギートは完全に破壊されました。もしものときは、総員このブースタ付きのアングルボダ級に乗り込み地球圏に帰還することになっていましたが、開放同盟の要である空母ジャコギートを失い、その他の艦艇もエネルギーが尽きつつあります。」
「キースン大将は?」
「空母ジャコギートと運命をともにしました。我々は指導者を失い、生き残った参謀部での協議の結果、降伏を選択しました。」


「開放同盟にバイドが混じっているのであれば、我々としても慎重を期さねばなりません。BBSの詳細もお聞きしたい。」
「ええ、分かりました。私が知る限りのことをお話します。」


その後聞いたBBSの話はクロフォード中尉の話したことと大体同じであった。
太陽系開放同盟軍との待ち合わせ場所を打ち合わせ、カトー大佐には念のために残ってもらった。護衛機はその場で帰した。


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「提督、カトー大佐をゲストルームに案内しました。」
「よし。…強襲部隊を選定する。ガルム級巡航艦‘ブスカンド’と、ヨルムンガンド級輸送艦‘リャキルナ’‘ルミルナ’を先回りして伏せて置く。」
「提督?降伏の話し合いなのではないのですか?」

恐る恐る口に出したのはワイアット少尉だ。

見渡すと、ラウ中尉と、ベラーノ中尉は当然といった風。
ヒューゲル少尉と、ガザロフ中尉は仕方が無いといった感じか。
ワイアット少尉と、マッケラン中尉はすこし不満げ。
アッテルベリ中尉とクロフォード中尉はいつのも無表情だ。


「太陽系開放同盟はバイドにまで手を出した。危険すぎる。保険をかける意味で別働隊を伏せておく。我々は休戦協定を結びに行くのではなく、降伏を承諾しに行くのだ。誠意を見せなければならないのはむしろ開放同盟側だ。」
「もし、降伏が擬態だった場合は、どのような処遇にしますか」
「別働隊と本隊とで徹底的に潰す。」


そう、降伏に擬態するということは、降伏する権利を失うということだ。
そうでなくともバイドバインドシステムは危険すぎる。
テロ組織まがいの集団が持っているとすればなおさらだ。
殲滅できるならば、すべきであると思う。


「提督、別働隊は巡航艦に輸送艦2隻とのことですが、戦力を削ると気付かれる恐れがあるのでは。」
「輸送艦2隻分のデコイを事前に本隊に混ぜておく。本隊から消えるのがガルム級一隻ならばそれほど、怪しまれないだろう。」
「R機はジャミング機パワードサイレンスを中心に組みましょう。別働隊が発見されても、気付かれません。」


ラウ中尉はすでにやる気だ。
こうして、我々は着々と戦闘準備を始めた。


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「提督、いました!太陽系開放同盟の艦隊です。」
「別働隊をうごかしますか。」


今回の副官は熱血系のマッケラン中尉とインテリ肌のラウ中尉。
マッケランは別働隊のほうに行ってもらっているので、ディスプレイ越しに話している。
しかし、なんてうっとおしい。なぜ男2人で組ませた。


私はいつも通り旗艦エンクエントロスの司令席にいる。
開放同盟の降伏を許諾しなければならない。
グリトニルで降伏してくれていれば、我々も艦隊を編成してまで追わなくて済んだものを。


太陽系開放同盟の艦隊が見える。
艦が少ない。我々が撃ち減らしたにしても少ない。
…当たりか?


「ラウ中尉は開放同盟の武装解除準備を。」
「マッケラン中尉は別働隊の確認を。」
『了解しました。』


___________________________________


「提督っ!こちら別働隊。敵に発見されました!亜空間機に接触した模様です!」
「亜空間機を伏せていたということは、やはり擬態か。全艦、戦闘隊形を取れ!」
「別働隊は大きく迂回しているめ、戦闘に間に合うか微妙ですね。…提督、太陽系開放同盟とバイドの大艦隊のようです。」


ワープ空間に浮かぶ残骸の後ろにラウ中尉の言うように大艦隊が構えていた。
コントロールロッドが打ち込まれた大小バイド生命体が確認できる。
その時、敵艦隊のバイド生命体の動きが活発になった。バイド以外の艦船の様子がおかしい。
にわかに敵艦隊が蠢き始め、我々に襲い掛かってきた。


「何が起こっている?」
「太陽系開放同盟の機体よりバイド係数を感知しました。侵食されたもようです。」
「太陽系開放同盟に通信は?」
「まったく取れません。」
「そうか、しかし我々がやることは変わらん。ラウ中尉全艦通信を。」
「全艦通信開きます。」
「司令部から全軍へ、敵艦隊はバイドに侵食されたものと認定する。すでにあれらは人類の敵である。全軍、敵を殲滅せよ。これで決着をつけるぞ!」


熱気が指令室を包む。
人によっては人間相手に殲滅戦をかけるのを嫌う者もいるからな。
相手がバイドであれば問題ない。皆逆に奮起するだろう。


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ワープ空間にひしめき合うR機、艦艇、そしてバイド。
別働隊が早めに発見されたために、前後からの挟撃はできなかった。
別働隊の行った迂回路には亜空間機部隊が潜んでいたらしい。
戦力的に不足は無いが、亜空間機の殲滅には時間が掛かる。決戦には間に合わないだろう。


「全艦。まずは小型バイド、R機をつり出すぞ。誘い出して、波動砲で削る。」
「エクリプス隊、ピースメーカー隊、ステイヤー隊、一撃離脱して敵機を誘い出してください。」
ラウ中尉が、攻撃隊を選定してR機に伝える。マッケラン中尉は別働隊との繋ぎだ。


Rw-11B 高機動機ピースメーカー
もとは民間警察用として開発された機体。別名‘パトロールスピナー’
バイド来襲当初、都市部でバイドが発生した際に、民間人の被害を恐れて高火力のR機の運用が出来ず、結局バイドが増殖して都市ごと「消毒」することとなり、前世紀繁栄した都市は次々に地球上から姿を消していった。
こうした事態に対応するために開発されたのが、高機動機ピースメーカーだった。高層ビル群が乱立する立地で運用するため、装甲を犠牲に機動力を高め、誤射や周囲の被害を減らすために捕獲弾を装備している。都市を防衛するという特性上、民間警察に多く配備され都市部でのバイド駆除に多大な貢献をした。民間警察の功績をたたえて軍用機であっても‘POLICE’のマーキングをするのが整備員の間でのお約束となっている。


ピースメーカー隊はその飛びぬけた機動力を武器に敵陣に切り込む。
ザイオング慣性制御システムの恩恵を最大限に発揮し、敵弾幕を直角に避ける。旧世紀の戦闘機でこんな機動をすれば(できないが)、中のパイロットが見るに絶えない状態になり、機体も負荷に耐え切れず分解するだろう。もし機体が負荷に耐えても揚力を失って失速する。
直線と角で描かれた軌跡を残して、ピースメーカーが一気に敵機に詰め寄る。この機動になれたグランゼーラ軍のパイロットは、一見むちゃくちゃな機動をしながら、隊列を崩さずに接近する。
捕獲弾を放ち着弾を待たずに反転、敵機射程外に一気に逃げる。敵爆撃機スレイプニルはバリア弾を放つが幾つかが着弾、スレイプニルを打ち落とす。


エクリプスは発艦した後一度加速をやめて、高機動体形へと変形する。ザイオング慣性制御ユニットが再びうなりを挙げて、連動するように機体後部のスラスターが青く光り、爆音とともに一気に加速する。そのままスピードを緩めることなく、ミサイルを発射する。エクリプス自身の速度を上乗せしたミサイルは、自身の推進剤を用いて、さらに弾頭に加速度を加える。通常の速度を遥かに超えたミサイルが一気に敵前衛に降り注ぐ。スピードを重視したため狙いは甘かったが敵機に命中したミサイルはその質量自体も武器として敵機を破壊する。同形機のエクリプス実戦配備型を潰す。残りも奥に控える艦艇にあたったようだ。


ピースメーカー、エクリプスの後を追うように現れたステイヤー隊は、大出力であるが大型の機体であるため、敵弾に当たりやすい。なので、前の2隊の攻撃で空いた弾幕の穴に飛び込みバイド機クロークローに攻撃を仕掛ける。通常ミサイルだ。虎の子の核ミサイル、バルムンクはまだ使用しない。敵の殲滅ではなく敵を誘い出すのが目的だからだ。


「敵前衛、3部隊撃破、その他小被害を与えた模様です。」
「敵前衛部隊こちらに向かっています。迎撃させますが、よろしいですしょうか。」
「迎撃準備!波動砲を食らわせてやれ。布陣は任せる。ラウ中尉。」
「了解しました。レディラブ隊A、B、ルビコン隊、ウォーヘッド隊フォースを装着して、所定の位置へ。」


ラウ中尉はフォースにあまりこだわりを持っていない様だ。
現実主義なのかもしれない。
各隊は艦隊本隊の前面にすこし軸をずらして展開させる。
R機を狙った流れ弾が本隊に来るのを防ぐためだ。


バイド機、開放同盟機がレーザー、ミサイルを放ちながら接近してくる。
迎撃隊はレーザーを、フォースを盾にして防ぎ、ミサイルを弾幕で打ち落としたり、回避する。射程外からのミサイルは狙いも甘く速度も落ちるために、そこまでの脅威ではない。レーザーもワープ空間に漂う物質に当たって減衰しているので、フォースで簡単に防げる。


敵機が射程内に侵入する。
こちらの機体はまだ、波動砲のチャージが終わっていない。
敵の足を止めるために各隊はレーザーを放つ。
フォースを通すことで、威力が増幅されたエネルギーに指向性が与えられレーザーが発射される。
対空用レーザー(発射の際に赤色の可視光をまとう事が多いために赤レーザーなどと呼称される。)が敵機に突き刺さる。
しかし、それでもなお敵は足を止めずに突進してくる。恐怖というものが無いのだろう。
バイド機だけでなく、開放同盟機もだ。
やはり彼らは…


「迎撃隊。波動砲てぇぇー!」


号令とともに、パイロット達はトリガーを引く。
機首部にあった白い光は指向性を与えられ空間に開放される。
波動砲はそのまま白い光の筋となって敵機に迫る。
敵機は波動砲の発射を予期していたのか、筋と筋の隙間に回避しようとする。
しかし、その時を見計らったかのように光の筋が解けて、進行方向に広がる。
面での制圧に敵機は回避するすべも無く、光に飲まれる。
波動砲の燐光のような余波が収まったとき、そこに残っているのは数機しかなかった。


「圧縮波動砲に拡散波動砲か、射程はないが面制圧などでは意外と使えるな。」
「ええ、地球連合の機体には波動砲のバリエーションが多いですからね。一度使ってみたかったのです。」


波動砲マニアか…。
まぁ。地球連合に偏見を持っていなければいいさ。
どうあれ、開放同盟バイド混成軍の前衛部隊を崩した。


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敵の動きが無くなった。
敵艦隊はまだ健在なのに、小型機が動かない。
バイドは怖気づくということを知らない。何をしている?
早期警戒機で探るか。デコイで誘うか。


「ラウ中尉、早期警戒機を回してくれ。」
「了解しました。アウルライト、艦隊前面に移動させます。」


さて、どうくるのか。
アウルライトの一機が大きめのデブリの側でいきなり動きを止める。なんだ。
少し間があった後、耳障りな音が響く。亜空間ソナーを使ったらしい。
そして、データリンクで繋がった索敵レーダーに膨大な敵マーカーが出現する。
亜空間潜行…こんなに。


「提督!」
「旗艦エンクエントロス後退!フレースベルグ級駆逐艦を前に出せ。輸送艦デコイは旗艦前に。」
「駆逐艦‘レーニョベルデ’は最後尾です。前に出る前に敵亜空間機に追いつかれます。」
「味方を範囲に巻き込んでもかまわん。敵が寄ってきたら亜空間バスターを起動させろ。」
「了解です。」


フレースベルグ級の持つ特殊武装、亜空間バスターⅡ。
亜空間の敵に対して衝撃波を与えて破壊する兵器だ。亜空間機には絶大な破壊力を誇る。
ただし、亜空間でのみ効果があり、通常空間やワープ空間にいる者にとっては、
ただの爆音を撒き散らすだけの存在だ。
味方の亜空間機は別働隊にいる。問題なく撃てるな。


R機の中で、索敵という任務上最前線に送られることが多いアウルライトが、その場で停止する。アウルライト隊の行く手を塞ぐ様に、左右に緑色の砲身のついた発光体―小型のフォースのようにも見える―を従えた機体が現れる。亜空間に潜み獲物を狙っていたのだろう。左右の発光物体から光が播かれる。至近距離からの攻撃にアウルライトは回避できず、3機が大破爆散する。残った2機がバラバラに逃げようとするが、今度は発光物体が別々に動いて攻撃してきて結局は全滅する。


「亜空間機の攻撃によりアウルライト隊壊滅。…ガルーダです。」
「グランゼーラの機体か。」
「はい、亜空間航行能力とポット武装を持っています。」


OF-3軌道戦闘機ガルーダ
グランゼーラ革命軍で開発された機体で、地球連合軍の亜空間機ウォーヘッドに対抗するために開発された軌道戦闘機の一機。ポッドと呼ばれる半独立制御兵器を装備しており、ポッドは砲台として機能している。また、ガルーダからの制御によってポッドシュートを呼ばれる掃討攻撃を可能としている。


「提督、敵亜空間機の接触予想まで、あと1分30秒。」
「駆逐艦レーニョベルデはまだ前に出切れていないか。仕方ない牽制に亜空間バスターを使用せよ。」
「了解しました。」


耳障りな音と、激しい爆音が響く。旗艦エンクエントロスも亜空間バスターの効果範囲に入っている。そのため、亜空間攻撃の余波として発生している音が響き渡り、船内でも凄まじい音量が響いた。
耳を押さえて防御していたものもいるが、あまり効果は無かったようだ。
耳がキンキンする。


「敵亜空間機、消耗率30%と予測!後方は範囲外です!」
「亜空間バスター、第2射準備!急がせよ!」
「了解!」


みんな耳が遠くなっているので、怒鳴りあうように命令を出す。
亜空間機撃墜の戦果報告は衝撃波の揺らぎを見ての目測だ。これが意外と正確なのだ。
ところでラウ中尉、マイクに怒鳴るな、ハウリングするだろう…。
軍開発部にはぜひ亜空間耳栓を開発してもらいたい。


「第二射準備は?」
「可能です。」
「よし、亜空間機部隊の真ん中を狙うんだ。」


アウルライトが落とされて亜空間ソナーが使えないので、敵の現在位置を予測して攻撃する。
今度は旗艦が範囲外なのであの爆音に晒されることは無いだろう。
発射時に司令室スタッフ達が反射的に耳を押さえる。
さっきより幾らか小さい爆発音がする。
ラウ中尉の報告より早く、衝撃波に耐えかねた敵機が次々に姿を現す。
隊の形を保っているものは無く、ガルーダもキャノピーにひびが入っていたり、ポッドを失っているものが多い。
バイド機もいたか…マッドフォレストと呼ばれる小型バイドだ。
植物を模したような異様な外見だが、蔓状の組織が所々もげている。


「敵亜空間機、残存部隊が通常空間にシフトしました。」
「R機で追撃。逃がすな。」


旗艦と一緒に下がっていたR機各隊が一気に敵残存部隊を殲滅する。
あとは、大型艦船か。
そのとき、一条の光が貫く。


「提督、レディラブ隊B全滅です。駆逐艦レーニョベルデ被弾中破。バイド艦ボルドの艦首砲です。」


亜空間攻撃を行っていたため突出していた駆逐艦フレースベルグ級のレーニョベルデとたまたま近くにいたレディラブがやられた。
レーニョベルデは撃沈ではないが、戦闘は不可能だろう。


「レーニョベルデ後退。いや、あれに搭載されている機体はたしか…」
「提督?」
「命令変更。レーニョベルデ前進!ボルドに接近せよ。ステイヤー隊を援護につけるんだ。」
「前進!?ここは後退させるべきでは?」
「いや、ステイヤー隊を援護に付けて、レーニョベルデ前進させる。ラウ中尉、復唱。」
「…ステイヤー隊を援護に付けて、レーニョベルデ前進させます。」


すごい、不服そうな顔だ。
私が中破した駆逐艦をすてて、敵に吶喊させるとか考えているのだろう。
そんなことを考えてる内に駆逐艦はバイド艦に最接近する。


「レーニョベルデから、アサノガワを発進させよ。レーニョベルデは反転後退。パイルバンカーを機関部に叩き込め!」
「アサノガワが…提督、正面からは機関部にパイルバンカーが届きません。」
「レーニョベルデから発艦したアサノガワは、その速度を利用できる。ボルドの上部に回りこめるはずだ。」


そうこうしている内に、アサノガワがパイルバンカー発射体勢に入る。
よし、後はパイロット次第だ。
アサノガワがボルドの上部をすべるように、進む。
機関部が見える直前に、アサノガワはスラスターで制御して一気に機体をボルドに垂直に立てる。
そして、パイルバンカーに溜めたエネルギーを杭の形に乗せて、打ち込む。


戦艦でも一撃で落とせるほどの威力を持った攻撃を受けて、ボルドは真ん中から折れ曲がる。機関部周辺はもっとも装甲が厚いのだが、あっけないほど簡単に貫通し、内部にエネルギーを叩き込む。
機関部だけでなく構造自体に致命的なダメージを与えたらしい。
少し遅れて、ボルドの前部と後部が爆発する。


「敵ボルド級撃破しました。」
「残りは…」


そのときボルドの撒き散らした爆炎の中からガルム級が現れる。
近い!吶喊する気か!?


「開放同盟ガルム級接近!艦首砲、発射体勢に入っています。」
「エンクエントロス回頭、敵ガルム級に艦首を向け、グレイプニル砲発射準備。レーダー係何をしていた!」
「爆炎でレーダーが…」
「回頭完了!グレイプニル砲発射まであと5秒です。」


敵ガルム級の砲身が輝く。敵のほうが早い?


「総員、対衝撃体勢を!」
ガルム級からの艦首砲の衝撃で揺れる。
船体前部から力を加えられ、船内のすべての物体が前に飛び出ようとする。
どうやら慣性制御システムの手に余る威力だったらしい。
私も司令席のシートベルトに一瞬押さえつけられる。
不味い、グレイプニル砲が暴発しなければ良いが。ディスプレイは真っ白だ。装甲板は持つだろうか。
突然、射線がずれて、視界が通る。
ガルム級は艦首砲を撃った状態のまま、やや下方を向いている。側にはステイヤー隊がいた。どうやら、彼らがバルムンクでガルム級の艦首の方向をずらしてくれたらしい。


「今だ!グレイプニル砲発射!」


私はお返しとばかりにグレイプニル砲を発射する。どうやら艦首砲ユニットは無事だったらしいな。
戦艦と巡航艦では、運用できるエネルギーが違う。先の攻撃より一回り大きい光の筋が敵ガルム級を飲み込む。
艦首砲ユニットが爆発して、爆炎を上げる。続いて各部から爆発が起きる。エネルギーの奔流で見えないが、艦橋も消し飛んでいるはずだ。
グレイプニル砲のエネルギーが全て放射される頃に、機関部からひときわ大きな爆発が起きる。艦首砲の発射中、主機をフルドライブさせているときに、ダメージを受けた機関部は周囲を巻き込み、そしてすべてを消し飛ばした。


「提督…敵ガルム級撃沈しました。」
「ああ、この艦の被害と、敵残存戦力は?」
「当艦の被害は正面装甲板が第3装甲までダメージをうけ、艦首砲ユニットも修理が必要でしょう。敵残存兵力は1割程度です。」


「提督!ご無事ですか!」
「マッケラン中尉か。とりあえず私は問題ない。別働隊は?」
「はっ!亜空間機部隊を殲滅。これよりこの宙域の掃討に移るところです!」


マッケラン中尉がいきなりディスプレイに出て驚いたが、
別働隊がすぐそこまで来ていたようだ。


「まかせた。ラウ中尉こちらも掃討を開始する。」
「了解しました。」


_____________________________________


戦闘は終了した。敵は降伏、投降の意思を示すものも無く全機殲滅された。
やはりバイド化していた様だ。
戦闘後、ゲストルームにいた(戦闘中は閉じ込めて置いた)カトー大佐を尋問させた。
太陽系開放同盟がバイド化し、全滅したと伝えると、観念したように話し出した。


カトー大佐が言うには、今回の件は彼の策であったらしい。
キースン大将の乗るアングルボダ級は実験中に爆発したのではなく、
実験中の事故で暴走、制御を受け付けなくなり、アングルボダ級はワープ空間の歪みに飲み込まれてしまったらしい。


開放同盟は焦った。総大将を失い、通常空間に戻るすべがなくなったのだ。
残された参謀部のカトー大佐は一つの案を思いついた。
エネルギーが無いなら、奪えば良い。幸いエネルギーをたっぷり持った艦隊がもうじきやってくる。
我々が、降伏承諾を行っている最中に艦艇を奪うつもりであったらしい。
正直歩の良い賭けではなかったが、降伏は出来なかった。
なぜならバイドバインドシステムを知られているからだ。
バイドそのものを操る技術。人類そのものを敵に回しかねない行為だ。
地球連合、グランゼーラ両政府にも絶縁状をたたきつけているので、擁護は期待できない。
技術を奪われて、処刑されるのがオチである。との結論に達したとのことだ。


_____________________________________


カトー大佐は開放同盟艦隊の最後の生き残りとなった。
彼らの思考はいささか被害妄想じみていて、短絡的であったが、
総大将が突如消えうせ、帰還も絶望的になったとしたら、人間はそうなってしまうのかもしれない。
話し終えた彼は涙こそ流さなかったが、悄然としていた。
私はカトー大佐に自殺防止の見張りをつけて、独房に入れた。
彼には事の顛末を証言してもらわなければならない。




太陽系開放同盟の旗艦アングルボダ級宇宙空母‘ジャコギート’は空間の歪みに消えたらしい。
状況からは、キースン大将は死亡したようであるが…
ともかく、太陽系開放同盟軍の討伐は完了した。
地球に戻ろう。


私は、艦の応急修理を済ませると、地球に向けて連絡艇を一足先に向かわせた。









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久々にR機を活躍させてみようと思った結果がこれですよ。
文章量が増える増える。Wordで15ページ分です。
あ、そうそう。
拙作のR機の説明には妄想が含まれているので注意してくださいね。

キースンは何処へ行ったのか。
太陽系開放同盟とは、何から太陽系を開放しようというのか。
このゲームって、情報が提督の航海日記と戦闘マップだけだから、
あやふやな部分や、まったく語られていない部分が多いです。
妄想の余地が有って楽しいという事でもあるんですけどね。

しかし、妄想という名のネタ帳だけ増えて、執筆速度が…
年内に後編を完結させたいですね。



[21751] 6 提督とラブストーリーは突然に
Name: ヒナヒナ◆2a9fd0bf ID:ec2c350f
Date: 2010/12/16 22:26
6 提督とラブストーリーは突然に
※前回硬すぎて疲れたので今回は戦闘なしのギャグで構成されています。


アウルライトに先導されながら、地球からの連絡艇が来た。
連絡艇から新たな命令書を貰った。連絡艇のパイロットらが異様に焦っているようなので、急いで目を通すと、そこには。


・私の階級を元帥とし、部隊の自由編成権を認める。
・地球圏に膨大な量のバイドが攻めてきた。
・我々の艦隊に転進を命じる。地球圏の防衛に付け。
・地球圏に戻る帰路で、バイドを発見した場合は可能な限りこれを殲滅せよ。
・その際、原隊を失った、合流が不可能になった戦力があれば、部隊への編入を許可するまた、やむを得ぬ場合は現地戦力の接収を許可する。とのこと。


その様な内容が書かれていた。
要は戦力になるものは部隊に入れていいからすぐ戻って来い。もしバイドがいたら殲滅しておけ。
そう書いてある。文面からは本部の必死さが伝わってくる。
今まで、あれだけ冷遇してきたのに。という感情も無くはないが、
バイドから人々を守るのは軍人の本分だ。感情論という無駄な理由は置いておこう。


早速、権限を行使して連絡艇の先導をしていた、アウルライトを奪…編入した。
決して、先の戦闘でまた早期警戒機部隊が全滅していたからちょうど良かった、なんて理由ではない。
連絡艇もアングルボダ級空母‘エストレジータ’に積み込んだ。さすがに連絡艇だけでは帰せない。
連絡艇と早期警戒機だけで、ここまで来るとは…バイドに遭遇しなかったのか?


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その後でドックに行ってみると、新アウルライト隊の面々を前にして、他の部隊のパイロット達が気の毒そうな顔して見て口々にコメントした。


「折角ここまで敵に会わずに来れたのにな…。」
「これでアウルライト何機目だ?」
「もういっそ無人機にした方がいいんじゃないのか。」
「ミッドナイトアイよりは生存率上がったよな、…たぶん数%は。」
「よかったな。予備パーツだけは大量にあるぞ。」
「修行と思えばいいさ。3戦も生き残ればエースパイロットだ。」
「偵察機隊か、なんてマゾい部隊だ。」
「知ってるか?この艦隊で、早期警戒機隊はパイロットの墓場って言うんだ。」


おいお前ら…偵察機部隊はもともと損傷率が高いんだ。うちだけじゃないぞ。
アウルライト隊のパイロット達が青くなってるし、なんてところに来たんだ、とか言うなよ。
バイドが押し寄せいてくるなか、早期警戒機と連絡艇だけで帰るよりましだろう。
私が本部に出した連絡艇にはちゃんと護衛をつけたぞ、型落ちのアローヘッドだけど。
ん?、整備のおやっさんが来た。


「パイロットは飛ぶことだけ考えりゃいいんだ。俺たち整備班がいるんだ、整備不良‘で’落としたりはせん。」


トドメをさしたか。
私は何も聞かなかったことにして、そっとその場を離れた。


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若き英雄ジェイド・ロスが艦隊を率いて出征して以来無かったバイドの大攻勢。
人間同士の戦争が終わったと思ったら、バイドが再び迫ってきた。
しかし、何故今更バイドが…
ロス提督はバイド中枢の破壊に失敗したのだろうか…?
取りとめもないことを考えながら私は、全艦に地球に向けて転進するよう命じた。


私はバイドが地球圏に迫りつつあることを艦隊の全員に知らせて、バイドを討つ為に地球圏に戻ることを告げた。
隊員たちは地球連合、グランゼーラ関係なく単純に地球圏に戻れることを喜んでいる。
両軍の軍人たちが手を取り合えるようになったのは単純にうれしいし、
私も帰れるのはうれしいが、地球にバイドが迫っている。そう思うと複雑だ。


__________________________________


今、私は事務処理のために司令官デスクにいる。
人事考査を付けていたところだ。
あとはこれを主席副官のマッケラン中尉に渡して、各部署に配らせて終わりだ。

こめかみを揉みながら、窓の外で繰り返される単調な光景を見ていた。
思えば、もうワープ酔いもしなくなったな。
初めのころは本当に酷くて、こんな派遣命令を下した本部を恨んだものだが。

ふと、ベラーノ中尉のことを考える。
以前ビターチョコレート作戦前に告白しようと思ったのだが、ミスをしている。
正直、思い返したくない。
部下にこんな感情を持ってはならないのだが…どうすればいいのか。


その時だった。
ドアをノックする音と共にベラーノ中尉とマッケラン中尉が入ってきた。
聞くと、部屋の前で一緒になったのだという。


私は考査書類をマッケラン中尉に渡し、
ベラーノ中尉の書類にサインをしていた。
私は平静を装って処理しながら、今後どのように思いを告げようかと考えていた。
最後の一枚を処理し終わり、書類を渡すために立ち上がると、ちょうど中尉と目があった。
目と目があったこの瞬間の間に・・・大きな衝撃が艦内を走った!


艦が被弾したのか、艦が大きく揺れた。

バランスを崩した私を支えようと中尉は私を抱きかかえるような態勢になった。

最後に一際大きな振動が起き、額に衝撃と、唇に柔らかい感触があった。

震動が収まると私は抱き合ったまま見つめ合っていた。









マッケラン中尉と。


______________________________________


私は慌てて身を話してなぜかベラーノ中尉に弁明していた。
マッケラン、提督意外と着やせするんですね。とかいうな。寒気が…
今私はパニック状態だ。
戦闘中でもここまで狼狽することは無いのに…


ベラーノ中尉は、若いですね。みたいな顔をしてた。
違う!
誤解を解きたいが、戦闘指揮をとらなくては。
私は泣く泣く司令室へと戻った。


正直、どう指揮したのか分からない。
とりあえず、ピンクとブルーの花みたいなキューブみたいなバイドを倒した。
気付いたら、戦闘が終わっていたのだ。


___________________________________


戦闘後、デスクにベラーノ中尉が戦闘の被害報告を上げに来た。

「提督、私偏見は無い方です。もしお手伝いできることがあったら言ってくださいね。もしプライベートな相談であれば、ちゃんと一人のお友達として相談にのりますから。」

ベラーノ中尉が何か言っているが、まったく耳に入らなかった。

とりあえず

6つに割れた腹筋の感触なんて、一生知りたくなかった…






===================================
前編最終話で、オチをつけるためだけに、提督とベラーノ中尉のフラグを立ててたので、へし折ってみました。
恋愛フラグは折るものです。

すみません、シリアス書いてたら、ギャグ書きたい病がでました。
戦闘は飛ばすつもりだったので、ギャグとして消費しました。



[21751] 7 提督と悪夢再び
Name: ヒナヒナ◆2a9fd0bf ID:ec2c350f
Date: 2010/12/16 22:32
・提督と悪夢再び


我々はワープ空間を地球にむけて戻っている。
もうじき、ワープ空間の出口だ。そこを抜ければ冥王星周辺空域に抜けられる。
ワープ空間での連戦で、かなり艦艇やにガタが来ているし、将兵のストレスも溜まっている。予備機も心もとない。
冥王星基地グリトニルで補給・修理をしなくては。大型ドックもあるし。
グリトニルは重要な基地だ。復旧も進んでいるだろう。
ドック入りしたら2日くらいかかるだろうから、半舷休暇にしよう。


携帯端末から警告音が鳴り響く。
緊急連絡!?
通話ボタンをタッチすると、副官のベラーノ中尉の声が聞こえてくる。


「提督、バイド反応を観測しました。司令室にお戻りください。」
「分かった。すぐ向かう。」


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私は、司令室につくとすぐにベラーノ中尉に現状を尋ねる。

「ワープ空間出口付近にバイド反応です。バイド係数からしてA級バイドかと思われます。」
「索敵は?」
「はい、すでに早期警戒機を先行させています。…映像写します。」

小型バイドの群れがいくつも点在している。
途中、亜空間の干渉空間があり、奥は見通せないが…大型バイドがいるのだろう。
私はマイクを取る。


「総員、ワープ空間出口に大型バイド反応を確認した。バイドは強大だが、これを倒せば地球圏だ。みんな生きて地球圏に戻るぞ!」


発破をかけて、戦闘準備をさせる。
本日の副官はベラーノ中尉とヒューゲル少尉だ。
安心できるな。私の精神衛生的に。


「提督、A級バイドであれば、決定力が必要となります。戦艦をメインで組むべきと考えます。旗艦エンクエントロスを中央にすえて進軍しましょう。」
「旗艦エンクエントロスは艦首砲の調子が悪い。太陽系開放同盟との決戦で無理をさせたせいだな。応急処置をしたとはいえ船体にダメージの蓄積もあるからあまり前には出したくないし、いざというときに艦首砲が不調になったら笑い話にもならない。同じく駆逐艦レーニョベルデも前には出せない。」


ヒューゲル少尉が進言し。私が拒否する。
旗艦のテュール級戦艦エンクエントロスとフレースベルグ級駆逐艦レーニョベルデはともに、開放同盟との決戦でダメージを受けている。応急処置はしたのだが、ドックにいれて、修理しないと本来の性能を発揮できない。特にレーニョベルデのように中破したり、エンクエントロスのように、大きな負荷がかかる艦首砲ユニットに不備がでるとなると、応急修理では無理が出る。
R機であれば、基本的にパーツ交換で済むし、被害が大きければパーツ取り用にまわして、予備機をもってくることになるから、不調のまま出撃ということはそう起こらない。しかし、艦艇では小型の予備パーツはあるが、基本的には切ったり張ったりの修理だ。砲やレーザーも修理はできるが、失われればドックでユニット交換しかない。しかも曳航できないほど大きい艦は、調子が悪かろうと自力航行しなければならない。


「提督、アングルボダ級エストレジータを使うのはどうでしょう?」
「空母で接近する…?ジャミング発生装置があるからある程度安全かも知れないが、あれを使うと移動が困難になるし、肝心の敵の懐に飛び込めないのではないか?」
「いえ、A級バイドに接近するまでエストレジータのジャミングは使用しません。空母の役割はチャージ済みの機体を安全に運ぶことです。小型バイドはR機で排除し、A級バイドまで空母で近づきます。A級バイドの索敵圏内に入る前に空母をジャミングで隠匿。さらに温存しておいたパワードサイレンスでさらにR機を隠匿しながら近づき、至近距離から波動砲を重ね撃ちます。」
「こちらの存在を悟られないようにか。そうだな相手はA級バイドだ。慎重を期して悪いことは何も無い。その案で行こう。」


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アングルボダ級空母エストレジータの中には配備されたのは、ジャミング機パワードサイレンスをはじめ、爆撃機ステイヤー、火炎武装機ドミニオンズ、中距離支援機のホットコンダクター、要撃機ワイズマンと、補給機POWアーマー。これらがA級バイド用に温存。その他亜空間索敵用として、強化戦闘機ウォーヘッド、サンデーストライク。レディラブ隊、可変戦闘機エクリプス隊が遊撃につく。
空母エストレジータの直衛として、ラグナロック隊と、ピースメ-カー隊がつく。
先行偵察から帰還した新生アウルライト隊は、その電子戦能力で通信中継基地として進軍する空母エストレジータと後方の旗艦エンクエントロスの通信を取り持つこととなっている。

いくつかベラーノ中尉とトラブルシューティングを行った後、彼女はアングルボダ級空母エストレジータに移った。


「それでは提督行ってきます。」
「任せた。ベラーノ中尉。」


ベラーノ中尉は周囲の空気を和ませるように、
散歩にでも出かけるかの用に言うものだから、私も苦笑して、送り出した。


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打合せ通りに直衛機を空母の前面に出しながら前進する。
索敵はサンデーストライクとウォーヘッドで先行し亜空間索敵を行う。途中に中州のような干渉空間があり二股に分かれており、また合流している。亜空間機はその中州の中に隠れて、敵機と接触しないようにして、上部進路の索敵を行っている。


「レーダーに感あり。亜空間索敵に敵機引っかかったようです。」
アウルライトを電話線代わりに通信とデータリンクを繋いでいるため、空母エストレジータの状況を後方の旗艦エンクエントロスでも同時に観測できる。


「小型バイドの小隊か。斥候といったところだな。特に指示することもないか。」
「提督、今回のA級バイドとはなんでしょう?」
「分からないな、我々がワープインしたときは近くに大型のバイド反応は無かった。通常空間より構成材料に乏しいワープ空間で、ここまで短期間にA級に成長するとは考えにくい。どこかから移動してきたと思うのだが…よりによってワープ出口とは。」
「まるで、待ち伏せしているみたいですね。」


ヒューゲル少尉の言葉に、なるほど、ここは狩場なのかと納得してしまう。
バイドに罠を張るとは余り考えたくないが、ありえない話ではない。


ディスプレイ上では小型バイドと、R機の戦闘が始まっていた。
直衛のラグナロック隊が相手の索敵範囲外からハイパー波動砲を打ち込む。
チャージ時間を短縮した代わりに威力が小さいため、取り逃がした敵機もいるが、
索敵外からの攻撃に反撃も出来ずに右往左往している。
今の一撃でこちらの位置はばれただろう。奇襲はもう効かない。
ここからは一気にこのバイドの小隊を殲滅する場面だ。


敵の射線に入らない様にピースメーカー隊が捕獲弾を発射する。

「ぐえっ。あれって、痛そうですよね。」

‘ぐえっ’て女の子なんだから。
この捕獲弾は、名前と違って敵機を抉り取るように「捕獲」するので、かなりの攻撃力がある。
生物系のバイドが食らっているのを見ると、ヒューゲル少尉の言うとおり痛そうだ。


遊撃隊として控えていた部隊も出てきて、ミサイルを撃ち込む。
ミサイルは射程距離が短いので敵の索敵に入ってしまうが、
数機まで減っている小型バイドでは反撃もままならない。
第一陣は危なげなく乗り切り、遊撃隊は空母に戻る。


そのまま前進すると、干渉空間の中洲が切れて、比較的広い空間に出る。
亜空間索敵の安全地帯であった中州がなくなり、亜空間機の挙動が慎重になる。
それにより、索敵範囲が自然狭くなっている。
私は一応注意を促そうと、エストレジータに通信を開き、
亜空間索敵の範囲が小さくなっているため、慎重に行くように伝える。


その時、いきなり敵機が索敵範囲深くに飛び込んでくる。
不味いな。敵に見つかったか。
バイドも何らかの方法で近隣の固体とデータを共有しているらしく、
一機に発見されると周りのバイドも集まってくる。


「げっ、見つかった。」


ヒューゲル少尉。女の子なんだから‘げ’はやめなさい。
幸いA級バイド反応とは少し距離が離れている。情報がリンクしていないことを祈ろう。
と、思っていたら、ミサイルが飛んできて空母エストレジータに突き刺さる。
バイドの長距離支援ユニット、タブロックだろう。
なぜか、人を模したような造詣をしている機械系のバイドだ。


「提督、エストレジータ、ジャミング装置を起動した模様です。」
「うん、その方がいいな。」
「しかし、すでに場所は知られてしまったのではないのですか?」
「長距離誘導ミサイルは索敵されていないと、相当に命中率が下がるからな。それに敵機はすでに索敵されているR機を狙うだろう。」
「あ、そうか。そこにいるかいないか分からない方より、見えているほうを狙うんだ。」
「それに、A級バイドに空母の場所を知られたくない。…しかし、ジャミング装置を起動されてしまうと、通信できないな。」 
「そうですね。あとはアウルライト隊のカメラですね。画質悪いですね。」
「4機のアウルライトを経由しているからな。…旗艦エンクエントロス、駆逐艦レーニュベルデは、いつでも動ける状態で待機だ。巡航艦ブスカンドには定期的に連絡。レーダーには気を配れ。」


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私はアウルライトから送られてくる映像を見ている。
旗艦エンクエントロスと駆逐艦レーニョベルデのお留守番組は、下方通路から小型バイドが来ることを警戒して、中洲の手前側で待機している。
攻撃隊であるアングルボダ級空母エストレジータの部隊は、A級バイドへ使用する戦力を温存しつつ、タブロックを攻撃する。
正直、直衛と遊撃戦力だけでは苦戦しているようだ。


「なんか、ハラハラしますね。提督」
「指示できず見ているだけというのは、堪えるな。しかし、挟撃の危険があるからここから動くわけにもいかない。」
「あ、提督見てください。タブロックを落としましたよ。」
「しかし、A級バイドの周囲は多量の小型バイドがいる可能性が高い。これだけではないはず。」
「亜空間索敵じれったいですね。3歩進んで2歩下がるみたいな。」
「敵に突っ込んで、通常空間に戻された上に敵陣で孤立するよりマシだろう。…レーダー係、索敵は?」
「本艦の周囲にバイドは感知されません。」


ヒューゲル少尉との問答の合間に、レーダー係に尋ねる。
このレーダー係は、かなりポカミスをするからな。こちらからも確認しないと。


「あ、バイド輸送艦ノーザリーです。何時も思うのですけれど、あの形最低ですよね。」
「…バイドは生理的嫌悪を催す形状が多いからな。」

焦点をずらして答えてみる。年頃の娘がなんてことを言うんだ。
バイド輸送艦ノーザリーはそれ自体に余り攻撃力は無いが、小型バイドを内部に収納でき、修理できるようなのだ。輸送艦といわれる由来だ。肉塊の様な壁の周囲を金属で出来たらしい装甲板が覆っている。形状は…端的に言えば、…ソーセージだ。
ヒューゲル少尉の質問は私への嫌がらせか?逆セクハラなのか?
やぶ蛇になるから聞かないで置こう。スルーが一番だ。


「ノーザリー2隻に、タブロックが2機、あとは…あ、ストロバルトボマーが来た。」
「戦艦があれば艦首砲でまとめて消し飛ばすのだが。空母には艦首砲は付いてないからな。」
「戦艦の艦首砲なら大抵のバイドは一撃なんですけどね。」
「無いものねだりしてもしょうがないな。ヒューゲル少尉。君ならばどうする。」


顎に手を添えて、小首を傾げてる。


「ワープ空間の最奥にA級バイドがいるとすると、空間的にはそれほど小型バイドがいるとは考えにくいです。これで打ち止めでしょう。空間にみっちりバイドが詰まっていたらもっとバイド係数が観測されるでしょうし。」

「それでは、君の読みどおりこれで小型バイドは出てこないとしよう。」

「これからA級バイドと戦闘することを考えると、どうにか小型バイドの群れを無傷で突破したいですね。これには大火力の攻撃でまきこんで一気にかたを付けるが適切ですが、今回戦艦・巡航艦がいないため艦首砲はつかえません。のこるはR機の波動砲ですが、現在使えるのは、直営のピースメーカー、ラグナロック、遊撃のレディラブ、エクリプスです。のこりは対A級バイド用の戦力です。正直火力不足かしら。」

「ならば、その火力不足を何で補う?」

「ドミニオンズがればいいけどA級バイド用に運用したいから使えないわ。後は亜空間索敵機をどちらか戻して、戦力とするとか…でもだいぶ先行しているから今さら戻すのも…。アウルライトは戦力にはならないし…」

「それはやめてくれ、ヒューゲル少尉。ただでさえうちの艦隊の早期警戒機は未還率が高いのだから、アウルライトをこれ以上潰されたくない。」

「っていうより提督、この辺ベラーノ中尉と話し合っていませんでしたっけ。」

「そうだ。そろそろ始まる。」


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前面に展開していたR機が後退する。遊撃のレディラブ、エクリプスがまず下がり、空母エストレジータの中に消えていく。
データリンクが無い状態でみると、ジャミングの光学的処理のため、本当に機体が消えていくようで怖い。
続いて直衛のラグナロック、ピースメーカーも下がる。
私の隣にいるヒューゲル少尉の頭の上に疑問符が見える。


「提督?さすがに全機格納したら、バイドも機体が消えた位置に集まるのでは?」
「そこがミソだ。」


全てのR機が消えて一瞬戸惑うように動きを止め、そして、いっせいに後方を見る。
正確には後方(我々から見ると前方)に突如現れた機体を睨んでいる。
亜空間索敵をしていたサンデーストライクが通常空間に戻ってきていた。

バイド達は新たな敵の出現を認識して、破壊せんと一機のR機に殺到する。
引き付けながら後退し、亜空間に潜行。
そうすると今度はウォーヘッドが通常空間戻り、バイドを牽引する。
亜空間機2機は何回かこれを繰り返し、小型バイドを空母周辺から引き剥がした。
しかし、タブロックのミサイルで亜空間機に被害がでている。
2機の亜空間索敵機は最終的に次元の壁にめり込んで、通常空間に戻されないようにする。


アングルボダ級ではジャミングは同時に光化学的ステルスを展開するため、カメラにも移らないが、現在小型バイド帯を抜けて進軍しているはずだ。途中まで抜けたらジャミングを解除して一気に通り抜ける。そして今度はジャミング機パワードサイレンスを中心に隊列を組みA級バイドに接近する。索敵はデコイPOWだ。


「バイドって単純なんですね。」
「…バイドの恐ろしさは物量と侵蝕能力だ。このワープ空間は基本的に通常空間より物質が希薄だから、バイド体の基となる物質が少ない。そして今回はワープ出口…袋小路にいたからもとの物量もそこまで多くない。」
「提督、ワープ空間でのバイド戦の教材になるかもしれませんよ。」
「条件が特殊すぎる。この作戦は敵戦力が限定できて、地形的にも条件がある。挟撃されたらおしまいだから、早期警戒機も重要になる。…それにまだ、A級バイドがいる。」


そう言って、ディスプレイに視線を戻す。
パワードサイレンスの周囲にR機が集合しているのが見える。このジャミング機は光学ステルス能力が余り良くないため、なんとかカメラ越しに確認できる。
本来R機の高速戦闘では視認による攻撃などほぼ無理だし。レーダーに掛からなければロックオンもできないため、光学ステルスは重要視されていないのだ。さすがに空母ほどの大きさになると、遠目でも視認攻撃されるため、光学ステルスも高度なものとなっている。


陣営は要のパワードサイレンスを中心に、ステイヤー、ドミニオンズ、ホットコンダクター、ワイズマン、POWアーマーだ。
パワードサイレンスを護衛するような形でA級バイド反応に接近していく。
途中でPOWアーマーのデコイを射出して索敵させる。
おそらくA級バイド相手では一撃で消し飛ばされるが、巨大なものが多いA級バイドは基本的に動かないため、位置情報さえつかんでくれれば役に立つ。使い捨て索敵機だ。


奥に突撃するPOWデコイ、そろそろあちらでは索敵できたかなと、考えたその時
前触れ無くデコイが消し飛ぶ。
あの紫色の粒子砲は見たことがある。あれは…

その時データリンクが回復する。エストレジータがジャミングを解いたらしい。一足先に得た情報で、敵射程の外にあることを確認したのだろう。
データリンクが確保されたといっても距離があるため通信状態は悪い。
しかし、エストレジータとのデータリンクから得た映像に息を呑む。


「あれはドプケラドプス…?でも…」


以前土星基地で倒した‘生ける悪夢’ 一気に緊張感に包まれる司令室。


ヒューゲル少尉が口ごもるのも無理はない。
それは出来の悪いB級ホラーの様だった。
長く後方に伸びている頭部器官、胸部には砲台、人間で言うところの四肢に当たる器官は無く、尾状器官が長くくねっている。まさしくドプケラドプスだ。
しかし所々、骨格構造が見えており、胸部はミイラのように、帯状の物体で包まれている。尾は骨が連なっているように見える。…そう、ゾンビかミイラの様だった。
ただし、頭部器官や、胸部器官は無事なようなので、こちらの姿をみとめれば、攻撃を加えてくるだろう。コアもある。
ワープ空間の出口に鎮座するのは、まるでドプケラドプスの屍のようだった。


「ドプルゲンMaxも健在なようだ。」
「提督暢気なことを言っている場合じゃないですっ。」
「エストレジータへ通信。問題ない。そのまま作戦を遂行せよ。落ち着けば出来る。と」

先ほどから通信状態がわるい。音声だとノイズで聞き取れない恐れがあるので、電文で送った。

「エストレジータより入電。『これよりミイラを火葬する』とのことです。」


下手なジョークでも言えるならば大丈夫だろう。
ジャミングした一団はゆっくりとドプケラドプスのコアに近づいていく。
非常に心臓に悪い映像だ。
ジャミングが効いている証拠に射程内にはいっても、砲撃が飛んでこない。
きっとパイロット達はもっと心臓に悪いのだろう。
ドプケラドプスのコアは腹部だ。彼らはまさに懐まで侵入しなければならない。
いつ気付かれて撃墜されるか分からない極限状態。
目の前に鎮座するのは‘生ける悪夢’ドプケラドプス。
恐怖から、いっそ飛び出して突撃したくなる者がいても可笑しくない。
彼らは今回の作戦でただの一基のミサイルも発射していないが、きっと誰より消耗しているだろう。


「ホットコンダクターの波動砲、コアが射程にはいりました。」


まだだな。全機がスタンバイ状態で無いと。ここで堪えられるか?


「ステイヤーのバルムンク型ミサイル射程内です。」


あと、すこし。視界の下でうねる尾に触れてしまいそうに見える。


「ドミニオンズ火炎波動砲射程に入りました。」


きっとパイロットはドプケラの頭部に見下ろされている気になるだろう。


「ワイズマン誘導波動砲射程はいりました!」


…攻撃開始!


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まず、先陣を切ったのはステイヤーだ。
機首を上げて一気に上昇してドプルゲンMax-Rの射程外から、戦術核ミサイル‘バルムンク試作型’を叩き込み反転して、そのまま離脱。
バルムンクはその大きさゆえに1基しか搭載できない。小型バイドには一撃必殺の威力を持つ。
爆炎。
紫の粒子がほとばしる。チャージがキャンセルできたようだ。
肋骨のような構造が何本か、内部からの圧力に負けて吹き飛ぶ
怒ったようにドプケラの屍が身を捩ると、コア周囲の包帯の様な物体が解けコアが見える。


次峰が続く、集団の後方からホットコンダクター隊の波動砲の一閃がコアを狙撃する。
威力よりも、照射時間や射程を重視した圧縮波動砲を装備している。
むき出しになったコアに波動砲を照射し続ける。


ホッとコンダクターの波動砲が続いている内にワイズマン隊が、コアの少し上方を陣取る。
この位置ではコアは胸郭で遮られている。
しかし、ワイズマン隊は見えないコアに向けて波動砲を放つ。
パイロットの思考をダイレクトに波動砲に伝えることにより、エネルギーの塊が障害物を迂回する。
ステイヤーのバルムンクミサイルがへし折った肋骨の隙間から腹腔に進入し、コアに罅を入れる。


ホットコンダクターの波動砲放射が終わる頃に、ドミニオンズがドプケラドプスを正面に見据える。
波動砲の残滓を反射して、金色の機体がきらめく。
各所に設置された放熱板が装飾の様で、名前通り、まさにバイドを誅する天使だ。
ドミニオンズは機首に蓄積した波動エネルギーを一部熱エネルギーに変換し、一気に開放する。
至近距離で放たれた火炎波動砲は罅の入ったコアを粉砕した。
しかし、その勢い留まらず。度重なる攻撃で脆くなった腹腔や胸郭を破壊、頭部も火炎が嘗め尽くす。

ドプケラドプスの屍はもはや、黒焦げの頭部と尾にそのなごりをとどめるだけになった。
躯さえ忌まわしいとばかりに、R機各隊がミサイルや爆雷を放つ。
コアを破壊され形だけとなっていたソレは衝撃で崩れ落ちる。


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「やったーっ。」
いの一番にヒューゲル少尉が歓声を上げて飛び上がる。
いや、君は何もしてないじゃないか。ってでもやはり生ける悪夢を倒せたのはうれしいのか。
続いてスタッフからも歓声があがる。ドプケラドプスを倒せた喜びと、ワープ空間を抜けられることへの安堵の表情が見られる。


「ヒューゲル少尉、今日から君もドプケラバスターズだな。ようこそ。」


「ありがとうございます。提督。でも提督、二回もドプケラドプスに当たるなんて呪われてますね。」
「まさに悪夢だな。ポジティブに考えるべきだ、厄払いできたと思おう。」
「二度あることは三度あるといいますよ。」
「…」


だから、一言多い!








そろそろ、ワープアウトの準備だ。



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設定だけして読み返したらまるっきり無視されてたアングルボダ級を書いてみた。
結局、R機の発着基地になっちゃうんだよね。アングルボダ。
弾幕はパワーだぜっ!てプレイスタイルだからヘイムダル系列しか使わなかったしなぁ。

ヒューゲル少尉が提督と師弟っぽくなっているけど、このコンビは会話が気楽でお気に入りです。
にしても、A級バイドが敵って言っているのに、この提督は弟子としゃべくって余裕です。まぁ、通信通じないから開き直っているのですけれど。

副官が分艦隊長みたいになって微妙ですが、いっそ、艦長らも登場させればよかったのか。
でも、名前は増やせない。作者の記憶力的に。

追伸:誕生日に一人でケーキ食べながら書いてうpしてます。
♪ハッピバースデートゥーミー、ハッピバースデートゥーミー
…心が折れる。



[21751] 8 提督とグリトニル防衛戦
Name: ヒナヒナ◆2a9fd0bf ID:ec2c350f
Date: 2010/12/16 22:34
・提督とグリトニル防衛戦


「ワープアウト最終チェックを開始します。」
「出口はグリトニル周辺宙域、第二ポイントを選定。」
「エネルギー充填率80%。問題なし。」
「テュール級戦艦エンクエントロスより、ガルム級巡航艦ブスカンド、フレースベルグ級駆逐艦レーニョベルデに、エネルギーリンクを確認。」
「アングルボダ級空母エストレジータにヨルムンガント級輸送艦リャキルナ、ルミルナを係留。ジョイント確認。」
「空母エストレジータ、ブースタ確認終了。問題なし。」
「各艦、異相次元航行プログラムから通常空間航行プログラムへの移行をスタンバイしてください。」


航行担当のスタッフが忙しそうにしている。
もうすぐこのワープ空間ともお別れとなると、少し感慨深いものがある。
ワープアウトは土星基地グリトニルから少しばかり離れた宙域だ。
おそらく、グリトニル周辺はデブリや作業艦で混雑しているだろうからな。
これで、やっと少しでも休暇が取れると思うと気が緩む。
不味いな、本部で報告するまでが遠征だ。もう少し気を引き締めよう。
そこで航行担当責任者から声が掛かる。


「ワープアウト最終チェック完了」
「各艦、エネルギー充填率100%、ワープアウト可能です。」


「よろしい、さあ、地球圏へ凱旋しよう。各艦ワープアウト!」


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冥王星基地グリトニル
実に3回の争奪戦が起きた重要拠点である。
外宇宙へのワープ施設があり、外宇宙に出るには基本的にはここを経由することとなる。
以前、グランゼーラ革命軍(その一派である太陽系開放同盟であったことが確認されている。)から、奪還したのが遠い昔のようだ。
あの時の修理はまだ続いているらしい。まぁ基地内で派手にミサイルや波動砲を撃ったからな。
本部に戻った後、グリトニルの被害状況についてネチネチと文句を付けられたのも良い思い出だ。


我々の艦隊はワープアウトが完了して各艦の確認を行っていた。
久々の通常空間だ。宇宙の黒さが懐かしい。ワープ空間になれたせいでみんな動きがぎこちない。
各種チェックが終わりグリトニルに向かう途中でグリトニル基地から通信が入った。
通信手が慌てている。

「どうした。グリトニルからの通信か?」
「グリトニルからの救援要請です。全周波数で呼びかけています。」

『こちらグリトニル司令室、当基地に向けてバイドの大群が進行中。現在、駐留艦隊がカロン防衛線でバイドと交戦している。至急救援を請う。繰り返す…』

「通信手、グリトニルに返信を。みんな休む前ににもうひと働きするぞ。総員戦闘準備。」
「提督、グリトニル司令部から入電。バイドは大群です。衛星カロンを防衛線としていたグリトニル駐留艦隊は半壊滅状態です。この位置からだと一度グリトニル前を通過するのが最短経路です。」
「これは艦の不調とか言っていられないな、防衛戦に参加しよう。」


「さあ、バイドを地球圏からたたき出すぞ。」


グリトニルが落とされれば背中に不安を覚えながら地球に進軍することとなる。
ここでバイドを殲滅しておくべきだ。


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戦場が見えてきた。すでに駐留艦隊は艦隊の体をなしていないが、それでも撤退していない。
グリトニルのカロン防衛線が崩れれば基地内にバイド流れ込むことになるので艦隊も退けないからだ。
人間同士ならともかく、一度バイドが入り込めば、基地そのものを侵蝕される。
基地内に入られた時点で終わり。だから、対バイド戦ではあそこが最終防衛ラインだ。
基地に急行中、音声通信が混線し始めた。


『グリトニル基地司令より駐留艦隊へ、撤退は認められない。カロン防衛線を死守せよ。』
『こちら駐留艦隊、防衛戦力が不足している。R機の支援を要請する!』
『グリトニル基地司令より駐留艦隊へ、グリトニル基地内に余剰戦力は存在しない。現戦力で遂行せよ。』
『何を言っている!実験施設の機体が有るだろう!?基地ごと侵蝕されたいのか!』
『グリトニル基地司令より駐留艦隊へ、ラボの機体は実験機であり実践には出せない。』
『このまま我々が全滅すれば、グリトニルも陥落するぞ!』
『現在、この宙域に援軍が向かっている。合流まで防衛線を維持せよ。』
『援軍を待つ!?我々が全滅した後にかっ!』



かなり不味い状況らしい。
基地司令と、駐留艦隊の司令官が言い争っている。
通信手か誰かが、間違えてオープン回線に繋いでるな。
気持ちも分かるが、士気にも関わるからオープン回線でケンカするんじゃない。
無理やり収めるか。


「通信手、オープン回線で駐留艦隊に通信を開け。」
「オープンで?了解しました。オープン回線で繋ぎます。」


「こちら地球連合=グランゼーラ特別遠征艦隊司令。駐留艦隊司令官は?」
『こちら、地球連合軍グリトニル駐留艦隊、3番艦巡航艦チャクワコス艦長代理のトバス中佐だ。艦隊司令部は全滅したため、私が指揮を執っている!援軍か!』
「そうだ。R機部隊を先行させてバイドを抑える。艦隊が到着するまで防衛線の維持を頼みたい。グリトニル司令部、それで良いな。」
『…こちらグリトニル基地司令。了解しました。援護を感謝します。』
「カロンに着きしだい、防衛線に展開する。援護を送るので駐留艦隊はその間に撤退せよ。」
『了解しました。』


場を収めるために、できるだけ高圧的に言う。
基地司令は通常大将が着任するし、駐留艦隊司令官もそんなに階級が高くないようだ。
私は元帥で、しかも地球連合=グランゼーラ特別遠征艦隊司令という性質上、両軍の指揮権をもっている。
そういえば、この前の指令で人事権その他も拡大したしな。
今回は思いっきり階級をかさに着る。これで混乱が収まるなら問題ない。


トバス中佐はグランゼーラの軍服を着た50代の男性だった。
彼の乗る巡航艦チャクワコスも被弾したのか、トバス中佐の軍服に血の染みがあった。
すでに抜き差しなら無い状態のようだ。
艦長代理ということは艦長も死傷して指揮がとれないのだろう。
あの艦自体かなりダメージを受けているな。
あの中佐は叩き上げのベテランのようだ。撤退指揮は問題ないだろう。
…実際指揮が必要な程、艦艇が残っていないが。


対する基地司令は30歳中ごろの地球連合軍大将だ。
私は基本的に遠征ばかりしているので、将官の顔を良く知らない。
我々がグリトニルを出発したときは、まだ司令が不在であったので、
新しく本部から派遣された司令官だろう。
基地司令が地球連合で、駐留艦隊がグランゼーラ…どういう体制になったのか。
今考えても仕方が無いな。今やることは…


「ステイヤー隊とピースメーカー隊、エクリプス隊を先行させる。駐留艦隊を援護せよ。」


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まず到着したピースメーカーも押し寄せてくる小型バイドを捕獲弾で討ち取る。
ステイヤーはバリア弾で敵の砲撃を受け止めて、駐留艦隊の撤退を援護する。
エクリプスもミサイルでバイドを近づけないようにしている。
その間にじりじりと駐留艦隊の3番艦以外の艦が下がる。


「先行したR機が戦闘を開始したもようです。本艦も直に戦闘宙域に入ります。」

影の薄い副官のアッテルベリ中尉が言った。

「ああ、駐留艦隊は全部で巡航艦1隻に、駆逐艦1隻、あとは輸送機だな。」
「すでに駆逐艦・輸送艦は撤退を開始しています。あとはあの3番艦チャクワコスのみです。」
「最大戦速で防衛線へ。…アッテルベリ中尉、コンバイラタイプは確認できるか。」
「いえ、前線に出ているのは小型バイドばかりです。」


グリトニル司令室からの情報では基地の周辺宙域がバイドの大群に占拠されている。という事の他に、バイド戦艦の巨大生命要塞‘コンバイラ’がいるとのこと。まったくグリトニル基地には何か憑いているのではないだろうか。
バイドの攻勢は激しいが、攻め込んできているのは小型バイドだ。
幸い大型はまだ、来ていない。


「提督、防衛ラインにつきました。」
「通信を。今度はオープンにするなよ。…トバス中佐、殿ご苦労様でした。ここは我々が受け持ちますのでグリトニルに退避してください。」
『ん?…そうか、助かった。では我々も後退するとしよう。』


私の態度の違いに驚いたのか一瞬眉間にしわを寄せた後、トバス中佐の顔が緩んだ。
三番艦チャクワコスはそこここから火花を吐きながらゆっくりと回頭してグリトニルに退避した。

「空母エストレジータは巡航艦ブスカンドと衛星カロンの下側から進軍してくる小型をたたくぞ。旗艦エンクエントロスと輸送艦リャキルナ、ルミルナはカロンの上方からのバイドだ。駆逐艦レーニョベルデはカロン手前で待機亜空間機に備えよ。」


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バイドの小型機一団をかたづけると、敵の侵攻がひと段落した。
私は大型バイドの来襲に備えて、一度艦隊を衛星カロン防衛線に呼び戻した。
グリトニル駐留艦隊の被害は甚大なようだ。
物量が武器のバイドに一歩も引かずに、打ち合っていたのだから当然でもある。
大型艦艇はあの3番艦以外落とされたようだ。その3番艦も中破していたし、ほぼ全滅といっていい被害だ。
R機も第一波でほとんどが落とされたらしい。駐留艦隊がグランゼーラ軍であったことも被害が拡大した一因だ。
グランゼーラの機体は対R機戦に特化しているものが多く、
バイドに対するメイン武装のひとつであるフォースを装備できる機体が非常に少ないのだ。


「提督、グリトニルラボから直接通信です。」
「ラボ、嫌な予感しかしないな…アッテルベリ中尉つなげてくれ。」


『こんにちは、特別遠征艦隊の皆さん。私はTeam R-TYPEグリトニルラボ開発課所属の主任の…』
「私は基地防衛で忙しいのですが、何か緊急の要件が?」

通信にでた男に苛立ちを感じたので、つい言葉を被せてしまった。
そう、ニコニコ笑っているのだ。自分のいる場所が今にもバイドに侵蝕されそうなのに。

『おや、終戦の英雄殿は意外せっかちなのですね。今回はいい話ですよ。戦力を提供しようというのです。もちろん、パイロットもお付けしますよ。』
「戦力…、基地指令は余剰戦力は無いといっていたが?」
『‘余剰’戦力はありませんよ。この機体は防衛線ですり潰すべき機体ではありませんから。』
「試作機の実験か。もちろん、ちゃんと五体満足なんでしょうな?そのパイロットは。」
『その技術課題はクリアしましたので。』

「…見返りは、今までの戦闘データというわけか。」
『さすがは、‘終戦の英雄’ですな。話が早くて助かります。それではラボより出撃させます。詳細はデータで送信します。あ、もちろん戦闘後も使ってもらってかまいませんよ。それでは良い戦果を。』
「…」


金食い虫のTeam R-TYPEが変な実験開発をしなければ、もっと艦艇が建造できると思うのは私だけではないはずだ。
研究開発の予算を削るようになると組織としてはかなり末期に近いとは思うが、
予算計画と成果についてくらい、監査をしてもらいたいものだ。


しかし、やはりTeam R-TYPEは危険だな。
前を見たまま小さい声でアッテルベリ中尉にささやく。
「中尉、戦闘後にバイドバインドシステムに関する詳細データをプロテクトかけて隔離しておくように。あと、提出用のダミーデータの作成を頼む。」
「…了解しました。」


あとでグランゼーラ出身の副官達にもBBSについて口止めしておかないと。
あ、カトー大佐もか。忘れてた。


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OF-1軌道戦闘機 ダイダロス
グランゼーラ側で開発されたものをTeam R-TYPEで解析、再度組み立てたもの。
機体性能はグランゼーラのものに準じる。
軌道戦闘機の初期型機。ポッドと呼ばれる半独立制御兵器を装備しており、ポッドは砲台として機能している。また、ガルーダからの制御によってポッドシュートを呼ばれる掃討攻撃を可能としている。また、亜空間潜行が可能。

R-WLeo 特殊武装機Leo
サイビットとよばれる半独立制御兵器を装備した機体。サイビットはダイダロスシリーズが持つポッドを同じような用途であるが、ポッドが砲塔を独立・強化したものであるのに対して、サイビットは人工フォースを小型化したものであり、開発思想が異なる。フォースの攻守双方に優れる機能を持たせたため、非常に強力な機体となった。基本的にR機は直撃を受ければ破壊されるが、Leoはサイビットの半自律防御によってある程度のダメージを許容できる。またサイビットを用いたサイビットサイファによって、攻撃面でも1機でR機1個小隊に迫るものがある。しかし、その攻撃力と半自律防御システムが災いして僚機を撃墜しかねないため、小隊運用が出来ない機体となった。また非常に高価である。


私は頭の中で注釈を加えながら、Team R-TYPEから送ってきた資料を斜め読みする。
この組み合わせ…半独立制御兵器のコンペティションってことなのか。
実験台は気に入らないが贅沢は言っていられない。
Leoは…小隊組めないってある意味欠陥兵器だな。サイビットの使用にも特殊技能が必要って、まともに運用できないじゃないか。
ダイダロスはグランゼーラで同じ機体を使用していたが、何故ここで持ってくる。
パイロット早期育成計画?これが本命か。長い…後で読もう。
パイロットはまともなんだろうな?


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さて、そろそろ大型バイドも攻めてくる頃だ。
防衛線維持のため、大型艦艇はカロン周辺から動かせない。
旗艦エンクエントロス、空母エストレジータ、巡航艦ブスカンド、駆逐艦レーニョベルデはカロン防衛線の維持だ。
輸送艦とR機部隊で行くことになるな。ダイダロス隊とLeoも向かわせよう。


「アッテルベリ中尉、バイドの反応は?編成作業は可能か?」
「索敵範囲内にバイドは確認できません。防衛線の内側で攻撃隊の編成を行えばよろしいかと。」
「そうか、大型バイドが来ないうちに進めよう。各艦に通信を。」


「グリトニルの防衛戦に際して、第二派が来る前に防衛線の構築、攻撃隊編成を行う。まず大型艦艇で防衛線を構築する。配置についてはデータを参照して欲しい。攻撃隊は輸送艦をとともにR機隊で構成する。衛星カロンを挟んで上部回廊と下部回廊に分けて進軍、殲滅する。なお、グリトニル基地からダイダロス隊、Leoが我々の艦隊に編入される。各艦指示に従って編成を改めるように。」


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カロン上方からはヨルムンガント級輸送艦リャキルナ、下方かた輸送艦ルミルナを進軍させている。まっすぐカロンに飛び込んできた馬鹿はカロンのガスに捕まっている間に、防衛線の艦艇からの砲撃でしとめる。そして今回も亜空間索敵プラス通信連絡係りのアウルライトだ。Leoは上方、ダイダロス隊は下方に割り振った。


「現在、上方、下方ともに問題なく進軍しています。カロン外縁部に達しました。」
「そろそろ通信が悪くなる。アッテルベリ中尉、アウルライト隊を展開、通信の確保を行え。」
「了解しました。」


「提督、索敵範囲外からの砲撃で、モーニングスター隊、ルビコン隊の反応が消失。その他、亜空間機が数機巻き込まれました。」
「索敵外から?敵を解析!」
「提督、砲撃してきたのは大型バイドのボルドガングとコンバイラのようです。」
「来たか…!R機で近づくことは可能か。」
「砲門が多いので、無傷では難しいでしょう。デコイに紛れても被弾は必至です。」
「亜空間機も数が揃わないか。」
「提督、Leoとダイダロスはどうでしょう。Leoなら多少の攻撃は耐えられますし、広域掃討用のサイビットサイファが使えます。ダイダロス隊の亜空間シフトからのポッド攻撃です。威力はサイビットサイファに劣りますが、2基×5機分で10基のポッドで攻撃できます。」
「サイビットサイファとポッドシュートはそこまで強力な武装なのか。」
「サイビットもポッドも判自律武装ですので弱点を的確に狙えます。」
「手をこまねいているわけにも行かないな。輸送艦リャキルナとルミルナに連絡を。」


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補給のために一度輸送艦に入っていたR機がルミルナから姿を現す。
ダイダロス隊だった。演習でもするようにきれいに等間隔で発艦する。
そして、ポッドを従えて静かに亜空間に滑り込む。
ついでに、3機残っているサンデーストライクも亜空間潜行する。
ダイダロスのポッドは通常より、さらに強い赤色に発光し内在するエネルギーの多さを伝えている。
通常空間を透かして見ながらボルドガングの近くにまで移動する。
後は敵が接近して時が来るのを待つだけ。


ボルドガングの突き出た構造の先が亜空間にいるダイダロスに接触。
チャージされたポッドごと一気にダイダロスが通常空間に引き戻される。
ボルドガングは亜空間からのR機の出現に反応して停止してしまう。
その間に、サンデーストライクも通常空間に戻る。
ダイダロスのポッドがエネルギーを解放。ポッドが砲を乱射し目標に突っ込み、バイドをゴミの塊に戻してゆく。
サンデーストライクもミサイルを一気に発射し撃ち漏らした破片を塵に戻す。
ポッドが落ち着いてダイダロスに戻ってきたときには、
バイドの暴走巡航艦はいなくなっていた。



ダイダロスの攻撃とほぼ同時に輸送艦リャキルナからはLeoが発進した。
単機で出たLeoは、パワードサイレンスの後ろについて進軍する。
ワープアウト前の戦闘…ドプケラドプス戦で、最後の至近距離から波動砲連射の余波を受けて、2機が接触、ジャミングユニットを損傷したため、今回パワードサイレンス隊は3機しおらず、作戦からはずされていた。しかし、Leo一機を隠す分のジャミングならば十分可能であるため、引っ張り出された。
静かに静かににじり寄る。コンバイラの赤い装甲が迫ってくる。
そっとパワードサイレンスがLeoの後ろに回り逃走の準備をする。
サイビットサイファに巻き込まれればひとたまりもない。


Leoはエネルギーの溜まったサイビットを解放すると同時に、
パワードサイレンスが弾かれるように退避する。
サイビットは自律的に軌道を選択しながら、パイロットから直接指定された目標に向かう。
コンバイラの胴体間接部継ぎ目に何度もアタックを掛ける。
接触のたびに装甲をはぎ取り、そして見えたのはコア。
チャージされたエネルギーが使いつくされてサイビットがLeoの両翼に戻ってくる。
そして、Leoからのエネルギーリンクを介してサイビットが再び輝き、
レーザーがコアを焼く…がコアを破壊しきる前に出力が落ちる。
ひびが入ったコアを抱えたコンバイラは砲門を開きLeoに向かって発射準備に入る。

そのとき側方から飛び込んできたパワードサイレンスがコアに向かってバルカンを撃ちつける。
本来、戦闘を想定されていないR機だが、砲門も回避しようとせずに撃ち続ける。
そして、ヒビが一気に亀裂となりコアが砕け散る…



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私は、デスクの端末で報告書を書いていた。
先ほどまで救助活動であるとか、グリトニル周囲の警戒であるとか、
艦隊被害とかグリトニルの入港であるとか、簡易葬儀であるとか、
艦隊の修理の件でグリトニルと協議したりとか…
ともかく非常に忙しかった。
最後に今回の戦闘の報告書を、グリトニル経由で本部に提出して終わり。


やっと、一息つける。


眉間を揉みながら考える。
バイドがこの基地を攻めた理由は何だろうか。

1.たまたまバイドの進軍進路と合った。
否。
現在の冥王星は公転しているし、現在の位置は前回襲撃の地点とは違う。
恣意的な何かがあるはず。

2.ワープ空間などの異相次元の壁が薄い特異地点である。
是。
実際、冥王星宙域グリトニル周辺は歪みが多くワープ負担が少ない地点の一つだ。
しかし、そのような地点は太陽系外延部には比較的多くある。これだけが原因ではないだろう。

3.バイドにとってグリトニルには何らかの価値がある。
否。
バイド体の原料としてはありえるが、別にグリトニルである必要は無いな。
バイドルゲンに多少の誘引作用があることは確認されているが…
グリトニルにはほとんど保管されていないはず。

4.戦略拠点として
否。
人類としては外宇宙への出入り口を押さえることは戦略的意義がある。
しかし、バイドは外宇宙から来るし、ワープ設備も使用しない。
進行ルートをわざわざ外れてまで取りに来る基地ではないのではないか。



…何しにグリトニルに来たのか。
バイドとは…彼らは何なのか。
疲れているのかそんな埒の明かないことを考えていた。


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デスクから出ると、みな戦勝ムードで騒いでる。前回のグリトニル戦役のときより激しい。
とりあえず艦内でもドックや食堂などで酒盛りしているらしいが、今日くらい目をつぶろう。
シフトに当たっているの隊員はちゃんと仕事しているみたいだし。


地球圏に帰った開放感、久しぶりに誰かを守れたという充足感、加えて翌日の半舷休暇で浮き上がるとこうなる。
明日は部屋から出れないものが多かろう。
シフトの結果副官達は、エマ・クロフォード中尉、マッケラン中尉は居残り、アッテルベリ中尉は興味ないといって残っている。
私も提督帽を置いて、作業ジャケットを着込んで出てきてみた。雰囲気を壊さないのは大事なことだ。


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旗艦エンクエントロスのデッキではダイダロス隊とLeoのパイロット達のあいさつが行われていた。
でも、半数くらいすでに出来上がっているぞ。
パイロット達は皆来ているらしい。スクランブル要員くらい残してあるんだろうな?


ダイダロス隊のパイロットは若い…
というかなんと言うか実戦経験者のスレた感じがしない。
あの早期育成計画とやらで、育てた新兵を実験で送り出したのか?
話を聞いてみると、やっぱり実戦は初めてだという。

「シミュレータ戦闘は繰り返していましたので。新型のプログラムで異様にリアルなんですよ。」
「そういえば、いっしょに訓練していた1番と2番、それと4番機が訓練途中からいなくなってたんだけど、どうしたんだろう。」
「地獄の補修で撃墜されまくりましたから。恐怖心とかもう無いですね。」

ダイダロス隊が皆遠い目をしてる。大丈夫か?
というか、落とされ慣れるって、実はトラウマ製造機なんじゃないのか。


あちらではLeoのパイロットがトドメをジャミング機に奪われたことを嘆いている。
パワードサイレンスのパイロット達はかつて無い大戦果に涙を流しながら、盛り上がっていたりした。
故障で留守番してたパワードサイレンス隊のメンバーはLeoのパイロットを慰めていた。
まぁ、ある意味平和だ。


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私は居室に帰ってから、Team R-TYPEから送られた資料の詳細に目を通す。



Project ‘Image Fights’ パイロット早期育成計画群
イメージファイト計画。脳に直接電極を刺して、電気刺激でイメージを誘発させる。高性能機器と連動させることにより、精度の高い幻覚を作り出すことが可能。
被験者は電気刺激と自らの脳が作り出す幻影の中で、戦闘を行い続ける。
教習ステージ、補修ステージを反復することにより短期間で技能を身につけさせることが可能。
ベテランパイロットが極端に足りない現状を打破するため、また、実機の消耗を最小限に留め促成パイロットを育てることを目的とする。最終的には実戦投入して調整を見る必要がある。また、極度の精神衰弱を起こす被験者が確認されている。実戦投入レベルまでの成功率は32%。脱落者の処分は…


「機密」の赤いスタンプの押された書類を閉じる。
やはりTeam R-TYPEは信用ならん。






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ここからバイドのターン。
このコンバイラは違いますよ。ただのコンバイラです。

自衛戦力とか無いのかよ。とプレイ中に突っ込んだ覚えがあるので、駐留艦隊出してみた。
突発的に出てきたトバス中佐に死んでもらうかどうか悩んだのですが、
何とか生き残りました。

後半はいつの間にかレオとイメージファイトネタに飲まれていましたね。
もとのシリーズでは自機の2機ですが、tacticsシリーズでは残念性能です。
あと、ボスのHPが一桁残って、バルカンで倒したりとかtacticsでは良く有ることです。



[21751] 9 提督とロキと…
Name: ヒナヒナ◆2a9fd0bf ID:ec2c350f
Date: 2010/12/16 22:36
・提督とロキと…


待ちに待った半舷休暇だった。
艦から降りて休める日のことだ
面倒な案件さえなければ…


私は結局、書類事務につかまり全く休めなかった。
そうだよな、そりゃ長期遠征に行っていたら事務処理溜まるよな。
「私も手伝いますから。」と、にっこり言ったベラーノ中尉の顔が鬼に見えた。
基地内とはいえキチンと上陸して休みたかった…。


試作機を使った手前一応Team R-TYPEのラボに顔を出しておいたのだが、
どこから嗅ぎつけたのかバイドバインドシステム(BBS)の事を知っており、情報を求めてきた。
どの道、拒否しても本部を通して強権を発動されるだけなので、データを渡した。
アッテルベリ中尉に作らせたダミーデータの方を。
ダミーの内容は詳細を省いて戦闘映像より分かる事だけを並べたレポートを提出した。
最悪本部には話すことになるかもしれないが、出来るだけ伏せておきたい。
あと、どうせ戦力の出し惜しみをするなら、試験でも我々で使った方が有用だと考えて、
トロピカルエンジェルを分捕ってきた。
そのかわりに、ピースメーカーをグリトニルに置いていくこととした。
…あまり最前線から戦力引き抜きまくっていると、恨まれるからな。


超高機動機 R-11Sトロピカルエンジェル
R-11Bピースメーカーなど高機動機の後続機として開発されていた機体。
機首に補助ブースターを装備しており、高い加速性能と旋回能力を得ている。ロックオンレーザーと呼ばれる命中精度の高い武装を持っており非常に使い勝手が良い。ただし耐G機構が不十分であるので、パイロットの消耗が早く、長時間の運用は出来ない。


補給・修理は基地司令が最優先で受けさせてくれた。
お陰で、3日で出港できた。…もう一日あれば私も休暇が取れたのだが、
さすがにそんなことで出港を遅らせる訳にはいかない。


グリトニルでの滞在中に、地球本部からの連絡艇が一便来たのだが、
バイドの大群はかなり地球に近付いているらしい。
すでに、地球圏の各艦隊がバイドの斥候と戦闘を行っており、
現在は土星-木星間にある要塞ゲイルロズに防衛線を張っているとのこと。
しかし、かなりバイドの攻勢が激しくなってきており、
場合によっては木星圏を放棄し、火星まで防衛線を下げることも検討しているらしい。
グリトニルも基地司令の話では基地の放棄・撤退も考えているそうだ。
ここにきて、地球圏に潜伏していた太陽系解放同盟の残党の動きが活発化しているので注意せよとのこと。
私はこの報を聞いて、地球に直行するべきか迷ったが、
補給が確保できないこともあり、各惑星・基地などを経由する進路を選択した。
防衛線外に取り残された場所でも、グリトニル基地のように駐留部隊が戦闘を継続していることがある。
その戦力を吸収しながら地球へ戻ることとなった。


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現在、私の艦隊は冥王星・海王星間のカイパーベルト帯にまで来ている。
今のところ順調で、問題なく進軍している。これを抜けて目指すは海王星だ。
海王星には小規模ながら基地があり、バイド汚染されていなければ補給が可能な事。
また、駐留部隊の残存戦力がまだいるかもしれないため、天王星を中継することとなった。
今後の航路の詳細について航行責任者と話していると、先行している偵察機から緊急連絡が入った。
対バイド用巨大ソーラー兵器、‘ウートガルザ・ロキ’が、また占拠されているとのこと。
太陽系解放同盟とみられるが、バイド機は確認できていない。
地球圏に残った解放同盟はBBSを使用していないのだろうか?
一応、カトー大佐の話では、ワープ空間に入ってから完成した技術であるとのことだったが、用心するに越したことは無いだろう。


しかし、バイドの襲来に合わせて乗っ取るとか、何を考えているのか。
とても好意的に考えればバイドを討つためとも考えられるが、今までの行動からそれは無いと、否定。
いいとこ、地球連合やグランゼーラの戦力ごと、バイドを消し飛ばすというのが、あり得そうなシチュエーションだ。
さらに報告が入る。
‘ウートガルザ・ロキ’は改造され、 光線の照射効率が向上しているとのこと。
…こうなったらまたロキごと破壊だな。
私は戦闘準備を命令した。


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偵察機の報告では、駆逐艦と空母が確認できたとのことであったが、
宙域着くと意外なほど静まり返っていた。
空母があるので大部隊を展開して待ち構えていると思っていたのだが、
少なくとも索敵範囲には機影は無い。
…こんなところで無駄に時間を掛ける事もない。


「中央突破だ。一気にロキをたたくぞ。」
「提督、罠かもしれませんよ。」
「たとえ、罠だとしてもロキを発射させる訳にもいかない。それに兵を伏せているとすれば周囲の氷塊群の中だろう。空母、巡航艦が出てこない内に一気に突き抜ける。」

慎重派だなワイアット少尉。今回の副官一人だけどそんなに、自信なさげにしなくても。

「戦艦や他の艦艇の索敵能力は強力だ。旗艦エンクエントロスで索敵を行い、艦隊を組んで進む。足の速いR機で先行、ロキのチャージを解除してもらう。」
「では、氷塊帯の索敵はよろしいのですか?」
「とりあえずはいい。第一目標は‘ウートガルザ・ロキ’のソーラービームの発射解除および集光ミラーの破壊。第二目標がロキ本体の破壊。第三目標が敵艦艇の破壊。小型機は無視してもよい。どの道艦艇がなくなれば何もできなくなる。」

私は先行部隊の出撃を命令した。


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先行隊はトロピカルエンジェル隊、エクリプス隊、サンデーストライク隊、ダイダロス隊、Leoを出撃させた。亜空間潜行能力のあるS・ストライクとダイダロスで索敵を行い、足の速いT・エンジェル、エクリプスで攻撃を行い、ソーラービームのチャージをキャンセル、Leoはサイビットでロキの集光ミラーを破壊し再チャージを不可能にする。
そのあとを追いかけるのが私の乗る戦艦エンクエントロスで、主に索敵、艦隊でロキ本体の破壊を担当する。また、敵が部隊を展開してきた際には、戦艦内に待機しているR機隊が迎撃を行うことになっている。


「先行隊より連絡がありました。“行程の50%地点に機影発見、ナルキッソスと思われる部隊が複数。第一目標を優先するため交戦回避する。”とのことです。」
「了解だ。…こちらの索敵でも感知したな。あそこに居座られては戦艦が進めない。各機殲滅せよ。敵は鈍足だが攻撃力が高い、撃墜されるな。時間も十分ある。」
「提督、ここからならばエンクエントロスの主砲レーザーも届きます。援護を行ってはいかがでしょう。」
「そうだな、レーザー砲門開け、射程外から敵戦力を削るんだ。ただし艦首のグレイプニル砲と、ギャラルホルン砲はロキ本体用に温存せよ。」

主砲が宇宙空間に白い線を描いていく。遠距離からの砲撃だったが、
相手の索敵外ということもあり数機が破壊されて、デブリをまき散らす。
戦艦のメリットは長距離の索敵と射程で、一気に殲滅する事だ。
数さえ初撃で減らしてしまえば、後はR機で畳みかけるだけだ。
たかだか3~4隊程度ならエンクエントロスがたどり着く前に殲滅できるだろう。

「あれ?」
「どうした、レーダー係。」
「あ、いえ。一瞬レーダーに大量の敵反応が映ったのですが、肉眼で確認しましたし問題ありません。…レーダーが不調のようです。」
「修理時に不都合でもあったかな。原因究明はロキを破壊してからだ。」


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「提督、先行隊が亜空間機と戦闘に入りました。」
「敵がいないと思ったらそういうことか。敵機は軌道戦闘機か?」
「軌道戦闘機ガルーダが複数隊です。現在S・ストライク隊とダイダロス隊が抑えにかかっていますが、少し苦戦しているようです。T・エンジェルはすでに突破してロキに向かっています。Leoも後を追っています。」

旗艦エンクエントロスのディスプレイに光学望遠の荒い画像が映る。

T・エンジェルはいきなりのガルーダの出現に急停止するも、
次の瞬間には高機動を生かして、ガルーダの半自律武装ポッドの砲撃を掻い潜り、
ガルーダとポッドの隙間を縫うように潜りぬけると、ロキの砲身の前に躍り出る。
ガルーダも回頭して後を追おうとするが、追従するダイダロスのポッド攻撃とS・ストライクの爆雷が牽制する。
混戦に入ってしまえば亜空間機であることのメリットは殆どなくなる。
さらに、ガルーダの隙をついてLeoも突破しようとするが、いかんせん敵機の方が多いためブロックされる。

「こちらの射程に入り次第援護を。発射残り時間は?」
「後2分、このままいけば問題ありません。」
「提督、敵空母と巡航艦をレーダーに捕らえました。氷塊の中に隠れていたようです。」
「R機隊を向かわせろ。氷塊が邪魔だな…本艦はR機の援護に付く。その他艦艇はロキ本体の破壊位置に付けさせよ。」

T・エンジェルがロックオンレーザーを撃とうとしていた。
旗艦エンクエントロスでも、固唾をのんで見守る。
T・エンジェルが中折れレーザーを放つとロキの砲身の奥、集光機構に着弾。
ロキが小爆発を起こし、砲身の光が拡散する。

「今回はあっさり破壊できたな。」
「今回?ああ、グリトニル戦役前ですね。」
「ああ」
「あ、提督、艦隊本体攻撃位置に付きました。R機隊も空母への攻撃を開始しています。」
「全艦、砲撃。目標‘ウートガルザ・ロキ’。」


復唱より早くレーダー係りの息を飲む音と、悲鳴に近い報告が響いた。

「提督!敵です。氷塊が敵機に変わっていきます!数は20…30隊以上です!」

今まで氷塊だったものが、つぎつぎに白い機体に入れ替わる。
レーダーを見ると敵を示す赤い光点で埋め尽くされていた。
多い!

「擬態です!ナルキッソスが氷塊に擬態していたみたいです。」

ワイアット少尉、今更原因を知ったって現状は変わらないぞ。
先のレーダー係りの言っていたのは、レーダーの不調ではなく、これか。
未だにこんな戦力を保持していたとは。
この挟撃状態で、この量に挑むのは無謀だな。

「提督、命令を!」
「…無視する。ともかくロキの破壊、艦艇の破壊が最優先だ。」
「提督!それではナルキッソスに囲まれます。」
「艦隊は、ともかくロキを破壊せよ。R機隊は空母を。デコイ持ちはデコイを前線に押し出せ。旗艦エンクエントロスは巡航艦を落すぞ。艦首砲照準!」
「提督!」
「ワイアット少尉、これだけの物量をこの場で仕留めるのは無理だ。ロキを修理不可能に破壊して、敵艦艇を破壊できれば、後は放っておいても勝手に燃料切れをおこして無力化出来る。」


そう、この障害物の多い宙域を抜けるには多量の燃料を必要とする。
近辺の基地は天王星、冥王星、そしてグリトニルが最も近いが、
戦闘機ならともかく、ナルキッソスは巡航に向かない人型機だ。
行き着く前に燃料切れになるだろう。
これだけの物量だ。おそらく余剰戦力は無いだろう。


ナルキッソスの主機に火が入り、こちらに動き出した。
準備の出来ていた艦隊は艦首砲、ミサイルなどで一気に仕留めにかかる。
すでに光を失っていた‘ウートガルザ・ロキ’から爆炎が上がり、
砲塔が崩壊したのを確認し、R機の撤退援護にかかる。


ナルキッソスが集まってくる。
すでにレーダーは真っ赤だ。
R機もステイヤーがバルムンクを、ラグナロック、ワイズマン、ウォーヘッドが波動砲を構える。
敵空母アングルボダ級から艦載機が艦外退避する寸前に、バルムンクを艦橋に打ち込む。
他のR機も波動砲を機関部に波動砲を撃ちこむ。
空母がゆっくりと噴煙を上げ、円筒状の構造の途中から折れ曲がる。
やがて、燃料か弾薬に引火したのか、激しい爆発が起こり内側からいくつもに分断される。
空母としての機能は失われただろう。
R機はナルキッソスの圧力に押されるように、援護に回っていた艦艇に帰艦する。


宇宙が狭い。
そう息苦しくなるほど、大量のナルキッソスが面前に迫ってきていた。
私の横でワイアット少尉が青くなっている。
トリになってしまったが、私が乗る旗艦エンクエントロスが巡航艦を仕留めれば終わりだ。

「グレイプニル砲はまだか!?…全砲門敵機を牽制せよ。」
「あと5秒………チャージ完了しました。」
「グレイプニル砲発射!」
「艦首砲発射…敵巡航艦破壊確認しま…」
「各艦、全速転進!一気にこの宙域を離れるぞ!」


戦果報告もそこそこに、撤退命令をだす。
最前列のナルキッソスはすでに、艦に取りつきそうだ。
旗艦が回頭する間、艦隊の弾幕で援護してもらい、海王星に向かう航路に向くと一気に加速する。
小さいデブリは戦艦の火力を活かして破壊しながら進む。かなり荒っぽい操艦だ。


____________________________________


疲れた。
グリトニルを出てすぐこれか。
後方の確認をしたあと、私は事務処理を行い海王星まで少しでも休もうと居室に戻る。
そう言えば半舷休暇も取れなかったしな。




バイドに合わせて火事場泥棒を働くなんて、
いっそそのまま氷漬けになってしまえ。


==================================
せっかくだから、俺はこの海王星ルートを選ぶぜ!

ってなわけで、次は海王星ルートです。ネタが古くてすみません。
描写だけでXXX行きな感じがするバラカス様を出したいとかではなくて、
TacticsⅡでは貴重な水中面なんです。
変態潜水艦グランビアFとか、一回使い捨てな水上艦ラーン級を出してみるとかできるんです。
海底大戦争やったことないし、水上艦使った事ないけど、
以前エーギル級登場しないのか聞かれたので、上位機のラーン級出してみる。



[21751] 10 提督と海底大戦争
Name: ヒナヒナ◆2a9fd0bf ID:ec2c350f
Date: 2010/12/16 22:37
・提督と海底大戦争


海王星までは追撃もなく、私達は海王星を目指した。
しかし、肝心の海王星基地からは応答が無いし、すでに放棄されているらしい。
行っても無駄か。
海王星の衛星トリトンからA級バイドの反応があった。
ここは木星の衛星エウロパ同様に地下に液体の海があるが、
水質の関係からエウロパのように水資源の補給基地としては開発されていない。
そのかわりに、かつてグリトニルを建設した時に物資を保管しておくために建設された基地がある。
トリトン海洋基地には微弱ながら熱源反応があったので、こちらに降下することとした。


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空母は一度降下すると再上昇が大変なため軌道上に置き、巡航艦をその護衛に残して降下し、
私は今トリトンの海洋基地にいる。

バイドはトリトンの地下水域にいるものと思われる。
トリトン海洋基地で聞いた情報だ。
基地の残存兵たちから話しを聞くと、
バイドは水棲型で通常のR機では攻撃が難しい。彼らの保有する水中戦力ならば、水棲バイドに対応できる。
とのこと。
基地の最上位者は哨戒でいないため、
潜水艦隊のタカハラという隊長と話をしていた。


「しかし、戦力が足りているなら、なぜ突入しなかったのか。」
「…飛べないんです。」
「は?」
「飛べる機体が無いんです。今ある戦力は潜水艦と水上攻撃艦のような水中稼働型ばかりで。」
「しかし、君たちの話では、バイドはトリトンの地下水域にいるのだろう。問題ないじゃないか。」
「そう問題なかったのですが…。しかし我々が基地周辺のバイドの掃討を行っている間に、奴らは海を凍結させました。体内でドライアイスを生成するバイドが居たんです。そのバイド…ガスダーネッドというのですが、基地の周囲の海に凍結を引き起こしたせいで、基地周辺の内湾の海面が下がり、基地側から攻めるルートが干上がりました。海面が下がったせいでそこここに滝ができて水上攻撃艦もまともに動けない状態です。」
「つまり、海面が下がったので身動きが取れなくなったんだな。」
「そうです。」

トリトン基地では基地周辺に多量にいたガスダーネッドを処理したのだが、
それらを倒したころには、身動きできない状態になってしまい、
さらに、動けないうちに地下水域に居るバイドがA級に成長してしまったらしい。
私も上空から降下するときにトリトン海洋基地を見たのだが、
基地のある湾が氷で閉鎖されて、基地の周囲は潮が引いた後のタイドプールようになっており、わずかに残る航路跡も凍り付いていた。


「我々の基地にも航空戦力や巡航艦があったのですが、上空での攻防戦で壊滅しました。」
「では戦力は?」
「水上攻撃艦ラーン級1隻と、潜水艦グランビア・Fが3隊です。」
「ラーン級は現在哨戒中と聞いたが。」
「正確には砕氷中です。基地の周りだけでも砕いておかないと、本当に基地が凍ります。」
「…」


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旗艦エンクエントロスに乗ってA級バイドのいる地下水路への侵入口に向かっている。
そして、下にはラーン級水上攻撃艦が係留されて空中遊泳している。
非常にシュールな光景だ。
今回の攻撃のための母艦として運んでいるのだが、旗艦で運んでいるのは、
一番余剰推力があるのが、戦艦であるこの艦だったからだ。
ちなみにグランビアFはラーン級にいれると重いので、別途駆逐艦で運搬している。


UFWS-005 水上攻撃艦ラーン級
水上艦に分類される艦は、旧暦以来地球上の至る所で使用されていたが、
バイドによってコロニーが落着したさいの津波でほぼ壊滅した。
それら旧水上艦に変わって、制海権維持のために開発されたのがエーギル級を始めとする水上攻撃艦だった。
重力下にあっては宇宙航行艦より燃費がよいため地球の防衛用として、
後続のラーン級が開発されたが、バイドとの戦闘が激化し、戦闘の舞台の大部分が宇宙空間に移ると、
水上艦という極所戦力は必要とされなくなり、ラーン級以降は開発が凍結されている。


Sm-Gr-F 潜水攻撃艦グランビア・F
宇宙戦闘機をフレームに使用した攻撃潜水艦で高い機密性と防御力を誇る。
超音波魚雷や弾道弾迎撃ミサイルといった非常に強力な武装を持つ。
超音波魚雷は発射した魚雷から超音波を発生させ、推進軸を中心に渦状の水流と衝撃波を発生させ、
付近の敵を巻き込んでダメージを与える兵器で、
魚雷自体の炸薬でダメージを与えるのではなく、周囲を巻き込む超音波で破壊する。
ただし、魚雷の推力を発生させるのに艦自体のエネルギーをチャージする必要があるため、発射には時間が掛かる。
もちろん、潜水艦であるため水中でしか運用できない。


今回の作戦は、水棲バイドが相手ということで。攻撃はラーン級とグランビアFを中心に行うこととなった。
R機隊からは、早期警戒機アウルライトと、亜空間機サンデーストライク、ワイズマン、POWアーマーの各隊を選抜した。
おもにR機用の補給母艦として、ヨルミンガント級輸送艦のリャキルナも付けた。


我々は氷で覆われた洞穴の前にいる。
洞穴にはかなりの勢いで海水が流れ込んでいる。
アウルライトからの索敵の結果、この地下河川を下った先にA級バイドのいる空間、おそらく地底湖がある。
問題はこの川下りだが、川幅があり天井が高いので輸送艦・R機での進入にも問題が無い。
我々はラーン級を切り離し、グランビアFを水中に投入して、輸送艦、R機とともに見送った。


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水路の所々に設置された。情報アンカーを経由して、映像が届く。地底湖にたどり着いたことが知らされた。
映像では、天井付近の亀裂から降り注ぐ滝や、巨大な岩石でできた堰がみられた。
バイドがいなければ、さぞ素敵な場所だったのだろう。

いまは、見る影も無い。
天井や水底は胞子嚢のように見える得体のしれない物体で覆われており、
水面には氷塊ばかりかドライアイスが浮いていて生物が住める環境ではない事を示している。
さながら、バイドを育む甘い水と言ったところか。


『こちら、トリトン基地所属ラーン級、戦闘準備完了。』
『特別遠征艦隊所属ヨルムンガント級1番艦‘リャキルナ’部隊展開完了です。』

「戦闘に関しては各自の判断に任せる。では幸運を祈る。」

私はディスプレイを見る、撤退指示や増援派遣などの他は、基本的に私がすることは無い。
一応、外部からバイドが流れ込まないように見張るのが役割だが、外部には全くバイド反応が無い。
なので、本日の副官ガザロフ中尉と外部から戦闘状況を眺めることになりそうだ。


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水中にはかなりの数の小型バイドがいた。
これを一機一機潰すのは手間だろう。
私は増援が必要かどうか、通信でタカハラ隊長に尋ねると、ニヤリと笑って必要ないといった。


『水の上の敵はR機に任せます。ラーン級は魚雷発射までグランビア隊を援護してほしい。』
『こちら、ラーン級了解。』


暫く、地底湖の水上にいるバイドをR機が潰していると再び通信が入る。

「超音波魚雷発射用意、各機危険水域から退避せよ。…発射。」

グランビアFから魚雷が発射されると、
周囲にらせん状の水流が生まれて、周囲の物体を吸い込んでゆくのが気泡の動きで分かる。
水という非常に抵抗の強い物体の中で、これだけの現象が起こるのだから、あの超音波魚雷は相当なエネルギーを持つだろう。
実際、魚雷に直接当たっていないバイドが水流に飲み込まれて、細切れに引きちぎられる艦載カメラの映像が映っていた。
超音波帯は通信ではカットされるため、普通の音声しか聞き取れないが、大量の水が動く轟音が聞こえる。

グランビアFの3隊が超音波魚雷を発射した後、その水域には動くものは何も残らなかった。


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水上では超音波魚雷の作り出す気泡を見やりながら、ラーン級が動き出す。
弾道弾迎撃ミサイルが飛び立つと、地底湖の空中に待機していたバイドを破壊する。
宇宙航行艦のスケールでは比較的小型に類する艦艇だが、水上での攻撃力は強力だ。
水面に浮いている目標も魚雷で破壊する。
目の前に敵が見えなくなり、進軍しようとしたときに気が付いた。

『こちらラーン級、問題が発生した。』
「問題とはなんだ。」
『地底湖内に堰が出来ていてこれ以上奥に進めません』
「…輸送艦の推力じゃ水上艦は運べない。ラーン級は待機。グランビアとR機、輸送艦で向かえ。」
『了解しました待機します。』


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R機と輸送艦が空中から堰の向こうを見ると、そこには次々にドライアイスを生み出す大型バイドがいた。
私はガザロフ中尉とディスプレイを眺めて

「あれがドライアイスを作っていたバイドか、トリトン基地の周囲を氷で囲むとは、どれほど居たのやら。」
「排熱はどこへ行くのでしょう?」
「分からん。しかし大型だな。コアは水上にあるようだが。」


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ディスプレイでは、潜水艦からの弾道弾迎撃ミサイルで撃ちすえられ、
R機からミサイルで打たれるガスダーネッドが映る。
しかし、大型バイドだけあり簡単には沈まない。
ドライアイスを生成して打ち出す。
R機や潜水艦に直撃することは無いが、天井から氷柱が垂れ下がり、水面は氷塊で覆われてゆく。
ダメージこそないが、次第に回避に追われて、攻撃に移れない。
そして、だんだんに回避スペースも奪われてゆく。


そこに低い弾道でミサイルが飛んできてガスダーネッドに命中する。
ラーン級が発射した艦対空ミサイルだった。
障害物の向こうから、打ち出したらしい。
一度着弾すると、続けざまに2基、3基と飛んできて命中する。
ガスダーネッドが爆発して塵になると、ラーン級から歓声があがる。
役立たず扱いがしんどかったのだろうか。


R機、グランビアのパイロットらは、ラーン級に感謝の意を伝えると、
A級バイドの居る大広間へ突入した。


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ブッ。
私は思わず紅茶を噴出してむせ返った。
となりで、キャッと顔を真っ赤にするガザロフ中尉がいる。
…バイドとの戦闘もかなりこなしたし、精神攻撃に値するようなグロテスクな外見にも慣れた。
しかし、このインパクトはどうだ。正直ノーザリーがただのソーセージに思えるくらいだ。

なんというか…立派だ。非常にご立派だ。
左右にある浮き袋もその存在感を主張している。
バイド体から、コアとそれを支持する柱上の構造体が、上方に伸び、
左右にはおそらく、浮力を得るためであろう構造がある。
水面下にはワシワシと動く脚が何対も付いている。


ひとことで言い表わすなら、‘男性の象徴’だ。


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「て、テイt…提督。その、データ参照結果でました。A級バイド、バラカスです。」
ガザロフ中尉の顔はこれ以上無いくらい真っ赤で、動揺している。
スルーだ。危ない話は全部全力でスルーするんだ。

「そうか。」
私もすましてそう応えるのが精一杯だ。
すまんが、フォローは無理だ。何言ってもセクハラになる気がする。

「弱点は…、その、コアへの攻撃ですが、コアに攻撃を受けるとあれは…なんていうんでしょう…。そう、上下に回避するようです。」
「通信手、情報を突入部隊へ流してくれ。」


これ以上は、見ててかわいそうなので、攻撃対への連絡は通信手に任せる。
たしかに攻撃されるとち…コア構造体が根元を支点に上下に移動する。
どうやら、あれで攻撃を避けているらしい。
でも私を含めてみな考えていることは同じだろう。
どうみても…

ガザロフ中尉は、すでに彼女の髪の色に負けないくらいの顔色だ。
任務中でなければ、すでに逃げ出しているんだろうな。
ガザロフ中尉は副官として戦闘を見ていなければならない立場と、
バラカスを目に入れたくない気持ちで揺れ動いているのか、視点が定まらず、挙動不審だ。

ガザロフ中尉、真っ赤な顔してチラチラ見ていると逆効果だ。
司令部の男性スタッフは、むしろ君の所為で赤くなっている気がするぞ。


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水中からグランビアの魚雷をあてられては、コア構造体が上方へ聳え立ち。
空中からR機が爆雷を落とせば、また、下方に垂れる。

弾道弾迎撃ミサイルで、
レーザーで、
また魚雷で、
ダメージを受けるたびに、コア構造体が何度も上に下に逃げる。

司令部スタッフの間でも、段々と気恥ずかしさが消えて、
その代わりに、怒りにも似た感情がわきあがってきた頃、
とうとうR機パイロットがキレた。
S・ストライクの機首に光が集まる。波動砲を使う気だ。


波動砲の白い光がコアを突き抜けた後、コア構造体があった場所がえぐれていた。
そして一気に爆発する。
うわ…、痛そうだ。
想像してしまったのだろう。司令部スタッフのなかには前かがみになるものがいる。
女性スタッフから白い目で見られているぞ。


「あの…提督、地底湖から振動発生。どうやら、先ほどの波動砲で地底湖の支えが損傷したようです。」
「つまり?」
「あそこは潰れます。」
「通信!各艦各機、離脱を図れ!」


『こちら、ラーン級、地上から流れ込む水の量が増している!これでは地上まで遡上できない。』
『グランビアでもこの流れでは難しい。』
「司令より各員へ、ラーン級は破棄。乗員は輸送艦に移れ。リャキルナ、グランビアは積み込めるか?」
『こちら輸送艦リャキルナ。水流の落ち着いたところなら可能ですが、この激流では…ラーン級の乗組員で精一杯です。』
「ならばそれで良い。R機、グランビアの操縦士と無理やり二人乗りだ。ともかく人間優先で乗り移らせて撤退せよ。」


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激流にまかれて身動きが取れなくなっているラーン級に輸送艦を近づけて、乗員達を輸送艦に詰め込む。ラーン級のレーダーサイトが接触して折れるとか気にしない。
グランビアFの乗組員達も、横付けしたR機のキャノピーに乗り込むと無理やり計器の隙間に居場所を見つけて収まる。
輸送艦は、R機と、なんとか激流のトンネルの上部空間を通って出てきた。
リャキルナの艦長からは二度と渓流下りはしたくないといわれた。


途中、艦と命をともにする。などとわめいているラーン級の艦長を、副長が殴って無理やり避難させたり、
最終的にR機のコックピットに、5名を詰め込んだりなど多少の混乱はあったが、
突入した人員は欠けることなく戻ってきた。


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「我等が戦友の最期に敬礼!」
タカハラ隊長やラーン級の乗組員たちは、旗艦エンクエントロスのハッチで敬礼をしながら地底湖の消滅と、自機の最期を見送ってた。

久しぶりに誰も死ななかったんだから、お前ら泣くなよ。







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海底大戦争のプレイ動画みてきたんだけど、ドットの描き込みマジパネェっす。
でも。ラーン級もグランビアも、もう搭乗させるステージが無いので、水葬です。
でも、ガスダーネッドよりも扱い良いから許されるはず。


最後の文、この作品ではあまり記述されて無いですけど、行間で人が大量に死んでます。



[21751] 11 提督と要塞奪還戦
Name: ヒナヒナ◆2a9fd0bf ID:ec2c350f
Date: 2010/11/28 23:47
・提督と要塞奪還戦



土星付近を航行中、要塞ゲイルロズが太陽系解放同盟に占拠されたとの報告があった。
解放同盟は地球連合に投降するフリをしてゲイルロズに潜入しつつ艦隊で攻め寄せ、
内部と外部とで呼応して占拠に成功したという。
ワープ空間での事といい、開放同盟の基本戦略は投降偽装なのか?
しかし、一つ間違えば我々の艦隊もあのようになっていたわけだ。
開放同盟のなりふり構わない手法に薄ら寒いものを感じる。


地球連合の主力艦隊はゲイルロズに対バイドの防衛線を張っていた。
それを内側から食い破られたのだ、防衛線は引き下げざるを得なかった。
そもそも木星―土星間にある要塞ゲイルロズが防衛線になったのは、
このすぐ内側には木星衛星都市などの半恒常居住都市があるためだ。
ここを攻撃されれば、民間人に甚大な被害が出てしまう。
ここゲイルロズを失えば防衛線は一気に火星付近にまで下がる。
今は最悪の事態にそなえて、各艦隊が民間人を乗せた輸送艦の護衛をしながら後退している最中だ。


そして、主力艦隊が民間人の避難に手一杯なので、
我々、特別遠征艦隊にゲイルロズ奪還のお鉢が回ってきたらしい。


私は以前ゲイルロズを攻略したことがある。
防御の固い要塞だが、不落という訳でも無い。なにより放置するわけにはいかない。
私はゲイルロズの再攻略のため、要塞ゲイルロズに進路を取るように命令した。


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「提督、ゲイルロズ勢力圏に入ります。」
「周囲の味方戦力は?」
「地球連合軍第9宇宙艦隊が、突入時に援護をしてくれるとのことです。ただし、ギャルプⅡの奪還の任にあたるため、一撃だけとなるそうです。」
「行きがけの駄賃に一撃くれるというわけか。せっかくだ、貰っておこう。」


今回の副官はラウ中尉だ。
彼は木星衛星都市の出身だ。開放同盟の身勝手で木星が危険に晒されるのが許せないのだろう。


「どうしましょう。援護攻撃に乗って正面から攻めますか。」
「要塞グリトニルに正面から当たりたくは無いが…そういえばカトー大佐は恭順しているのか。」
「ええ、こちらの素直に質問には答えています。…彼を使うのは危険では?」
「別にこれくらいで本当に投降してくるとは思わないさ。動揺してくれれば良い。
キースンが死亡したことを伝えられればゲイルロズ中で意見が割れるかもしれない。
これで、カトー大佐が我々を策にはめる様な行動を取れば本部に引き渡せばいい、
彼がこちらに協力的であれば、軍事法廷時に私が証言しても良いさ。」


我々はワープ空間での太陽系解放同盟との決戦時に捕虜としたカトー大佐に投降を呼びかけさせることとした。
正面でカトー大佐からゲイルロズに投降を呼びかけさせ、投降しないようなら攻撃する。
攻撃隊としてアングルボダ級エストレジータを裏手に潜ませ、第9艦隊の援護の一撃とともに攻撃を仕掛ける。
そのような作戦となった。


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私の乗る旗艦エンクエントロスは、またも囮だ。
艦隊の旗艦が正面ゲート前にいれば、敵は戦力を張り付かせざるを得ない。
その分裏手の守備は薄くなるだろう。

本来は軍使として送るのだが、カトー大佐が本心から恭順しているか不明であるし、
そもそも、開放同盟が本気で投降するとは思えないので、
こちらの艦から、オープン回線で投降を呼びかけさせ、開放同盟本隊が壊滅したことを伝えさせる。
相手の動揺を誘えれば上々だ。
もちろん有らぬことを口走る可能性を考慮して、呼びかけ映像は録画で流す。
呼びかけを録画して、それを3秒程度のラグを持ってゲイルロズにオープン回線で送こととした。
不味い事を口走ったら3秒以内に録画映像を切れば問題ない。


「ガルム級ブスカンドに通信を開け。」
「はい。」


通信用の窓が旗艦エンクエントロスのディスプレイに開く。
ガルム級巡航艦ブスカンドにワープ空間で捕虜とした、太陽系開放同盟の次席参謀カトー大佐を拘束している。
今は通信のため、独房から出ている。
カトー大佐は多少やつれているが、健康に問題があるわけではないようだ。
私は、カトー大佐に一応扱いに不備が無いか聞いた後、切り出す。

「カトー大佐、聞いていると思うが、太陽系開放同盟の一隊がゲイルロズに立て篭もっている。
しかし、現在地球圏はバイドの大攻勢を受けており、互いに争っている時ではない。
バイドの恐ろしさは、開放同盟本隊唯一の生き残りである貴官が最も知っているはずだ。
人間同士で争っている場合ではない。この場を無血で収めるために彼らに事実を知らせて、投降を呼びかけてもらえないだろうか。」

「投降を呼びかけることは構いません。彼らが投降しない場合は?」
「背後を気にして、バイドの大攻勢を乗り切ることはできません。残念ながら実力をもってゲイルロズを明け渡してもらいます。彼らが戦闘後に捕虜となっても、法規通りの処遇を約束します。ただし、この場で降伏した場合にくらべて、軍法会議での処分は厳しいものとなるでしょう。」

「私に裏切り者になれと。」
「そのように言う者もいるでしょうが、貴官は貴官の正義に乗っ取って行動したといえば良いでしょう。」
「…すでにキースン大将は亡くなりました。もう義理立てする必要は無いでしょう。」
「では?」
「分かりました。投降を呼びかけます。」


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「ラウ中尉、準備の進捗は?」
「ガルム級、録画準備完了。敵射程のギリギリに前進させます。」
「攻撃隊は?」
「問題ありません。アングルボダ級エストレジータは裏手岩礁帯にジャミングを張って潜ませました。第9艦隊との連携は確認済みです。」


「これで、戦闘が起きなければ良いのですが。」


ラウ中尉が呟く。
たしかにこれで敵が投降すれば、ゲイルロズは被害も少なく我々の手に戻る。
防衛線をまたここに張ることができるかもしれない。
木星圏出身のラウ中尉にとっては、防衛線の破棄は懸案事項であろう。


しかし、カトー大佐が真面目に説得しても、恐らく説得は失敗するだろう。
このバイドの攻勢時に、降伏に擬態して要塞を乗っ取ったのだ。
かなりの処分が下ることは想像に難くない。
それならと、要塞に立て篭もることを選ぶだろう。


「さあ、始めよう。第9艦隊に連絡しておくように。」


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『太陽系開放同盟同士諸君に告げる。私はキースン艦隊次席参謀のカトー大佐だ。
…私はキースン艦隊で唯一生き残りとして、今同士諸君らの前に立っている。
私は現在虜囚の身ではあるが、諸君の名誉を守るために…降伏を勧めにきた。
敗残兵の戯言に聞こえるかもしれないが、開放同盟の未来を左右する話だ。
最期まで私の話を聞いて欲しい。』


つかみはOKだ。
誠実そうな顔であるし、一般兵ならばフラッと本気で聞いてしまいそうだ。


『我々は横暴に振舞う地球連合軍と、
フォース廃絶に拘る余りに地球連合の横暴を許す弱いグランゼーラを正すために同盟を立ち上げた。
そしてこの理念を我々に示したキースン大将を指導者に頂き、理想に向かって行動を起こしてきた。』


うん、開放同盟にしてみれば自分らを肯定してもらっているし気分がいいだろうな。
逆に艦隊隊員は少しムっとした顔をしている。
そこで、第9艦隊からいつでも撃てるとの報が届いた。まだ待ってもらうように連絡。


『我々は新しい政府を作るための、力としてバイドを使用しようとした。
バイドの力をもって、地球連合、グランゼーラを従えて新たな世界を樹立しようとした。
我々キースン艦隊はこの技術の確立のためにワープ空間で実験を重ねた。
しかし、その考えは甘かった。我々の実験は失敗し、艦隊はバイドに取り込まれた。
軍使として、艦隊を離れている内にキースン艦隊は永遠に失われた。』


新たな世界ってバイドの世界か?
そう嫌味を言いたくなったのは私だけではないはずだ。
でも、BBSが成功しかけていたことは伏せたらしい。


『私は艦隊、最期の生き残りとなってからずっと考えていた。
私達の理想の世界とはなんだったのか、と。今もその答えは出ない。』


…さあ、どう出る。カトー大佐。
恭順か、反発か。


『少なくともこれだけは言える。私が考えていた世界では無い。
私達が目指したのは、太陽系開放同盟による人類の統一だった。
争いを続ける地球連合とグランゼーラという組織からの開放だ。
そのために両軍の技術を手に入れ。強大な力をもつバイドを取り込んで抑止力にしようとした。
…断じて、人類を滅ぼすために行ったのではない。』


強大な力をもつ軍事政府による統治って、それは恐怖政治の始まりではないのか。
基本理念が、根本から捻じ曲がっている気がする。
ある意味、グランゼーラが出てくる直前の地球連合政府も、
軍閥政府化しかけてて近いものがあったが…

その時、ゲイルロズからカトー大佐を載せているガルム級にむけて砲撃が走る。
射程外にいるので、威力の減衰したレーザー当たっても精々表面装甲に傷が残る程度だ。
衝撃も殆どないくらいの攻撃だが、カトー大佐は顔を顰める。
その攻撃の意味することはだれの目にも明らかだった。

― 裏 切 り 者 ―


「よし、ラウ中尉。支援砲撃依頼を第9艦隊に連絡してくれ。」
「了解しました。空母エストレジータの突入ポイントに、ですね。」


_____________________________________


さあ、我々も作戦開始だ。
カトー大佐の乗るガルム級を後退させると、入れ違いに旗艦エンクエントロスをゲイルロズの正面に進める。
解放同盟も砲撃を加えた1番ドックの巡航艦に続き、2番ドックからも巡航艦が出てくる。

「我々は囮を勤める。ドックより敵艦を引き釣り出せ。」
「提督1,2番ドックよりマーナガルム級が1隻ずつ出撃してきました。」
「艦載機も残らず引き釣り出せ。」
「提督、支援砲撃が来ました。」


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支援砲撃が届く。第9艦隊からの支援だ。
大体の方角をそろえて長距離ミサイル攻撃を仕掛ける方法で、
狙いは余り当てにならないが、面制圧には使える。
比較的速度の遅いミサイル群はいくつか迎撃されながらも、半数は目的地に達して、
要塞ゲイルロズの下部ドック入り口付近の敵を焼き払う。
超高機動機ノーチェイサー数隊と駆逐艦フレースベルグ級が爆発に飲みこまれた。


「第9艦隊からの支援攻撃着弾確認。侵入口付近の敵機はノーチェイサーが2隊です。」
「よし、空母エストレジータ突入せよ。POWアーマーでゲイルロズの司令室解放を目指せ。」
「提督、第9艦隊司令官デューク提督より、貴艦隊の幸運を祈る。とメッセージが届いています。」
「私の名で第9艦隊に返信。貴艦隊の助力に感謝する。と」


ジャミングを掛けて伏せておいたアングルボダ級が、欺瞞を解いて姿を現す。
そして、決して小さくない船体をゲイルロズ下部の侵入口にねじ込む。
R機が次々とゲイルロズ内部に流れ込む。外にもR機が数隊展開し、空母の防衛に付く。
グリトニルのTeam R-TYPEから奪ってきた、トロピカルエンジェルだが、
上位機種のノーチェイサー相手では、さすがに分が悪いようだ。
その回避能力はTエンジェルのロックオンレーザーでも外してくるほどだ。
ただし、幸いなことに波動砲を装備していない。
2部隊を張り付けて1機づつ落としていく戦略だ。


___________________________________


旗艦エンクエントロスは苦戦中だ。
マーナガルム級を2隻も相手にしていることに加え、
敵マーナガルム級はゲイルロズのドックから完全には出てこない。
こちらが艦主砲を撃とうとすると要塞内に逃げ込むのだ。
ゲイルロズの外壁は陽電子砲の直撃をものともしない。
それはつまり戦艦最大の武器である艦首砲が封じられている状態だ。


また、2隻の砲撃に晒されながらも後退は出来ない。
囮である我々が下がれば、この巡航艦は突入隊のほうに回るだろう。
それでは、本末転倒だ。


「提督、また陽電子砲射程外に逃げられました。」
「チャージをキャンセル、R機隊で誘い出せ」
「…了解です。」


ラウ中尉も焦っているな。
故郷が危険に晒されていることと、思うように進撃できないこと、
あとは…艦首砲・波動砲が撃てない所為?
波動砲とか好きだからな。

しかし、戦闘が長引くと少しつらい。R機も空母のほうに多く回したからな。
巡航艦のどちらか1隻でも撃沈できれば、楽になるのだが、
どちらかに攻撃を集中すると、もう片方が艦首砲を撃ってくるだろう。
牽制しながらでは難しい。早く突入隊がやってくれることを祈ろう。
私は突入隊空母エストレジータから送られてくる画像をチラリと見やる。


___________________________________


アングルボダ級はゲイルロズの下部ハッチを塞ぐように、乗りつけいている。
空母の出番はこれまで、ここからは小型機での司令室の占領だ。
増援が来る前に一気に制圧したい。
タイムリミットは正面第3ドックにいる、ヤールンサクサ級空母の艦載されている部隊が来るまで。
ついさっき、ドミニオンズが火炎波動砲で、ドック後部都路の隔壁を無理やり溶接した。外壁は波動砲に耐えられても、内部隔壁は多少熱に弱かったみたいだ。
波動砲で吹っ飛ばされるような障害物だが、
ゲイルロズのドック後部通路は狭いうえに各ドックからの通路が一か所であるため、合流地点は渋滞の名所だ。
ここの隔壁を閉鎖して、ついでに自爆機能のあるデコイを一機置いてきた。
これだけでも多少時間が稼げるだろう。


機動力のあるR機で撹乱して、攻撃力の高い機体で司令室を占領する。
撹乱するのは、Tエンジェル、エクリプス、サンデーストライク、ドミニオンズなどで、
占領はPOWアーマー、ナルキッソス、アサノガワ、ワイズマンが行う。


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「提督、内部で戦闘が始まりました。」
「内部情勢は?」
「予想より敵機が多いため、R機で足止めし、司令室へ強襲を掛ける事になるかと。」
「…そうだな、一気に司令室を目指すのが一番だな。我々も敵艦をここに縫いつけるぞ。」


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サブディスプレイが白い。
あのカイパーベルト帯を思い出す。
漆黒の宇宙に白いシミが大量にある様子は非常に奇妙だった。

あのときも凄かったが、今回もひどい
狭い司令室エリア内に白い人型機20機がひしめき合っている。怖いぞ。


ディスプレイで見たラウ中尉が一言。


「波動砲で撃ち抜けば気持ちいいのでしょうね。フフフ」
「やめてくれ。うっかり最奥の制御装置まで撃ち抜いたら目も当てられない。」
「しかし、この量のナルキッソスをどうするのです?一機一機相手には出来ないでしょう。」
「そのためのワイズマンとアサノガワだろう。」
「なるほど、逆に逃げ場が無いということですか。」


現在、敵巡航艦がドックへ引っ込んでおり、頭を出すのを待っている状態だ。
戦力の多くを突入隊に回したため、追撃が出来ない。


サブディスプレイに突入隊の画像が移される。ワイズマンとアサノガワがチャージを始めた。
パイルバンカーに放電がまとわり付き、キャノピーが下がり突撃準備が完了した。
こちらの所属のナルキッソス隊とPOWアーマーも後ろに控えている。
ワイズマンも後方にフォースをつけて、前方機首の先には白い光が集まっている。
エリア外のナルキッソスを他のR機が落としたら突入だ。
奪還が遅れれば、周囲の敵が押し寄せてくる。


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Sストライクの爆雷がエリア外のナルキッソスを撃ち落す。
開始の合図。

アサノガワの後部ノズルに火が入る。一気に加速して司令室エリアに突入する態勢だ。
敵ナルキッソスは相手がアサノガワであることを確認すると、ビーム鞭の先から光弾を放つ。
一撃必殺であるパイルバンカーの破壊力に耐えられる機体はまず無い。
敵もそれが分かっているので、先制攻撃をしかけて、やられる前にやろうとする。
敵がアサノガワを落とすのが先か、アサノガワが敵を貫くのが先か。

アサノガワは光弾に向かって行く、光弾がパイルバンカーに触れる寸前に、パイルバンカーを開放する。
パイルバンカーを伝うエネルギーが一気に膨れ上がり、擬似的にパイルバンカーが伸びたように見える。
そして光弾を掻き消すと、そのままナルキッソス隊に突っ込む。
そこでアサノガワの機載カメラが砂嵐になり、エリア外の別機からの映像になる。
司令室エリアから光と爆音、金属がひしゃげる音がする。

敵ナルキッソスは一隊が全滅、一隊が半壊していた。
アサノガワ動いてはいるが、かなりダメージを受けている。
凄まじい硬度を誇るパイルバンカーこそ無事だが、
機体表面を覆う装甲は半ば剥がれて、機関部が露出して放電しているのが見える。
キャノピーにはヒビが入っているし、バルカンも半ばから折れている。

どうやら、光弾の所為でパイルバンカーのエネルギーを開放するタイミングが早まり、
奥まで押し込まない内に勢いが殺がれてしまったらしい。
突進が終わった後に倒しきれなかったナルキッソスからビーム鞭を貰ったようだ。

そして、残りのナルキッソス隊がアサノガワにトドメを刺そうと接近してくるが、
それよりも早く、次が続く。


時機を伺っていた試験管機ワイズマン隊が突入する。すでに波動砲はいつでも撃てる状態だ。
司令室エリアに侵入したワイズマン各機が誘導波動砲を放ち、外壁を舐めるようにナルキッソスを破壊していく。
波動砲発射から着弾まで時間にしては1秒に満たない時間だが、脳内で引き延ばされた時間で波動砲を誘導、
パイロットは選択的に施設と味方機を避けながら敵機を撃破する。
複雑な地形での誘導。おそらくパイロットの脳には高負荷が掛かっているだろう。


最終突入は味方のナルキッソス隊とPOWアーマーだ。
敵味方のナルキッソスがビーム鞭で打ち合う。
その脇をすり抜けてPOWアーマーが司令室外部に取りつき、ケーブルを介してシステムに侵入してゆく。
バイドミッション時POWはR機に補給を行うのだけの無人機であったが、
対人類戦用への改良として占領機能などが付け足されてから、複雑な判断が必要になり有人化した。
さらに有人化に伴い、パイロットの生存率を上げる為にデコイ機能も搭載された。


システム侵食率、30%…40%…50%…


敵ナルキッソスからのビーム鞭が迫ってきて、POWアーマーが一旦回避に移る。
POWが飛びのいた次の瞬間、ナルキッソスにフォースがめり込む。
ワイズマンが後部に付けていたフォースをシュートしたらしい。
よくみると、突入したワイズマンも2,3機居なくなっており、アサノガワもすでに行動不能になったらしい。
これ以上の戦闘の長期化は無理と見たのか、POWアーマーパイロットが無理やり再び司令室に着地する。
再度ケーブルを繋げてシステムを掌握しにかかる。

システム侵食率60%…70%…

背後に司令室エリア外から飛び込んできたノーチェイサー見えた。

80%…

ワイズマンも味方ナルキッソスも突然の事に反応できない。わき目も振らずにPOWアーマーに迫る。

90%…

ロックオン警報が鳴り響く。

100…


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「提督、わが軍の勝利です!要塞ゲイルロズの司令室を奪還しました。」


ラウ中尉が報告する。するとすぐにドックの外部隔壁が降りて、敵艦がドックに閉じ込められる。
囮を張っていた旗艦エンクエントロスはすでに残弾が尽きかけていた。
このまま続いていたら不味かったな。


「ラウ中尉、解放同盟残存部隊に、降伏か全滅か選べと伝達せよ。」
「了解…降伏をするとの通信が来ていますが…どうしますか?」
「武装解除の上、艦艇、R機から全員降ろしてからだ。各機監視を続行せよ。ラウ中尉、こちらの被害状況は?」


「旗艦エンクエントロス、空母エストレジータともに小破。アサノガワ大破、POWアーマーが撃墜されました。その他、各R機隊にも被害が出ています。」


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すでに艦隊の穴から、バイドが防衛線内に進入していたため、
防衛線はゲイルロズに戻されることなく火星圏内になるとのことだ。
この報を聞いたラウ中尉が遣る瀬無さ気な顔をしていた。
ラウ中尉の出身地である木星衛星都市ゼ・ウースルは強力な民警組織のお陰で、バイドの進入を免れたらしい。
しかし、残念なことに木星衛星都市のうち幾つかはバイドの侵入を許し、壊滅的被害を被った。
つまり、新たなバイド発生源となる前に破壊措置が取られたのだ。
被害が軽微でもバイド粒子の混入の危険があるため、放棄された都市もある。


我々はゲイルロズの戦力で使える分を徴発して、地球へ戻ることとなった。
ゲイルロズの工廠で確保したのは、ムスペルヘイム級、R機や、POWアーマー改などを艦隊に接収した。
私はテュール級戦艦‘エンクエントロス’を降り、ムスペルヘイム級戦艦‘フィンデルムンド’に乗り換えた。
これを持って特別遠征艦隊の旗艦は戦艦フィンデルムンドに変更された。
一艦隊に戦艦が2隻とは多いが、これがあれば戦術の幅が広がる。

輸送艦も何隻かあったので、私は開放同盟の敗残兵を乗せて、戻ってきた第9艦隊に任せた。
デューク提督には申し訳ないが、彼らは火星都市グラン・ゼーラを経由して地球に戻る事になっているらしい。
グランゼーラ革命軍の結成の地であるので、厳戒令が出ている上に政治犯収容所が設置されている。
そこに敗残兵たちを置いていって貰う。一応、防衛線内だし。


ゲイルロズで補給・修理した後、我々、特別遠征艦隊はゲイルロズを後にした。





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ムスペルヘイム級出しちゃった。
本当なら、後編クリアまで手に入らない戦艦だけど、そうすると小説中に出せないし、
これ以降、話の流れ的に乗り換えが厳しくなるため、無理やり出しました。
ヨトゥンヘイム級はテュール級とほとんど性能変わらないので、パスです。

この時、バイド勢力圏に置き去りになってる人、多そうですよね。
ついでに、この都市はバイド侵食やばかったら、都市(住民)ごと爆破みたいな。

今回のゲスト、攻略本の小説で出てくる第9艦隊とデューク提督の件、
どうみても、某紅茶提督の第一三艦隊がモデルな気がしてならない。



[21751] 12 提督と溶鉱炉
Name: ヒナヒナ◆2a9fd0bf ID:ec2c350f
Date: 2010/12/16 22:40
・提督と溶鉱炉


我々はアステロイドベルトを航行して地球に向かっている。


私は新たな旗艦のフィンデルムンドの司令席にいる。真紅の外部塗装が非常に目立つ。
ここに来るまでに、旗艦上では新たな艦での習熟訓練が行われていた。
普通、任務中にやることではないけれど、時間が余っているわけでないので仕方が無い。
ちなみに人員はエンクエントロスから司令部スタッフ、その他をつれてきたのと、ゲイルロズで補充した地球連合兵士だ。
兵の補充が出来たのはうれしい。機体はパーツを交換したりできるが、兵はだけは限界がくるからな。


地球連合軍の戦艦は型ごとに基本塗装色が決まっていて、色で大体わかるようになっている。
戦艦は艦隊の顔であり、威容を見せ付けるものであるので、目立つ色であることが多いのだ。
バイドは色を認識する能力が無いという研究結果もあるらしいので、対バイド戦では問題にならない。

…またTeam R-TYPEが変な研究をしているな。
バイドの視力検査でもしたのか?

まあいい、意味があるのは対人類戦闘だ。存在を誇示するのにカモフラージュは必要ない。
地球連合軍の艦にジャミング機能が搭載されていないのは、こういった意味もある。


ヘイムダル級は濃灰、テュール級は濃灰に赤い艦首、ヨトゥンヘイム級は青、ムスペルヘイム級は真紅だ。
…新型のニブルヘイム級の基本色は何になるのだろう。
隣にいる副官のワイアット少尉に、次に戦艦が開発されたら何色だろうか。と聞いたら。
「赤もあることですし、次はやっぱり金でしょうか?」
などと言っていた。
何が‘やっぱり’なのか全く分からない。
そんなことを考えていたら、斥候部隊から緊急連絡が来た。


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小惑星に建てられた重工業基地からバイド反応を検知した。という報告だった。
ワイアット少尉に調べさせたところ、反応があった施設は兵器自動製造施設で、
バイドの侵食によって施設が暴走している可能性がある。
…だから、侵蝕されて敵に回らないように、兵器に自爆機能を付けろと、あれほど意見書を提出したのに。


私は艦隊の進路を報告のあった地点に変更した。到着までに準備を整えておかなくては。
時間経過とともに新しい情報が入って来る。
目標のバイド反応は、A級バイドに匹敵する大きさであるが、詳細は不明。


また戦闘だな。
これまでもこの仕事の大変さは分かっているつもりだったが、
改めて自分が危険な任務についていることを認識する。
ふと、私は言い様の無い寂しさを覚えた。
長期遠征でセンチメンタルになっているのだろうか。


長期遠征では何年も戻れないこともザラだ。
太陽系外に探査に向かった最初の異相次元探査艇‘フォアランナ’は、
実に20年以上の長期航行を果たし、多くのものを人類にもたらした。
今や多くのフォースの元となっている‘バイドのかけら’もそのひとつだ。


バイド討伐に向かった若き英雄ジェイド・ロス提督率いる艦隊も、約10年に及ぶ遠征から未だ戻らない。



彼は寂しくないのだろうか。
むなしくならないだろうか。
彼は…地球に帰りたくはならないのだろうか。

ワープ空間への遠征に出た私が、こんな感覚に陥るくらいだ。
ロス提督の地球への想いは、私には想像も出来ないくらい大きいものだろう。


「提督、そろそろ敵勢力圏に入ります。」
「…分かった。R機の発進準備を。」


こんなことを考えるのも私の感傷だろうか?


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そこは溶鉱炉だった。
向こう側では大型プレス機が稼動しており、兵器のフレームを作っているようだった。
こういった施設はバイドの絶好の巣になるようだ。
バイドミッション時にもいくつかのファクトリーで戦闘を行ったという記録がある。
この施設もバイドに侵蝕されてしまったようだ。


制御システムもバイドに汚染されているらしく、
普段はコンピュータ制御されている炉からは、液体化した熱硬化性素材が流れ落ちてくる。
あれに晒されれば戦艦とて無事ではすまない。
外部装甲は耐えられても、外部機構が壊れる。スラスターが動かなくなったらその場で蒸し焼きだ。


「提督、どうしますか。」
「ファクトリーは足場で区切られているが、基本構造は素直な一直線だな。まっすぐ進軍するしかあるまい。敵情報は?」
「敵はA級相当のバイドということですが、詳細は不明です。最奥の空間にいるようです。」
「大型バイドまではR機で各個撃破、大型に会敵する前に一度体勢を整えて突入だ。空母、戦艦は身動きが取れなくなる恐れがあるので待機。巡航艦、駆逐艦で行く。」


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「そして、また外から指揮か。」
「提督、それは仕方が無いです。旗艦で単騎突っ込まれると困ります。」
「そんな馬鹿な真似はしないが、せっかくの新戦艦だ。使ってみたいと思うのは間違っていないだろう。」
「そうでしょうか。」


ワイアット少尉が微妙な顔をする。
遠征艦隊を指揮する前は、自ら前線にでようとはしなかった気がするが…
ん? 最近、私は好戦的になってきているのだろうか?
…いや、違う。敵の排除は地球圏の防衛、人類の生存に必要なことだ。


「さあ、バイドを殲滅するぞ!」


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突入隊はR機を前面に出して、進軍している。
その後ろにガルム級巡航艦ブスカンドと、フレースベルグ級巡航艦レーニョベルデが続く。
今回の作戦は早期警戒機と亜空間機を前面に出し、索敵しながら進軍するオーソドックスなものだ。


…おかしい。
なぜ、敵にまったく接触しないのか。
施設の奥行きの半分まで進軍したが、未だバイドの姿は見えない。
しかし、この兵器製造工場から検出されるバイド係数が、大規模なバイドの存在を教えてくれる。
私は、司令部スタッフの顔を見るが、皆不安そうだ。
敵と戦うことより、敵に会えないことを不安に思うとは皮肉だな。


「ワイアット少尉、バイド反応はどこからでているか特定できるか。」
「特定は難しいです。施設が暴走しているのでシステムを取られていることは確実なのですが、奥の方から大きいバイド係数が感知されていますが。」
「大型バイドならば、取り巻きがいないのはおかしい。小型バイドは何処にいる?」


ふいに亜空間機ウォーヘッドが通常空間に戻ってくるのが映った。
しかし一機ではなく、お客を連れているようだった。
お客はアイビーフォースを装着したマッドフォレスト2だ。
ウォーヘッドは先手を取られて数機が撃墜されるが、
マッドフォレスト2はすぐさま周囲のR機に打ち落とされる。


マッドフォレスト2は蔦を寄せ集めたものの後部にスラスターが生えている様な外見をしており、禍々しい中にも原生林のような力強さを感じる。アイビーフォースを装備しており、波動砲も蔦を模したようなエネルギー形態を取る。そして、マッドフォレストと呼ばれるカテゴリに分類される小型バイドは亜空間に潜行する能力を持っている。


「亜空間機!?…まずい、亜空間ソナーで探査させろ。」
「アウルライト亜空間ソナーを射出。」
「これは…囲まれている?」


レーダーには突入艦隊の周囲に30を超える亜空間機の機影が映っている。
この量のバイドが一気に取り囲まれると非常に危険だ。
「レーニョベルデへ通達、亜空間バスター準備!」
「提督、突入艦隊、包囲されています。」
「亜空間バスターで包囲に穴を開け、一気に突破させよ。」
「レーニョベルデ、亜空間バスター発射…弾着。」


旗艦フィンデルムンドからでも、小さくあの特徴的な爆音が確認できた。
瞬間的に通信が乱れるが、すぐに雑音が収まりレーダーと画像が戻る。
どうやら、突入艦隊は正面突破を選んだようだ。
あの通路で回頭は難しいし、メインスラスターが後部についている以上、後退は加速が遅い。
どの道囲まれているなら正面突破が正しいだろう。
亜空間バスターを受けて生き残ったマッドフォレスト2が満身創痍で通常空間に現れるが、
ラグナロック、ステイヤーがミサイルを蔦の固まりに撃ち込むと、前方に道が開ける。


アウルライトが先行して進軍し、再び亜空間ソナーを射出する。
やはり、すでに囲まれていた。
亜空間航行は燃料を食うが、通常空間より早く行動することが出来るため、
マッドフォレスト2に亜空間から回り込まれたようだ。
こうなったら突破しか無いだろう。命令せずともすでに亜空間バスターの発射する気のようだ。
本日2回目の爆音が響く。


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本当は居残り組を投入して追撃したいのだが、相手が亜空間機となると手に負えない。
亜空間バスターは特殊兵装であるため、フレースベルグ級および、ニーズヘッグ級駆逐艦にしか搭載されていないのだ。
私の艦隊では、突入隊にいるレーニョベルデしか装備されていない。
艦艇や戦闘機を亜空間潜行中のバイドに無理やり接触させて、通常空間に戻す手はあるが、
相手が波動砲をチャージした状態で通常空間に戻ってこられると非常に不味い。


「艦隊本体はファクトリー出口面に平行に展開せよ。」
「提督、R機はどうしましょう。」
「R機も出撃、出口を塞ぐように配置。全艦、全機、ファクトリーに機首を向け攻撃できるようにスタンバイしておけ。」


私は旗艦を含む艦隊の居残り組にファクトリー出口壁面を塞ぐように展開させた。
亜空間機で最も怖いのは、先ほど突入隊が陥ったように、知らない間に包囲される事だ。
幸運なことに、亜空間から直接通常空間を攻撃する手立ては無い。
そして、通常空間にある大規模エネルギー体に亜空間機が触れると、通常空間に戻ってしまう。
これを逆手にとって、艦やR機で壁を作るのだ。そうすれば、少なくとも後ろに回られる事は無い。
あとは、突入隊が中枢を破壊するのを応援するばかりだ。


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ファクトリー内部の突入隊は、3発の亜空間バスターを使用して、最奥まで突破したらしい。
高バイド係数の発生源近くまで来ている。
彼らはPOW改デコイを先行させる。
これは私が徹底させている事だ。これをすることで飛躍的にR機―特に早期警戒機―の生存率が格段に上がるのだ。


POWアーマー改の姿をしたデコイは、空間入るとまず上下に3ずつつく砲台をカメラに捉えた。
すぐさま砲撃が始まるが、POWアーマーより多少機動性のある改型は、被弾しながらもファクトリーの最奥を映し出す。
そして、次の瞬間上方の砲台からの攻撃で反応が消えた。
本来制御装置が置かれているはずの空間に壁が出来ていた。バイドだ。
おそらく、あの奥にあるはずの制御装置がバイドに侵蝕されたのだろう。


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「提督、あの砲台群は非常に強力なようです。普通に接近するのは危険すぎます。亜空間機でも使用しますか?」
「大型バイドはあの横穴の奥にある制御システムに侵蝕・同化している。しかも、壁のような構造で己を守っているようだ。亜空間機は一度通常空間に戻ると、暫く亜空間潜行が出来なくなる。壁を壊している内に撃墜される。」
「では遠距離から波動砲で潰すのはどうでしょう。」
「いや、角度的に壁が邪魔して難しい。ジャミングで行くしかないな。全滅と隣り合わせだから、あまりやりたくないのだが。」
「了解しました。突入隊に連絡します。」


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ジャミング機パワードサイレンスの周囲に、R機部隊が身を寄せている。
レディラブ、ウォーヘッド、POWアーマー改、そしてラグナロックだ。
R機部隊はゆっくりと上下に林立する砲台の間をくぐりぬける。
空間的に余裕があるので、特には問題が無い。
制御装置への通路があるべき場所に、バイド体で壁が作られている。
バイド係数が高くなっている。この奥に大型バイド本体があるのは間違いないようだ。


「こちら、ラグナロック隊隊長機。これよりハイパー波動砲を発射する。ジャミング機は援護用意を頼む。」
「こちらパワードサイレンス、了解した。R機各隊は波動砲発射後に、ただちにジャミング圏内に戻れ。」
「レディラブ隊、了解。」
「ウォーヘッド隊、了解。」


パイロット達の通信が聞こえてくる。
戦闘機より高性能な通信装置を備えた艦艇が側にいるので、味方機のものならジャミング圏内でも通信が拾える。
さすがに、3機で波動砲を撃てば敵大型バイドを殲滅出来るだろう。


ラグナロックが、ジャミング圏から飛び出し、大型バイドのいる通路に射線を合わせると、
機首前方に留めていた光が弾けて、普通の波動砲より幾分小さい光の塊が降り注がれた。
バイド体で出来ている防御壁は少しは耐えたものの爆散する。
しかし、奥にもう半ば傷ついた同様の隔壁、さらに奥にもう一枚の隔壁が見える。
通路に隔壁を張り巡らせたらしい、しかし通路の長さからして3枚で打ち止めだろう。


ラグナロックがジャミング機の恩恵の元に戻るのと同時に、ウォーヘッドが射撃定位置に付く。
拡散波動砲を間髪いれずに放つ。甲高い音を立てながらバイド体の隔壁が破壊される。


奥に見えるのは、制御装置だったもの。
本来通路の奥にあるのはこのファクトリーの一切を仕切る大型のコンピュータであるはずだ。
今も大型コンピュータはある。しかしその中心に青く光る球状の物体、大型バイド等に見られるコアだった。
これを破壊すればこのファクトリーのバイドも動きが鈍り殲滅もすぐだろう。
最期の一手はレディラブ。


レディラブがウォーヘッドと入れ替わり、射撃位置に付く。
すでに丸裸になったコアに機首を向けて、射撃体勢に入る。
エネルギーの収束。


そのとき、レディラブの前面に揺らぎが映る。

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「!?…マッドフォレスト!」
「何、亜空間機に接触された?不味い、一気に決めないと…」
勝利を確信した後だっただけに、司令部にも衝撃が走った。
大型バイドは強力な兵器を持っていることが多い。反撃の隙を与えてはいけないのだ。
「提督、コアのエネルギーが高まっています。」


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レディラブはマッドフォレスト2に接触された状態で、なおも波動砲を発射する。
0距離で波動砲を受けたマッドフォレスト2は消し飛ぶが、接触で射線がずれたせいで、波動砲は通路の壁に当たり霧散し、コアには当たらない。
コアが不気味な輝きを放ち、一気にコアから検出されるエネルギーが高まる。
レーザーが通路を埋め尽くし、さらにはその先の空間にまでエネルギーの奔流が押し寄せた。


レディラブ隊は波動砲を発射していたため回避が遅れ、隊の半分を持って行かれる。
パワードサイレンスに身を寄せていた、ラグナロック、ウォーヘッドとPOW改も上方に逃れるが、
林立する砲台に接触してジャミングが解かれてしまう。


コアからのレーザーが止むと、次は上下にある砲台からのレーザーが待っていた。
コアのレーザーのように凶悪なほどのエネルギー量は無いが、確実に狙いをつけてくる上に、数が多い。
隊長機を落されて統率を欠いたレディラブ隊は、格好の餌食だった。
4方から同時にレーザーを狙い撃たれ、残機も爆散する。
その他のR機もレーザーを避けるのに手いっぱいで、ジャミングを張る時間を稼げない。


ラグナロック、ウォーヘッドのR機隊もレーザーを避けているが何時までも続かないだろう。
普通、波動砲の再チャージには時間が掛かる。少なくともこのレーザーの嵐のなかで、耐えるのは難しい。


「提督!このままではR機隊が全滅してしまいます。」
「そうなる前に波動砲で決めるんだ。」
「しかしR機隊はどの機も波動砲を発射したばかりです。」
「ワイアット少尉、何のためのハイパー波動砲だ。」
「あっ!」


ラグナロックのパイロット達はこちらが言うまでもなく波動砲の発射準備にはいっている。
すぐ再チャージに排熱機構が唸りを上げるが、ラグナロックは一気にエネルギーを波動砲ユニットに集める。
再び光が弾ける。
波動砲の光がコアに降り注いだ。


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「…大型バイド沈黙を確認。周囲の砲台も沈黙しました。」
うわっと、司令部スタッフから拍手と歓声が上がる。
これは、R機パイロット達のために時間外の酒保でも開けてやるかな。
でも、まずは敵の確認。艦隊に帰るまでが任務だ。


「R機隊を艦に戻して索敵しながら帰還するように伝えろ。あと、作戦達成、御苦労さまと。」
「あれ?提督…制御装置も壊れてしまったようです。施設がこちらからの制御を受け付けません。」
「何か問題が?ワイアット少尉。」
「特には無いはず…うわっ、大変です。提督!」
「何だそんなに…」


私はディスプレイの映像を見て絶句する。
制御装置ごと打ち抜き、完全に制御を失った所為か、
液体化した熱硬化性素材が奥にある炉から溢れて迫ってくる。


「緊急離脱だ!一気に駆け抜けろ。」
「巡航艦ブスカンド、駆逐艦レーニョベルデ後退。提督、空間が狭すぎて回頭できません。」
「…そのまま後退させろ。出来るはずだ。」
加速が心もとないが、普段はブレーキ用に使われる前方スラスターなどをフルに使って、
高熱に追われながらブスカンドと、レーニョベルデが来た道を逆走してくる。


10分後、なんとか合流を果たした2艦の艦長達はげっそりして言った。
全速後退で細い通路を戻るのは地獄だったと。
今日は提督命令で酒保を開けてやるから元気だせ。


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こうして、アステロイドベルトにある兵器製造施設に侵食したバイドを撃破した。
他にバイドが居ないのを確認し、休憩に入ろうとした時、統合作戦本部から緊急通信が入った。
えらい剣幕の本部幕僚が言うには、地球上空にバイドが集結しつつあるという。


我々の特別遠征艦隊を含め、現存する各艦隊が太陽系内のバイドの討伐にあたっていたが、防衛線をかいくぐったいくつかのバイドの群れが、地球に降下しようとしているらしい。
要塞ゲイルロズのごたごたで防衛線が一時機能しなくなっていた所為で、かなりのバイドに侵入されたのだろう。
地球上空の何か所かにバイドが終結しており、それぞれの艦隊で叩いて撃破せよとのことだ。


我々はバイドの地球降下を阻止するため、共同作戦に参加する。
…だから、酒保はお預けだ。



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R-TYPEⅢのトラウマ面ファイアキャスクファクトリーです。
でもtacticsⅡ本編ではプレス機が襲ってきたりしません。逆走しません。マップも回りません。
あ、そうそう、名前入れられなかったのですが、Ⅲの4面中ボスのリグジオネータさんでした。

そろそろ、シリアスな後半戦へ向けてシフトチェンジしていかないといけませんね。
そう言いつつも、重い空気に耐え切れずに空気の読めないギャグを入れそうな自分が怖い。
実は各話だいたい4~5箇所は、ギャグに走りすぎてリテイク掛かってます。

普通にプレイしていると、後編はジャミング無双になっていると思うのだけれど、
そんな引きこもり小説書いても詰まらないだろうし、どうしましょう。
ちなみにtacticsⅡはジャミングを封印すると、とたんに難易度BYDOになります。



[21751] 13 提督と地球降下阻止作戦
Name: ヒナヒナ◆2a9fd0bf ID:ec2c350f
Date: 2010/12/16 22:47
・提督と地球降下阻止作戦


我々に下った緊急指令は、地球上空で集結しつつあるバイドの降下阻止、殲滅だ。
統合作戦本部の分析では、バイドは地球上空の数箇所に集結し、
群れが大きくなったところで降下を開始するものと見られている。
第一宇宙艦隊 ―慣例的に地球防衛の任につく― は地球連合軍の最精鋭であるが、
さすがに地球全周に展開は出来ない。
全兵力をもって防衛に当たれ。とは地球上空にまで防衛線が引き下げられたことを意味する。
人類はそこまで追い詰められたということだ。


我々が指示されたのは、2番目に大きいバイドの終結ポイントだった。
我々は指定されたポイントに急行すると、遠方からでも膨大なバイド反応を検知できた。


_____________________________________


「提督、作戦ポイントに到着しました。」
「総員、戦闘準備。」


作戦ポイントの下は地球だ。
太陽は地球を挟んで向こう側にあり、我々からは地球の夜側が見えている。
幾つか見える大都市が煌々と輝き、宇宙空間にまで人間の存在を示している。
この星にだけはバイドを降ろしてはならない。
そう決意を新たにする。


バイドの大群が終結しているのはデブリ帯だ。
しかし、デブリなど見えなかった。見えるのはバイドの大群だ。
すでにこの宙域を埋め尽くすほどに、バイドが集結していた。
この量のバイドが地球に降下すれば、本当に地球そのものを侵蝕されるかもしれない。
そんな、考えがよぎった。


「敵旗艦は分かるか。ガザロフ中尉。」
「バイドの動きからすると、敵旗艦は奥にいるボルドタイプの大型生命要塞ではないでしょうか。」
「あれか。混戦になってしまうと、索敵できなそうだな。」
「提督、艦隊布陣はどうしますか。」
「ガザロフ中尉、正面展開して当たる他ないだろう。総力戦だ。」


テュール級戦艦エンクエントロスを先頭に、両翼に駆逐艦レーニョベルデと巡航艦ブスカンド。輸送艦も一隻ずつ配備した。旗艦ムスペルヘイム級戦艦フィンデルムンドとアングルボダ級空母エストレジータを布陣した。


私はふと戦闘指揮所内を見回す。
スタッフ達の顔には、不安と、恐怖が渦巻いている。
ここにいるスタッフだけでは無いだろう。
皆、バイドの暴力的なまでの物量に飲まれている。


「ガザロフ中尉、全艦通信を開いてくれ。」
「了解しました。提督。」


「提督から総員へ。すでに見聞きしていると思うが、今回の敵は未だかつて無いバイドの大群だ。
そして我々の後ろには人類の最期の砦、地球がある。退くわけには行かない。
…さて、皆緊張してるな?」

皆、黙って聞いている。

「我々は地球連合とグランゼーラの混成部隊だ。
互いに自軍の戦力を削りたくないという、両陣営の妥協の産物だった。
両軍が手を取り合うなど、不可能だと言われていたし、
正直、余り期待されていなかったと思っている。
しかし、隊内において多少の衝突や誤解はあったが、
我々は周囲の思惑に反して、手を取り合うことが出来た。
我々の艦隊は同じ人類として一つになった。」

隣り合った隊員同士が目を合わせている。
そこには地球連合軍もグランゼーラ革命軍もなかった。

「我々は不可能を可能にした。
手を取り合って全力で戦えば、どんな不可能に見えても可能性を見出せるはずだ。
さあ、肩の力を抜いて、いつも通り戦おう!」


艦隊通信でそう号令すると、横にいたガザロフ中尉が少し笑顔を見せた。
他の隊員達も大丈夫そうだ。


「総員!目標はバイドの旗艦の撃破および、地球上空のバイドの殲滅だ!」


そして艦隊は、ゆっくりと動き始めた。


_______________________________________


我々は進軍して、戦場の中央付近にある大きめのデブリを盾に陣を構えた。
ここらへんで敵前衛部隊とぶつかるはずだ。
できれば、一気に敵の前衛を叩いてしまいたい。


「各艦に索敵を密にするように伝えよ。亜空間索敵も忘れるな。」
「了解しました。索敵レベルを上げます。アウルライト隊、サンデーストライク隊、ダイダロス隊に伝達します。」


S・ストライクが亜空間に潜り込み、通常空間の索敵を行い、
アウルライトの亜空間ソナーで、亜空間の敵機を見付ける。
索敵で先に相手を見つけた方が圧倒的優位に立てる。
これだけ規模の大きい戦場となると、相手の偵察機を見つけて先に叩くのが一番だ。


先の命令からしばらくは、策敵を広げてはレーダーを確認する作業が続いた。
そして、2回亜空間ソナーを補充した後、報告があった。


「提督、亜空間より敵の接近を確認しました。」
「位置は?」
「12時の方向、亜空間ソナーの範囲ギリギリです。」
「ということは、それだけではないな。その後ろに未だいる恐れがあるな。」
「索敵続けますか。」
「亜空間機は下がらせ、亜空間ソナーを継続。レーニョベルデは亜空間バスターをいつでも発射できるようにしておけ。」


亜空間に潜む敵には、通常兵器は効果が無いので、特殊兵装亜空間バスターで応戦する。
亜空間バスターを装備しているフレースベルグ級駆逐艦レーニョベルデを前に出しつつ、
巻き添えを食いかねない自軍の亜空間機を下げさせる。
前回のマッドフォレスト2のことといい、亜空間機はおそらく集団で襲ってくるのだろうから、
亜空間ソナーで敵位置を把握しつつ、バスターで迎撃するのが最良だろう。


バイドの群は無音で近づいてくる。
亜空間ソナーの発射音とともに、亜空間ソナーで探知される機影が増え、レーダー係が読み上げていく。
機影が増えるに従って報告するレーダー係の声が徐々に上ずってくる。
周りを見回すと、その他のスタッフの顔も強張っている。


「亜空間機影5体確認しました。」
「後続がいる。待機だ。」

「亜空間機影、正面方向に17体に増えました。」
「まだ、引き付けろ。」

「亜空間機影26体…!提督、これ以上は接触されます!」
「レーニョベルデに命令。亜空間バスター発射!」


敵機がぎりぎりまで迫っていたため、我々の艦艇も亜空間バスターの独特な爆音にさらされる。
戦艦エンクエントロスは完全に、私のいる旗艦フィンデルムンドも余波を受ける。
耳を塞いでも直接体に響くので、かなり堪える。


亜空間バスターを耐えたバイドが姿を現す。
蔦の塊のようなマッドフォレスト系列のバイド体ではなく、
アンフィビアン系列の2型、アンフィビアン2だった。


アンフィビアン2
臓器を思わせる桃色をした、ぬらりとした深海魚を思わせる体躯を持つ生体系バイドで、
小型のバイドの中でも特に嫌悪感を誘う外見をしている。
時折、痙攣するように、パーツが微動している。
amphibianとは両生類を意味する言葉だが、このバイドは下あごの無い魚類のようだ。
ただし、両生類とも深海魚とも異なって、水中での機動性は制限される。
そして、マッドフォレストと同様に、アンフィビアン系列も亜空間航行能力を持っている。


亜空間バスターで撃ち減らされたアンフィビアン2は、
たまらずに通常空間に逃げてきたが、満身創痍、無事なものはない。
亜空間で慢心したものの末路だ。
深海魚に似たバイドが宇宙空間にバタつく様子は、夢でも見ているような現実感の無さだ。


レーダー係は今までの極度の緊張状態が解けたのか、
無意識に止めていた息を、ゆっくりと吐いた。
他の司令部スタッフも似たようなものだ。
しかし、安心をしてはいられない。
接敵する前に亜空間機を留めるために、亜空間バスターを使ったが、
バイドの亜空間機がアレだけとは限らない。むしろもっと多いかもしれない。
そして、敵は亜空間機だけではないのだ。


「今回は大漁だったが、第二陣が来るぞ。気を抜くな。」
「了解です。亜空間索敵を続行します。」
「R機部隊は、通常空間に戻ったアンフィビアンを掃討せよ。
レーダー手、亜空間機が一時的に一掃された。
第二陣が来る前に、通常空間の索敵も行うんだ。」
「了解しました、提督。アウルライト隊にソナー弾補給後、再出撃させます。」
「輸送艦のデコイも配置して置くんだ。」
「了解です。輸送艦リャキルナ、ルミルナに通達します。」


テュール級、ムスペルヘイム級などの戦艦は索敵能力が非常に高く、
迎撃体勢では基本的に早期警戒機を必要としない。
しかし、亜空間ソナーを装備していない戦艦では亜空間索敵は出来ないし、
今回の戦場のようにデブリ帯では、索敵範囲が狭まる。
だから、移動できる目である偵察機が必要となるのだ。
また、今回は戦線が広い。端まではカバーしきれない恐れがあるため、
輸送艦にデコイを前面に配置させた。


アンフィビアン2の第一陣の片が付くと、どこか焦りと安堵が混ざったような雰囲気になった。
いつ来るか分からない敵と、敵の第一陣が去った安心が混ざった不安定な空気だ。
実際には、各機への補給状態と、被害状況、索敵情報などが飛び交っているのだが、
不安を押し殺すために、目の前の仕事に飛びついているように見える。


早期警戒機アウルライトが飛び立ち、輸送艦が増殖する様にデコイを作り出す。
亜空間機Sストライクや軌道戦闘機ダイダロスも、通常空間に索敵に導入する。
各種報告を聞きながら、第二陣を待つ。


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「提督、来ました。第二陣の先頭集団を捉えました。」
「観測を続させよ。ガザロフ中尉、敵を引き付けるぞ。各艦、各機に亜空間バスターの使用に備えるように通達。」
「了解しました。」


バイドの亜空間機がまた、ソナーにひっかかる。
恐らくは、またアンフィビアン2だろう。
亜空間機の処理法は変わらないので、別にマッドフォレストでもかまわないが。
レーダー係が時とともに増えていく機影を数え上げる。
やはり20機を越える大群のようだが、先ほどの経験から落ち着いて報告を上げている。


「提督、索敵範囲内のバイド亜空間機33機。これ以上は接敵されます。」
第一陣の群より大きいようだ。
すでに亜空間機は下げてある。亜空間バスターのスタンバイもできた。

「よろしい、亜空間バスター発射。」
「レーニョベルデ、亜空間バスター発射を確認……弾着。」

爆音。先ほどより近い。
皆耳が一時的に難聴気味になっているので、大声で報告が来る。
耳がバカになりそうだが、私も大声でかえす。


「6機通常空間に移行しました!」
「R機で掃討。打ち漏らしがあるかもしれない、索敵を!」
「了解しました!」


きっと爆心地近くのエンクエントロスの艦橋も、こんな感じになっているだろう。
ここ最近、亜空間バスターを発射することの多いレーニョベルデの艦橋では、
使用直後は、最低限指示はハンドサインで行う方法に変えたとの事だ。
やっと耳が通ってきたな。


「レーダーに反応。提督、通常空間の敵機を発見しました。」
「ガザロフ中尉、タイプを判定してくれ。」
「解析中…でましたゲインズ系統です。」
「ゲインズ。こんな所で…!不味いR機にアンフィビアンの掃討を急がせろ。」


バイド体は基本的に自群の被害に頓着しない。
射線上に他のバイド体がいようとも、攻撃の手を止めることは無い。
戦線が膠着しているときなど、他のバイドごと打ち抜いてくる。
人類には取れない戦法だ。
我々もデコイで索敵して、デコイごと波動砲で一網打尽にすることはあるが、
自軍の兵ごと打ちぬくことはまず無い。
倫理的にも取るべきではないが、
パイロットという有限の人的資源を活用しなければならない以上、
そんなことをすれば人類の戦力が枯渇する。
ある意味、量が強みであるバイドにとっては、非常に有効な戦法なのだろう。


しかし、この状況は不味い。
敵と交戦中であるというのは、敵から見て、我々は索敵されている状態だ。
バイドは味方ごと打ち抜いてくる。
こちらの索敵圏外から一方的に波動砲を打ち込まれるのだ。
混戦でやられれば、被害は甚大。苦境に立たされるだろう。


「提督、敵亜空間機が中央を避けて両翼へ進軍していきます。」

次から次へと!
両翼は輸送艦だな。
あちらはあちらに任せよう。

「レーニョベルデに亜空間バスターの使用準備をさせよ。目標は正面より接近する亜空間機、両翼のは無視して良い。」
「提督、両翼先端は輸送機です。それでは、支えきれません。」
「中尉、デコイを予測進路にぶつけるんだ。
よくすればデコイを攻撃しようと通常空間に現れてくれるし、
こちらからぶつかれば、敵は亜空間から通常空間に引き戻される。
どちらにしても、自爆させれば敵を減らせる。後はR機が1~2隊あればいい。」
「了解しました。リャキルナ、ルミルナに通達します。」


三度目の爆音。レーニョベルデが亜空間機を撃った音だ。
一気にR機で畳か掛ける。ここで取りこぼすと大変なことになる。
途中で両翼に戦力を振り分ける。
デコイ作戦が上手くいくといいが、もしうまくいかなければR機をさらに割り振らなければならない。


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両翼の輸送艦デコイが自爆、敵亜空間機を駆除し、
正面もアンフィビアン2の群を駆除した。
亜空間機を狩っていたSストライクや、Leo。
亜空間ソナーを発射するために戦場に留まっていたアウルライト隊から被害が出た。
戦場にはぽっかり穴が開いた。
緩衝地帯を挟んで、互いに出方を伺うような感じだ。


「提督、作戦終了予定時間が迫っています。これ以上はバイドが地球降下を始めます。」
「…時間はバイドの味方だな。危険だがこちらから打って出るしかない。」
「ゲインズに加えて、タブロックタイプの狙撃型バイドが確認されていますが。」
「ガザロフ中尉、現在動かせるR機隊はどのくらいある?」
「本隊から出撃可能なのは8隊、うち即応可能な部隊はホットコンダクター、ドミニオンズ、ラグナロック、エクリプスの4隊です。他は補給、簡易修理が終わっていません。」
「ではその4隊で、狙撃隊のゲインズを打ち破るぞ。強行突破だ。
各艦艇も砲を撃てるようにしておくように。
前列のゲインズを破壊し次第、全軍攻勢に移る。」

「提督、索敵はどうしますか?」
「下手に偵察機を出してこちらの情報を与えたくないが、亜空間機は補給中だし…
デコイも、すぐに使用できる機体は無いか。」
「提督、トロピカルエンジェルはどうでしょう。
現在輸送艦の援護に付いていますが、Tエンジェルの機動性ならすぐに合流できます。
あの加速性能なら、多少無理をすれば敵陣に飛び込んで、攻撃を受けない内に戻ってくることが出来ます。」
「Tエンジェル…現行ザイオング慣性制御の限界を超えた機体か。
パイロットの無理を前提にするのは下策だが、手段を選んでいられないな。
ガザロフ中尉、Tエンジェル隊に通達を頼む。」


Tエンジェルの加速性能、機動性は殺人的と言われていて、リミッターまで付けられる始末だ。
ザイオング慣性制御装置の性能が機体に追いついていない所為で、全力機動は短時間しかできない。
すでに、ザイオングシステムを改良した改良型が出来ているという話だが、私の艦隊には配備されていない。
安全の確認されていない機体を送り出すあたり、実にTeam R-TYPEらしい。


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Tエンジェルが右翼から戻ってきて、索敵を開始する。
安全が確認された宙域に切り込んで、索敵をした後、すぐにこちらに戻る。
これを繰り返して漸進してゆく。
非常に地味だが危険な索敵方法で、Tエンジェルが早期警戒機で無い以上、足で索敵能力を補うしかない。
Tエンジェルが2機、3機の特別編成で交互に飛立つ。
計5回目の索敵で、ゲインズの集団を捉えた。
回数は多いが、時間としては索敵開始からほとんど経っていない。
さすがは、超高機動機と呼ばれるだけはある。
敵のゲインズの居場所を捉えた時点で、彼らの任務は達成され、戦艦エンクエントロスのドックに戻る。
戦闘機動、特に高機動機のそれは、非常に燃料を食う、
それ以上に、その機動性能がパイロットの体力を奪うので、全力機動後はすぐに動けなくなる。


デブリの影でホットコンダクター、ラグナロック、ドミニオンズの各隊が、すでにスタンバイしている。
数的にはこの3隊でどうにかなるが、もっとも機動性の高いエクリプスが予備として待機。
彼らの任務は、もっとも危険な小型バイド、ゲインズタイプの無力化だ。
ゲインズの波動砲は高威力、長射程、連射性の良さを備えていて、脅威であるのだ。
ただし、機動性・索敵能力に劣るので、一度索敵してしまえば射程外から狙い打つことが出来る。
怖いのは索敵能力に優れる機体と居たり、斥候部隊に接触されているとこちらの見えないところから、一気に撃たれる。
Tエンジェルの索敵から、周囲に索敵能力に優れるバイドの姿は確認できなかった。
敵陣のかなり奥に、巨大なバイド戦艦の姿が確認できたが、索敵されるほどではないようだ。


一気に切り込む。
まずは長射程を誇るホットコンダクターが、最も手前から波動砲を打ち込む。
この波動砲は威力が小さいが、照射時間が長い。
これを利用して、機首方向を調整しながら横なぎにする。
少なく無い数のゲインズが小破する。消滅した機体は少ないが、戦果は上々だ。
ゲインズを破壊する必要は無い。こちらの攻撃を当てて波動砲を封じればいいのだ。


こちらを索敵は出来ないが、ゲインズ達は攻撃が来た方向に向き直る。
Hコンダクターの波動砲とほとんど間を置かずに着たのは、ラグナロック、ドミニオンズ両隊だ。
ラグナロックはすでに波動砲のチャージの終え、機首部に白い光塊を携えている。
Hコンダクターが撃ったのとは違う群に向けて狙いを付けると、
一気に波動砲を開放する。ハイパー波動砲の特徴である、放射が輝いた後、幾筋もの波動砲が打ち込まれる。


ドミニオンズも赤く見える波動砲の光を敵前面に持ち込み、開放する。
炎のように見えるそれは、周囲のデブリを回りこみ、障害物の裏側にいるバイドにも攻撃を与える。
ドミニオンズは機体の各所に取り付けられた、放熱板から熱を逃がすと、煙を放つ。
放熱板に付着していた塵が蒸発して、またすぐに凝固しているのだ。


少し残っていたゲインズの取りこぼしはエクリプスが打ち払おうと接近すると、
報告が来た、ゲインズと思われていたバイドが溶けて、白い戦闘機のような物体になったというのだ。
ゲインズと思っていたのはメルトクラフトと呼ばれる擬態能力を持った小型バイドだろう。
ともかく報告されていたゲインズは、無力化した。


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「提督、ゲインズタイプと思われたのはメルトクラフトの擬態であったようです。」
「まんまと騙されたか。しかしこちらに特に被害は被っていない。」
「恐らく、タブロックもメルトクラフトでしょう。」
「だとしてもやることは変わらない。全艦前進。タブロックを艦砲でなぎ払うぞ。敵旗艦の前だけには出るな。」


長射程には長射程を、射程で艦砲に適う兵器は無い。
戦艦エンクエントロスと、旗艦フィンデルムンドが並走して、艦砲を振り回す。
中型バイドのタブロックといえど、大型ミサイルの直撃には耐えられまい。
多少の被弾はあるだろうが戦艦の装甲は硬い。生半可な攻撃は通らないのだ。


「提督、フィンデルムンド、エンクエントロスともにバイドを射程に収めました。」
「よし、各砲門発射許可。敵小型~中型バイドを殲滅するぞ。」


大型ミサイルや主砲レーザーを打ち込むと、タブロックは溶けて白い戦闘機になる。
やはりメルトクラフトか。
これなら一撃で倒せなくとも反撃を貰うことは無いな。


タブロックを順調に溶かして進軍していたその時、
隣にいた戦艦エンクエントロスがぶれる。遅れて爆煙を上げる。
後部スラスターと機関部を繋ぐラインが破壊されている。
あふれたエネルギーが小爆発を起こす。


「なにが起きた!」
「バイド反応あり、アンフィビアン2が亜空間に潜んでいたようです。」
「戦艦エンクエントロス、敵波動砲が推進部に被弾した模様。出力が低下しているようです。その他R機隊にも被害が出ています。」
「全艦停止。早期警戒機は亜空間ソナーを急がせよ。」
「提督、アウルライト隊は先ほどの戦闘で2機撃墜。1機中破です。2機しか動けません。」
「でれるR機は出撃させよ。戦艦では狙い撃ちにされる。レーニョベルデはどうした。」
「先ほどのタブロックのミサイルで亜空間バスター射出口が破壊されました。」
「亜空間バスターは無理か。…全方位警戒。亜空間機が現れたらすぐさま応戦できるようにせよ。」
「提督!敵旗艦が来ます。」
「艦首砲用意!射程に入り次第ムスペル砲を発射せよ。こちらの射程の方が長いはずだ。」


2機になったアウルライトは亜空間ソナーを打ち出す。
反応は微弱だが、戦艦の優秀なレーダーは機影を拾う。
被弾したエンクエントロスは、ダメージコントロールを行い、二次被害を抑えるので手一杯だ。
最悪の事態に備えてR機も次々に飛び出して艦外退避している。
程なくして、バイドの亜空間機アンフィビアン2が通常空間に戻ってきた。
燃料がなくなったのだろうか。ここぞとばかりにR機で殲滅する。


デブリを弾きながらボルドタイプのバイドが迫ってくる。
大きい。
しかし機械屑を取り込んだような大型ボルドは、
艦首砲を抱き込むような歪は構造になっている。
これなら見た目より射程が短いはずだ。
私は大型ボルドの前にフィンデルムンドを進める。

「ムスペル砲発射用意。目標、大型ボルドのコア。」
「ムスペル砲エネルギー充填完了。発射準備完了しました。」
「てえええぇ!」


_______________________________________


「最期の不意打ちの被害が大きいな。」
「エンクエントロスは現在応急修理中です。後30分ほどで動けます。レーニョベルデの被害はすでに復旧しています。R機は数隊が全滅、かなりの被害が出ています。」
「ふう、一応エンクエントロスのR機を空母エストレジータに移して置こう。」


私は被害報告を見やって、言った。
ディスプレイには波動砲が直撃した戦艦エンクエントロスが応急修理している様子が映っている。
さすがにテュール級戦艦の装甲は厚く、船体を貫通はしなかったが、
艦の後部スラスター付近から内部の機関部近くまで、被害が及んでいる。
内部爆発で、少し捲れあがっていた装甲板は、
現在、塗装されていない装甲板で接いであり目立つ。
ダメージコントロールが上手くいったので、被弾直後の小規模爆発を除けば、二次被害はほとんどなかった。
人的被害もあり、船速にも影響が出るかなりの被害だ。
しかしバイドから地球を守った代償であるなら、
戦死した彼らも許してくれると思おう。


「提督。これでバイドの侵略を防げましたね!」
「ワープ空間から、とんぼ返りして地球まで戦闘しながら戻ってくることになるとは。」
「でも…これで、この遠征艦隊の任務も終わりですね。」
「湿っぽくするのはまだ早い。…降下したバイドがいたかもしれない。
応急修理が済み次第、我々も降下して、地球の様子を確認しながら本部に戻ろう。」


______________________________________


これより大気圏に入り、打ちもらしたバイドがいないか捜索することとした。
我々は高度を下げ、上空から地球の様子を見た。
…バイド反応は検地されない。
地球は無事だった。


艦隊は北半球にある山岳地帯の上空を通り、
徐々に高度を下げながら地方の都市の上を通りぬける。
この高度では人は見えないが、建物に特に被害は見られない。
朝日に照らされる山岳地帯の山並みの美しさが我々の働きを讃えてくれているように思えて感慨深かった。
この自然や人々の営みを見たくて、私は戦ってきたのだと思えた。


さらに高度を下げ、街から離れた山あいにある戦没者墓地の上空を通った。
小さな墓標が規則正しく並んでいる。
墓地の一角に、喪服を着た母娘がいるのが小さく見えた。
娘は我々の艦隊に向けて小さな手を振っている。母親はじっとこちらを見上げている。
彼女達には我々がどう見えているのだろう。


私には母親がどんな表情なのか想像できなかった。
想像の中の親子は顔の部分がポッカリ空いていて、表情が分からなかったのだ。
私はドキリとする。自分が何か大切なものを失っているような気がしたのだ。

私は戦闘のことしか考えられなくなってきているのだろうか…?

私はバカバカしい考えを、頭を振って意識の外に追い出した。
今はそんなことより、地球の防衛のことを考えるべきだ。


「提督!緊急連絡です!」
その時、ガザロフ中尉から報告が入った。
第一宇宙艦隊が撃破され、バイドの降下を許してしまったとの事だ。
降下したバイドは再び集結し、統合作戦本部のある基地に向かっているらしい。


統合作戦本部と、本部のある南半球第1宇宙基地が壊滅することは、最重要防衛拠点を失うということだ。
すでに防衛線が下がる場所は無い。まさに最終防衛線だ。
私は戦力を増強するため、強化された権限を使って他の艦隊の残存勢力を集結させ、我々の艦隊に組み入れた。
バイドに撃破された艦隊やはぐれたなどで、原隊復帰ができない部隊を取り込んだのだ。


「目的地、南半球第一宇宙基地。大気圏内第一戦速で進め。」


大気圏内では最大戦速を出せないのがまどろっこしい。
私は地球の大気圏内で出せる最大限のスピードを指示した。









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作者は戦艦…というか艦隊戦が好きなんですけど、
メカとか戦艦の構造とか戦術とか全く分からないので、
被害程度とかどれくらいにしようかと、いつも悩みます。そして適当に書きます。
内容もオリジナリティのないプレイ日記になってきた気がしますが、自重しません。
書きたいものを書く所存です。
…でもおかしい所見つけたら言ってください。こっそり修正します。

さて、次回は念願の「沈む夕日」です。
実は半分以上これを書きたいがために、後編を書いてきたわけですが、
「夏の夕暮れ」と双璧をなす人気イベントなので、
上手く書かなければならないプレッシャーが…。

夏の夕暮れ、沈む夕日、驚愕する、暗黒の森の番犬…
「R-TYPEの神展開=超鬱」な気がしてならない。
さすがはirem。



[21751] 14 沈む夕日 Side:A (前編)
Name: ヒナヒナ◆2a9fd0bf ID:ec2c350f
Date: 2010/12/16 22:48
・沈む夕日 Side:A (前編)


南半球側を防衛していた第一艦隊が撃破され、バイドの大群が本部に向かってきている。
そう、緊急連絡をうけて、我々は地球上で出せる最大速度で基地に向かっている。


詳細な報告が来るにつれ分かったが、第一艦隊は単純に敗れた訳ではないようだ。
第一艦隊が当たったのは、小型バイドを中心とした大規模な群であったが、
大規模なバイドの群は途中で2つに分かれて、別々の場所から地球に降下しようとしたらしい。
慌てた第一艦隊は、戦力を二分して何とかこれらを撃破した。
しかし、その隙を突いて大型バイドを含む群が襲ってきて、各個撃破されたらしい。
この報告が本当なら、そのバイドの群は戦術を用いたということになる。
しかも、艦艇の推進装置などを優先的に破壊することで、短い交戦時間で第一艦隊の足を潰し、
追撃不可能になったところで、第一艦隊を無視して地球に降下したらしい。
第一艦隊が壊滅した訳ではないが、突破されたということだった。


_______________________________________


なんとか、バイドの大群より先に地球連合軍の本部である南半球第一宇宙基地にたどり着いた。
地球上空で推進部近くに被弾した戦艦エンクエントロスは、航行速度が低下していたので、置いてきた。
他の艦隊の残存兵力を取り込みながら、遅れて到着することになっている。


本部からの情報では、本来基地防衛に付くはずの第一艦隊が地球上空でバイドに抜かれたため、
急遽、工廠にあった兵器や手持ちの兵力を無理やり動員してなんとか、引き分けたらしい。
基地を挟んで我々が展開している防衛線の逆側ではビル群が黒煙を上げている。
斥候といってもコンバイラタイプもいる大型の群れであり、かなりの大きさであったとのことだ。
向こう側に戦艦の残骸が見える。墜落したのだろうか。
あの槍状構造には見覚えがある。
以前ここの工廠にで見たのと同じ型…最新艦のニブルヘイム級戦艦だろうか。
白亜の巨体は現在、艦首を割かれ基本構造もねじ曲がった状態で地に伏せていた。
工廠から持ち出されたのなら、戦力として運用できただけでも奇跡だろう。


「提督、緊急連絡…Team R-TYPE本部からです。」
「Team R-TYPE?こんなときに。こちらに回してくれ。」


『こんにちは、私はTeam R-TYPE開発部長のサヤ・S・バイレシートです。終戦の英雄にお会いでき光栄です。』
「バイレシート部長、急いでいるので、用件を。」

部長と名乗ったのは、落ち着いたスーツを着た40代の女性だった。
長々あいさつしてきたので、先を促す。

『用件は一つ。今回の防衛線で、我々の新兵器をお貸しします。』
「新兵器?戦艦は今から箱だけ貰っても運用でませんが。」
『戦艦…ああ外のニブルヘイム級を見たのですね。
違います、R機ですわ。我々の目標であり、終着点。R機の中のR機。』
「それで、それは何です。」
『究極互換機Rwf-99ラスト・ダンサーです。』
「究極互換機?」
『全てのフォースを装備でき、全ての波動砲を発射できる。
ありとあらゆる状況に対応できるR機の最終形態です。
もちろん機体性能も既存のR機とは比べ物になりませんわ。』
「では、そのラストダンサーでバイドの斥候部隊を破ったのですか。」
「いいえ、違います。碌に訓練もされていない艦や兵に、我々のラストダンサーは任せられませんわ。」
「余剰戦力がありながら、今まで出さなかったのか!」


つい、声を荒げる。
基地の外に残骸となっていたニブルヘイム級。
あれだって、相当数の人員が乗っていたはずだ。
工廠の中にあったものを無理やり運用したのだから、
正規乗組員でないもの達も手伝って運用したのだろう。
人類の危機に立ち向かうために、決死の覚悟で。
そして、その多くが英霊になった。

それを訓練不足の一言で、戦力を出さずに
今になって最新兵器を出してくる。
それほどまでに新兵器とやらが大事なのだろうか。



おかしい。
いつもなら適当に感情を抑える事ができるのに、
ここのところ、感情が上手くコントロールできない。
…気のせいでは無い。
やはり、私は感情的、好戦的になってきている。


しかし、今はいがみ合う場では無い。
感情をニュートラルに戻すんだ。
勤めてビジネスライクに。


『バイドに取り込まれては困ります。全てを犠牲にしてでも守るべきは、
反撃の手段、有効な兵器です。守るだけではいつか倒れるだけですから。』
「わかりましたバイレシート部長。それで、貸与とは?」
『その言葉の通り、あのラストダンサーはバイドに対抗する貴重な戦力であり試験機です。
統合作戦司令本部より、この基地の防衛につけるよう命令が来ていますが、今手放す訳にはいきません。
よって、この基地の防衛の間、ラストダンサー隊の指揮権をあなたに委譲します。』
「…協力に感謝する。」
『いえ、ギブアンドテイクです。』
「どういう意味です?」
『我々は我々なりにバイドに対抗するための戦略を持っているのですわ。では御武運を。』


通信が切れた。
通信が切れる際、バイレシート部長言っていた言葉。
私の皮肉に対する反応ではなさそうだ。
彼女は…Team R-TYPEは何を考えている。


究極互換機…ラストダンサーも謎だ。
今までの実験機やテスト、データ収集はすべて、
あれを作るためのブレイクスルーを求めていたのだろう。
名前通り‘究極’のR機を作ることがTeam R-TYPEの目的?


違う。R機を作ること自体が目的ではない。
そもそも軍という集団で運用するんならば互換機である必要は無い。
互換機のメリットとは、単機での突入戦などだろう。
援護を受けられない状況下で、もっとも有効な攻撃が選択出来る機能。


あれは何らかの手段だ。
あのR機を使って何をしたい。
バイドの殲滅?それとも…?
何がTeam R-TYPEの目的なんだ?


「提督、ラストダンサー隊が着艦許可を求めています。」
「!…許可する。」


ベラーノ中尉の声が聞こえ、思考の海から一気に引き上げられる。
今はそんなことを考えているときじゃない。
最近、思考が良く跳ぶな。
頭を振る。


そろそろ、敵が攻めてくる時間だ。


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海面に映るのは暮れかけた夏の太陽。
空は見事な黄金色。
街では街灯が燈りだす。
ビル群からも煌々と蛍光灯の光が漏れる。


遠目で見れば、まだまだ活動を続ける都市の夕方。
しかし、そこに住民の姿は無い。
すでに民間人の避難は終了したとのことだ。
しかし、恐らく残っている人もいるのだろうな。


ここは軍事都市だ。
ここが墜ちれば地球が終わることくらい、みんな分かっている。
だから今まで住んだ町を離れたくないのだ。
または、最期のときになるかもしれない今日を、
暗いシェルターで過したくないのかもしれない。
たしかに、この空は見る価値がある。


「提督、来ました。バイドです。」


黄金の空を降りてくるのはバイド。
その中に一際大きい朱い装甲のバイドがいる。
敵の旗艦、コンバイラタイプだ。
倒すべき敵。
そのコンバイラを見た瞬間、頭の中に砂嵐が走る。


― サ…、い……カ ―


バイドの精神攻撃?
奇妙な感覚を振り払うために、頭を被り振る。
そんなことより、今は前を見なくては。


「ここが正真正銘の最終防衛線だ。みんな、守りきるぞ!」


「さあ、行こうか。」


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戦艦エンクエントロスは間に合わなかったが、他の兵力をつぎ込んだ。
ここに来るまでに、多少他の艦隊の残存勢力を吸収している。
消耗したR機も、定数とは行かないが、埋められた。
我々は地球第一宇宙基地の上空に陣を張った。
この基地には第一宇宙艦隊の他に、陸軍、海軍を小規模ながら保有していたのだが、
そのどちらも今回は出撃していない。


陸軍は、先のバイド斥候部隊来襲の際に基地に、キウイベリィ大隊を率いて、
基地にあったR機やニブルヘイム級とともに戦い。相打ちに持ち込んだ。
ただし、陸軍のキウイ大隊も壊滅的被害を受け、対バイド戦力を失った。
現在、残された歩兵戦力がこの都市の民間人の避難誘導に当たっている。


海軍は地球の海を守護する連合軍地球第一水上艦隊、第二水上艦隊がいるが、
北半球に民間人や研究者、技術者を輸送するのに追われている。


つまり、今ここにいる戦力は我々だけということだ。
我々は今、海洋上に集まったバイドとビル群を挟んで対峙している。


私はゆっくりと艦隊を進める。


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突然、砲声が轟く。
まだ、バイドは射程内に入っていない。


「誰が撃っているんだ?」
「今この戦場にいるのは我々だけのはずですが。」


応えるベラーノ中尉も訝しげだ。
音の発生源を特定して、望遠していくと、海上に艦影が見えた。
水上艦3隻 ―エーギル級2隻、ラーン級1隻― が水際に並んでいた。
連合海軍はすべて、民間人らの護送任務についているはずでは?
そのまえに、バイドの大群の前にあの戦力では…!


「提督、あの艦隊から通信です。」
「繋いでくれ。」


ディスプレイに映ったのは白髪の老齢の海軍将官で、
地球連合海軍、第一水上艦隊司令ポール・ガーファンクル少将を名乗った。

『我々第一水上艦隊は基地防衛のため、バイドに対し攻勢を仕掛ける。援護は不要だ。』
「しかし、ガーファンクル提督…」

バイドが上陸する前に、水際で砲撃を加えて戦力を出来るだけ削ると言うのだ。
正直言って、あの戦力ではバイドに蹂躙されるだろう。
バイドのすぐ下とも言える距離に居る彼らに、それがわからないはずが無い。
この距離では、今からR機を発進させても間に合わない。
しかし、ガーファンクル提督も、その後ろに映る他の参謀達も、一切迷いの無い目をしている。
彼らは自分達が死地に赴いていることを分かっていて、なお人類のためにと残った軍人なのだと理解した。

『我々には海軍としての誇りがある。新参者の宇宙艦隊だけに、地球防衛は任せておけん。』

ガーファンクル提督は言った。
謝礼、同情は受け取らない。という意思。
そして迷っている私への無骨な気遣いだろう。

「貴艦隊の御武運をお祈りします。」

私が敬礼をすると、戦闘指揮所にいるスタッフ達も続く。
ガーファンクル提督がディスプレイの向こう側で敬礼を返した。
ディスプレイが閉じる。
指揮所内に沈黙が続く。痛いくらいだ。


「提督。我々のできることをしましょう。」
「ベラーノ中尉…そうだな、艦隊前進。早期警戒機、亜空間機は出撃、その他R機は出撃に備えよ!」


ディスプレイに表示された望遠映像では、
水上艦からの弾道弾迎撃ミサイルによる艦隊射撃が行われている。
ミサイルの数が多い。
どうやら水上艦だけでなく攻撃潜水艦グランビア・Fも残ってくれたようだ。
撃ちつくす勢いでミサイルを撃ち、対空機関砲で弾幕を張る。
上空のバイドはそのままこちらに来ているが、低空を進むバイドは第一水上艦隊に誘引されている。
望遠画像なので詳細は分からないが、レーダーリンクで繋がったレーダー網からは、
小型バイドやバイド輸送艦ノーザリーが消えてゆく。


しかし、バイドもやられてばかりではない。
バイドに攻撃されたのかエーギル級の艦橋が吹き飛ぶ。
司令官を失った水上艦は動きを止めた。
そして、ミサイル、機関砲がバラバラに、しかし苛烈に砲撃が再開された。
司令官が死亡した事を悟った現場の人間が、各自反撃し続けているのだろう。
2発、3発とバイドのミサイルが着弾し、甲板の傾斜が次第に厳しくなる。
そして船体構造が耐えきれなくなり、海中へと沈む中でもまだ、攻撃しようとしているように見えた。


他の2艦も同様に砲撃を続けていたが、
第一水上艦隊の旗艦ラーン級は突然、見えない何かに押しつぶされるように船体が変形する。
2撃、3撃。
船体に遠目でも致命的と分かる亀裂が入り、一気に沈没した。
最後に残ったエーギル級に小型のバイドが殺到するのが見える…。侵食する気だろうか。
内部から爆発が起きる。
おそらく、自分達の末路を悟った艦内の人間が機関を爆破したのだろう。
そして先ほどのラーン級と同じようにエーギル級が潰れ、それを最期に海中に消えた。


私達には見ていることしかできなかった。
「提督、あのエーギル級より電文とデータが届きました。」
「データ?」
「ええ、敵バイドの交戦データです。」
「最後に敵の情報を残してくれたのか。有効に活用しなくてはならないな。」
「提督。あと…幸運を祈る。と」
「…」


私は黙って、つい先ほどまで第一水上艦隊が居た場所に向けて敬礼をした。


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我々はビル群の手前まで進軍している。
先ほど水上艦隊が送ってくれた情報の分析はバイドの情報に詳しい、アッテルベリ中尉に任せた。

「提督。水上艦隊から送られてきた情報の分析が終了しました。」
「分かった。報告を。」
「了解しました。端末をご覧ください。」


イヤホンを片耳に挿し、提督席にある手元の端末を見る。
まず、映ったのは水上艦隊の艦載カメラの映像で、イヤホンに流れてきたのは艦橋の音声だった。


エーギル級の艦長らしき人物が、士気を鼓舞し、ミサイル発射を叫んでいた。
画質の悪い映像からは、空いっぱいに広がるバイドと、
白線を引いて飛んでいく弾道弾迎撃ミサイル。曳光弾が交ったの対空機関砲の射線が見えた。
画面端には第一水上艦隊旗艦のラーン級の船体が映っている。
バイドの攻撃は苛烈を極め、艦橋でも飛び込んだ破片で死傷者が出ているらしい。

そのとき、突然奇妙な音とともに、隣にあるラーン級の構造物がひしゃげる。
3度目の音とともにラーン級は海に飲まれた。
エーギル級の艦橋で、上だ。という声が挙がる。
上空には奇妙な大型なバイドが見えた。大きな肉塊がうごめいているのだ。
射線がその大型バイドに集中する。すると、肉塊がぼろぼろと剥がれ始める。
そのまま落ちると見えた肉塊は、重力に逆らって進路を変える。
カメラの…エーギル級の方に向かってきたのだ。
小さく見えた肉塊は小型バイドほどもあった。
迎撃が行われるが、数で押され、ついにはエーギル級の船体取り付いて衝撃をもたらす。
音声からは、うめき声が聞こえ、無事を確認する声が聞こえる。そして悲鳴。

カメラで見えた肉塊のは5体まで。次々に肉塊が降り注き、その重さで艦が沈み込む。
バイドの侵蝕を確認。という悲鳴が上がり、機関を爆破しろとの答え。
そして、爆音。肉塊が爆ぜ、画質は最悪だが視界が戻る。
上空にいたのは大きな肉塊ではなく、ウニか栗のように棘を生やしたバイドだった。
そして、大型バイドの中央のコアが光った。


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…そこで、映像は終わっていた。

「…。あれはなんだ?」
「ベルメイトです。正確には生命要塞であるベルメイト本体とベルメイト肉塊です。バイドミッション時に確認され、複数のバイドを表面に吸着させて輸送することが、知られています。」
「…あの攻撃の分析はできたか。」
「おそらくなんらかの方法で衝撃波を作り出しています。ただ指向性が非常に強いようなので、ベルメイトの反応速度を上回る機動を行えば回避できるかもしれません。あとは、肉塊を使用して敵を押しつぶし、侵蝕を行おうとしています。肉塊には近づかない方が良いでしょう。映像から分かったのはこれくらいです。」
「他に分かった事は。」
「画像を解析して、ベルメイトの他にバイドシステム系列の小型、ボルド等が確認されました。あと…。」
「あと?」
「ラーン級、エーギル級ともに沈没する最後の瞬間まで抵抗をつづけたようです。」
「そうか…」


多少でもバイドの構成、敵の攻撃手段が分かったのは幸いだ。
第一水上艦隊には感謝しきれないな。


「ベラーノ中尉、民間人の避難は完了しているな。」
「はい、都市部から脱出したか、地下シェルターに避難したと、陸軍から報告がありました。」
「分かった。これで高層ビルを守る必要が無くなったな。」


ここは軍事都市であり、攻撃が予想される基地周辺の建築物には、強化建材が使われている。
ビルに入っているのが、ほとんど軍事関係の組織、企業であり、
周囲の住民もほとんど、軍人かその関係者だからだ。
しかし、さすがに波動砲級の攻撃には耐えられない。
波動砲級でなくともミサイルが当たれば、倒壊はせずとも中は悲惨なことになるだろう。
そもそも、バイドは味方の被害さえ無頓着だ。そんな奴らが障害物を破壊しないなんて言えない。
バイドの攻撃から建築物まで守ることは出来ない。
電気がついているビルが多いが…
人の有無を確認している時間は無い。消す暇がなかったと考えよう。


「まずは、ビルを盾に敵小型バイドを迎撃する。」


戦闘開始だ。





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沈む夕日 side:提督の前編でした。
だいたい、1話あたりword15枚以内に収まるように書いているのですが、
執筆途中で、20ページを超えるのがわかったので分割です。

ちなみに、どうしても出したかったので、ラストダンサーのゲスト出演フラグ立てました。

水上艦隊はtacticsⅠの沈む夕日にいるヤツが元です。
水上艦1隻だけで先頭にいるとか、どう考えてもカミカゼにしか思えないです。
しかも書いてみたら意外にでしゃばりでした。



[21751] 15 沈む夕日 Side:A (後編)
Name: ヒナヒナ◆2a9fd0bf ID:ec2c350f
Date: 2010/12/16 22:52
・沈む夕日 Side:A (後編)


さあ、戦闘開始だ。


敵の第一波は唐突だった。
先頭に配備していたアウルライト隊とダイダロス隊の一部が、いきなり撃墜された。
索敵は密に行っていたし、レーダーにも機影は無かったはず。
しかし、何も無いはずの空域から、突然、波動エネルギーを持った霧状の攻撃が起こり、
霧に包まれたR機は装甲か溶け落ちるよう剥がれて、爆散した。
後に残ったのは、何もなかった座標に唐突に現れた、霧を纏ったような小型バイドだった。

「…波動砲?ベラーノ中尉。R機を全機ビルの陰に下げさせよ。」
「了解しました。亜空間機をビル内に残して、R機部隊に通達します。」
「ミスティレディの亜種か?…アッテルベリ中尉。」
「はい、外見、能力からミスティレディの発展型と思われます。便宜的にミスティレディ2としましょう。ミスティレディの波動砲は直進ぜず、重力方向に牽引されていましたが、ミスティレディ2の波動砲は、一度下方に下った後、上方に湾曲するようです。波動砲以外の攻撃は重力方向に牽引されるようです。」
「厄介な。ビルの陰も安全ではないな。…ベラーノ中尉。」
「はい、R機隊に情報を伝えます。」

「唐突に現れたのは、亜空間潜行だろうか。ミスティレディはそんな能力を持っていなかったと思ったが。」
「レーダーの反応の仕方から、亜空間潜行ではなくジャミングと思われます。小官の考えでは、ミスティレディ2ではなく、あの霧を展開しているフォースにジャミング能力があるのではないかと思います。波動砲を撃ったときミスティレディ2はフォースを装備していませんでした。しかし、レーダーに反応が無かったにも関わらず、あのミスティレディ2はいつの間にかフォースを装備しています。おそらくジャミング状態で追従して来たフォースを装備したのでしょう。」
「ジャミング能力を持つフォースか、邪魔だな。」
「どうされますか、提督。」

アッテルベリ中尉の説明を受けて、ベラーノ中尉が対応を聞いてくる。
我々に退くという選択肢はありえない。最早下る場所など無いのだから。
ならば私の取るべき選択は。

「Leoを前面に展開。サイビットサイファで付近を一掃する。」
「了解しました。」

ビルの陰からLeoが間隔を十分に置いて展開する。
壊滅した実験部隊から提督権限を持って編入させたため、Leoは3機あるのだ。
カウントを取って同時に飛び出した3機のLeoは、何も無く思える夕焼け空に向かって、
サイビットを射出する。


パイロットの意思を反映して、サイビット、エネルギーを纏って広範囲を駆け巡る。
このサイビットはザイオング慣性制御システムの恩恵を受けていないため、
R機のような慣性を無視した動きは出来ず、Leoを焦点に楕円軌道を幾重にも描く。
このときサイビットは後方、側方にも回り込むため、Leoは編隊を組めない。
便利さゆえの弊害だ。
しかし、その攻撃範囲の広さには目を見張るものがある。


3機のLeoによるサイビットサイファで、14機のミスティレディ2を落とし、霧を発するフォースもいくつも破壊した。
フォースを破壊すると、周囲のミスティレディ2がレーダーに映ることと言い、
アッテルベリ中尉の予想通り、あのフォースがジャミングを行っていたらしい。
しかし、喜んでばかりもいられない。
フォースが消えると、そこにはミスティレディ2の大群が現れた。


フォースの加護を失って姿を現したミスティレディ2が一気に襲い来る。
一番前に出ていたLeoがミスティレディ2の集団に囲まれて、
打ち下ろしのレーザーを受ける。Leoは回避機動で逃れようとするが、
雨のように降り注ぐレーザーを数機から撃たれて、逃げ場を無くす。
たった今、サイビットサイファを繰り出したLeoは、サイビットのチャージが足りず、有効な攻撃が出来ない。
エネルギーの雨に打たれてLeoが1機落とされた。


勢いに乗ったミスティレディ2は一気にビル上空に押し寄せた。
ビルの陰に隠れていた部隊が、上方からの打ちおろし攻撃に被害を受ける。
ビル街では上下方向に有効な遮蔽物はない。
ビルの陰に展開していたR機各隊は、頭を敵に抑えられ、
水平移動はビルのせいで、ままならない。
回避を取れないままに、一方的に蹂躙されていく。


「提督、このままではR機隊が持ちませんっ!」
「分かっている。トロピカルエンジェルならばビル街でも抜けられるはず。
Tエンジェルで敵の攻撃に穴を開けるんだ。そこからビル上空にR機を移動させ反撃を行う。」


命令を受けた超高機動機はその鋭角的な機動でビルの合間を移動して攻撃を避ける。
群れているミスティレディの切れ目を見つけて一気に上昇し、敵群の上方に躍り出る。
Tエンジェルの上方からの攻撃にミスティレディ2は、反撃が出来ない。


Tエンジェル隊が一隊で倒せる量はたかだか一個小隊程度だが、それでも攻撃の空白地帯が出来る。
空白を目指して上昇してきたのは、私の艦隊に吸収したR機ケルベロスだ。


重武装戦闘機Rwf-13Aケルベロス
機動力は決して高くないが、高い攻撃力を持つ黒色のR機。
ライトニング波動砲は、波動エネルギーを電撃に変換して打ち出すもので、敵に向けて拡散、追尾する性質がある。
また、フォースも変わっており、アンカーフォースという特殊フォースを装備する。
バイド係数を高め、より攻撃的にしたコントロールロッドに付随した鉤爪で敵に食いつき破壊する。
非常に便利だが、その高いバイド係数が問題となって、制御のために有線でR機と繋げなければならない。
ケルベロスという名前だが、フォースを光学チェーンで繋いで、シュートする様子はむしろ番犬ではなく飼い主の様だ。
バイドミッションの中に開発された当時最先端機だったが、試作機が一度作戦に参加した後、何故か今まで使用を凍結されていた。


ケルベロスはビル上からミスティレディ2見渡す。
周囲の敵機をミサイルでなぎ払い、波動砲のチャージを再開する。
黒いR機の先端にエネルギーが集まりはじめ、あふれ出たエネルギーが紫電となって周囲の空間にほとばしる。
ミスティレディ2に向かって、発射。
解放されたライトニング波動砲は獲物を求めて、貪欲に敵機に襲いかかる。
逃げ遅れたミスティレディ2がライトニング波動砲に食いつかれる。
バイド体を覆っていた霧が散じて、電撃が中身をが焦がす。
数箇所でケルベロスのライトニング波動砲の紫電が見られ、
霧が晴れて、空は再び黄金色に戻った。


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「ベラーノ中尉、被害程度報告を。」
「R機隊損傷率24%。艦艇に被害はありません。被害の酷い隊から着艦修理を行いましょう。」
「いや、余りに酷い損傷を負った隊は後ろに下らせろ。復帰が早い隊から修理を行え。」
「了解しました。提督。」
「後ろには下れない。戦線を上げるぞ。索敵は亜空間索敵をメインに行え。
アッテルベリ中尉。水上艦隊からのデータをR機隊に流して、注意を促せ。」
「了解しました。提督、敵小型機の主力と思われるのはバイドシステム系統です。
障害物の多い場所での戦闘を得意としていますので、ビル街での戦闘は避けるべきと思われます。」
「上空に上がるべきか…。R機隊はビル街上空に上がるように通達せよ。」


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「レーダーに感あり、小型バイドです。」
「小型バイドを確認。提督、小型バイドのバイドシステムλです。」

R機が配置を変更中に、小型バイドが襲ってくる。
早い。


バイドシステムλ
小型バイド体でバイドシステム系統の3型。
生体系の素材からなり、内臓や筋組織を想像させるパーツが出鱈目についている。
醜悪な外見をしており、生命そのものを冒涜するようにさえ感じられる。
バイドシステム系統は小型機としては標準的な機能を持った小型機群だが、
しいて言うなら、特殊な形態の波動砲を発射する。
機体後方からバイド体の周囲を回り込むように発射されるため、
障害物を避けて波動砲が飛んでくる。


「増援が早い。戦力を立て直す隙を与えない気か。」
「しかし、提督。バイドは高等思考を行わないのではないでしょうか。」
「地球上空では、第一宇宙艦隊相手に陽動を仕掛けてきたし、今回も上空からミスティレディで抑えた事、増援も的確だ。彼は明らかに戦略・戦術を使用している。」
「………彼?」
「うん?何か言ったかベラーノ中尉?」
「…いえ、何でもありません。」
「会敵前にR機は上空に上がらせろ。すでに配置に付いたものは援護を。」
「了解しました。」


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バイドシステムλは嫌なタイミングで襲ってきた。
まだ、先ほどダメージを受けた機体の修理は終わっていない。
開けた空で、数が圧倒的に多い敵とぶつかることは明らかに不利だ。
地の利を活かそうとビル街にもぐりこめば、敵の変則的な軌道の波動砲に襲われる。


彼はやはり相当優秀な指揮官の様だ。
しかし、私の双肩には地球人類の生存がかかっている。
相手が誰であろうと負けるわけには行かない。
私は命令をだす。

「ラストダンサー隊を投入せよ。」

私の命令とともにラストダンサーが夕焼け空に踊り出る。


究極互換機 Rwf-99ラストダンサー 
全ての波動砲を選択でき、すべてのフォースを装着できる。究極の全局面対応機である。
極力無駄を廃した外見をしており、より複雑に進化していったRの系譜から見ると、
原点のRwf-9Aアローヘッドに立ち返ったかのようだ。
Team R-TYPEが作成した全てのR機は、本機を開発するためにあったという。
極秘計画によって作成された真の対バイド兵器だが、その本当の目的は不明である。


ラストダンサーは動きを確認するように一度空中で止ると、波動砲をチャージし始める。
その間も、ミサイルを放ちBシステムλを打ち落とす。
高機動機までではないが、他のR機より機敏なその機動性にBシステムλは付いて行けない。
ラストダンサーは高出力を生かした機動でBシステムλを掠めるように接近し…


そして、バイドのフォースを奪った。


私は目を見張った。起こりえないことだ。
人類が使用するフォースはバイドの切れ端から培養した純粋なエネルギーなのに対し、
バイドが使用するフォースは、フォースと言う名が付いているが、
エネルギー状態を取っている小型バイドに他ならない。
それを奪い使用する。


-これではまるで‘バイドバインドシステム’ではないか?-


いや、むしろコントロールロッドを使用しないあたり、
太陽系開放同盟の開発したBBSより進化している。
Team R-TYPEはBBSを技術を持っている?
開放同盟本隊の生き残りのカトー大佐は、このごたごたでまだ身柄を引き渡していない。
彼から技術がもれるはずは無い。
それなのに、開放同盟より洗練されたシステム…


太陽系開放同盟にBBSの技術を流したのはTeam R-TYPEなのか!?
彼らなら、現地実証のために敵に技術を渡しかねない。
ワープ空間という隔離された空間で未完成な技術の検証をしたのか?
今思えば、この艦隊にもR機の改修のためにTeam R-TYPEの技術屋が参加している。
彼らなら、R機から映像データや交戦データくらい抽出できるはずだ。
ワープ空間での交戦データを他のデータに紛れ込ませ、連絡艇で本部に送るのは可能だろう。
何を考えているTeam R-TYPE?


私の疑惑を余所に、ラストダンサーは波動砲に、ミサイル、フォースシュートなど、
夕日を背にダンスを踊っていた。


R機隊はBシステムがラストダンサーに気を取られているうちに、体勢を立て直す。
ドミニオンズ、ナルキッソス、サンデーストライクが上ってきたのが見える。
ラストダンサーは最期にオマケとばかりにバイドフォースをシュート。
自らの半身に抉られたBシステムは、迫り来る雷を避けられない。
ライトニング波動砲がバイドシステムλとバイドフォースを消し飛ばした。


生体バイドへの切り札。ドミニオンズの火炎波動砲が火を噴き、その生体組織を焼いていく。
ナルキッソスが余ったフォースを切り刻む。
第二波も何とか乗り切れたようだ。


_____________________________________


「索敵、亜空間ソナーに感なし。提督、敵機は発見されません。」
「あの肉塊は、いないようだな。」
「よろしい。ビル群の切れ目まで前進する。亜空間機でビル内部より向こう側を索敵させよ。」
「R機はビル群上空で待機、索敵が完了ししだい前進する。」
「Sストライク、ダイダロス各機亜空間潜行を確認しました。」


激戦ですでに両隊ともに定数を欠いているが、それでも亜空間索敵は重要な情報元なので、
利用しないわけには行かない。
このビルの向こうは海だ。第一水上艦隊が布陣していた場所。
おそらくベルメイトとあの肉塊が居る。慎重を期したいところだ。あの衝撃波は危険すぎる。
ビルの壁の中からの索敵ならば、通常空間には引き戻されずに索敵できる。
ベルメイトの位置だけでも確認したい。


「Sストライクより連絡、肉塊を発見。索敵を続行するとのことです。ダイダロスより連絡、ベルメイト2隻を確認。」
「亜空間機を戻し…何だ!」

爆音。

「レーダーからSストライクとダイダロスの反応が消失しました!」
「提督、亜空間バスターが2発使用された模様です。」
「亜空間バスター?レーニョベルデの暴発か!?」
「提督、レーニョベルデは後方にいます。バイドから…おそらくベルメイトからの攻撃でしょう。」
「くっ…亜空間索敵は断念するしかないか、デコイを上空から出してみよう。」


POWアーマー改のデコイが、ビル上空から向こう側を覗く…
しかし、ビルの陰から出たとたんに、衝撃波に襲われて破壊される。
射程、命中率ともに脅威的だ。
R機といえどビルの陰から出れば狙い打たれるだろう。
数で押しても、敵にはあの肉塊がいる。
あれで足止めされているうちに本体に狙われる。
八方塞だ。


「提督、命令をっ!」
「…」


そんなこと、私が聞きたいくらいだ。
でも司令官がそんな弱気なことを言うわけにはいかない。
命令を出せない司令官なんて意味が無い。考えるんだ。
ベストでなくともベターな選択を。


・ワイズマンの誘導波動砲でビルのこちら側から回りこんで攻撃。
  -却下。誘導波動砲はビルの向こう側にまわりこめるほど射程が長くない。


・R機で物量に任せて強襲
  -却下。ビルの隙間から顔を出した瞬間に衝撃波の餌食だし。乗り越えても肉塊が待っている。


・回り込んで背後から奇襲。
  -却下。正面戦力を減らせば、一気に基地に流れ込まれる。
 

・戦艦で強襲。
  -却下。戦艦はビルの合間を通れない。上空から攻めればベルメイト到達前に衝撃波で落とされる恐れがある。衝撃波の射程が分からない以上はできない。



ビルのこちらから攻撃できれば…。
………!


ひとつだけある。安全圏から攻撃出来る方法が。
これしか無いか、でも…。


「ベラーノ中尉。市民の避難は完了しているな?」
「はい、連合陸軍より連絡を受けています。」
「アッテルベリ中尉、ベルメイトの現在の位置を割り出せ。」
「了解しました。POW改の画像データから予測します。」
「ベラーノ中尉。各R機に波動砲をチャージさせよ。」
「了解しました…。提督なにを?」
「高層ビルごとベルメイトを打ち抜く。」
「提督!それは…」
「幸い避難は済んでいる。強化建材でできたビルだが、波動砲なら貫通させられる。」
「…よろしいのですか?」
「これが一番確実で、犠牲が少ない方法だ。」


そう、ベストではないがベターな方法だ。
ここで負けるわけにはいかない。
たとえそれが、守るべき文明の象徴であったとしても、
今、戦力として運用できる兵器・軍人と、誰も居ない建築物ならば、私は前者を取る。
戦後、誰かが責任取らねばならないなら、私が降格でもされればいいさ。


最良の方法は残念ながら私には見つけられなかった。
若き英雄ジェイド・ロスならば見つけられたのだろうか…。
でも、今、怖気づいて全てを失う訳にはいかないんだ。


「全軍に通信を開け。」
「了解しました。」


この命令ばかりは、私が直接しなければならない。


「こちら艦隊司令だ。これより、生命要塞ベルメイトの攻略を行う。
通常の攻撃手段では、攻撃が不可能であるが、一つだけあのバイドを打ち破る方法がある…
艦隊司令からR機各機へ命令する。波動砲でビルごとベルメイトを打ち抜け。
すでに住民の避難は完了しているため、人的被害は考慮する必要はない。
また、この作戦における全責任は私が取る。
…全機、配置に付け。」


私は通信を切り、準備完了の報告を待つ。
苛立ちを隠すんだ。司令官は自信を持って命令しなければ誰も付いてこない。
展開し始めるR機をじっと見る。


「提督…」
「問題ない。住民の避難は終わっているし、上手くいくさ。」


私は強張りそう顔に、笑みを貼り付けて、ベラーノ中尉に答える。
さっきから、ベラーノ中尉は私を心配そうに見てくる。
自信の無さが、顔に出ているのだろうか。


「提督、R機隊配置に付きました。すでに波動砲のチャージ完了しています。」
「よろしい、全軍に繋げ。…艦隊司令よりR機各機に命じる。
目標、生命要塞ベルメイト。波動砲準備……撃てえええぇぇ!」


まばゆい光が幾筋もビルに突き刺さり、向こう側に抜ける。
強化建材で出来たビルは、波動砲で構造を破壊され、地響きとともに上部が崩れ落ちる。
林立していたビル街は今や廃墟と化した。
残ったビルが黒い影を長く伸ばしている。まるで墓標の様だった。


____________________________________


「提督、ベルメイト反応消失しました。肉塊が数体残っています。」
「R機部隊に追撃、深入りしすぎないように。」


アッテルベリ中尉の感情の含まない声が、今はありがたい。
戦闘指揮所の空気が重い。
街を守ることが難しいことは分かっていたし、一応あそこには誰もいないはずのビルだ。
今まで守ろうとしてきたものを自分たちの手で壊すという行為が、今更すごく重く感じた。
バイドが破壊したなら、怒りを感じても、罪悪感を感じる事は無かったはず。


「索敵は?」
「レーダーに敵影はありません。偵察機が足りないため、索敵範囲が狭まっています。」
「旗艦フィンデルムンドを前に出そう。戦艦の索敵能力の方が優秀だ。
…レーダーを阻害する構造物もなくなったしな。」
「…旗艦を前にですか。」
「ああ、戦艦エンクエントロスはまだ合流できていないし、他の艦艇では索敵能力に劣る。」
「敵にはまだコンバイラタイプがいます。危険では?」
「あの大きさなら、索敵にかかる前に光学で捉えられる。」
「分かりました。」


_______________________________________


ビル群を超えて、港湾施設の上空に居る。
目視する限り敵はあのコンバイラタイプのみだ。


「提督、敵旗艦コンバイラベーラが索敵範囲に入ります。」
「コンバイラベーラ?」
「先ほどTeam R-TYPE本部より通信がありました。コンバイラの進化系で主砲が強力に
なっていると思われるが形状から射程は延びていないと考えられる、気をつけるようにと。」
「Team R-TYPEにしては常識的な意見だな。ベラーノ中尉、他に何か言っていたか?」
「今までのバイドに比べて変わったところはあるか。と聞かれたので、各個体は変わらないが、今までより強力になっているようだ、と答えました。」
「…まあいい。で、そのコンバイラベーラの様子は。」
「こちらを認識したようです。あちらの索敵能力も戦艦クラスです。内部より小型バイドが発進してきます。」


途中、ボルドが海面ぎりぎりに張っており、少なくない数のR機が艦首砲にさらされ、
また、残っていたベルメイトの肉塊が爆ぜ、機体にダメージを与えた。
撃墜された機体さえないが、波動砲にチャージしていたエネルギーが拡散してしまった。
R機の損傷率も50%を超えている。人類同士の戦闘であれば、壊滅といえるレベルだ。
波動砲を撃てる状態の機体は少ない。
しかし、敵はすぐそこにいる。部隊を引いて立て直すことはできない。


「フィンデルムンド、艦首砲を撃てるようにしておけ。あと、今運用できるR機は?」
「了解しました。今、部隊として動かせるのはラグナロック、ステイヤー、ラストダンサー隊です。」
「火力不足だな。アッテルベリ中尉、これらの戦力で敵コアは潰せると思うか。」
「難しいでしょう。他の砲台から狙い撃たれます。」
「だろうな、R機体には小型バイドと艦首砲を潰させろ。R機なら主砲範囲外からまわりこめる。」
「はい、では本艦はコンバイラベーラのコアを破壊するのですね。」
「ああ、さあ決着をつけるぞ。」


_______________________________________


コンバイラベーラに格納されていた小型バイドはそれほど数が多くなかったが、
こちらの迎撃戦力が非常に減少していたため、苦戦している。
コンバイラベーラの艦首砲にまでは手が回らないようだ。艦首砲を無視するわけにもいかない。先にムスペル砲でこちらで潰すしかあるまい。


「目標変更、敵艦首砲!敵艦首砲が射程に入り次第ムスペル砲を発射する。発射遅れるな。」
「ムスペル砲いつでも撃てます。」
「目標ムスペル砲射程へ侵入まで、あと10秒。」
「敵の艦首砲もエネルギーを収束を確認。敵艦首砲、ムスペル砲に向いています。発射タイミングは…ほぼ同時です。」
「発射カウント5、4、3…」


次々に情報が入ってくる。
だが、彼がこちらの艦首砲を狙ってくるなら負けない。
波動砲の性能であれば、人類に軍配が上がる。
こちらの艦首砲は、大口径ならば波動砲より強力な陽電子砲。
撃ち負けるはずが無い。


「撃てえぇぇぇ!」


旗艦ムスペルヘイムとコンバイラベーラは同時にそれぞれの最大火力を撃ちこんだ。
そして、私は敵艦首砲から出たエネルギーが、二股に分かれるのを見た。
その瞬間、ベルトに体が押し付けられる感覚と、頭に痛みを覚えた。
一瞬消えた照明や、ディスプレイが元に戻る。
私は痛む頭に手を添えつつ、問いかける。


「痛…何があった!」
「敵の艦首砲被弾しました。損傷個所は前方装甲、第3装甲まで破壊されました!」
「コンバイラベーラ艦首砲は沈黙しました。」
「提督、同じ個所にダメージを貰えば貫通しかねません!」


怪我人。
怒涛の報告。
戦闘指揮所内は修羅場になった。
どうやら、敵の艦首砲は直進せず、上下2方向に分かれて進むタイプであったらしい。
上に分かれた方は当たらなかったが、下に分かれた方が艦の前方に被弾したらしい。


「艦首砲チャージ再開。」
「敵ミサイル発射、来ます。被弾部狙われています。」
「迎撃!」
「主砲レーザー使用不能、ミサイルで迎撃します。」


敵ミサイルは迎撃兼用ミサイルのビフレスト砲でなんとか、途中で撃墜できる。
しかし、レーザーが使えないとなると手数が足りない。
艦首砲はエネルギーがたまるまでは使用できず、ミサイルも迎撃でいっぱいいっぱいだ。


敵が迫ってきている。こちらも後退するが、今まで前進していたので急には後退出来ない。
もうすぐ敵レーザーの射程に入る。
レーザーはさすがに迎撃出来ない。今被弾した部分にもう一度攻撃を加えられれば装甲を貫通しかねない。
外部装甲は非常に堅牢だが、内部壁はそんなに防御力は無い。
貫通されれば内部はズタズタになるだろう。正面から破られればここや、機関部もやられる。


「ムスペル砲チャージ完了まであと1分。」
「R機は!」
「R機上空で戦闘中です。」
「提督!敵レーザー砲塔の射程に入ります。」


私は回避を命令しようとすると、ディスプレイに光の柱が映る。
コンバイラベーラの斜め後方から来たそれは、コンバイラのレーザー砲台を破壊する。
砲撃が来た方向をディスプレイで拡大すると、テュール級戦艦の艦影が見える。


「提督!2番艦エンクエントロスです。」
「よし、これで時間が稼げた。ムスペル砲発射準備。」
「ムスペル砲発射まであと30秒。」
「その他、海上に降下してくる艦影を確認しました。ニブルヘイム級が複数です。」


遠方の海上に戦艦が降下してくるのが見える。
ニブルヘイム級をそう幾つも保持しているのは地球連合の最精鋭、第一宇宙艦隊くらいだろう。
みんな地球を防衛に集まってきたのだろう。心強い。


「みんな援軍が来たぞ!だがしかし、撃ちとるのは我々だ!目標、コンバイラベーラ!」
「発射可能まで10秒…5、4、3…」
「撃てえぇぇぇ!」


ムスペル砲が光を放つ。
光の束がコンバイラベーラを飲みこむ。
コンバイラベーラは衝撃で海中へと墜ちる。


_____________________________________


「コンバイラベーラ海中へ落下、反応ありません。」
「上空小型バイドとの戦闘も終了しました。」


彼の動きが無くなったのを確認するが、みな動かない。
頭がついてきていない様子だ。
私は全艦通信を開く。


「…みんな、良くやってくれた。これで人類は危機を乗り越えた。我々は地球人類の命を救ったんだ。さあ、胸を張って凱旋しよう。」


みなボヤっとした顔でをしていたが、一瞬間が開いて戦闘指揮所内から歓声が上がる。
みんな抱き合ったり、ヘッドホンを投げたり、様々な方法で喜びを表している。
そんな彼らを今度は私がボヤっと見ていたが、肩を叩かれる。
ベラーノ中尉とアッテルベリ中尉がおり、敬礼してきた。


「提督、お疲れ様でした。これで…終わったのですね。」
「提督、作戦終了です。」
「君らこそ、苦労をかけたね。これでやっとひと段落つけるな。」


ベラーノ中尉はしみじみと、アッテルベリ中尉も言い方こそそっけなかったが少し笑っているようだ。
私も敬礼を返そうとしたが、今更他人行儀だと思い直して握手をしようと手を伸ばす。
が、自分の掌をみてぎょっとする。手袋が赤く染まっていたのだ。
それに気付いた副官らも驚いている。
どうやら、敵の艦首砲が命中した衝撃で何かにぶつけたとき、頭部が少し切れたらしい。
今まで気がつかないとは、私も相当アドレナリンにやられていたんだな。
さすがに血がついた手で握手されるのは気持ち悪いだろうと思い、反対の手で握手する。


そしてふと、ディスプレイを見る。
素晴らしい光景がそこにはあった。
いよいよ茜色に染まる空。
空の色を余すことなく映した海。
そして、沈む夕日。
この光景こそ一番の報酬だ。
この光景を守れただけで、今までの苦労が報われた気がする。
私はこの光景を瞳に焼き付けた。



===================================
沈む夕日 Side:Aでした。

ビル群には結構人が残っていると思う。
結局互換機って、ラストダンサーだけ持っている特殊兵装とかないから、ものすごく戦闘シーンが書きにくかったです。
あと旗艦以外の艦艇はずっと基地防衛していました。…存在を忘れていたわけではないですヨ。

さて、たぶんRタイパー諸兄なら、すでに想像がついているとおもいますが、
Side:Bは‘彼’の話です。



[21751] 16 沈む夕日 Side:B
Name: ヒナヒナ◆2a9fd0bf ID:ec2c350f
Date: 2011/01/04 21:01
・沈む夕日 Side:B


とうとう、戻ってきた…
ワタシが待ち望んだ地球
帰るべき故郷
 

地球は以前と変わらない人懐っこさでワタシを迎えてくれる
地上に届く陽の光は適度にやさしい
波音も気持ちを落ち着けさせてくれる
だけど…
ここに居るのはワタシを歓迎してくれる者たちだけではないようだ


______________________________________


ここに来るまでの道中は大変だった
同胞であるはずの地球の軍勢
それが何故かワタシの邪魔をしてきたのだ


銃口を向けるのであれば
それは敵である
敵は殲滅しなければならない
ワタシの行く先々に敵は現れた
まるでワタシの帰還を拒むように
ワタシはそのすべてを撃破し戻ってきた


久しぶりの地球は全てが黄昏色に染まっている
もう少し
あそこにはワタシの望んだ光景が待っている


ビルに燈る文明の光
ワタシが旅立った基地
ワタシがそこに凱旋しようとしたそのとき
また邪魔をするものが現れた
しかもワタシが帰るべき居場所に陣取っている


敵だ
ワタシは一際大きい赤い戦艦を睨んだ
敵を倒してワタシは帰るのだ


ワタシはジェイド・ロス
地球からバイド帝星に遠征し
任務を果たして故郷たる地球に帰還する
誰にも邪魔はさせない


さあ、いこうか…


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ワタシは赤い戦艦から故郷を取り戻そうと進んでいた
足元が騒がしい
よく見ると水上艦が少し集まっている
こちらに向かって砲撃を打ってくる
銃口を向けるならそれは敵だ


小型機で十分と思ったが
うっとおしくも粘る
ワタシは艦艇を動員して衝撃波で押しつぶす
1隻
2隻
3隻…
敵はすべて消えた
これでよし


ワタシは水上に留まり小型機部隊を進める
敵は卑劣にもワタシの帰る場所を盾にしているようだ
ジャミング機能を持ったフォースを先頭に立て
ゆっくりと戦闘機をすすめる
立て篭もるなら炙り出せばいい…


あの機体は下方への攻撃に特化している
ジャミングで隠蔽しつつ展開すれば
隠れ潜む敵軍を一方的に攻撃できるだろう


小型機が発見された
少し早い
部隊の展開が終わっていない
ワタシはエネルギーの雨を降らせた
戦闘は優位に進んでいるようだ


______________________________________


ジャミング部隊に状況報告を要求
…連絡不能
ジャミング部隊が討たれたらしい
先ほど過剰とも思えるような攻撃が
広域に展開された


敵に対する評価を改める
彼らは闘争本能にかられた強大な敵だ
我が故郷地球のために殲滅しなくては


ワタシは即座に艦艇から新たに艦載機を送り出す
フォースを装備した主力機だ
敵が混乱しているうちに
ここで一気に押しつぶす


_______________________________________



ワタシは違和感を感じた
喪失感と言うのだろうか
よく見るとワタシの知らないR機がいる
そのR機はワタシの艦隊の小型機からフォースを奪っていた
しかしそのR機の装備したフォースは
いつの間にかグロテスクな肉片の付いたフォースに変わっていた
どういうことだろうか?
ともかくワタシはそのR機から非常に強い敵意を感じた


そのR機は我が隊の小型機を次々に落としてゆく
敵本隊も動き出した
どうやら敵が勢いに乗ってしまったようだ
ここまで来たのに…
しかし負けては意味が無い
一旦小型機を引いて様子を見るべきだ


____________________________________


私は巡航艦をビル街のこちら側に伏せた
ビル街は進行の邪魔であるが
我々の帰るべき場所を破壊するわけにはいかない
ビルのこちら側から攻撃を行う


敵の攻撃が落ち着いた
我が隊の小型機は全滅したようだ
敵はこちらに出てくるだろう
ビルを超えたときが勝負だ


_______________________________________


敵はビル街に引きこもって出てこない
邪魔な亜空間機を亜空間バスターで始末したせいで
警戒されているようだ


その後一機だけデコイが顔を出したが
それっきり動きが無い
小型機などの修復を進められるので
悪いことばかりではないが…


!!!


光の束が艦艇に突き刺さり爆発
伏せておいた艦艇が2隻とも沈んだ
何があった


ビルが
ワタシの街が崩れていくのが見える
その向こうから現れたのは敵のR機だった
彼らが撃ったのか!?

ワタシは混乱する
ここは彼らの街ではないのか
なぜ自分達の街を壊すのか


彼らにとってここは守るべき場所ではないということか
街をまもることよりワタシを攻撃することを優先するのか
ワタシは怒りを感じた


巡航艦に攻撃をさせた
あの敵を殲滅するのだ


______________________________________


敵は巡航艦も突破してきた
しかし敵R機はもはやほとんど機能しないようだ
ワタシは敵を睨む


ワタシの前には敵の旗艦
あの赤い戦艦だ
とうとう前に出てきた
ワタシと一騎打ちということだろうか
しかし指揮官が一騎打ちを望むわけにはいかない
艦載機の小型機を先行させる


敵もR機を出してきて上空で戦闘を開始した
図らずも一騎打ちになってしまったようだが
敵はワタシの艦首砲を狙っているようだ
戦艦の艦首砲でワタシの艦首砲を打ち抜くつもりだろう
戦艦の脅威は艦首砲だが…
敵艦が旗艦であるなら戦闘指揮所を狙うのもいい
指揮所は艦内部にあり装甲に守られている


しかし
もっとも堅牢な最外壁を艦首砲で破壊できれば
あとは通常攻撃手段で破壊可能だ
目標は敵艦戦闘指揮所
艦首砲はすでにいつでも発射できる
もう少し近づいて
もう少し…


発射


ワタシも敵艦も同時に艦首砲を発射した
敵の艦首砲はまっすぐに
ワタシの艦首砲へと伸びる


ワタシの発射した艦主砲
フラガラッハ砲は射程半ばで二股割れて
上下2本のエネルギー柱に変化する
片方は艦前面に向かう


衝撃


私はかなりの衝撃に揺さぶられた
ようやく敵艦首砲の余波が収まり見てみると
フラガラッハ砲が半ばから消えていた
もはや修復しなければ使い物にはならないだろう


敵は前面装甲が半ばまで破壊されていた
あとはあの箇所をミサイル。レーザーで穿つだけ
戦闘指揮所さえ落とせば指揮系統は混乱するだろう


接近し敵をミサイルの射程に捉える
発射
さすがに初撃はすべて迎撃される
しかしワタシはこの間も前進している
敵がレーザーの射程に入った
これで終わりだ


!!!


何が起こった
後ろから衝撃を受けた後ろに神経を向けると
衝撃の原因は濃灰色の戦艦テュール級が放った艦首砲だった
かつてはワタシの乗艦であったテュール級だが
この戦艦は目の前の赤い戦艦の仲間らしい


挟まれたか
ならば進むべき道はひとつ
我が故郷へ向けて進路をとる


しかし敵に時間を与えすぎたらしい
すでに赤い戦艦の艦首に光が…


ワタシが見たのは白い光の束


____________________________________


どれくらい経ったのか
1時間か
1分か
1秒か


情報が流れ込んできて意識を戻すと
ワタシは半ば海に浸かっていた
ワタシはあの赤い戦艦に撃たれ
海に落とされたらしい


水面を覗くとそこには噴煙を上げる赤いバイドの姿
緩慢な動作で周囲を確認するも
周囲にはワタシの艦隊とあの敵の艦隊だけ


…!


―ワタシは理解した

何故、ワタシは地球に帰りたかったのか
何故、同胞達は銃を向けるのか
何故、地球はワタシを拒絶するのか


―私は理解した

私が何であるか
私の艦隊の姿を
私が倒してきた敵の正体を


私の艦隊の生き残りを見る
そこに居たのは共に戦ってきたR機や僚艦ではなかった
バイドだった


私は地球連合軍の提督として任務を果たし
そしてバイドとして地球に帰ってきたのだ
今なら分かる
私が敵として殲滅してきたのは
命を賭して人類を守ろうとした仲間たちだった


私はそっと水面に触れる
波紋が広がり、ワタシの姿をにじませる


思い出した
最期の決戦のあと何があったのか
漆黒の瞳に吸い込まれる船体
バイドに取り込まれていくR機
しだいに変質していく部下達


そして全てを染め上げる琥珀色
バイドに侵蝕される感覚
それはまどろみにも似たとても気持ちの良いものだった


______________________________________


海に浸していたカラダを引き上げた
海水がしたたり落ちてゆく
私は海上で佇んだ


磯の香り
海鳥の声
沈む夕日…


私は故郷の思い出を胸にしまいこむ
地球は人間の星だ
ここに私の居場所はない


しかし、ここまで来たことが無駄とは思わない
私が守りたかった人間の営みを確認できた
それだけで十分ではないか
宇宙は広い
どこか人間のいないワタシ達の居場所を見つければいい


なんとなくわかる
私の意識も
直にバイドの破壊衝動に飲まれて消えるのだろう
ならば私の想いはここに置いていこう
私を止めてくれたあの艦隊
きっと彼らが私の意志を引き継いでくれるだろう


私はワタシとして生きて行こう


私はジェイド・ロス
人類の希望として出征し
バイドに魅入られたモノ…



さあ、行こうか
エーテルの波を越えて
どこまでも




====================================
予定調和の沈む夕日 Side:BYDOでした。

tacticsⅡも沈む夕日が最終面だったら、いっそ爽やかなんですけどね。
ここで終わらせないのがiremクオリティ。(ほめ言葉です)




[21751] 17 提督と新戦力
Name: ヒナヒナ◆2a9fd0bf ID:ec2c350f
Date: 2010/12/17 01:14
・提督と新戦力


艦内が勝利に沸きあがっているなか、レーダー係がいち早くその異変に気が付いた。


「あれ、故障?…! 提督!コンバイラベーラが再び動き出しています。」
「何だって!?総員配置に戻れっ。」


仕留め切れていなかったのか。
海から半身を出して沈黙していた‘彼’は、再び海上に浮上し、静かに佇んでいた。
浮かれあがって持ち場を離れていた乗組員が多く、すぐに戦闘機動に入れない。
R機も一旦ハッチに戻っており、即応できない。


出力が安定しないのか、よろよろと夕闇迫った空へと昇っていく赤い装甲。
バイドが逃げる?ありえない。
やはり、あのバイドは通常のバイドではない。


私が本部に緊急連絡を入れると、第一艦隊の指揮も執って仕留めろと命令された。
とにもかくにも、私は艦を動く状態にし、第一艦隊の残存兵力と合流する。
そして、高高度にまで達していた‘彼’に狙いを付ける。
すでに空は紫がかった夕闇が押し寄せていた。


______________________________________


夕闇に朱が一つと、
それを追いかける紅と白が無数。
宇宙への階段を駆け上っていく。


「データリンク順調です。」
「第一艦隊より発射準備完了。とのことです。」
「ムスペル砲チャージは、後どのくらいだ。」
「後10秒です。」
「全艦隊に通達。目標、コンバイラベーラ。艦首砲の一斉発射用意…」
「撃てぇぇぇぇ!」


白い光の筋が、宵の帳を切り裂く。
そのほとんどは、目的を果たせず大気で減衰して消えていく。
ギリギリ索敵外なので目測による発射しかない。
しかも大気圏内は宇宙空間と違って様々な影響を受ける。
有効射程距離を越えた陽電子砲は、それでも1発が的中した。
しかし、本来の破壊力は見込めず、撃墜には至らない。


私は第2、第3斉射を命じ、数発命中させた。
しかし、コンバイラベーラは陽電子砲の至近弾に翻弄されながらも、宇宙へと逃げ出した。


「提督、コンバイラベーラ完全に索敵外です。」
「逃がしたか。…仕方ない本部に連絡を。」


そして私は目の前に広がる空間を見つめる。
コンバイラベーラが漆黒の宇宙へと吸い込まれていく。
なぜかその後ろ姿に深い悲哀を感じた。
理由は分からないが、私は‘彼’に共感している…。


_______________________________________


私は統合作戦本部からの通信で正式にバイド討伐艦隊の司令官に任命され、
逃げたバイドの追跡と殲滅を命じられた。
実のところ、今回の襲撃で宇宙艦隊はボロボロ。
まともに動ける艦隊は、我々だけだったというのが実情だ。
まともに見えた第一艦隊も戦艦の足回りが駄目になっていて、
増援に駆けつけたニブルヘイム級も地球降下はできるが、地球の脱出は無理だったのだ。


討伐艦隊司令を拝命したとはいえ、R機の損失が酷すぎた。
隊ごと消滅した隊も多い。
私は動くに動けない第一艦隊から、パイロットごとR機隊を引き抜き、戦力の補充を行った。
さすがは精鋭第一艦隊、最新型戦艦ニブルヘイム級だけならず、最新鋭機が多かった。
しかし、ラストダンサーだけは、Team R-TYPEからストップが掛かったため編入できなかった。
地球防衛用であるので、持ち出されては困るとのことだった。


ガルム級駆逐艦ブスカンドは中にいたカトー大佐ごと本部に留めた。
その代わりに第一艦隊からマーナガルム級駆逐艦’モンテプンク’を引っ張ってきた。


______________________________________


現在、我々は地球上空で彼を追跡している。
しかし、レーザー衛星網が展開していたため、進めなくなってしまった。


レーザー衛星システム
地球防衛用に配置された小型のレーザー出力装置が連なったもので、
各出力装置は緩やかに連結しており、それぞれの間はレーザーで遮断されている。
幅の広い網目状に見えるこれらは、衛星軌道上をリング状にとりかこんでおり、
敵の接近を感知して稼動、地球自転軸を軸として回転し、敵来週予測地点に展開する。
穴を開けるには装置を破壊すればいい。


逃げるコンバイラに反応して展開し、今まで彼を足止めしていたのだろう。
問題はその後だ。
バイドに侵蝕されて、我々をも阻んでいる。


「提督、どうしましょう。」
「もちろん、破壊する。」
「え、でも…」
「破壊する。」
「地球連合の防衛兵器を破壊するのは、不味いのではないでしょうか?」
「先ほどビルも倒したし、今更だな。」
「…。」


我々はすぐに追撃に駆り出された。戦艦を係留する暇さえなかった。
特に私はその場での臨時編成とかで本当に忙しかった。
戦闘報告も副官のベラーノ中尉とアッテルベリ中尉に投げたくらいだ。
頭部の怪我も医務室に行く暇がなくてそのままだ。
…血は止ったし、問題ないだろう。
しかも、ここのところ移動中に1時間程度の仮眠しかとっていないので、眠い。
こんな状態なので、ワイアット少尉への返答がそっけなくてもしょうがない。


もともといたR機隊はパイロットが極度の疲労状態で使い物にならない。
新しく第一宇宙艦隊から編入したR機部隊を使うしか無いだろう。
編入させたR機の様子も見ておかないといけないし。
レーザー衛星に穴を開けるまでここに留まることになるな。


「ワイアット少尉。艦艇はこのまま待機。新規R機部隊を発進。レーザー衛星を破壊させよ。」
「了解しました。」
「空母エストレジータを前に出して補給基地代わりとする。護衛に巡航艦モンテプンクをつけろ。
旗艦フィンデルムンド、戦艦エンクエントロスはこの合間も修理を進めよ。」
「はい、各艦に通達します。」


______________________________________


攻撃が始まった。
といっても、レーザー衛星に仕掛けているので、何のレスポンスも無い。
私は新規に加わったR機部隊の働きを見ながら、資料と見比べる。


戦闘機Rwf-9A4 ウェーブマスター
Rwf-9Aアローヘッドの直系ともいえるR機で。純粋に波動砲の威力向上を目指したため、
‘波動を極めた者’と言う意味で、ウェーブマスターと名づけられた。
機体性能は安定しており、改良型のスタンダード波動砲は非常に高い威力となっている。
特殊化が進んだ後期型R機の中においては、目立つ機能は無いが、
アローヘッドから続く信頼のおける技術が使用されており、パイロットからの評価は高い。


中距離支援機Rwf-9DH3 コンサートマスター
シューティングスターから始まった。中長距離狙撃用機体の最終版。
Rwf-9Dシリーズの長距離射撃型波動砲を更に発展させた系列。
チャージ時間をそのままに波動砲の有効射程距離、連続照射時間を延長させることが試みられており、
いずれの機体上部にも大型長砲身のキャノン型波動砲ユニットを搭載している。
R機の中では比較的初期からある系列であるので、
Team R-TYPEにしては、比較的まともな設計思想とネーミングセンスとなっている。


強化戦闘機Rwf-9Asストライクボマー
ウォーヘッド系列の強化型機体。亜空間航行機能を持つ機体。
ウォーヘッドは非常に完成度の高い機体であり、以前から量産機が望まれており、
低コスト量産機であるサンデーストライクを経て、量産機であるストライクボマーが生産された。
波動砲も拡散圧縮波動砲の代わりに、メガ波動砲が装備された。
しかし、配備先である太陽系外周において、ストライクボマー大隊が全滅したため、
機体の見直し、マイナーチェンジが加えられ、正式配備型が完成した。


超高機動機R-11S2ノーチェイサー
トロピカルエンジェルの耐G性能を改良した機体。
耐G機構の改良によって、機体本来の加速度、機動を行えるようになり最高の機動力をもったR機。
市街地で追いつける機体は存在しない。という意味でNo Chaserと名付けられた。
武装面でも変更があり鹵獲弾を装備しており、敵機を鹵獲して自軍の戦力として取り込める。


爆撃機R-9B3 スレイプニル
巡航性能を活かして敵陣深くに進入し、要塞攻撃を行う爆撃機の最新鋭機。
ミサイル武装が充実しているが、波動砲やバルカンは装備しておらず、接近戦には弱い。
戦術核ミサイル バルムンクの正式型を装備している。
R-9Bシリーズの特徴であるバリア弾もより強固になっている。


早期警戒機RE-3 スイートルナ
R-9E系列の早期警戒機の完成版。円盤型のレドームを機体内部装備しているが、
これはこの系列の機体は各種センサー類を詰め込んだため、非常に外部衝撃に弱く、
特にミッドナイトアイの様にレドームを上部に背負う形状であると、
最悪デブリとの軽接触だけで支柱部が破壊されかねないため、機体に埋め込める形を取った。
また、対亜空間機索敵機能として、亜空間ソナーを搭載している。


早期警戒機REAW-2 アンチェインドサイレンス
パラードサイレンスの強化型。
さらに強力なジャミング機能をもった球形レドームを搭載している。
レドームから放たれる欺瞞電波、物質により、敵索敵圏内においてもレーダーに映らない。
まとめて数部隊を隠蔽できるだけのジャミング能力を持つが、
スラスターからの噴射がジャミング機能への障害になるため、加速を最低限にする必要があり、
ジャミング中に機動力が低下する弱点は改良されていない。


どれも強力な後期型R機だ。
しかし、第一艦隊からR機の補充が出来てよかった。
このままでは、格納庫に眠っているアローヘッドを持ち出さなくてはならなかったかもしれない。
とくに索敵機がきてくれたのがうれしい。我が隊でもっとも損害率の高い部隊だ。


________________________________________


戦闘を見ながら、新規R戦闘機の評価をつけていた。
非常に単調な作業だったので、正直指揮する必要が無かったのだ。
バイドに奪われたとはいえ、レーザー網は基本的に進路妨害しかできない。
少なくとも、レーザー衛星システムを突破するまでは出来ることは無い。
だが網の外側にはバイド反応がある。
それに備えて調整しなくては。それまではひたすら…


レーザー衛星に向かって、

ミサイル撃っては壊し。

網の隙間にはまっていたバイドシステムλを潰して。

レーザー撃っては壊し。

隙間にいるセクシーダイナマイト2を潰して。

波動砲を撃っては壊し。

あれ、小型バイドも巻き込んだ。

バルカン撃っては壊し。

あ、またセクシーダイナマイト2だ。




_______________________________________


レーザー衛星を戦艦が通れる大きさまで広げるのは大変だった。
あと、数基レーザー衛星を破壊すれば、向こう側に到達するところまで来た。


「提督、あと衛星を3基破壊すれば、本体が通れる大きさの穴が出来ます。」
「レーザー網の向こう側にバイドが待ち伏せていることが予想される。
全艦攻撃態勢をとるように、最期のレーザー衛星が同時に破壊するぞ。」


‘彼’は非常に戦術・戦略を考えるのが上手い。
とてもバイドとは思えないほどだ。
だからこそ、ここで仕掛けてくるはずだ。
彼ほどの戦上手なら絶対に。
今はレーザー衛星に阻まれて索敵も出来ないが、向こう側に待ち伏せているはず。
我々はこれから衛星の穴という狭路を通過する。
そして、相手は広所に展開している。
相手を撃破するには最高の地形だ。


実際、レーザー衛星網とはトラップだ。
破壊されることが前提なのだ。
レーザー網を全て破壊する事はできないため、侵入者は一部を破壊し通過する。
レーザー衛星システムからの情報で、防衛側は敵が何処から出てくるか分かるため、
防衛側は反対側で待ち伏せできるのだ。


敵の侵攻の遅延と、防御地形の展開。
これがレーザー衛星システムの主な使用方法だ。
これだけで敵を受け止めることは出来ないが、それでも有用だ。
ただ、先のバイド侵攻の際は、
複数個所でバイドが終結していたため、システムで対応できない箇所ができ、
いくつかのポイントではバイドを素通りさせてしまった。
それがあの大侵攻に繋がっている。


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ケルベロスのライトニング波動砲で、衛星を複数まとめて叩き壊す。
紫電が拡散した先を索敵すると、やはりいたのはコンバイラベーラ。
ボルドガングとバイドシステムλをつれており、すでに各々艦首砲や波動砲のチャージが終わっている。
索敵を終えたスイートルナがすぐに後方へ下る。


バイドシステムλの波動砲の射程距離はそこまで怖くはない、
波動砲の変則軌道についても混戦でなければ問題ないだろう。
問題はコンバイラベーラとボルドガングの艦首砲だ。
ともに射程が長く、威力もR機部隊程度なら難なく消し飛ばされるだろう。
デコイで同士討ちを誘うかと思ったが、彼が嵌ってくれるとは思えない。
今回はベルメイトは居ないらしい。亜空間機でまずは敵波動砲のチャージを解除しよう。


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ストライクボマーが亜空間に身を潜めて、進攻する。
他の機体は切れぎれになったレーザー網の陰に潜んでいる。
Sボマーの狙いはコンバイラベーラだ。亜空間から慎重に近づいていく。


ふと私の頭に疑問が浮かぶ。
何故、コンバイラベーラはこちらが突破する前に艦首砲を撃たなかったのか。
あんなに近くで待ち構えていたのに。
レーザー衛星を侵蝕していたら察知できたのではないか。
それに、コンバイラベーラの前面に小型機がいないのが気になる。
これでは丸裸ではないか。本部防衛戦ではこんな無謀な指揮はしなかったはず。


‘彼’とは別のバイドなのか?
…いや、あれは確かに‘彼’だ。
何かが変わったのだろうか。


そこまで考えて、変な考えを振り払うように頭を振る。
…どうやら、私は疲れているらしい。
敵が弱くなるのは歓迎すべきことだ。
戦闘中に何を考えている。目の前のことを処理しよう。


「Sボマー配置に付きました。」
「では始めよう。波動砲で一気にけりをつけるぞ。」


前回の戦闘から、コンバイラベーラの艦首砲のデータはとれている。
コンバイラベーラの艦首砲は一定距離で二股に割れる。
その隙間にさえ入れれば、敵艦首砲の射程内でも回避可能だろう。
ただし、これには一瞬の判断力が問われる。
相手との距離と相手がどこを狙うかを、正確に予測して避けなければならない。
もちろん発射してからでは遅いので、砲塔の向きなどから予測する。


「Sボマー通常空間に戻ります。」
「コンバイラベーラ艦首砲、発射体勢に入ります。」
「Sボマー、波動砲発射。」


圧縮された光の束はコンバイラベーラのコアに突き進む。
コンバイラベーラの艦首砲も、一拍送れて火を噴き、R機を排除しようとする。
爆煙。


そこにあったのは、起動を停止させたコンバイラベーラと無傷のSボマーであった。


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おかしい、こんなにあっさりと。
私は何か見落としていないか。


「提督、コンバイラベーラが再起動します。」
「何、近場のR機を!」
「コンバイラベーラ離脱。追いつけません。」
「擬態して、我々を撒いたというのか。」


コンバイラベーラは不気味な光を放つと再起動し、飛び去ってしまった。
仮死を演出して我々を騙し、切り抜けたのだろうか。
追撃しなければならないが、はたして、追いつけるか?




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前回の切り方が微妙だったので、
今回は「沈む夕日」ラスト+次の話という変な構成となりました。

このレーザー衛星はLeoの一面に出てくるやつですね。
Leoを活躍させてあげようかと思ったのですが、新規機体の紹介祭りになりました。
設定はいつものごとく、妄想で出来ています。

ここ数話、真面目な文章を書いていたから、ギャグ成分が切れてきて禁断症状が。



[21751] 18 提督と開放同盟艦隊
Name: ヒナヒナ◆2a9fd0bf ID:ec2c350f
Date: 2010/12/21 23:18
・提督と開放同盟艦隊


レーザー衛星システムを突破した後、我々は索敵しながら、
あのコンバイラベーラの向った方角へ進路を取っていた。
臨戦態勢は解除し、私は3日ぶりにまとまった睡眠を取った。
というよりも、私の体調を心配したベラーノ中尉らに無理やり寝かされたのだが。
頭の怪我も、3針くらい縫う程度の軽いものだった。


月の軌道に近づいたところで連絡があった。
月面に太陽系開放同盟の残党が集結しているというのだ。


もちろん、他の艦隊に任せて、素通りする選択肢はある。
しかし、バイドと開放同盟に挟撃されるのは不味い。
これ以上邪魔立てをするのなら、ここで叩き潰しておくのも手だ。
近くには月面基地ムーンベースがある。これからに備えて補給を受けよう。
私は月面に進路をとった。


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急行した月面には、基地建設システムがあった。
しかし、今回の作戦は基地システムの破壊ではない。
敵旗艦を撃破すること。
道中の作戦会議でそのような方針を取る事を決めた。


「太陽系解放同盟の残党が月面にいるのですか。」
「そうだ、クロフォード中尉。我々は解放同盟の艦隊を討つ。」
「しかし提督、我々はバイド討伐艦隊となったはずです。追撃任務を優先すべきではないでしょうか。」
「バイド追撃に対して優先度の低い任務ではあるが、ここで放置した場合、バイド追撃中に挟撃にあう恐れがある。」
「先にご退場願う訳ですか。」
「そうだ、ラウ中尉。」
「あの…提督、休戦は出来ないのでしょうか。」
「リョータ君、解放同盟ってもはやテロ組織に近いから無理じゃない?」


やはりというか、グランゼーラ軍所属の副官達は太陽系解放同盟に思うところがあるようだ。
地球連合所属の副官達は、空気を読んで成り行きを見守っている。



「今までの経緯を省みて、すぐさま休戦を提案する訳にもいかない。
相手も地球連合とグランゼーラが、今回のバイドの大規模襲撃で弱っていることが分かっている。
休戦するなら一回叩きのめして首輪をつけてからだ。」


すでに解放同盟は組織として崩壊しつつある。
ワープ空間での事故で総司令官のキースン大将を欠いてから、指導者が居なくなったのだ。
地球圏に潜伏している残党は小艦隊規模でバラバラに抵抗しているが、各個撃破された。
この解放同盟の艦隊も、艦隊司令を頂点に活動しているのだろう。
司令塔であり旗艦を潰せばこの戦いも終わる。
こんなところで無駄な時間はかけられない。


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「さて、これより太陽系開放同盟討伐戦を行う。
我々は特別遠征艦隊からバイト討伐艦隊に名称が変更され、人員の入れ替わりもあったが、
バイドの侵攻中に戦力を拡大しようとする開放同盟を放置しておくことは出来ない。
これより、月面にいる太陽系開放同盟残党を討伐する。」


艦隊の隊員たちも反対意見は無いようだ。
さて、開放同盟の相手は今回で終わりにしたいものだ。


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「提督、布陣が終わりました。」


敵は月面にあるクレーターを加工し、地下部に基地システムを設置したらしい。
非常にめんどうな位置にある。


「さて、まずは早期警戒機を出そう。」


太陽系開放同盟はグランゼーラ革命軍から分かれた分流だ。
母体であるグランゼーラさえも食らうようになってしまったが、
使用している兵器は、基本的にグランゼーラのものだ。
グランゼーラでは戦艦が使用されていない。
これは純粋に戦艦製造に関する技術蓄積がなかったのと、
グランゼーラの英雄、ハルバー提督が得意とした、爆撃機を艦載してに対艦隊攻撃戦術が、
そのままグランゼーラの兵器開発の方針になったからだ。
艦艇に求められるのは艦載機能、索敵機能である。と言うことだ。
その戦略思想の結晶がヤールンサクサ級、アングルボダ級などの宇宙空母だ。


艦隊規模の集団に命令を下すには、それなりの通信能力、情報処理能力が必要だ。
巡航艦、駆逐艦の旗艦が無いわけではないが、通信機能がよろしくない。
つまり、敵旗艦は宇宙空母であると予想される。
ついでに言うと、宇宙空母の巨体がこの距離で見えないのだから、
光学迷彩も持った、アングルボダ級空母だろう。


「基地システムはどうしますか?」
「穴から出てくるまでは、無視してよい。
所詮仮宿だし、恒久的に使える基地ではない。母艦を潰せば、降伏せざるをえないさ。
さあ、ここで立ち止っている暇は無い。速攻で旗艦を叩くぞ。」


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早期警戒機スイートルナが月面すれすれを索敵しながら、
敵基地システムがあるであろう場所へと接近する。しかし、月面の穴には入らない。
今回スイートルナの役割は、敵基地システムを警戒することにあるからだ。
敵旗艦は見つけられたらラッキー程度だ。
陽電子砲だけは怖いので、早急に処理する必要がある。
具体的には陽電子砲ユニットなどが作られているかどうかを確認して、味方に警告すること。
戦闘が起こったらすぐに撤退させる。防御性能が低すぎるからだ。


早期警戒機スイートルナは、初代早期警戒機ミッドナイトアイから数えて、3世代目にあたる。
いわゆる後期型のR機だが、あの紙装甲は引き継いでいる。
これには多くのパイロットが意見書を提出したのだが…

“早期警戒機は精密機器を大量に積んでいるので、装甲を強化する必要性が薄い。
どのみち、衝撃を受ければ精密機器は破壊され、そこに含まれる情報は失われる。”

というのが回答だった。
パイロットの生存率に一切興味が無いあたり、さすがTeam R-TYPEと言わざるを得ない。


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「提督、後続R機隊を発進させますか。」
「ああ、敵機と遭遇したら反撃だ。」
「威力偵察ということですね。」
「そうだ、クロフォード中尉。」


敵旗艦はおそらく、アングルボダ級空母。ジャミング機能を備えており索敵するのは難しい。
策敵が難しいなら、向こうからお出まし願えばいい。
アングルボダ級空母は、自衛武装に乏しく、防衛には艦載機を出さなくてはならない。
R機で接近すれば、あちらも艦載機を出してくるだろう。
つまり敵R機が来た方向に敵旗艦アングルボダ級がいることになる。


「提督、早期警戒機が敵基地システムを発見しました。」


そっちが先か。さて、どの程度基地を構築しているかな。
基地システムは、意外と継続使用時間が短い。
敵を察知してからコアを起動するので、開戦時から基地が‘育っている’ことは少ない。


「基地システムは月面の穴の内部にあります。穴の出口は2箇所。
我々の陣に近い横穴と、上部に空いている縦穴です。
横穴はせまくR機隊が一隊通れるくらい、縦穴は小型艦艇が入れる程度です。」
「ユニットはどの程度か?」
「はい、ミサイルユニットとレーダーユニットが一基ずつ。後は連結ユニットです。」
「輸送艦は動けるな?」
「はい、投入可能です。機知システムのある穴に投入されるのですか?」
「いや、欲しいのは蓋だ。」


クロフォード中尉が少し眉を寄せて、怪訝な顔をする。
アッテルベリ中尉ほどでは無いが、表情が分かりにくい。
さて、輸送艦で近いのは…リャキルナか。


「クロフォード中尉、輸送艦リャキルナを縦穴に接近させよ。ルミルナも後続で続け。」
「了解しました。提督、蓋とは?」
「蓋はもちろん中身がこぼれないようにするものさ。…デコイをこのポイントに出せ。」
「提督、その位置では敵の索敵圏内です。デコイであると察知されてしまいますが。」
「問題ない。敵はデコイと分かっていようと、破壊するしかないのだから。」


私は縦穴の上部に輸送艦をすすめると、デコイを出すように命令する。
ある程度の耐久力を持ったデコイが、縦穴を塞いだ。


「敵の基地システムの自由を奪うためですか。」
「即効で決めるなら、基地システムを相手取る必要は無い。ただ邪魔されなければいい。」
「ルミルナを後ろに配置したのは予備ですか。」
「敵の火力であれば、すぐに破られるからな。輸送艦2機と、POWアーマー改、
後ナルキッソスが破壊されるまでの猶予がある。あとはアングルボダを索敵するだけだ。」


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「提督、R機体が敵機と遭遇しました。ダイダロスタイプの亜空間機です。」
「R機に黙らせろ。あとスイートルナに亜空間ソナーで探らせよ。亜空間機…何処から来た。」
「了解しました。ダイダロスタイプは月面の内部から接触しました。」
「それでは敵旗艦の位置は分からんな。しかし、潰せば次が出てくるはず。」


ディスプレイには戦場の拡大画像が映っている。
軌道戦闘機ダイダロスはレッドポッドと言われる半自律兵器を伴っていたが、
今画面を横切ったのは良く似ているが、緑色に発光するポッドを伴っていた。
さしずめグリーンポッドといったところか。
「あれは…カグヤでしょうか。」

軌道戦闘機OF-5 カグヤ
OF-1系列の機体で、半自律兵器グリーンポッドを装備した軌道戦闘機。
ポッドがバルカン砲の射程が伸び、より柔軟な戦闘が可能になった機体。
ポッドシュートも健在で、長距離の掃討に向く。
カグヤとは東洋の神話から来ているらしいが、なんでもグリーンポッドを竹に見立てたらしい。


さてグリーンポッドの性能が上がっており、少々苦戦しているが、
カグヤは2機しか居ない。亜空間ソナー探査しても近場にはいないようだ。


「提督、輸送艦デコイが破壊されました。ルミルナのデコイを出しますか。」
「そうしてくれ。カグヤとの交戦部隊を残してR機部隊は前進させろ。」
「了解しました。」


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「提督、敵機と遭遇。スレイプニルです。」
「本命か。爆撃機か全機出てくる前にけりを付けたいが。」
「ミサイルを闇雲に撃ってもバリア弾で受け止められるでしょう。
あの数では波動砲でも足りないかもしれません。」
「ケルベロスを前へ。」
「ライトニング波動砲ですか?提督、索敵されていないと誘導性能発揮できません。」
「ライトニング波動砲を誘導装置を切って打たせるんだ。あれには拡散する性質が有るから。当たるはず。」
「しかし、誘導なしで拡散させると、威力が下ります。
スレイプニルを撃破するには至らないと思います。」
「撃破する必要は無い。索敵代わりだ。波動砲が当たれば敵旗艦の位置が分かる。
誘導装置を切るのは、誘導すると波動砲がスレイプニルにすべて向ってしまうからだ。」
「分かりました。」


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黒いR機からエネルギーが放たれる。
いつもより細かい光に分かれたライトニング波動砲は、スレイプニルを小破させつつ進む。
そして、スレイプニルの群の奥に波動砲がたどり着いたときに、空間が歪んで見えた。
突然表れたのは、黒い円筒状の巨体と3つの回るリング。アングルボダ級だ。


「提督、敵空母を発見しました。アングルボダ級です。」
「あれが旗艦だな。R機全機波動砲発射準備、スレイプニルは邪魔なのだけ落とせ。」


敵スレイプニルも黙ってやらせてはくれない、
ライトニング波動砲のお礼とばかりに特大のミサイルをプレゼントしてくれる。
核ミサイル‘バルムンク’だ。今までのより大型化している…あれを貰うのは不味いな。


ノーチェイサーがロックオンレーザーでバルムンクの推進部を狙い撃ち、沈黙させる。
それでも足りないので、POWアーマー改のデコイを爆破して、衝撃で軌道をそらす。
バルムンクも逸れたが、デコイ射出から爆破まで時間がなかったので、POW改も中破している。


他のR機もこの衝撃で射線をずらされ、アングルボダ級への直撃はなかった。
しかし、リング状のR機射出口が2基いかれたらしく、動きを止めている。
巨大な本体にダメージを入れるより、あれを破壊したほうが早いか。


「アングルボダ級のR機射出口を破壊せよ。」


長射程を誇るコンサートマスターが狙いを付ける。
周囲では味方のスレイプニルがバリア弾を張って防御する。
発射。少し着弾がずれているが、その長い照射時間を生かして修正。リングを切り裂く。
中にあったR機が誘爆したのか、リング中から崩壊する。
これでアングルボダは空母としての機能を喪失した。あとは周りのスレイプニルを落とすだけ。


「提督、基地システム、輸送艦デコイ破られました。
ナルキッソスのデコイを当てていますが、直に突破されます。」
「慌てるな。蓋が取れても基地システムが顔を出すまでは暫く掛かる。スレイプニル掃討を。」
「了解しました。」


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全機出撃できなかった敵スレイプニルは、バルムンクこそ脅威だが、
波動砲やフォースの前にはなすすべが無い。
アングルボダ級から補給機のPOWを出し損ねたのもあり、
フォースに食いつかれ、波動砲に撃たれてスレイプニルは一機一機落ちていった。


敵旗艦は丸裸となった。


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敵旗艦のアングルボダ級は反撃のすべを失って、波動砲をチャージしたR機に囲まれている。
さて、基地システムが暴れださない内に降伏通知をだすか。


「クロフォード中尉、降伏を呼び掛ける。敵旗艦に通信を開け。」
「はい。」


ディスプレイに、40代前半の大柄な男が映った。
すでに敵意丸出しの表情だ。
私は誠実そうな顔をして名乗り、降伏を受け入れるかどうかを尋ねた。

『地球連合に降伏?本部までバイドに攻め入られた地球連合が何を言っている。
その無能な地球連合政府に代わって、我々が人類をまとめようというのだ。』

艦首砲撃っても文句言われないだろうコレ。
あと、うちは地球連合艦隊でなくて混成艦隊だ。
この現実目の見えない、アホ司令とは話すだけ無駄だな。
後ろに回した手で‘発射準備’の合図をクロフォード中尉に送る。
あとは、ほんの少し合図を送るだけでミサイル、レーザーがあの空母に突き刺さるだろう。


「我々の任務はバイド追撃だ。貴官の政治論を聞いている暇はない。
何か勘違いしているようだが、降伏するか、しないのか。私が聞いているのはそれだけだ。」

『我々、太陽系解放同盟は地球連合に降伏など…』


パンッ。


彼は最後まで言えなかった。
銃声が彼の声を遮り、彼の巨体はディスプレイの画面外にフェードアウトした。
私は突然の事態に驚くが、いわゆる、弾は前からだけとは限らない。というやつかと思う。
ディスプレイの向こうは騒然としている。
司令官に駆け寄る者、犯人の居るらしき方向に詰め寄る者、とりあえず唖然としている者。


徹底抗戦派の司令官が死亡したなら、降伏が受け入れるかもしれないので、
私はとりあえず通信をつないだまま、気配を消して待っていた。
「少尉、何をしている!」とか、「脈ありません。」とか、色々聞こえてくる。
たぶん通信が繋ぎっぱなしなことに気付いてないな。
しばらくして、事態を収拾した男がディスプレイに映る。


「司令は戦死されました。我々太陽系解放同盟第2艦隊は貴艦隊に降伏を申し入れます。」


_______________________________________


大勢の解放同盟の捕虜をとらえた。やはりここが彼らの最後の砦であったらしい。
私が捕虜の確認をしていると、先ほど降伏を受け入れた士官が発言の許可を求めてきた。


「発言を許していただきたいのですが。」
「許可する。氏名と階級を」
「はい、太陽系解放同盟第2艦隊旗艦キジャコイジュ艦長のディア・ブラーダ大佐です。」
「貴官があのアングルボダ級の艦長か。」
「はい、艦隊司令が戦死したため、小官がこの場での最上位者になります。」
「…戦死ね。で、処分はどうすると?」
「司令官の戦死は、旗艦艦長であった小官に全責任があります。
また、この戦闘での責も最上位者である小官が負うべきと考えます。」


ブラーダ大佐は体格が良く、誠実そうな目と意志の強そうな口元をしている。
私が言った処分とは、司令官を撃った下手人はどうするのか。と言う意味だ。
ちなみに、アホ司令を撃った下手人は分かっている。
近くに、明らかに真っ蒼な顔して震えている若い男がいるからだ。
その男の様子を見るに被害を減らすために、
というよりは自分が死にたくないから、降伏を蹴りそうだった司令官を撃ったのだろう。
褒められる動機ではないが、結果として彼の行動がこちらに都合のよいものとなったから、知らないことにしておいてやろう。


「その件に関しては、地球連合軍司令本部が判断する。」
「我々は…」


彼の発言は、捕虜達を解放してくれるならバイド討伐に協力すると言うものだった。
一応、特別遠征艦隊から各種権限は引き継いでいるので、
私の判断一つでどうにかなるのだけれど、ブラーダ大佐はともかく、他はな…。
まともなのもいるんだろうが、司令官アホだったし、司令部員は自己中だし…
私の疑念を感じたのか。ブラーダ大佐が再び言葉を重ねる。


「艦隊の行動については、私が責任を取ります。」


いや、あんた責任取りきれんだろう。命の大安売りだな。
まあ、悪いことばかりではない。味方が増えればこちらが被るバイドの攻撃も薄くなる。
戦後処理についても、このままではテロ組織として全員処罰されかねないが、
いつバイドが来るか分からないご時勢で、戦闘経験のある人員は貴重だ。
下っ端は上にくっついていっただけだろうし、まとまらなければ害は無いだろう。
私は太陽系解放同盟艦隊のバイド討伐参加を許可した。




=====================================
核ミサイルってたぶん誘爆しないので、月面には不発状態のバルムンクがうようよと…ヒイ

ここは解放同盟と手を組むルートです。
ぶっちゃけ、後編ラスト一話前までは消化試合な気がしなくとも無い…。
面白みの無い戦闘はさくさく飛ばします。

番外編を書こうかと思っているのですが、謎が謎を呼ぶ内容なので、どうしたものか…



[21751] 19 提督と共同戦線
Name: ヒナヒナ◆2a9fd0bf ID:ec2c350f
Date: 2010/12/24 01:05
・提督と共同戦線


月面基地ムーンベースで補給を受け、戦力をさらに強化した。
GZLS-06 ヒルディスヴィーニ級強襲揚陸艦 ‘プルルナス’を拝領して、
OF-3ガルーダ、Rwf-9WB ハッピーデイズを手に入れた。

太陽系開放同盟は艦の修理や、バルムンクや最低限の物資は補給できたが、
R機の喪失分は無理だった。
私からも、基地司令に口ぞえはしたが、ただでさえ他の艦隊の補給で大変なのに、
太陽系開放同盟にやる物資は無いというのが、本心らしい。
まあ、基地司令の言うことももっともなので、そこらへんは妥協しておいた。
まだ、彼らが完全にこちらについたとは言い切れない。
ただ、けが人に関しては収容するようにお願いした。


______________________________________


「こちら、太陽系開放同盟第二艦隊キジャコイジュ、配置に付きました。」


我々は今、アステロイドベルトに艦隊を布陣している。
ここにAクラスバイドの反応があったからだ。

我々というのは、私のバイド討伐艦隊と、ブラーダ提督の太陽系開放同盟第二艦隊だ。

現在、太陽系開放同盟艦隊はアングルボダ級空母キジャコイジュを旗艦とする艦隊で、
ディア・ブラーダ大佐が艦隊司令兼、旗艦艦長となっている。
ブラーダ提督…本来なら艦隊司令には、最低、少将の位をもって当たる職であるが、
太陽系開放同盟に参加している士官を、勝手に昇進させるわけには行かない。


我々の目の前には、バイドの大型生命要塞が何体も列を作っている。
他のバイドと合流したのか大きく強力な群れになっている。
その中には、目的のコンバイラベーラもいる。


太陽系解放同盟の艦隊はこのバイドを見てもひるむことなく、士気が高いように見える。
しかし、私はそれが虚勢かもしれないと考えている。
捨て駒にされる恐怖、逃亡すれば追っ手が掛かる。
しかも、本来の艦隊司令は自分達で殺した。裁かれるには十分な罪状だ。
後が無い。その考えが、彼らの蛮勇を誘っているのではないか。
…あまり、期待はしないでおこう。


_____________________________________


私はディスプレイのバイドの群を眺めていた。
正確には、あのコンバイラベーラを。


ザザ、という砂嵐がまた頭に響く。


―ひ……をは…………―


また、バイドの精神攻撃か。
前も、あのバイドとあったときに起きたな。何なんだ。
頭を振って、奇妙な感覚を追い払う。


「さあ、我々も出るぞ。目標コンバイラベーラ。下方はブラーダ提督に任せるとしよう。」


敵はあのコンバイラベーラだ。
そもそも、‘彼’の指揮能力がなければ、ここまで押されることもなかった。
‘彼’をくだせば、後は烏合の衆…とはいかなくても、小型バイドならばやりやすい。
ここは速攻で攻めよう。正直、友軍に不安があるから、長期戦はしたくない。
友軍総崩れとかになりかねないし。
どうやら、戦線が長い分、旗艦前に居るバイドの層は薄い。
防御を固められない内に一気に波動砲を打ち込む。


今回の作戦は目標コンバイラベーラを撃破する事を第一として、
第一~第六までの段階に分かれている。

第一段階は、敵の前進を抑え、波動砲を持つR機部隊を展開する。
第二段階は、波動砲を持って敵小型バイドの戦列に穴を穿ち、目標までの‘道’を作る。
第三段階は、道の両サイドから攻めてくるバイドを抑えて、道を拡張・維持する。
第四段階は、決戦戦力を運搬する強襲揚陸艦・巡航艦を目標近くまで進出させる。
第五段階は、決戦戦力による目標の撃破だ。
第六段階は、戦艦の支援による強襲揚陸艦・巡航艦の離脱。乱戦の回避。

すべてが上手くいくとは限らないし、不確定要素の解放同盟艦隊もいる。
大変な戦闘になりそうだ。


________________________________________


アンチェインドサイレンスに寄り添うように、R機部隊が並んで波動砲をチャージしている。
ジャミング圏内で波動砲をチャージしているのだ。
波動砲を装備していないノーチェイサーやナルキッソス、スレイプニルなどは、
小型バイドをの攻勢を受け流している。
戦艦エンクエントロス、旗艦フィンデルムンドも手数を生かして、小型バイドの掃討を行っている。
そろそろだな。


ちらりと横を見ると、友軍のアングルボダ級が見える。
戦列が乱れて、少しバイドが本体近くまで近寄り過ぎている気はするが、
バイドを押し返す事はできているし、問題ないだろう。
むしろ戦線が近いほうが、バルムンクミサイルを輸送するPOWの負担が減って、攻撃効率が上がるかもしれない。
ブラーダ提督もなんとかやっているようだ。
彼らに崩れられると、これから奥に食い込む我々は、敵陣で孤立することになる。
逆もまた正しい、バイドに囲まれている限り、彼らも我々に崩れられるのは困るだろう。
バイドの真っただ中で裏切る事は無いだろうが、潰走することは考えられる。
早めに決着をつけないとならないな。


_______________________________________


「提督、波動砲チャージが終わりました。」
「よし、みんな良く耐えたな。第一段階終了、第二段階にうつる。R機前へ。」

我々は前進を開始する。
後方に位置する、我が艦隊のアングルボダ級空母エストレジータからR機が飛立つ。
アングルボダ級のリングが回転し、R機射出口から次々とR機が出てくる。
まず先陣を切ったのは、ムーンベースで拝領した実験機、ハッピーデイズだ。


要撃機Rwf-9WB ハッピーデイズ
特殊な波動砲の試験機である。Rwf-9Wシリーズの後継機。
次期主力機として挙がっているRwf-9Wワイズマンの誘導波動砲は非常に強力であるが、
インターフェイスを改良してなお、パイロットの精神的負担が大きく、戦闘継続時間が短いため、
次期主力機として反対する意見が大きかった。
それに対して、パイロットにあまり負担の掛からないことと、
バイド掃討に有効な特殊波動砲という2項を盛り込んだR機として、作られた試作機だ。
複数の敵を巻き込む用途で、分裂波動砲を採用している。
Team R-TYPEが試験的に作った機体であるため、データが取りやすい試験管コックピットが採用されている。


ハッピーデイズは敵集団の中に入り込んで分裂波動砲を放つ。
バイドに当たった瞬間にバウンドするように二股に分かれていく。
小型バイドは波動砲が当たれば破壊される。
3~4回バウンドした波動砲は周囲のバイドシステムβ、λを巻き込んで消えた。
機体名と試験管コックピットだったので、偏見があったが意外と使いやすい機体かもしれない。


分裂波動砲は射程の末端では威力が落ちるため、堅牢なバイドフォースは残り、
そのままの速度を維持してこちらに向かってくる。
ハッピーデイズ各機は装備していたスタンダードフォースHをシュートし、バイドフォースにぶつける。
エネルギーが高まった状態で、互いを削り合うフォース。勝ったのはSフォースHだった。
分裂波動砲のダメージが蓄積されていた分が明暗を分けたようだ。


あとから続くドミニオンズ隊に進路を譲るハッピーデイズ。
金色の機体が岩礁の間で光る。ドミニオンズは軽装甲ゆえのスピードでバイドの次戦力に迫る。
小岩石はフレイムフォースで破壊し、単独で漂っているバイドは、レーザーで焼いて進む。
Rsf-9Sk1系列の装備する火炎波動砲は広域をカバーでき、しかも生体系のバイドには非常に有効だ。
ドミニオンズは集まってきたクロークローを焼き払う。
火炎波動砲が回り込むように、岩礁の隙間にいるバイド達を舐める。
赤熱した岩礁の隙間から現れたのはクロークローではなく、メルトクラフト…擬態だ。
何機か出てくる。生体系バイドでないため効果が薄かったらしい。
しかし、正体を現したメルトクラフトは精々突撃してくるしか能が無い、
ドミニオンズの性能ならば回避してからレーザーを叩きこむことなど造作もないことだ。


「提督、第二段階完了しました。第三段階に移行しますか?」
「ああ、機体の選定は?」
「現戦力では、Leo、ガルーダ、ダイダロス、ラグナロック、ウェーヴマスター、ストライクボマー各隊が待機しています。」
「Leo、ガルーダ、ダイダロス、ストライクボマーを当てる。旗艦は待機。第三段階完了と同時にマーナガルム級巡航艦モンテプンクと強襲揚陸艦プルルナスは前進させる。用意を。」
「了解しました。」
「…解放同盟艦隊はどうだ。」
「押され気味です。戦線が不安定になってきていますが、今のところ踏みとどまっています。」
「そうか。」


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Leo、ガルーダ、ダイダロスはハッピーデイズ、ドミニオンズの切り開いた道を広げる。
面的制圧力を生かして、周りから押し寄せてくるバイドを押し返す役だ。
ダイダロス隊、ガルーダ隊はそれぞれチャージ済みポッドをシュートする。
緑色に発光する半自律兵器は、砲弾をばら撒きながら機体を離れバイドを掃討する。
ストライクボマーも爆雷を投下し、圧力をかけてくるバイドを掃討。
Sボマー、ガルーダ、ダイダロスはそのまま残り、亜空間に突入。
これで次の波が来ても少しは抑えられる。


コンサートマスターは周囲から掻い潜ってきた小型バイド、を後方から狙い打つ。
長大な波動砲の射線はクロークローやアーヴァングを巻き込んだ。
あとには、クローフォースやスケイルフォースなどのバイドフォースの残骸が残るが、
フォースは機動力が低いのでとりあえず放置する。


_______________________________________


「提督、目標までの道が開けました。R機消耗率想定内です。」
「よし、第四段階へ。モンテプンク、プルルナス突入せよ。」
「了解。第四段階に移行します。」
「旗艦フィンデルムンド、戦艦エンクエントロスは、微速前進。突入を援護する。」


R機のこじ開けた花道を、決戦戦力を艦載したマーナガルム級巡航艦モンテプンクと、
ヒルディスヴィーニ級強襲揚陸艦プルルナスが進む。
旗艦フィンデレムンド、エンクエントロスも長大な射程を持って弾幕を張って援護する。

巡航艦と強襲揚陸艦は順調に進んでゆく。
不安なのはむしろ友軍だ。先ほどから押されている。大丈夫か?


_______________________________________


「提督、第四段階完了です。コンバイラベーラ射程の外に巡航艦、強襲揚陸艦配置しました。」
「第五段階に移行せよ。目標は動かないままか?」
「はい、一瞬、策敵圏内に入ってしまった際には反応したようですが、それ以後動きません。」


前の作戦でも感じた疑問。
何故‘彼’は積極的に攻撃してこないのか?
彼ならもっとうまい指揮をするはず。
小型バイドの攻撃にしても、地球でみたキレが無い。
ただこちらを確認したら攻撃してきたかのようだ。
彼は何がしたい?
私に何をさせたい?


ザッ……ザー…


―ひ……をは………よ―


またあの砂嵐だ。
彼を意識した所為?
前より言葉が明瞭になってきている…?
精神汚染が進んでいるのだろうか…
この討伐作戦が終わったら一度、軍医に見てもらおう。
しかし、今は目の前の戦闘に集中しなければ。


「今は関係ない…。ここで片をつけよう!
ケンロクエン、ウェーヴマスター、スレイプニル発進させよ。
攻撃タイミングはパイロットに任せる。」


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決戦戦力を展開したときに副官が慌てて報告してきた。
「提督!解放同盟艦隊突破されます!」
「なにっ!通信を繋げ。」


「こちら討伐艦隊司令。ブラーダ提督、現状を!」
『申し訳ありません。R機部隊を突破されました。空母キジャコイジュは後退中。
このままでは防衛戦力が尽きます。撤退を申請します。』
「…貴艦隊は後退して、地球連合の後詰め艦隊を合流せよ。」
『お力になれず申し訳ない。』


通信が切れる。一応友軍は友軍だ。
撤退せずに、死守せよとは言えなし、それが可能な戦力がそもそもない。
解放同盟艦隊が引けば、バイドが攻めてくるだろう。
退路が塞がれれば、我々が包囲されかねない。
ちっ、ここまで解放同盟艦隊が脆いとは…
さすがにこの量のバイドを相手取るのは無理だ。
しかし、敵陣奥深くまで入り込んでいる部隊を引き戻しての退却も難しい。
となれば…


「艦隊司令より総員に連絡。作戦変更を伝える。目標は変わらずコンバイラベーラ。
目標を早急に撃破し、バイドの包囲が緩んだところを、艦隊ごと突破する。各艦前進せよ。」


スレイプニルが疾走する。
白いR機は大型の核ミサイル‘バルムンク’を抱えて進む。コンバイラベーラの艦首砲が狙いだ。
続いて、ウェーヴマスター、ケンロクエン隊も発進している。
多少の損害には眼をつむり、勢いで勝負するしかない。


敵策敵圏に入ると、コンバイラベーラも反応してこちらを向く。
艦首砲発射準備に入るが、遅い。すでにバルムンクは放たれた。
艦首砲のエネルギーが解放される前に核の炎が砲塔を焼く。
それでも艦首砲は機能しているようであったが、発射直前まで溜まっていたエネルギーは霧散していた。


同時に入ってきたのはWマスターとケンロクエン。
Wマスターは肩の砲台を、ケンロクエンはコアを狙う。
これに対して、コンバイラベーラはミサイル、レーザーで迎撃してくる。
コアからの攻撃がケンロクエンに向かうが、
スレイプニルが搭載されているバリア弾で受け止める。
ケンロクエンはパイルバンカーを起動、帯電した杭はスレイプニルのバリアごと敵を打ち抜く。


インパクト!そんな声が通信から聞こえた。


ケンロクエンはコンバイラベーラに突き刺さっている。
どうなった?


「戦況報告!」
「は、はい、おそらく…コンバイラベーラ沈黙した模様です。」
「バイドの包囲網に穴が開いた。全艦隊突破するぞ!」


私は最大戦速で艦隊を進ませる。
すでに解放同盟艦隊が抜けた穴から、後ろにバイドが回りこんでいる。
前しか道は無い。


「これは…提督!また、目標が動き出します。」
「何!またか!」
「あ…コンバイラベーラ反転。に、逃げるようです。小型バイドも追従しています。」


ザ、ザー…ザ…


―ひ……をは…いせよ―


彼の声を振り払う。
周囲のバイドは、私達の艦隊には目もくれずコンバイラベーラに追従する。
半包囲されていた私の艦隊の隙間をバイドがすり抜けていく。
どういうことだ。こちらを包囲できたはずなのに。
それに、またあの声。彼は何を伝えたい。
逃げているのではなく、追ってこいということか。


私は艦隊をまとめ、被害がそこまでひどくならなかったのを確認すると、追撃を命じた。
…追ってこいと言うなら宇宙の果てでも、追いついてみせるさ。



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大型バイドが逃げ込んだ先は奇妙な回廊だった。
艦隊は頑強な金属質の壁が広がる宙域に進入した。
一見人工物のように見えるが、金属化したバイドが集合したものかもしれない。
なぜだかそんな気がする。
宇宙は静寂なものだが、なぜかこの辺りはさらに静かに感じられ、
自分の心の奥が透けて見えるような気さえした。


私はこれまでの旅のことを思い出していた。その記憶に現れるのは我が艦隊の、隊員達の顔。
彼らがいたからここまでこられた。
連合軍と革命軍の混成部隊である我々は、いわば地球人類の縮図だ。
艦内の人間関係が比較的良好なのを見ていると、私は人類の未来に希望が持てる気がした。


私は洞穴内に侵入し、障害となる敵を撃破しつつ、目標のバイドを追撃するよう命じた。




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ゲーム中では役立たずこの上なく、友軍にフレンドリーファイアをかましてくる開放同盟艦隊の回でした。
重金属回廊はスパロボっぽく、所定のマスまで旗艦を運んだら終了っていうステージですが、
これという特徴も思い入れもないのでカットです。


年内に後編完結できるか微妙になってきましたが、
さあ、次は彼との決戦です。



[21751] 20 提督と提督
Name: ヒナヒナ◆2a9fd0bf ID:ec2c350f
Date: 2010/12/25 21:09
・提督と提督


重金属回廊を抜けた先は、不気味な空間だった。
通常空間ではない。ワープ空間でもない。隔離された空間だった。
重い靄のようなものが漂う空間は、それ自体から微弱なバイド反応が検出される。
周囲は物質化したバイドが堆積したものだろうか。大きな広間のようになっている。


中央には‘彼’
コンバイラベーラがいた。
周囲にはかなりの数の小型バイドがいる。
決戦の準備を行っていると、頭に響く声。
軋むような…悲鳴?


戦闘指揮所のスタッフがざわめく。


「提督、コンバイラベーラが!」


コンバイラベーラは朱色の装甲をうごめかせると、
また苦悶の悲鳴を上げた。
そして、その場で身もだえした後、破砕音が聞こえる。
ムスペルヘイム級戦艦より一回り大きい程度だったその躯が、膨張しだしたのだ。
その勢いは凄まじく、近くにいた小型バイドをも巻き込んで巨大化する。
内側から膨らむように膨張し、装甲が砲台がデタラメにせり出してくる。
指揮所のスタッフも呆然としてみている。現れたのはディスプレイの枠からはみ出すほどの巨体。
この不気味な空間いっぱいに球形に変形した。


私は、なんとなく水風船のようだと思った。
内側から無理やり膨らまされ、針でつつかれて破裂するのだ。
しかし、それは私の妄想で、実際のコンバイラベーラだったものは、装甲と砲台の塊だ。
艦首砲規模の砲台がそこここに突き出している。


ザー、ザ……ザザ…


―ひと…をはかい…よ―


しゃべっているのはコンバイラリリル。
私は確信する。やはり‘彼’は私に何かをさせたがっている。
ここに呼び寄せるために地球上空からここまで呼んだのだろう。
彼は誰だ。何をさせたい。もう少しで理解できるのに…


「提督…コンバイラタイプの膨張が終わった模様です…。」


横には副官達が集まっていた。
震える声で言葉を搾り出したのはガザロフ中尉だ。
皆唖然としている。


「呆けるのは後で良い!戦闘を開始するぞ。目標はコンバイラリリル。」
「コンバイラ…リリル?」
「巨大バイドを破壊せよ。艦艇を展開しR機部隊を発進させるんだ。」


明確な指示を出されて、スタッフ達が動きだす。
バイド反応による計測報告では、巨大バイドリリルのほかに、小型バイドが多数居るらしい。


「バイド反応計測データによると、恐らく目標の巨大バイドのコアは、こちらから見て反対側にあるでしょう。」
「コンバイラタイプにある様な艦首砲構造体が各所に見えます。エネルギーが溜まった状態のアレに近づくのは危険だと思われます。」
「提督、艦艇はどの道通り抜けられないでしょう。R機による最短ルートでの進軍を進言します。」
「前面の敵は、ゲインズ3…白兵戦型です。ならば艦艇によるアウトレンジからの攻撃を行うべきです。」


アッテルベリ中尉、ヒューゲル少尉、ラウ中尉、ガザロフ中尉が進言してくる。
他の副官達も情報を集めたり、他部署に確認を行ったりしている。
もう大丈夫そうだ。


「まずは艦隊射撃により、ゲインズ3を撃ち破る。三斉射後にR機隊を突入させる。」


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旗艦フィンデルムンド、戦艦エンクエントロス、巡航艦モンテプンク、駆逐艦レーニョベルデが陣を組む。


「全砲門開け。斉射開始。」


各艦の主砲やミサイルが一気に解放される。
主砲レーザー砲や連装ミサイルが雨あられのように飛び出しゲインズ3に向う。
艦首砲はまだエネルギーを蓄積している最中だ。
ゲインズ3は白兵戦型の武装しか持っていないバイドだ。
近づかれるまでに、打ち破る。
機動力に優れた白兵戦型のゲインズでも、圧倒的な面制圧で逃げ場をなくせば、当たる。


「着弾を確認。ゲインズ3を14体無力化。」
「レーダーに反応、後方にいたゲインズ3前列に出てきます。戦列の穴塞がれました。」
「艦首砲チャージ40%。」
「第二斉射用意。目標ゲインズ3。…リリルの様子は?」
「巨大バイド動く気配はありません。ただし各砲塔はエネルギーチャージを行っています。」
「よろしい、各艦、第二斉射開始!」

充填を終えたミサイルが次々と飛立つ。レーザーも同様だ。
コンバイラリリルに動きは無い。
スラスターらしき構造はあるが、そもそも空間いっぱいまで膨張した巨体は動けるのだろうか。


「着弾を確認。前列のゲインズ3、12体無力化しました。」
「ゲインズ3まだ後ろから出てきます。」
「艦首砲チャージ85%です。」
「第三斉射は艦主砲チャージを待って行う。各砲門用意。」


次々にあふれてくるゲインズ3。
どうやらコンバイラリリルとバイド堆積物の壁との間いっぱいにゲインズ3が詰まっているらしい。
ためらっている暇は無い。正面を突破して壁沿いに進軍するのが最短ルートだ。
しかし、艦艇が入る隙間は無い。R機の突入を全力で支援するしかない。
R機がアングルボダ級空母エストレジータから飛立ち、突入体勢を取る。


「提督、艦主砲エネルギー充填率95%。あと10秒で撃てます。」
「各艦第三斉射用意、R機体は突入準備を。」
「艦主砲撃てます!」
「第三斉射発射!」


各艦から艦首砲の白い光がほとばしる。
その光は空間に漂う靄も消し飛ばして進み、ゲインズ3の一団を飲み込む。
同じ箇所に集中して照射されるエネルギーの奔流は、ゲインズを消し飛ばすだけではなく、
バイド体堆積物で出来た壁も抉り取る。
側にあったリリルの砲塔も何基か巻き込んだようだ。


「R機突入!強襲揚陸艦プルルナスも続け。」


まだ、残光の残る空間にバルカンで弾幕を張りながら突入するR機。


R機は狭い通路を通っている。リリルと壁の隙間の細い通路だ。
所々にリリルの砲台があり、回避する空間も十分にないため、油断していると簡単に討ち取られる。
先陣を切ったR機が進路を確保し、強襲揚陸艦が進む。
強襲揚陸艦で補給をして、また先に進む。
R機隊はゆっくりと漸進している。


________________________________________


「提督、R機部隊突入しました。」
「よし艦隊はここに留まり、突入隊の後ろを守る。小型バイドを近づけるな。」
「了解です。」
「突入隊の情報は、すぐに伝えること。」
「はい。」


私はリリルの表面に並ぶ砲台を破壊し、巨大バイドの側にある大き目の岩礁に布陣した。


「提督、小型バイドの群が艦隊に接近しています。」
「サブディスプレイに回せ。」


画面に映ったのは、グロテスクな花だった。
咲きかけの花の基部に鈍く光るセンサー部。
決して美しさを求める花ではなく、原初の力強さを思わせる野趣ある色合い。
前面には花のような器官のついているフォース。
ジギタリウス3とフラワーフォース…
20や30ではきかない、もっと大量にいる。
悪夢の花畑だ。
バイドはここまで来て物量で攻めてくるらしい。


「ジギタリウス3を突入させるな。ここで討つ。艦主砲チャージ!距離は?」
「敵機先頭イエローゾーンに進入、主砲射程圏内です。」
「敵先頭集団が射程に入った時点で、主砲、ミサイルの一斉発射を行う。」
「…敵先頭、完全に射程内です。」
「撃てぇぇ!」


ミサイル、レーザーが敵に向う。
盛大な爆発が起こり、花びらというには語弊のある物体が舞い散る。
花が散っている様は美しいという言葉を聴いたことがあるが、
この光景を見せてやりたい。
暫く花は要らないと思うだろう。


粗方のR機は突入部隊に振り分けた。
今本隊に残っているR機は最低限、戦艦の射程と手数の多さが頼りだ。
特に近距離武装が少ないので、近づかれると対処できなくなる。
遠距離にいるうちに撃破したい。


「提督10時の方向から、Uロッチが来ます。」
「こんな時に!残っている機体は?」
「今展開している部隊のみです。」
「提督、Uロッチは鹵獲弾を装備しています。R機での接触は危険です。」


鹵獲弾を搭載している機体は脅威敵だ。
単純にバイド化するには侵蝕に時間が掛かるが、
やっかいなことに鹵獲されると制御系統を乗っ取られ、一瞬で敵に引き込まれる。
バイドに引き込まれれば、もちろんそのままバイド化が待っている訳だが。


「…作業用のPOWはあるのか?」
「ありますが…提督何を?」
「ドックの整備班に通信を開け。」


______________________________________


作業用のPOWアーマーが射出される。
もちろん無人であり、簡単なプログラムで制御されている。
無人のPOWアーマーが不気味な空間を泳ぐように進む。
Uロッチの射程圏に入ると、次々に鹵獲弾が発射される。
鹵獲弾は非常に命中精度が悪く、ただ泳いでいるだけのPOWでも外す。
しかし、何十もいるUロッチから放たれた鹵獲弾のいくつかが、POWアーマーを捉える。
POWはUロッチの群の中に引き込まれる。
そして、


爆発。
Uロッチの先頭集団が盛大に爆発する。


「提督、成功です。Uロッチ45%にまで減。」
「ほんとに、やられちゃった。」
「なんでも拾うからこうなるんだ。」


ヒューゲル少尉が呟き、私は少し呆れて応える。
タネは簡単、Uロッチの鹵獲したがる性質を逆手にとって、
POWにバルムンクミサイルを詰めて敵に鹵獲させたのだ。
整備班に無理を言って、整備用のPOWアーマーのパイロット席や、要らない機構を取っ払ってもらい。
中に時限式信管に変えたバルムンクミサイルを詰める。
あとはころあいを見て、バルムンクミサイルが爆発するのを待てば良い。
歴史のあるブービートラップだ。
しかし、人間なら引っかからない時代がかった罠でも、バイドには効果的だ。


「敵はまだ残っている。一機たりとも通すな!」


勢いに乗った艦隊は、攻勢を激しくする。


________________________________________


R機隊はゆっくりと進撃を続けていた。
狭路の途中にジャミング機アンチェインドサイレンスを配置して、攻略起点としたのだ。
このジャミング圏内にはギリギリ強襲揚陸艦が入れる幅があり、
リリルとバイド堆積物の壁の間に、揚陸艦プルルナスをUサイレンスが寄り添うように止っていた。
この狭路ではジャミングを外すとすぐさま複数個所から砲台で狙われる。
散発的に襲ってくるゲインズ3の所為で、中々前進できない。


やっとのことで、ゲインズを処理してリリルのコア側に出る。
そこは砲撃専門の中型バイドタブロック2が山ほど居た。
地獄の狭路をぬけてたどり着いたのは、やはり地獄だった。


_______________________________________


「提督、R機隊狭路を突破しました。」


指揮所内がうわっと沸き立つ。
ずっと先の見えない防衛戦を続けていたからな。
味方の進撃に喜ぶ司令部スタッフ達。


「突入隊が狭路を突破した。今度はこちらが攻める番だ。残りの小型バイドも平らげるぞ!」


威勢のいい返事が返ってくる。
残りの小型バイドは、ジギタリウス3とフラワーフォースが25体程度、Uロッチが20体程度だった。


「砲身冷却終了。艦主砲チャージ開始します。」


撃ち過ぎて、オーバーヒートしていた艦主砲が使えるようになったようだ。
一気に片付けたいものだ。


「各艦へ。主砲、ミサイル2斉射後に、艦主砲を発射する。」


一斉射目
ミサイルとレーザーを周辺部のバイドに打ち込む。
命中したバイドは靄に混じって消えてゆく。
やはり周辺部は機影が薄いから命中が少ない。

二斉射目
やはりミサイルとレーザーを周辺部のバイドに打ち込む。
しかし、今度はこちらが発射準備に入ると射線からの回避行動を見せながら向ってくる。
周辺部が危険なら、安全な中央へ。
バイドの群はしだいに密集してくる。
下準備は済んだ。


「各艦、よく狙え。この一撃でバイドの群を殲滅する。艦主砲発射用意…撃てぇぇぇ!」


ミサイルから逃れようと密集しすぎたバイドが、光に飲み込まれた。
後に残ったのは、より濃くなった重い靄だった。
私は大きすぎて目に入らなくなっていたリリルを見る。


さあ、そろそろ教えてくれ。何をさせたいのか。
その想いに反応するようにあの砂嵐がやってくる。


ザ…ザ……ザ…


―ひとみをはかい…よ―


もう少しで聞き取れるのに!
砂嵐が邪魔をして、気が逸れる。


「提督、突入隊コアにたどり着きました!」


________________________________________


R機隊はタブロックを破壊しつつ、コンバイラリリルのコアまで迫っていた。
強襲揚陸艦プルルナスも特攻するのかと思うほどの勢いで迫っている。
スレイプニル、ノーチェイサー、ナルキッソス各隊はすでにぼろぼろで、
すでに定数を半数以下に割り込み、装甲もはげ落ちている。
波動砲を持たないこれらの機体は、波動砲を装備した機体を無傷でここまで牽引してくる役目だった。
すでに、役目を果たして、満身創痍だ。


追従してきたドミニオンズが火炎波動砲を、
ウェーヴマスターはスタンダード波動砲Ⅲを、
コンサートマスターは持続式圧縮波動砲Ⅲを、
コンバイラリリルのコアに向けて発射する。
暴力的なまでの光が溢れ、余波は周囲のタブロックも蹂躙する。
リリルの巨体が蠢動し、朱色の装甲が軋む。
まるで痛覚があるかのような振る舞いだ。
コアは健在だ。しかし、周囲の構造が破壊されコアがむき出しになる。


第一射に参加したR機が射線から離れ、周囲のタブロックを警戒する位置につく。
強襲揚陸艦から出てくるのはラグナロック、ケルベロス。
すでに機首には波動の光が灯っている。
周囲から撃ちこまれるタブロックのミサイルは周囲を警戒するR機の弾幕に阻まれる。
発射位置に付き、トリガーが引かれる。


ケルベロスからはライトニング波動砲が発射され、紫電はコアに収束する。
紫電に巻き込まれないように下がっていたラグナロックが、前にでる。


そして、ハイパー波動砲がコアに撃ちこまれる―


________________________________________


群れの核を成していたコンバイラリリルは、突然、大きく軋みだした。
膨張しきった体をさらに膨らませる。まるで水風船の様だ。
リリルに付いていた砲台が剥がれ落ち、朱色の装甲が互いにせり出し合い拉げる。
進化と呼ぶには何かが狂っている。
どんどん膨らむリリル。
しかし、いかにバイドといえども限界がくる。
朱色の装甲の隙間から暗い光が見え、そして一瞬収縮した後。


リリルは弾け飛んだ。


_______________________________________


リリルが弾けた衝撃で艦内にも激しい震動が走る。
そして、‘彼’の慟哭が、私の脳裡に直接伝播してきた。



ザー…ザッ…

―ひとみをはかいせよ―

―瞳を破壊せよ―




一際強い声が頭の中で響く。
瞳…?何の?
そして、頭の中で鳴り続けていた砂嵐が止み、あるイメージが浮かぶ。
私の頭の中に、洪水のように映像が溢れてくる。
その激流のような情報量に、私は思わず頭を抱える。



―地球の基地とR機
―成層圏を飛ぶ輸送艦
―火星施設での戦闘
―木星基地の奪還
―ベストラへの突入
―ウートガルザ・ロキの光に消えるバイド
―グリトニルからの跳躍
―ワープ空間での戦い
―緊急連絡のアナウンス
―ヘイムダル級のものらしき戦艦の内部
―私のではない司令室
―誰かの航海日誌
―笑いかけてくる私の知らない隊員達…




グリトニルまでの往路と太陽系同盟の討伐の時…?
いや、私はこんな事していない。
知っているようで知らない記憶。




―ブラックホール宙域
―水の惑星
―灼熱の惑星
―輸送コンテナ
―バイドの巣窟
―腐敗した都市
―バイド帝星
―暗黒の空間
―何かを縫い留めるように突き刺さる艦艇…



なんだこれは。
こんな光景、私は知らない。
これは…‘彼’の記憶?
しかし、これではまるで…
まるで、彼が人間のようではないか。



―そして、
―漆黒の瞳孔



!!!
真っ黒な…瞳。
これが…彼が伝えたかったものか…!



私はウートガルザ・ロキを使い、
ドプケラドプスを倒し、
地球圏のバイドを駆逐し、
バイド帝星まで乗り込んだ英雄を一人しか知らない。



彼が…

‘彼’が英雄ジェイド・ロス



私は何がなんだか分からなくなった。








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作者のトラウマステージ「バイドと同化してゆく宇宙」でした。
いきなりゲインズ3に飲み込まれたとか、リリルと壁に挟まれてジャミング解除とか、
タブロック死ねとか、あんな所のトレジャー取れねーよとか、ターン制限で失敗とか…
二度とプレイしたくないステージです。

さて、次は後編最終ステージ、「琥珀色の風 この美しき宇宙」です。
番外編は妄想100%で書くことにしました。来年には始めたいなー。



[21751] 21 琥珀色の風 この美しき宇宙
Name: ヒナヒナ◆2a9fd0bf ID:bb3f0569
Date: 2011/01/04 21:01
・琥珀色の風 この美しき宇宙


「……!……!」


何かが聞こえているのは分かるのだが、それがなんだか分からない。
しかし、耳に届く声は私を急かす。


「…督!提督!」


あと少し寝ていたい。という欲求を抑え込んで、私は瞳を開く。


「提督!」
「…ベラーノ中尉か。」


目の前には心配そうに私を覗き込むベラーノ中尉の顔。
首が痛い。ベルトに体を預けて、司令席で気を失っていたらしい。
周囲にも倒れている者や、それを起こそうとしている者がいる。


「ベラーノ中尉、私はどれくらい寝ていた。」
「私も先ほど起きたばかりなので分かりません。起きたらこのような状態で…」
「そうか…これは!?」」


そこで私はディスプレイに映るものに気がついた。
そこにあったものは、今まで見たことのない宇宙の姿であった。


一面、琥珀色の空間。
煌く琥珀色の靄は、虹色に色を変えながら、あちらこちらに堆積している。


現実なのかどうか疑いたくなる様な風景だ。
ここが通常空間であることを信じるものも居ないだろう。
私は教養の授業で見た大昔のフレスコ画に、似たものがあったような気がした。
天国と天使を想像した絵であった気がしたが、まさか戦艦で天国というわけでもあるまい。


懐かしさすら感じる心地よい空間。すべてを忘れてしまいたくなる。
この優しさの中でただ目を閉じて、体を委ねられたら、と思ってしまう。
…違う。私はバイドを討伐しに来たのだ。
バイドの根源たる瞳を破壊すること。それが彼に託された想いでもあったはずだ。


私はまどろみに堕ちそうになる自分を叱咤するために、
横に居るベラーノ中尉の手をしっかりと握った。
ベラーノ中尉もはっとしてこちらを見るが、静かに頷き、私の手を握り返した。
この非常時に何をしているのかと自問したくなったが、気が遠くなるのを堪えることができた。


皆起き上がりはしたが、ぼうっとしている。
これは不味いと思い、全艦通信を入れる。



「ここまで来て、ためらうことは何もない。」


「ただ、目の前に空間があれば進み、目の前にバイドがいれば破壊するだけだ。」


「バイドを倒して、地球に還ろう。」


「さあ、行こうか。」


______________________________________


私は艦隊の編成を応急的に済ませた後、艦隊に命令を出した。


「総員、目標はバイドの根源‘瞳’だ。これを破壊すればバイドとの戦いも終わる。
人類の悲願だったバイドとの決着だ。」


私は言葉を区切って、周囲を見る。全員こちらを見ている。


「これが最期の戦いだ。命令はただ一つ‘瞳を破壊せよ’。戦闘を開始する!」


____________________________________


「上方通路より戦艦エンクエントロス、巡航艦モンテプンク、輸送艦ルミルナを進撃、
下方通路より旗艦フィンデルムンド、駆逐艦レーニョベルデ、輸送艦リャキルナ進撃。
空母エストレジータは損傷が激しい、R機発進後待機。」
「提督、前方よりバイド反応。クロークローとアーヴァングと見られます。」
「R機隊、蹴散らせ!」



―今思えば色々な事があった。
―初めは、私はただの特別部隊の隊長で、大佐だった。
―戦力ともいえない輸送艦とアローヘッドが数機のみの部隊。
―負傷により退役したホセ中尉と、若手の副官マッケラン中尉。
―大声をうっとおしいと思ったが、今では主席副官として副官達をまとめてくれる。
―なんのかんのでマッケラン中尉が一番長く補佐してくれた副官か。



「クロークロー、アーヴァング掃討完了しました。R機稼働率74%です。」
「提督、R機を戦艦に戻して修理、もしくは予備機を出すことを進言します。」
「そうだな、R機は一時帰艦せよ。損傷を受けた機隊は修理を、無傷の機隊は補給して、再出撃の準備を。」
「合流後、進路が3つに別れています。中央は戦艦が通れますが、上下の通路はR機か輸送艦しか通れません。」
「ならば、上下通路は無視して進軍だ。どのみちバイドも大した戦力は展開できないだろう。中央突破を図る。突破後にR機を展開する。」



―本部の訳のわからない指令で演習を行った事もあった。
―今思えば、あれがきっかけだった気がする。
―あそこから、私と私の艦隊の波乱に満ちた軍歴が始まったのだ。
―ガザロフ中尉もそのころに来てくれたのだったか。
―当時はポカミスだらけで本当に大丈夫かと思ったものだが
―今ではその一風変わった戦略眼は我が艦隊に無くてはならないものだ。



「提督、大型のバイド反応を感知しました。」
「敵種はなんだ。」
「データ検索…ファインモーションです。内部に小型バイドを搭載している可能性があります。」
「弱点は。」
「外壁が非常に堅固で、体当たり攻撃が非常に強力です。弱点はレーザー攻撃・小型バイド放出のために外壁を開いたときにコアが露出します。」
「ふむ、POW改デコイを先行させる。小型バイドを放出してきたときを狙って、
巡航艦モンテプンク、駆逐艦レーニョベルデで砲撃を打ち込む。そのまま押し込むぞ。」



―要塞ゲイルロズ…革命軍の本拠地であった要塞攻略は大変だった。
―旗艦が内部までは入れなかったので、現場部隊に途中から指揮を委譲したが、
―大変だったのはむしろ戦闘前だった気がする。
―予想外の戦闘であったため、戦力配備が間に合わず、
―アッテルベリ中尉を戦闘指令室に呼び出して作業に当たらせた気がする。
―その時に限らず、彼の知識量は頼りになった。



「提督、ファインモーション外壁が閉じていきます!」
「くっ、後一斉射でと落とせるのに…」
「提督、レーニョベルデがファインモーションに突撃します!」
「何をしているっ!停船命令を!」
「命令受け付けません。…レーニョベルデより電文があります。―幸運を―。」
「…」
「レーニョベルデ、ファインモーション外壁の隙間に突入します、
レーニョベルデ、外壁に挟まれ停止。ファインモーションの外壁閉鎖も止まりました。
提督、駆逐艦の装甲では、直に圧に耐え切れずに破壊されます。」
「…旗艦、艦主砲発射はできるか。」
「艦主砲チャージは終わっていますが…提督?」
「目標、ファインモーション・コア。発射準備。」
「今撃てばレーニョベルデが巻き込まれます。」
「知っている。しかし、後悔は全てが終わってからだ!ムスペル砲発射せよ!」



―Op.Bitter Chocolate、グリトニル奪還作戦。
―この作戦は色々な節目だったな。
―地球連合軍とグランゼーラ革命軍との休戦。
―太陽系解放同盟という新たな敵の発覚。
―そして、私自身。
―ベラーノ中尉に対するプロポーズも有耶無耶になってしまったな。



「ファインモーション沈黙。レーニョベルデ反応ありません…」
「まだ終わりじゃない。索敵を続けよ。」
「早期警戒機展開、合流地点です。広い空間があります。」
「広い空間…でも瞳はまだ奥に居るはず…索敵は?」
「小型バイドが数機と…提督!ベルメイト本体が2体ですっ!」
「ベルメイト…基地防衛戦にいたあいつか。面倒なのが来たな。」
「ベルメイトこちらに気が付いた模様です。」
「戦艦の艦首砲はまだチャージが終わっていない。
かといって今からR機を出したのでは各個撃破される…。砲撃戦しかないか。」
「ベルメイト、接近。射程範囲に入ります。」
「各艦多少の損害を覚悟せよ。砲撃開始。」



―新しい艦隊、新しい任務、そして増えた仲間達。
―戦後に私に下された任務は太陽系解放同盟の討伐だった。
―戦争状態にあった両軍の兵を一緒にして大丈夫かと思ったが、
―両軍の副官達が、積極的に取りなしたりしてくれていたらしい。
―ワイアット少尉は気さくな様子で、すぐに連合兵士とも打ち解けた。
―彼にはワープ空間で迷惑を掛けたな…



「主砲、ミサイル第1斉射。発射!」
「ベルメイト衝撃波来ます。」
「つっ…被害状況を知らせ。」
「旗艦フィンデルムンド、戦艦エンクエントロス損害軽微、輸送艦ルミルナ脱落します。当方の攻撃、ミサイル40%命中、敵ダメージ軽微。」
「第2斉射準備。ルミルナの状態は?」
「自走不能。いえ、機関部に被弾、爆発しました。」
「第二斉射発射。…ルミルナから脱出したものは?」
「確認できません。…!提督、遠方に小型バイドを確認。会敵にはまだ時間があります。」
「提督、あの衝撃波は回折しない模様です。戦艦の陰にR機を展開して小型バイドの襲撃に備えましょう。」
「艦首砲発射準備。…提言を採用する。R機を戦艦の陰に展開。」
「艦首砲チャージ完了。2番艦エンクエントロスも発射可能です。」
「艦首砲撃てぇぇ!」



―グリーンインフェルノ…ワープ空間で会敵したときは何かの冗談かと思ったものだ。
―ワープ空間を埋め尽くすほどの巨体。武装の多さ。
―地獄の名に相応しい威容であった。
―そんななかヒューゲル小尉は若いながら良く補佐してくれた。
―伊達に、親の七光りならぬ祖父の七光りで副官を務めているわけではないという訳だ
―そんな彼女もすでに我が艦隊には無くてはならない頭脳の一人だ。



「提督、ベルメイト1基破壊確認、下方のベルメイトは中破。まだ動きます。」
「不味い、戦艦を盾にR機を守れ。衝撃波が来るぞ。」
「了解、っ痛ぅ…旗艦フィンデルムンド被害は…左舷側面スラスターと左舷ミサイル機構が破損しました。スラスターの破損で回頭には時間が掛かります。」
「2番艦エンクエントロスにベルメイトの破壊を命じる。当艦のミサイルは修理可能か?」
「戦闘中では難しいです。」
「それならかまわない。敵小型機は?」
「会敵にはまだ時間があります。」



―バイドバインドシステムも印象的だった。
―あれには手を出すべきではないという考えは今でも変わらない。
―しかし、あれを開発したのは本当にキースン率いる開放同盟だったのか?
―クロフォード中尉も警戒していた。
―そういえば、結局彼女の笑顔と言うものはほとんど見ていない気がする。
―冷たい印象があるが、笑ったら可愛いと思うのだが。



「提督、会敵です。データ検索…ミスティレディー2とセクシーダイナマイト2です。」
「R機隊投入せよ。」
「R機隊二手に分けます。」
「しかし、あのゼリー状の物体はなんだ?」
「提督ゼリー物質から波動砲が!巡航艦モンテプンク巻き込まれました。」
「自爆だと!」



―バイドバインドシステムと、それに乗っ取られた解放同盟艦隊。
―敵軍の最高司令官は行方不明というなんとなく、腑に落ちない決着。
―捉えたカトー大佐からもBBSについての詳細は聞け無かった。
―技術のみに囚われた人間の末路というのであろうか。
―はえぬきのグランゼーラ軍人であるラウ中尉が、同調しないか心配だったが、
―取り越し苦労であったようだ。



「…戦力はどの程度残っている?」
「旗艦フィンデルムンドは小破。2番艦エンクエントロスは艦首砲を損傷、
航行は可能です。巡航艦モンテプンクは大破、途中で取り残されています。
空母エストレジータは突入地点で待機、輸送艦リャキルナはデコイは失いましたが、
問題はありません。R機は稼働機…35%です。」
「R機を失い過ぎたな。温存しなくては…あそこが最奥の空間だな。」
「! 提督、入口付近にバイド反応あり、バイドシステムλです。」



―本部基地での防衛戦。英雄の帰還。
―あの時は皆必死だった。バイドの大群が地球圏に攻め入ってきたのだ。
―しかし、‘彼’の気持ちも分からないではない。
―きっとかの若き英雄も、地球に帰りたいと願っていた筈なのだから。
―ただ、疑惑が一つある。Team R-TYPEから貸与されたR機。
―Rwf-99ラストダンサー。あのバイドをも従える能力、あれは…



「っく、バイドの味方意識の無さを忘れていらたな。味方を巻き込んで、波動砲を撃つとは。」
「R機残存は?」
「25%です。」
「少ないな…しかし、瞳を破壊できればいい。一気に押し込むぞ。怯むな!」



―さきほどから‘私’は攻撃を命令し、艦隊に指令を出し続けている。
―しかし、私はこんなにも心穏やかだ。
―バイドを滅ぼす方法を考え続け、攻撃性を増していく‘私’と
―今、こうやって琥珀色の空間で思考を続ける私。
―どちらが本当のワタシなのか。
―いや、考えるのも不毛なことだ。もうすぐ全てが終わるのだから。
―…瞳が近い。


______________________________________


最期の部屋まで来た。すでに艦隊はその戦力を3分の1以下にまですり減らしている。
しかし、そんなことは問題ではない。私には分かる。
この奥に人類の敵バイド…その根源たる瞳がいるのだ。
ここまで来た。
今重要な事はバイドを倒すことのみ!
他に何が必要だ?
邪魔なものは排除する。そして瞳を倒す!


私は前進を命じた。


「提督、上下から中型バイドが接近。ガウパータイプです。」
「先行している2番艦エンクエントロスに通信、引き付けて艦主砲でなぎ払え。と。」
「了解しました。」
「旗艦フィンデルムンドは2射目を撃つ、エンクエントロスを巻き込まないように航路をずらして進行する。」
「2番艦エンクエントロス艦首砲発射。下方のガウパー殲滅しました。」
「続いて当艦も波動砲を。」
「艦首砲チャージ完了。発射できます。」
「撃てぇぇ!」


白い光の束はガウパーを飲み込む。
この空間に群れていたガウパーは居なくなったはずだ。


先行している2番艦エンクエントロスから通信が入る。
空間の淵に奇妙な突起の様な器官があるとの報告だ。
こちらでも確認したそれは、上下方向に2対、計4基確認された。
瞳ではないが、あれはなんだ?
邪魔ものは破壊するべきだ。
エンクエントロスに破壊するように命令した。


エンクエントロスがミサイル、主砲などで手前側にある器官を攻撃すると、
突然、突起の様な器官が奇妙な光を放つ。
四方から怪光線が戦艦エンクエントロスに突き刺さる。


私はその光景を現実のもののようには捉えられなかった。
記録映像を見ているみたいだ。
私は僚艦が崩れ去るのを、何もできずに見ているだけだった。
前を進む戦艦が居なくなって見えたのは不思議な光景だ。
そこにはまるで惑星の様な物体が見えた。


二つの星
青く激しい風が吹く星
青白い氷の星
環を持った星
縞模様の大きな星
赤い星
青く美しい星
黄橙色の星
小さく灰色がかった星


遠近感の狂った光景。
これはなんなのだろう?
何故だか、とても懐かしいものに見える。
それがなんだったか思い出そうとしていたとき、
それが目に入った。


琥珀色の瞳孔。
殲滅すべき、敵…!
もう、私の眼にはあの瞳しか映らない!


___________________________________


「あれだ…」
「提督?」
「残存戦力、敵が見えた。瞳を…琥珀色の瞳孔を破壊せよ!」


私は旗艦と残存戦力を琥珀の瞳に進める。
邪魔だ。
邪魔をするものには破壊を。
二つの星も、青く激しい風が吹く星も、青白い氷の星も、環を持った星も、縞模様の大きな星も、赤い星も、青く美しい星も、黄橙色の星も、小さく灰色がかった星も…!
私はすべてを破壊して琥珀色の瞳孔に攻め入った。


_______________________________________


琥珀色の瞳孔は開きっぱなしで、此方を眺めていたが、
急に窄まり、焦点を結ぶ。瞳は明らかに此方を見ていた…!
目が合った気がして、私の心臓が高鳴る。今まで猛っていた気分が一気に冷え込んだ。
周囲からも悲鳴の様な声が聞こえる。
瞳の周囲にある器官にエネルギーが収束する。


「回避を!」
「回避間に合いません。」


そして、放たれる。
私は眩い光に目を瞑った。
あの瞳と再び視線が交わるのが怖かったのかもしれない。
直ぐに衝撃はやってきた。
爆音と、振動と、痛み…
目を開けると、指揮所は酷い様だった。
メインディスプレイはすでに死んでいる。
最も重要な送受信機器は、頑丈に作られているため生きているが、
その他の計器類は予備が働いて入ればいい方だった。
戦闘指揮所でこれだけの被害が出たのだから他はどうなっているのか…。


「被害状況を知らせよ!」


しゃべると血の味がする。右目も痛い。目にも血が入ったようだ。
いい加減な自己診断では、肋骨の一本でも折れているのかもしれない。
あの、衝撃でベルトに自重が掛かればそうなるだろう。
加減速の衝撃はほぼ無くしてくれるザイオング慣性制御システムも、
このような予期しない衝撃には、余り効果が無い。


「…被害は…武装使用不可、エンジンは無事ですが、スラスターが破壊されています。R機隊は…全滅?」
「全滅だと?攻撃手段は!?」
「発進できるR機はすべて発進していました。戦艦の武装も無くては…」
「ここまで来てっ!」


サブディスプレイの艦艇のステータスは真っ赤だ。
艦主砲も各種砲台もやられたらしい。ハッチも空きっぱなしだ。
私は通信機を手に取る。


「戦力は!あと一撃できるだけの戦力はないか!
R機は? 半壊していても、予備機でもいい。
ミサイルでも後一撃できればいい。
あと波動砲一撃であの瞳を倒せるんだっ!
攻撃できるものは…誰か居ないのかっ!」


最期のほうは叫び声に近かったと思う。
しかし、体面なんか気にしていられないんだ。


「提督、整備班からです!」


『整備班長だ。ここに最期のR機が一機ある。
…慌てるな。整備班総動員で飛ばせるようにしている。
元は練習機としておいてある機体だが、大破した機体の波動砲ユニットを無理やりつけた。
パイロットもいる。後30秒で出せる。これが正真正銘最期の一機だ。
…若いの、良い面になったじゃないか…それこそ男の顔だ。』

「おやっさん、感謝する。」

おやっさんの右ひじから先が無いのが見えたが、ここまで来て心配するのも失礼だ。
私は敬礼して通信を切った。


「管制、レーダー係、聞いたな。他のことはいい。波動砲を撃てる位置までR機を誘導するんだ。」
「了解しました。」
「R機テイクオフ…あれは!」


琥珀色の空間に踊り出たのは、白い機体に赤と青のマーキング、青いキャノピー。
Rwf-9A アローヘッドだった。
決して機動性が高いわけで無いアローヘッドは、すでに波動砲の白い光を灯していて、
琥珀色の瞳孔を取り巻く器官から、発せられる攻撃を管制に助けられて回避する。
機首の光はその間もさらに大きくなる。
3撃目の攻撃をかわしてみると、そこは琥珀色の瞳孔の目の前だった。


アローヘッドが機首を琥珀色の瞳孔に向ける。
限界までチャージした波動砲ユニットが火花を散らしている。
発射まであと…
3,
2,
1…
発射。



波動砲ユニットの限界を超えてチャージしたエネルギーは、
ファイナル波動砲となって琥珀色の瞳孔に突き刺さる。
琥珀の瞳孔が割れた音を聞いた気がする。
ファイナル波動砲の膨大な量の光が収まるとそこには…
光を失った瞳があった。


___________________________________


誰も声が出ない。
沈黙が続く。
「あはははは…」
誰が笑っているのかと思ったら、私の喉からでた笑い声だった。
おかしいわけでないのだが、なんか気が抜けてしまって、笑ってしまった。
なにか憑きものが落ちた気分だ。
このおかしな感情は、戦闘指揮所のスタッフ達にも感染する。
皆、堪え切れなくなったとばかりに、くすくすと、最期には腹を抱えて笑い出した。
それは異様な光景だったが、
今の私達には、笑い合える仲間がまだいる。それだけでうれしいのだ。


ついにバイドの中枢、あの琥珀色の瞳孔を倒した!
我々はバイドを生み出し続けた元凶を破壊することに成功したのだ。
今度こそやっと故郷に還ることができる。
帰ったら地球でゆっくり休もう。
それくらい要求する権利が、我々にもあるはずだ。
ひとしきり笑ったあと私は切り出す。



「さあ、みんな…地球に還ろう。」














































そう言って、残存戦力をまとめようとしたとき。
…艦が大きく揺れた。
何が起こったのか!?






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⇒驚愕する



[21751] 幕間 手のひら (改訂)
Name: ヒナヒナ◆2a9fd0bf ID:bb3f0569
Date: 2011/01/04 20:58
・幕間 手のひら


「いったい何が起きたんだ!?」
「分かりません。船体が引き寄せられています。」
「! 瞳が…」


先ほどファイナル波動砲を受けて、ぐずぐずに破壊された瞳が嗤っていた。
口も眉も瞼もないのに、私にはあの琥珀色の瞳孔が嗤っているのが分かった。
そこにあるのは…
純粋な悪意


琥珀色の瞳孔は漂う粒子ごとすべてを吸いこんでいる。
まるで栓の抜けたバスタブのようだ。
見ている前ですべてを平らげて行く瞳。


戦艦の残骸
大破したR機
脱出艇
バイド


「離脱を!」
「やっています。スラスターは反応なし。補助ブースターも推力不足です。」
「脱出艇は?」
「先ほどの攻撃で…」
「くっ、せめて後方の僚艦に退避命令を伝えよ。」
「電波の状態が滅茶苦茶です。通信不可能です。」


瞳が迫ってくる。
否、
我々が瞳に吸い寄せられている。


もう打つ手がない。
ここまでなのか?
バイドに吸いこまれて終わり?


そのとき私の右手に何かが触れる。
横には私の手をしっかりと握って、ベラーノ中尉が微笑んでいた。
周りを見渡すと、スタッフ達も静かに私を見ている。
私は小さな手のひらを握り返す。


大丈夫。
私には頼りになる副官達が、
ここまで私に付いてきてくれた部下達がいるじゃないか。
さっき、彼らに約束したばかりだ。
みんなで還ろうと。


だから、泣き言は後でいい。


「総員、対ショック態勢!みんな、生きて地球に還るぞ!」



そして…



______________________________________



【 !!!! 】


認識:次元振動およびワープ反応を確認。
行動:索敵モードへ移行。


認識:対象を確認。
検索:対象を想定敵αおよび、惑星破壊兵器B1と確認。
認識:該当時間を含む時間移動を確認。〈時間移動能力保有兵器〉と認定。
判定:行動規範〈ケース4〉適合。該当時間への侵略に対して反撃を行うことを認証。
判定:脅威度判定、レベルB。端末による分解処分を行う。
行動:末端活動モードへ移行。〈衛兵〉を活性化。


認識:…時空震を観測。対象をロスト
行動:索敵モードへ移行


認識:想定敵αは時空震により通常空間へ転移したものと認識。
判定:追撃不能。
行動:待機モードへ移行。



________________________________________



そこはなんとも言えない美しい空間だった
琥珀色の空間はどこまでも広がっている



キラキラした光が降り注いできて
我々に降り注いだ
光は私の心を落ち着けてくれる
いよいよ私の心は凪いでいた



今にも眠りに落ちそうなのをこらえて
周りを見る
僚艦
R機
バイド…
様々なものが見える
そのすべてがキラキラと瞬いては琥珀色に溶けていく



ここは何処なのだろう
いやどこでもいい…
今はただこのまどろみに身を任せよう



しかし
ワタシを捕まえていてくれていたはずの
あの小さな手のひらはどこへ行ったのだろう…






______________________________________



【本部基地防衛戦3ヵ月後・南半球第一宇宙基地】


青い空には地球連合政府国旗が掲げられている。
海岸沿いの街で工事が行われているのも見える。
屋根が半壊した工廠の中にはR機が並んでいる。機体のマーキングはRwf-99…


それらを見下ろす位置にある部屋は、紙書類や記録媒体が積まれている。
ディスプレイがいくつも並び、女性の顔を照らしている。
部屋の主はスーツを着た中年女性。
今時珍しい紙書類を見ている。
女性が書類をめくろうとしたとき、控えめなコール音が鳴る。


「もしもし、ええ私です。博物館の建設は来春には終わるのかしら?
ええそうね。機体の搬入準備をしておくわ。
…そうよ、技術なんて使わなければすぐに錆び付いてしまうわ。
我々の研究成果は後の世代に残さないとならないの。…そう、ではまた。」


かちゃりと受話器を置く。
読んでいた書類を机の上で揃えると、椅子を回転させて窓の外を眺める。


「とうとう終戦の英雄も、本当に英雄になってしまったのね…彼には御礼をしなくては。
彼のお陰でOp.Last Danceがつつがなく進んだのだから。」


くすくすと笑いながら、極秘の印が押された書類を金庫にしまう女性。
そこには【Rwf-100 Curtain Call】の文字。




===================================
トレジャー『バイドを討った証』
バイドにトドメを刺した時に手に握りしめていたもの。
ああ…、意識が薄れていく…。

改訂1/4



[21751] 【番外編開始】なかがき2
Name: ヒナヒナ◆2a9fd0bf ID:bb3f0569
Date: 2010/12/30 21:48
なかがき2


後編で落としておこうかとも思ったのですが、書いてしまいました。
正直、番外編はストーリーは理解を超えているし、
ストーリーがほぼ妄想という、超実験作になるとおもうのですが、
それでも許容できるRタイパーの皆様は、どうぞ、読んでいただきたいと思います。


前後編は提督の一人称っぽく進めてきたのですが、
番外編は視点を変えて進行してゆきます。
時間軸もかなりバラバラになると思います。
…だって、バイドの一人語りを延々23話書くってどんな拷問ですか。


詳しくは本編でということになりますが、
提督らの時間軸と、その他の時間軸が1話の中で混じることになると思います。
混乱の無いように書き方を工夫していきたいと思いますが、
分かりにくかったら、すみません。


と こ ろ で
R-TYPE tacticsⅢの開発発表はまだですか?



[21751] 1 ほのかな光
Name: キガ◆2a9fd0bf ID:bb3f0569
Date: 2011/01/05 20:20
・ほのかな光、もしくはTeam R-TYPE

・ほのかな光 a

【暗い空間】


この暗い場所は一体どこだ?
暗い、暗い空間
何か喪失感の様なものを感じるが
果たしてそれは何であったか分からない


ワタシの心を占めるこれは…
望郷の念
地球への思慕
そう還ろうと決めたのだ


ワタシはその片隅に
小さな光を見つけた
あれは出口か?
それとも入口だろうか?


どちらにせよワタシにとって
この世界でただひとつの道しるべだ
ワタシは光を目指して進む
あの先に地球があるのだろうか


正体不明の物体が接近してきた
ワタシ達に対して明確な攻撃意思を示している
白いのっぺりとした…戦闘機?
しかし明らかにR機とは違う形状をしている


彼らの意図は分からない。
ただ攻撃してくる以上
ワタシ達にできるのは反撃だけだ


こんな場所でやられる訳にはいかない
ワタシ達には帰る場所が
帰らなければならない場所があるのだ




_______________________________________




・第一次バイドミッションに関する報告書(極秘)
戦役決戦局面においてRwf-9A特務R機部隊、通称R-9大隊を投入。
Rwf-9A特務R機部は、バイド帝星へ侵入してバイドの中枢を破壊する任を負って異相次元に突入。
1機のみ帰還。
ボイスレコーダーなどより、Rwf-9A特務R機部は壊滅(正確には作戦行動中行方不明)したことを確認。
第一次バイドミッションを終了したRwf-9Aは、異相次元を漂流中、巡航艦クロックムッシュにより回収。
Rwf-9Aは地球の衛星軌道にある宇宙要塞アイギスに収容。
パイロットは重度の精神汚染を引き起こしバイド化の危険があったため、Rwf-9Aごと凍結処分とする。
Rwf-9Aはアイギス内の格納庫に厳重隔離後、保管。
※公式発表ではパイロットは死亡として公表した。

一年後の事件についての関連は…


_______________________________________


【地球南半球第1宇宙基地_Team R-TYPE研究棟_ロス艦隊地球圏出発時】


未開封の段ボールが積まれた部屋でデスクに齧りつく女性。
情報端末だけデスクに開けられ、白衣を着た女性が端末を操作している。
端末にはカードリーダーが付属しており、セキュリティーカードを通すことで、
高レベルの機密情報を操作できる仕様だ。
女性が首にかけているカードは高レベルのものだが、真新しかった。
表には‘サヤ・S・バイレシート’と印刷されていた。
カードの記載を信じるなら開発主任の職を持つ。


女性は更にいくつかの機密情報を端末に呼び出し、吟味する。
目線は滑るように文章を追っている。
彼女は呼び出したいくつかの機密情報を見比べた後、
端末にロックをかけると、隣に放置する。


しばし考え、電話で誰かにアポをとっている。
女性は椅子に深く座りなおし、目をつぶって思考に注力する。
部屋の扉をノックする音がする。
部屋の主の許可を待って、50代の男性が入ってきた。


「どうぞ。部長わざわざご足労頂きまして、ありがとうございます。」
「なに、最高機密エリアは君のセキュリティーレベルでは入れないからね。新しい執務室はどうだね?」
「執務室があるというのは確かに有り難いですわね。まだ、部屋になれるといった状態とは程遠いのですが…」
「そのようだね。」


男性が段ボールだらけの部屋を眺めて言う。
段ボールの置かれたソファーを見て軽くため息をつくと、
窓の縁に腰をかける。


「さて、どのような用件かね。」
「バイド化…バイドによる汚染についてです。」
「ふむ、聞きたい。…というよりは確認ということか。」
「はい、ヒラの研究員から主任になって、情報開示された機密を見ていたのですが。」
「それで。」


女性の無言の問いかけ。
この質問を続けていいのかどうか。
に対して、男性が許可を与え、続きを促す。
女性はそれを確認して、言葉を続ける。


「はい、一般研究員の間では、すべての物体を侵食する生命体。バイドに汚染された物体は、すべてを汚染すべくバイドとなる。一言で言うならばこれです。」
「そうだね。」
「主任権限で閲覧できる資料では違う側面が見えます。バイド化した人間は、意識が残っている場合があるのでは無いのですか?」
「この資料を君はその様に解釈したわけだね。」
「バイド化後の行動、反射を見ているとそう考えられる事例があります。
すべて部外秘に設定されていることからも、一般研究員には知らせるべきではない。
という恣意的な情報操作が行われていると考えられます。
この疑問について私はすでに確信を持っています。
問題は何故この情報を隠すのか。です。」


男は窓の縁から立ち上がって、反対を向き窓の縁に手をかけて外を見る。
まだ昼下がりの空、室内より明るく、中庭では軍服の人々が行きかっている。
女性は男性の後ろに立ち返事を待っている。
逆光になった男性を見つめ、挙動を見逃すまいとするようだ。


「まあ、立場のある人間ならば隠す事ではない。徐々に一般研究員にも情報開示をするつもりだ。」
「ならば、なぜ機密指定に?」
「時期の問題だ。一般人は意識や常識の転換に時間がかかる。
残念なことにTeam R-TYPEも一般研究員の間には、研究者としての思考ができない者もいる。
彼らはバイドについての研究に疑問を持っている。‘これは正しいことか’とね。」
「思想は個人の自由ではないのですか?」
「そうだね、でもそれを研究に持ち込んでもらっては困る。
そして我々の研究を一般常識などという、くだらないもので図らないでもらいたいものだ。
それが情報規制をした理由だ。
情報に触れるものは、その情報が重要かどうかを正しく判断できる人間でないとならない。」


その点君は合格だ。と言う男。
次第に、身振り手振りを交えて、会話というよりは語るように言葉を続ける。
観客は部屋の主である女性だけ。


「我々はTeam R-TYPEだ。我々に求められるのはただ一つ。
バイドに対抗する技術の発見、開発だ。正しい正しくないなど問題ではないのだ。」
「私にもその様な思考をしろとの命令でしょうか。」
「いや、君は問題ない。この情報を得て冷静に対応した、私にまず相談したことがその証明だ。
君が私に質問したのも君自身を納得させるためであって、正義とやらのためではないだろう。
それに、バイレシート主任。君は我々側の人間だ。
「私が…ですか。」
「一度必要とさえ認めれば、研究のためには手段を問わない。
君は、‘疑問がある’でななく、‘納得させて欲しい’んだ。君は研究をしたがっている。
だから君を主任に推挙したんだよ。」


男性はもう話す事は無いとばかりに、話を切り上げ、部屋を出る。
その後女性は、一時間ほど端末を睨んだままだった。




________________________________________




・ほのかな光 b

【暗い空間】


ワタシは敵を倒すために
戦闘機バイドシステムαを使った
何機もの戦闘機が落とされたが
なんとか敵の戦闘機部隊を壊滅させる事に成功した


彼らはなんなのか
その疑問は晴れない
その好戦的な態度はなんなのか
ワタシは彼らを戦闘文明と呼称することとした。


さあ明かりが見えた
あそこに行けばこの混沌とした状態について
何か分かるかもしれない
ワタシは光に向って進んだ







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あけましておめでとうございます。
作者です。
番外編を始めるにあたって、作風などについて変更を加えてみたのですが、
もし、読みにくい、分かりにくいといった事があればコメントで教えていただけると、幸いです。



[21751] 2 緋色の宇宙
Name: ツク◆2a9fd0bf ID:ec2c350f
Date: 2011/01/05 20:44
・緋色の宇宙


【緋色の宇宙 a】


気付くとワタシ達は星空の中にいた。
明かりを目指して艦隊を進めていた気がしたのだが、
知らない間にまどろんでいたのだろうか。


前は舷窓を見ていたら怒られた記憶がある。
あれは誰でいつの事だっただろう。
記憶の彼方を探していると。
もやもやと掴みどころの無いものとなってしまい、
詳細が分からない。


ただワタシを怒った人物だけは思い出した。
ワタシの副官だ。
それを思い出したとき疑問が湧く。
彼らはどこにいるのだろう?


ああ、なんだ。
ワタシは彼らがいつも傍に控えていた事を思い出した
大丈夫
彼らはそこに居る


遠くに赤い星雲が見える
なんという星雲だろうか
ずっと昔に学校の授業で習ったような気がするが思い出せない
幾重にも花びらを広げた様なその星雲は、美しかった。


あの美しい天体が
この宇宙で一時を輝いた星の終焉かもしれないと思うと
不滅なものはない事を実感させられる
ワタシ達の還るべき場所
地球は無事だろうか


ワタシが故郷に不安を感じていると
正体不明の機影が近づいてきた。
副官が警告を発する


『提督、敵襲です。戦闘文明の部隊と思われます。』


以前我々に問答無用で襲い掛かってきた戦闘文明だ。
戦いは避けられないだろう
ワタシは戦闘準備を命じた




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【本部防衛戦3カ月後_統合作戦本部】


地球最大の基地であり統合作戦本部を有するこの基地の広場には、
多くの将兵が礼装で整列しており、
ポールには地球連合国旗が半旗で掲げられている。


集団の前では、大仰な格好をした恰幅のいい老齢の男性が、演説している。
男性の後ろには大きな真新しい石碑。
『慰霊碑 バイド討伐艦隊』
功績を讃える文章と、鎮魂の言葉。
その下には提督以下、隊員の氏名が刻まれていた。


バイドとの戦闘が激化したころからか、
地球連合は戦死者個人の墓を造ることをやめた。
どの道、墓石の下にあるべきモノが無いことが殆どであったし、
一度の作戦で万を数える戦死者がでることさえあったからだ。
しかし、何も無いのでは残された者の感情のやり場に困る。
だから代わりに碑を建てた。
戦闘ごとに、部隊ごとや、乗艦ごとに、
その場で亡くなった構成員の名前と、どこの戦場でどうして亡くなったのかを記したのだ。


今でもその風習は引き継がれている。
大きな戦闘で、部隊が壊滅的被害を被った場合は碑を建てる。
特に大きな功績のあった部隊などの場合は、基地内や広場などに建てられることもあった。
親しむには威圧的過ぎるそれらは、将兵達からは「記念碑」などとあだ名された。


戦死者の家族には「彼は英雄であった」という一種お決まりの文面と、
その名前が記された墓碑のある区画の場所が知らされた。


男性の演説は続く。
季節はすでに秋。昼間とはいえ、じっと立っていると肌寒い。
鎮魂というよりは、その場にいる将兵を奮い立たせるための演説。
軍隊としては正しい姿勢なのだろう。
太陽系内のバイドが急速に減少しているとはいえ、まだ戦闘状態なのだから。


太陽系外縁部で、バイド反応を伴う大きな爆発を観測してから1ヶ月。
今まで太陽系内の天体、施設に根を下して、増殖を続けていたバイドも、なりを潜めた。
太陽系内のバイドが不活発になり、系外からの来襲もほとんど観測されない。


太陽系外縁部での爆発を観測して、すぐに近くを哨戒していた巡航艦が、
その周囲の宙域を探索して、残骸を発見した。
巡航艦は、それらを集めて持ち帰ると、本部に引き渡した。
本部ではそれらを、Team R-TYPEや技術部に解析させた。


バイドだったものの残骸
厳重に封印された箱
動かなくなった試験機を含むR機
そして、‘Fin Del Mundo’とペイントされた。赤い外部装甲の一部。
それら残骸は、艦隊が壊滅したにしては量が少なかったが、
次元の歪みが観測されたため、爆発の衝撃で異相次元に取り込まれたのだろうと、
結論付けられた。
生存者は発見されなかった。


結果、バイド討伐艦隊がバイドの中枢を討ったのだと結論付けた。


そして、彼らは英雄になった。


人々は噂した。
「‘終戦の英雄’が再度、バイドとの戦争にも終りをもたらした。」
「‘若き英雄’が太陽系外のバイドを討ち、‘終戦の英雄’が太陽系内のバイドを殲滅した。」
と。


もう少し慎重な、もしくは少し事情を知る立場にいる者達は、警戒を続けている。
「‘若き英雄’の時も、バイドが居なくなると思ったが、やつらはまた現れたじゃないか。」
「地球連合とグランゼーラの休戦は、太陽系開放同盟やバイドの圧力に対向するためだ。
それらがなくなった今、また人類は内戦状態になるのではないか。」
と。


いつの間にか演説は終わったらしく、演説していた男性は消え、将兵の多くも方々に散った。
しかし、少なく無い人数の将兵が献花をしたり、石碑に敬礼していた。


人々の思惑を飲み込み、秋の空は高く晴れ渡っていた。




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【緋色の宇宙 b】


ワタシは命令を出した。
戦闘文明の小型機を破壊するようにと。


前回の戦闘で分かっているとことして、
彼らの小型機は波動砲の様な兵器を装備しており、
不用意に近づこうものなら消し飛ばされる。
ただし、通常の攻撃は近接しないと使用できないようだ。


対して此方は、戦力が心もとない。
主戦力であるバイドシステムαすら数が揃わない。
フォースがあるだけマシといった体だ。
旗艦も以前の様な戦艦ではなく、輸送艦ノーザリーだ。


ワタシは昔のことを思い出した。
小さな部隊の隊長だった頃。
よく思い出せないが、ただ懐かしかった。


しかし、思い出に浸ってばかりはいられない。
敵は明らかに此方の戦力より強大だ。
地形を駆使して上手く戦わなければ。


ワタシは部隊を岩礁に隠しながら接近させた。
幸い此方のデビルウェーブ砲は障害物に強い。
岩礁の影から狙い打つ。
相手も此方を認識していると思うのだが、
彼らの主砲は直線軌道なので、
障害物に隠れるバイドシステムαに届くことはない。


小規模艦隊には小規模艦隊なりの戦い方がある。
ワタシはデビルウェーブ砲で撃ち減らした戦闘機に向って、
フォースを打ち込ませた。
弱っていた戦闘機には堪えるだろう。


そこで小型艇リボーが艦影を発見した。
戦闘文明の巡航艦のようだ。
曲線を多用した白い船体に、
そこだけ主張するようにアンテナ状の構造が飛び出している。
艦首に大きな筒状の構造が見える。艦首砲も装備されているようだ。
あれが司令塔だろう。
戦闘機を粗方始末したワタシは巡航艦に狙いを定めた。


艦首砲の射線に此方の戦力を晒す何てヘマはしない。
物陰から索敵を続けていたリボーが落とされたが、
戦力的には問題にはならない。
ワタシはノーザリーのデコイを作ると船底方面から近づける。
もしデコイであるとばれても自爆させれば良い。悪くはならない。


敵の巡航艦は艦首砲こそ使わなかったが、他の砲門を開きデコイを攻撃する。
艦首砲は温存したのか。
…しかし、艦首砲なら、射線を避ければなんと言うことはない。
私は大回りさせたバイドシステムαに指令をだす。
フォースシュート!


艦橋と思われる部分にフォースをめり込ませる。
巡航艦はオレンジに発光するフォースに触れた部分から破壊される。
一撃では仕留められず、追撃が入る。
フォースが装甲に空けた穴に、さらにフォースをシュートする。
巡航艦が内側から食い破られていくようで面白い。
念を入れて3回目。
気づくと、巡航艦はすでに反応がなく、巡航艦の動力が爆発した。


『提督、この宙域を制圧しました。わが軍の勝利です。』


副官が告げる。


ワタシは戦闘機と巡航艦を分析した。
残骸はひどく破解され、かつ高度に発達した技術が使われており、詳細はよく分からなかった。
しかし、収穫はあった。
戦闘機の方はコンパートメントを組み立てて製造しているらしい。
その戦闘機は44のコンパートメントからなっているらしく、
戦艦の方は兆に迫る部品から出来ているらしい。
ワタシは便宜的に戦闘機の方を四十四式戦闘機、
巡航艦の方を兆級巡航艦と呼ぶこととした。


それ以上の収穫はなかったが、
我々の部隊を強化する材料に位はなってもらおう。
ワタシは鉄くずとなっている戦闘文明の残骸を回収した。



さて、地球はどこだろう?






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『Billy don’t be a hero』って歌を、英語のリスニングでやらされた覚えがあるのですが、
執筆中に頭の中でずっとサビだけ再生されていました。
戦争で死亡=英雄って表現がなんとも皮肉ですね。

バイド提督は表現に制限が多くて書きにくい…
なので、番外編のメインは、途中に挿入されている閑話です。
なんかTeam R-TYPEが裏主人公になりそうです。




[21751] 3 群青色の宇宙 
Name: トク◆2a9fd0bf ID:ec2c350f
Date: 2011/01/07 03:01
・群青色の宇宙 


【群青色の宇宙 a】


気付くとワタシ達は別の星空の中にいた。
あの緋色の星雲付近での戦闘の後しばらく彷徨っていたのだが、
いつの間にか、違う星雲の近くに来ていたらしい。


宇宙の漆黒に群青色のベールが掛かっている。
穏やかに発光する青は、ワタシの心を静めてくれる。
しかし、ワタシは知っている。
ワタシの心が真に安らぐのは、
わが故郷、地球へたどり着いたときなのだと。


『提督、敵襲です。』


戦闘か、
前回、回収した資源から作った兵器。
評価もまだしていない。
この戦闘で分かるだろう。


敵はまたあの戦闘文明なのだろうか。
彼らは何がしたいのだろう。
我々の前に立塞がらなければ、攻撃することもないのに。



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【対グランゼーラ戦争中期_統合作戦本部会議室】


ディスプレイや音響機器などの設備はこれでもかと言うほど揃っているが、
装飾の類は少ない。軍事施設らしく機能を追及した会議室だ。
部屋の中央には将官以上の者が数名集まっている。


卓を囲むのは、壮年から老齢の男性ばかり。
すでに会議は煮詰まっているらしく、腕を組んで考え込んでいる者や、
資料を睨んでいるもの。周囲の様子をみてそっとため息をつく者など様々だ。


このままでは埒が明かないと思ったのか一人が切り出す。


「色々あるが問題は、要はこの艦隊を何処から引っ張ってくるかだ。」
「一から艦隊を新設するわけにも行かない。さすがにそんな時間や予算は無い。」
「宇宙艦隊は対バイドに残しておかなければならん。まだ、バイドの恐怖が去ったわけではないのだから。」
「誰だって自分の手駒を持ち出したくは無いでしょうな。なにせ太陽系開放同盟のための供物ですから。」


会議の参加者の間では若めの男が皮肉気に言葉を発すると、皆黙る。
この場で協議していたのは、対グランゼーラ戦において正面に立たせる艦隊の選定だ。


フォースを元に始まったグランゼーラとの戦争だが、現在はその意味合いが変わってきた。
地球連合政府対その統治に反対する革命軍というのが現状だ。
地球連合政府としては、反政府思想を持つ人間を一掃してしまいたいが、
ここまで規模が大きくなっては、参加した人間をすべて監獄に入れることなどできない。
だから、最近グランゼーラで勢力を拡大した、太陽系開放同盟と名乗る派閥に接近した。


太陽系開放同盟は革命軍のキースン大将の派閥であるが、
謀略を以てグランゼーラ本体を飲み込もうとしている。
すでにキースン大将はグランゼーラ内部で実権を握りつつある。


地球連合政府の方針はこうだった。


地球を中心に内惑星や火星などに拠点を持っている地球連合政府に対して、
グランゼーラ革命政府は太陽系外縁部を占領している。
さすがにこのまま全面戦争をして戦力をすり減らすことは出来ないし、
グランゼーラに参加した人全員を、思想犯として収容所送りにするわけにもいかない。


そこで、太陽系開放同盟を使う。
親地球連合として手綱をつけた太陽系開放同盟に実権を握らせて、
グランゼーラの本拠地、要塞ゲイルロズなど内側を治めさせて緩衝地帯とする。
そうすれば、グランゼーラの本流は太陽系外縁部に閉じ込められる。
数は減ったとはいえ、太陽系外から来襲するバイドの圧力は、
グランゼーラ本流を衰退させるに十分だろう。
あとは太陽系開放同盟を10年単位で同化、飲み込んでゆけばいい。


問題が一つ。
太陽系開放同盟が名実ともに権力の座に着くには、グランゼーラを支援する人々からの支持が必要だ。
そうしなければ、人々の心はグランゼーラ本流についていってしまうだろう。
開放同盟が名実ともにグランゼーラを手に入れるには、その力を示さなければならない。
グランゼーラを支援する民間人にも分かるような戦果。
グランゼーラの本隊を破った、または苦戦している敵を、太陽系開放同盟の手で打ち破る。
もちろん、打ち破られるのは地球連合政府から提供される生贄艦隊。
そして、太陽系開放同盟が完全に実権を握った後、休戦を行うのだ。


すでに餌は播いてある。
キースン大将との非公式会談は済んでいるし、
Team R-TYPEも独自に接触して、開放同盟を手名付けるために技術供与しているらしい。
あとは…、供物。
グランゼーラ本隊に勝って、太陽系開放同盟に負ける様に仕組んで、艦隊を派遣する。
そうなるように、舞台を整えなければならない。


今、この会議室ではその供物を選定しているのだ。
それぞれが自分の組織からは出したくない。
強大すぎてもダメ、弱すぎてもダメ。
できるならば、軍内の政治に参加していない者。
そんな、都合の良い部隊は早々転がっていない。
それで男達は悩んでいた。


「私に良い考えがありますわ。」
「君に発言権はない。技術屋として黙っていればいいのだ。」
「いや、Team R-TYPEもかかわりがない訳ではない。バイレシート開発部長、話したまえ。」
「ありがとうございます、閣下。」


会議室の隅に座っていた女性から声が掛かる。
会議室の前に移動して話し始める女性。


「まず、艦隊に拘る必要はありませんわ。艦艇の指揮が出来て、政治的にフリーならばいいのです。」
「グランゼーラ本隊には勝たなければならない。弱小部隊を送るわけにはいかない。」
「弱ければ、育てればいいのです。戦力を持たせればいい。」
「どこにそんな戦力が転がっているのか。」
「待ちたまえ、まずはバイレシート部長の話を最後まで聞こうではないか。」


「まず、独立部隊の中から候補選定を行います。それらを小規模艦隊でのコンペティション、
…演習をさせます。これの結果で、有能な司令官を選定します。
次に、戦力の話ですが、これに関しては我々Team R-TYPEが受け持ちましょう。
試験機を優先的に配属させます。この部隊には試作機の実験部隊を兼ねてもらいます。
艦艇に関してだけは本部に頼ることになりますが…」


それくらい構いませんよね。と微笑む開発部長。



この話はTeam R-TYPEの一人勝ちだ。
Team R-TYPEは専属の実験部隊を手にいれて、実戦で実証試験を勝手にやってもらえる。


他の出席者は面白くないが、それ以上の代案が出せず、
矛先が自分に向くのを恐れて発言できない。
Team R-TYPEにこれ以上大きい顔をされるのは腹立たしいが、
自分達が損をするよりはマシと言う打算もある。


「異議は…ありませんわね?」
「反論が無いなら、この案で行こうと思うが、いいかね。」
「これならば、誰も損をしません。みなが幸せになれますわね。」




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【群青色の宇宙 b】


やはり戦闘文明か。
今回は敵が違う。新たな敵だ。
いや、戦闘文明の戦闘機ではあるのだが、
四十四式戦闘機とは違う。


新しい戦闘機は両翼が前に突き出しており、
安定しなさそうな形状だ。
しかし、意匠はやはり戦闘文明のもらしく、
曲線を多用しており、白い。


どのみち戦うことになるのだろうな。
…やはり仕掛けてきた。
戦闘開始だ。


『提督、命令をお願いします。』


私はバイドシステムαとタブロックをだす。
これでようやっと、遠距離からの攻撃が出来る。


タブロックは新しく開発した人型の遠距離狙撃型のユニットだ。
タブロックの装備するミサイルは、射程が長く、威力も高い。
中型兵器ということで何体も製造できないが、一機でもかなり有効な兵器であり、
戦艦を持たない今は、貴重な遠距離攻撃の要となるだろう。
問題は索敵能力と機動力が低いことだ。索敵用のユニットと組ませて運用する必要がある。


私はデブリを避けてタブロックを置き、
小型機リボーを索敵機として前面に出した。
やはり主力は、バイドシステムαとフォースだ。


敵新型戦闘機は一気に飛び込んできた。
索敵範囲まで一気に詰めてくる。
お互いに主砲のチャージが溜まっていないので、
通常武装での攻撃が始まった。


小型艇リボーは戦力外として陰に隠し、
後ろからバイドシステムがミサイルで迎撃する。
フォースはまだ早い。
敵戦闘機はミサイルの隙間を縫うように進撃してくる。
敵機の群のなかで、何回か爆発が起こる。
敵機は余り減らせなかったようだ。
回避性能の問題と言うよりは、バイドシステムのミサイルは命中率が悪いことが問題で、
戦闘機相手であると中々当たらないのだ。


敵機はまだ攻撃してこない。
四十四型戦闘機の様に近接武装しかもって居ないのだろうか。
であればタブロックの餌食にしてやろう。
ワタシはそう考えて、タブロックの射程に入るように敵機を誘導する。


バイドシステムαは敵を引きずり込み、デブリに隠れる。
敵の主砲を避けるためだ。
バイドシステムαを追ってデブリに回り込もうとする敵機に、
タブロックのミサイルが側方から降り注ぐ。


敵の索敵外から打ち込まれたミサイルは、
比較的硬い戦闘文明の装甲も容易に破壊する。
先頭にいた敵新型戦闘機の破壊に成功した。


後続の敵機はタブロックの射程の手前で動きを止める。
バイドシステムαが死角からデビルウェーブ砲を打ち込む。
紫色のエネルギーが敵の戦闘機に達するその瞬間…
敵の主砲が煌いた。
敵の機首からでた光は二又に分かれてY字を描き、
デブリの影にいるバイドシステムを襲う。


一方的に蹂躙できると踏んでいたバイドシステムαは回避が間に合わず、
光に飲み込まれる。


互いの発射したエネルギーが拡散した後、
そこに残ったのは、バイドシステムがつれてきたフォースと、敵戦闘機が数機だった。


ワタシは味方機に敵戦闘機から距離をとるように指示をした。
デブリから退避するバイドシステム。
敵の主砲の方が高威力らしいので下らせながら、主砲を撃たせる。
どうやら、正面の射程では此方の方が有利なようだ。
デビルウェーブ砲それぞれが撃ちながら、下ると。
敵戦闘機も釣られて前のめりになる。


タブロック!
じわじわ前進を続けていたタブロックと、
釣られて近づいた敵戦闘機。
すでにミサイルの射程内だ。


タブロックのミサイルが再び打ち込まれる。
同時にバイドシステムの残機もフォースシュートする。
砕け散った戦闘機。


そのとき放っておいた小型艇リボーが伝えてくる。
またあの兆級巡航艦がいるらしい。
しかし、今回はタブロックがいる。
遠距離からミサイルを撃ち込む。
当然反撃はあるが、タブロックが潰される前に、
バイドシステムが接近してミサイルを撃ち込む。



これで邪魔者は居なくなった。
ワタシは前回のように敵の戦闘機を調査する。
此方のほうがコンパートメントが多いらしい。
55個なので五十五型戦闘機と呼ぼうか。
しかし、戦闘文明はゾロ目になにかを、感じているのだろうか。


私は兆級巡航艦の残骸を回収したあと。
あてのない帰路へついた。





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本部の罠。
挿話がどんどん黒くなる。

タブロック先生が出張りすぎです。



[21751] 4 バイドの巣窟
Name: ライ◆2a9fd0bf ID:ec2c350f
Date: 2011/01/13 00:47
・バイドの巣窟



【幻想空間 a】



我々がたどり着いた星は幻想的であった。




地球を探しているうちに、
その惑星を発見し、そこに降下することを決定した。
宇宙空間をあてどなく彷徨うことに開いていた我々は、
その星に地球の面影を探していたのかもしれない。


その星には大気があり、気候変動があまり大きくなく、
生物が生存可能な条件であった。
我々は僅かばかり、期待を抱いて地表を探索してみたが、
そこに人類の痕跡は無かった。


この星は地下洞穴が多くあったので、そこを探査してみる事にした。
苑で見たのが、この光景だ。
洞穴は白灰色の茂みに覆われていた。
それは顕微鏡で見る糸状菌を想像させる。
菌子柄や、菌核を思わせる奇妙な茂み。
ただし、その大きさは、μmではなく、10m単位だ。
小型機ならすっぽりと覆い隠せる。


地表とは違い、人類が生きるには凡そ適さない生態系だった。
しかし、私はその光景に一種の安らぎを覚えた。
何かこの幻想的な空間が、我々を誘っているように思えたのだ。
我々はこの地下空間の探査を開始した。


そして、この空間にいるのは、我々だけでない事が分かった。
この洞穴の主は、この星の原生生物であろうか。あれは…


ミッド?
ジータ?
ムーラ?
ベルメイト…?


私はその生物達をどこかで見た事がある気がする…
はて、どこで見たのだろう?
私はしばし、思考の海に浸っていたのだが、答えは出なかった。
そうこうしているうちに、原生生物達がこちらに向かってきたからだ。


彼らはこの洞穴を縄張りとしているらしく、我々に攻撃の意思を示してきた。
攻撃されるなら、殲滅しなくてはならない。
我々には地球に戻って、戦闘文明などの想定敵の情報を伝えなければならないのだ。
ここで彼らに滅ぼされるわけにはいかない。


私は艦隊に戦闘配置に付くように命令した。







_____________________________________




【本部防衛戦4ヶ月後_要塞ゲイルロズTeam R-TYPE研究区画】



―提督、いよいよですね。

―ああ、ここがバイドの中枢か…

―さすがにバイド帝星だけあって、すごい数のバイドがいますね。

―そうだな、ここを落とさなければ人類に未来は無い。なんとしてもこの戦いに勝たなくてはならない。

―そうですね。そのために人類の全戦力をあずけられたのですものね。

―そろそろだ。艦隊通信の準備を。




―艦隊全将兵へ

―ここまで来て、ためらうことは何もない。

―ただ進むだけだ。

―バイドを倒して、地球に還ろう。

―さあ、行こうか。




―提督、全艦戦闘準備完了です。

―では我々も往くとしよう。みんな、これが最後の戦いだ。準備はいいか!

―はっ、ロス艦隊総員、提督についていきます!ロス提督、命令を!

―決戦だ。敵はバイド中枢、漆黒の瞳孔!



ザー…


カチリ



「回収されたボイスレコーダの音声はこれで終わりです。この先は音声データが破損していて、再生不能です。」



ここは木星―土星間にある要塞ゲイルロズ。
グランゼーラ革命軍、太陽系開放同盟の手を経て、今は地球連合政府が管理している。
宇宙空間に建設された基地としては、破格の規模を持つこの基地は、
内部に食料生産プラントもあり、長期の滞在が出来る、まさに要塞だ。


その要塞ゲイルロズの機密区画の中にTeam R-TYPEの研究施設もある。
本来は近くの宙域にあったバイド研究施設、ギャルプⅡがその役目を負っていたのだが、
ギャルプⅡは放棄されて久しい。
バイドの圧力が減少した今、ギャルプⅡの復興を目指すとする動きもあるが、
まだ、実行に移されていない。
なので、Team R-TYPEは要塞の一角を間借りして、機密区画にしている状態だ。


大型の機器類を前に、二人の白衣を着た盤所が向き合っている。
女性は中年で仕立ての良いスーツの上から白衣を着ている。
男性は30代くらいで、高そうなシャツの上に汚れた白衣を着ている。
ブランド物の靴下と履き潰したサンダルがミスマッチだ。
二人の前にある机にはすでに温くなったコーヒーや、大量の端末、記憶媒体の山。
端末のうちの一つから出力されたデータはスピーカーに流れて、
過去に宇宙の果てで語られた会話を、今に届けていた。
その他の端末では、音声の波形や、その他雑多なデータが大量に表示されている。


「運がいいわね。回収できた残骸なんてそんなに多くないでしょうに。レコーダ類を拾えるなんて。」
「ええ、軍にも部品の型番を確認してもらいました。
このレコーダは正真正銘、バイド帝星に向かったロス艦隊旗艦のものです。」
「それが太陽系外縁部…‘終戦の英雄’率いるバイド討伐艦隊が消滅した場所で発見された。」
「バイド討伐艦隊の者とみられる残骸の中で、これだけ違うのが混じっていました。
まあ、バイド討伐艦隊がワープ空間で拾った可能性もありますが…」
「太陽系解放同盟討伐後、バイド討伐艦隊…当時は混成特別艦隊だったかしら…
まぁ彼の艦隊が、解放同盟討伐後にグリトニルから送った報告書では、その様な報告は無いわ。」
「でしょうね。」
「ふふ、あなたは拾っただけなんて思っていないんでしょう。レホス技術主任。」


レホスと呼ばれた男は、無邪気な笑みを浮かべて話しだす。
それはともかく、と続ける。


「このレコーダは、音声データを聞く限りこれだけのものです。」
「音声データ…ねぇ?あなたがそういう言い方をするということは、これだけじゃないんでしょう?」
「もちろんです。さすがにただのボイスレコーダだったら、部長へメールでデータを送って終わりです。」
「これにしたって、一般研究員や下っ端軍人には聞かせられない代物なんだけどね。」
「バイレシート開発部長をお呼びしたのは、その先があるからです。音声ではなくテキストデータです。」
「ふうん、どこにあったのかしら。一応これを回収した巡航艦の連中や、
軍の技術屋が一通り調べたんでしょう。」
「どこだと思います?部長。」
「レホス技術主任。最近私、お偉いさん方との会議や、
予算審査なん無駄なものにつきあわせられて、イライラしているの。」
「過度のストレスは脳の敵ですよ。」


笑顔を迫力のあるものに変えて、声を低くするバイレシートに対し、
レホス技術主任は気にせず軽口をたたく。
そして、若年の技術主任は笑みを深くして話し出す。
まるで悪戯を企む子供の様な顔だ。


「レコーダ内のノイズです。みんなこれを雑音として処理して消してしまうのですが、
このノイズこそが本当のお宝データです。」
「ふん、つまりノイズデータを分離、処理したら、テキストデータになったと。
で、そんな面倒な事をするおバカさんは誰かしら?」
「またまた、部長分かっているくせにしらばっくれて。
ロス艦隊のレコーダなんだから、ジェイド・ロス提督に決まっているじゃないですか。」
「へえ、レホス主任、あなたの推理を聞かせて欲しいんだけど。」


目の前でへらへら笑う技術主任を試すようにバイレシートが尋ねる。
どちらかというと、こちらも面白がっている雰囲気だ。
レホス技術主任はテキストデータを端末に呼び出して、差し出す。
バイレシートは受け取ると流し読みをする。


「あら、良いデータね。バイド化した人間の思考をここまで明確に記したデータはなかなか無いわよ。」


感心して語りかけるバイレシートに対して、
レホス技術主任は大げさな様子で、がっくりと首を落とす。


「えー…。なかなか無いってことは、すでにあるってことじゃないですか。結構な発見だと思ったのに。」
「甘いわね。でも、これに匹敵するデータは第一次バイドミッションのR-9パイロット一件だけよ。」
「さらに落ち込みますよ。10年どころじゃなく古いデータじゃないですかそれ。」
「まあ、R-9の彼の場合は、重度の精神汚染状態からバイド化までの過程が克明に記録されているから。
これに上回るデータはなかなか無いわ。」


「そんなこと僕に言ってよかったんですか?一応機密でしょう。一部にはダダ漏れですけど。」
「これを自分で気づけたら一人前のTeam R-TYPE研究員ってことよ。ようこそTeam R-TYPEへ。」
「やめて下さいよ。あーあ、やっと自分だけの発見が出来たと思ったら、出来レースだったなんて。」


不貞腐れたふりをする男と、面白そうに微笑む女性。


「あーもう、いっそ精神汚染体作っちゃいましょうよ。そうしたら良いデータとれますから。」
「そんなことをすれば、さすがに軍の上層部もケチをつけてくるわ。
あくまで偶然見つかた検体だから許されているのよ。」
「偶然、事故が起きればいいんですね。」
「あなたの悪いところは、目先の興味につられて目的を見失うところ。ちゃんと、目的を見なさい。
あと事故起こしたら解任するわよ。まずは研究計画を提出する事。いいわね。」


そう言って、女性は扉を出てゆく。
女性が扉を出たのを見送ってから、男も研究室の奥に消える。





端末にはテキストデータが表示されていた。





―見覚えのある場所…見覚えのある仲間達……だけど…なぜ?―





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【幻想空間 b】



私は見知らぬ星の原生生物らしきものを撃退した。
あの洞穴にいた原生生物達は、我々を襲ってきたため殲滅した。
そこでふと思う。
我々がしたことは地球人類を攻撃するバイドと同じでないだろうか?


私はその考えを振り払おうとして、気がつく。
地球人も同じではないかと。


人類の歴史は、戦争の歴史だ。
有史以来…いやもっと昔から人類は同族に対して侵略と戦争を繰り返してきた。
戦争を行うことで、人類は輝きそしてより高度な技術を手に入れてきた。
私は、人類が宇宙開拓をする中で、同じことを繰り返すのではないかと思っている。
未知のものに対する恐怖や探究心は、衝突や侵略を正義にする。
それがもたらす悲劇は二の次になるのだ。


こうも考えられる。
戦闘というのはもしかしたら、宇宙では普遍的なものではないか。
人類もその傾向を示している。
であるとすれば、宇宙でもっとも純粋な存在は、
‘純粋な悪意’であるバイドということになりはしないだろうか。


何を考えているのだろう、私は。


バイドに侵略されている地球人類である私は、バイドを否定すべき立場だ。
バイドの侵略は認められない。バイドが攻撃してくるなら、地球人類はそれを滅ぼすだけだ。
でも、いつか人類はもっと純粋な存在に進化を遂げる事が出来るのだろうか。



そこまで考えていたところ、洞穴の奥から原生生物が湧いてきた。
私はすでにここの生物と戦闘を起こす気にはならなかった。
彼らは彼らの居場所を守っているのだろう。
彼らの仲間を倒した我々が、この星の生物に恨まれていることには違いない。



早急に離脱しよう。





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もういやw
久しぶりに書いてみたら、登場人物がみんな狂ってた。
提督も、開発部長も技術主任も…なんぞこれ。
でも、これがR-TYPE。



[21751] 5 合体戦闘機
Name: ウチ◆2a9fd0bf ID:ec2c350f
Date: 2011/01/13 22:50
・合体戦闘機



【すれ違う宇宙 a】



原生生物達はさすがに宇宙空間までは追いかけては来なかった。
我々は宇宙空間に留まり、原生生物の残骸から新たな兵器を開発した。
中型艦艇ベルメイトと小型機ジギタリウスだ。
さすがに輸送艦ノーザリーだけでは心もとないからな。
現時点での明確な敵である戦闘文明に対するには、戦力が足りない。
なので、これからは、戦力を増強しながら進むことにしよう。


我々は再びあてどない帰路についた。
正直、宇宙空間で迷子になったなど笑い話にもならない。
しかし、止ることは出来ない。
私は約束したのだ。地球に還ると。
どれだけかかろうと必ず地球に還る。
そのために、ともかく地球への手がかりを探す。


そう決意を新たにしていると、
我々は比較的近い宙域に空間の歪みがあるのを感知した。
この宙域に太陽系はなさそうだ。
いっそワープ空間を利用して探索してみようか。
私は空間の歪みに向けて進路を取った。


しかし、我々が進路を決定した瞬間に、敵襲が伝えられた。


『提督、敵襲です。戦闘文明と思われます。ご命令を。』


上手くいかないものだ。




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【異層次元探査艇フォアランナ帰還半年後_月面基地ルナベース】



人類は宇宙に出てから半世紀ほどの期間で驚くべき発展を見せた。
人間という種が存在してより、離れたことの無かった、地球。
その外で生命活動が営まれ始めたのだ。
はじめは牽制しあって、遅々として進まなかった開発だが、
一度、地球外でも暮らせることが分かると、
人類は一気に地球を飛び出した。
地球だけだった生存圏は、一気に宇宙に広がった。


月面基地ルナベースや、月面都市セレーネが開発され、
地球外に半恒常居住都市が出来ると更にそれは加速した。


もっと多く、
もっと広く、
もっと遠くへ。


人類は拡大を続けた。
スペースコロニー群を建設し、他の惑星を改良して生存圏を広めた。
火星のテラホーミングが終了に近づき、火星都市グランゼーラが開発されると、
人類はふと気が付いた。
このままのペースで開発を進めると、じきに開発可能な惑星、衛星がなくなってしまうと。
人類は太陽系の外に眼を向けた。


人々は技術をつぎ込んで異相次元航行システムを開発した。
そして、今までSFの世界の話だったワープ航法が実現したのだ。
人類初の異層次元探査艇を太陽系外に送り出した。帰還予定は20年後だった。
その間も試行錯誤を繰り返し、着実にその生存範囲を広げてゆく。
木星衛星にまで足を踏み出したとき、外宇宙へ飛立った探査艇の帰還が伝えられた。


この年、地球圏は沸き立った。
人類初の太陽系外調査を行っていた異層次元探査艇フォアランナが、
20年にも及ぶ長旅から帰還したのだ。
彼らは新たなフロンティアを開拓した先駆者として人類に迎えられた。


フォアランナは外宇宙の色々な試料を持ち帰った。
エーテリウム鉱石や、外部から見た太陽系の写真、未知の物質…
その中の一つに、オレンジ色に輝くエネルギーの塊があった。


有史以来、地球人類がもっとも活気があり、栄えていた時代だった。


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「遠いところ、ようこそ、おいでくださいました。カミナ・アデランテ博士。私は地球連合政府直下の外宇宙防衛緊急対応室の室長で、トヨス・グラントと申します。」
「あんな行き先も告げずに、引っ張り出してきて、おいでくださいましたも無いものだ。」


簡素な応接室でにこやかにあいさつを交わすグラントと名乗った男と、
憮然としているアデランテ博士と呼ばれた中年の男性。
グラントは目の前の気難しい男にソファを勧めると、
内線でコーヒーを持ってくるように指示している。
グラントが近況などを尋ねて、機嫌の悪いアデランテが一言で返して、
次の話題に移るといった弾まない会話が続く。
暫くすると、女性がコーヒーを出しにきて、一礼して去っていく。
邪魔者が入らなくなったのを見計らって、グラントが切り出す。


「さて、本日ここにお呼びした用件なのですが、R機開発プロジェクトに携わってもらいたいのです。」
「R機…というと、宇宙空間機動計画の汎用作業艇開発プロジェクト…RX計画だったか。
確かフォアランナにも、そのシリーズの機体が工作機として積み込まれていたと思うが。」
「ええ、そのプロジェクトです。ただし汎用機としての機体開発はR-5で終了します。
博士に加わって欲しいのは、次元戦闘機としてのR機の開発です。
…これが仕様書です。」


資料を渡すスーツの男性。
簡素な資料に書かれた内容に、アデランテが目を見張る。


開発期間は今後40年。
単機で別次元に突入できる機体。
武装は最低で、戦艦の艦首砲クラス。
対バイド攻撃武装の所持。
機体はカタパルトから射出できるサイズとすること。
量産を前提とした機体とすること
Ect…


「何だね、このふざけた仕様書は? 40年計画?艦首砲クラスの武装?それよりバイドとは何だ?」
「博士。我々は本気です。これをご覧ください。
フォアランナが持ち帰った‘バイドの切れ端’と、その調査結果です。」


博士はグラントから分厚い資料を奪い取るように受け取ると、
むさぼる様に資料を読み、ブツブツと呟きながら、情報を読み取る作業に没頭する。
紙を捲る音が大きく聞こえる。グラントもアデランテ博士も声を発しない。
暫く、沈黙が場を支配する。
そして、アデランテ博士が顔を上げた。


「これが真実だとすれば、人類は宇宙からの脅威に晒されていることになる。」
「ええ、来年には対バイド計画を発令します。それとともにRX-projectは凍結。
変わりに新計画、Project R-TYPEへ移行します。
この計画にに求められるものは、フォアランナの工作機が採取した生命体バイド、
これへの対抗手段…バイドを殲滅できる兵器の開発。及び、そのためのバイドの研究。
Project R-TYPEの目的はただ一つ、バイドを駆逐し人類の安全を図ること。」


「人類のためといわれて、拒否するわけにはいかんな。」
「それでは、R型戦闘機開発班のリーダーになっていただけるんですね。」
「R型戦闘機開発班?これだから役人は…」


えっと言う顔をするグラント。
ここまで話して協力してくれないのかという表情だ。
博士は首を左右に振ってから、にやりと笑って言う。
ここに来てはじめて見せたアデランテ博士の笑顔だ。


「R型戦闘機開発班なんて野暮ったい名前は好かん。そうだな…Team R-TYPEはどうだね。」
「Team R-TYPE…ですか。」
「スタッフはどうするのだね?」
「一応ここに書いてあるメンバーを考えていますが、アデランテ博士の推薦があれば、その方でもかまいません。」
「遺伝生物学者に、物理学者、宇宙航行技術者、化学に純粋数学…ここに大学でも作る気かね?」
「最高の人材を集めます。これは人類の命運をかけたプロジェクトなのですから。」
「ふん、よろしい、わが人生をかけるのに相応しい研究だ。
宇宙空間用汎用機を作ろうとしたRX-Projectの始祖クライアント博士には悪いがね。」



異相次元探査艇フォアランナ、太陽系外探索より帰還。‘バイドの切れ端’を持ち帰える。
同時期、銀河系ペルセウス腕の中央付近で未知の生命体を観測。
バイドの基礎研究を開始。
地球連合政府は対バイド対策委員会を設置。
汎用作業艇開発計画RX-Projectを凍結し、
対バイド兵器開発計画Project R-TYPEに移行。
それに伴い開発班Team R-TYPEを発足。
翌年、対バイド計画を発表。



そして、40年後
第一次バイドミッション発動。
人類はバイドとの生存競争に突入する。




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【すれ違う宇宙 b】



やっぱり戦闘文明だった。
我々はやはり岩礁に隠れながら進む。
敵の持つあの強力な主砲は脅威だ。
あの戦闘機が出てくるのだろう。


我々は戦列を整える。
索敵は小型艇リボー
遠距離はタブロックと中型艦ベルメイト
中距離はバイドシステムαとジギタリウス
近距離でフォース
POWは待機だ。


これが、我々の戦力だ。
敵の主砲は強力なので、中距離に踏み込まれるまでに、
できるかぎり、数を減らしたい。
ベルメイトとタブロックで出来るだけ減らすしかないだろう。
索敵が重要になるな。


小型艇リボーは非常にもろい。
材料はそれほど必要としないので、
使い潰す勢いで、使っている。
R-9Eでもあれば良いのだが…ん?
R-9Eとは何だったか?


こんなことが最近良くある。
ふとした瞬間に、何か記憶の奥にあるものに触れるのだが、
それが何だか分からない。
記憶を手繰れば手繰るほど、薄らいでゆく。
私は何を忘れているのだろう。


『提督、敵機と接触しました。』


リボーが敵機と接触したらしい。
私は思考を切り上げ、指揮に集中する。


私が見たのは可笑しな光景だ。
四十四型戦闘機と五十五型戦闘機の群。
それだけなら別にただの敵なのだが、何故かその2機は合体していた。
四十四型の機首に五十五型が接続されているのだ。
四十四型の機動に寸分の狂いも無く、一緒に動くので
ただ超接近してアクロバットしているのではなく、
緊密に連結しているのが分かった。


どういうことだろうか。
陣形だとしても、あれでは後ろに居る四十四型の波動砲や、武装が使えないではないか。
五十五型はもしかして航続距離が短いのだろうか。
でも前戦ったときも、燃料を気にしている様子は無かった。
何なんだ?


『提督、戦闘文明の戦闘機が射程内に入りました。』


私は射程に入った戦闘機に向けてベルメイトの衝撃波や、タブロックのミサイルを放った。
敵は索敵外からの不意打ちで、最前列にいた五十五型や四十四型を一気に打ち落とす。
これにより、此方の位置はばれただろうが、気にすることは無い。
敵には遠距離攻撃の手段が無いからだ。


私が再度攻撃を命令すると敵の前衛部隊が崩れた。
しかし、その後ろに居る部隊が、捨て身で突進してきた。
あの位置だと、敵が此方にたどり着く前にもう一射できるのだが…焦ったのか?


敵の加速が及ばずバイドシステムα、ジギタリウスに囲まれかけたとき、
五十五型が一気に加速してきた。
!?
フォースを切り離して攻撃するときのように、
四十四型戦闘機は合体していた五十五型戦闘機を切り離してきた。
五十五型が一気に迫ってくる。戦闘機を飛ばすとはフォースシュートよりたちが悪い。
五十五型は主砲をこちらに向ける…!


衝撃


私はまともに敵の主砲を食らった。
タブロックもミサイルユニットを壊されたようだ。
今回の戦闘ではもう使えまい。


主砲を撃った五十五型は周囲のフォースに食われている。
私は自軍の様子を見る。損傷がひどいが、あと数初は耐えられる。
しかし、後から来た合体戦闘機は、次々に五十五型を切り離す。
その数10機以上。あれの主砲を貰うのは不味い。


私はとっさに輸送艦ノーザリーにデコイを生成するように命じた。
五十五型の進路を塞ぐようにデコイが生成される。
迫ってきた五十五型は、デコイに密着するように主砲を放つ。
空間が光り、デコイノーザリーのシェルエットが逆光に浮かぶ。


デコイは一斉射でぼろぼろに崩れるが、その後ろにいた私は無事だった。
五十五型の主砲はY字の軌道を描くので、正面への射程が長くない。
四十四型の主砲の様に正面に射程が長かったら、デコイ共々貫かれていただろう。


私は五十五型へ攻撃を命じた。
反応したバイドシステムαからミサイルの雨が降り注ぐ。
近距離武装しか持っていない五十五型は何も出来ずに破壊されてゆく。


被害はあったが、五十五型の7割を潰せた。
あとは、四十四型を遠距離砲撃で潰す。
タブロックがいなくなり手数が減ったので、打ち洩らしはあるだろうが、ともかく間引く。
集団にならなければフォースで追い散らせる。


ベルメイトの衝撃波で隊を分断し、バイドシステムαがミサイルや、デビルウェーブ砲で各個撃破する。
それでも取りこぼしたものは、フォースで潰す。
たまに敵の主砲に打ち落とされる者もいるが、全体としては我々が優勢だ。
私は岩礁の隙間に隠れさせていたリボーを、更に敵陣の奥に進める。
この何も無い宙域にこれだけの部隊がいるのだ。艦艇がいることが予想される。


艦艇発見の報告の前にリボーが消し飛ばされた。
これも良くあることだった気がするが、また記憶が失われている。
しかし、今は戦闘中だ。無視する。
リボーの居た座標にバイドシステムを急行させると、
やはりあの白い巡航艦、兆級巡航艦がいた。


しかし、護衛機のいない艦艇など恐るるにたらず。
衝撃波で押しつぶして、バイドシステムにデビルウェーブ砲を撃たせる。
兆級巡航艦は、内部から爆発してバラバラになった。


私は何時もどおり、敵の残骸を回収して、材料に戻す。
私の部隊も艦に戻して、修復している。
我々は空間の歪みに向って進む


さて、このワープ航路は我々を地球へと届けてくれるのだろうか。
私は少しでも地球へ近づくことを祈って、ワープ空間に突入した。


私は独特の空間を超える感覚を味わう。


ワープ酔いしないと良いのだが。





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今回の挿話は、本編の少なくとも50~60年以上前の昔話です。
前回の話は狂気具合が酷かったので、キレイなTeam R-TYPEを書いてみたかったが、
キレイなところを書く前に終わった。

ギャグがなさ過ぎて禁断症状がでてしまい、この話を書いている途中で電波を受信したので、
チラ裏にR-TYPEのネタ短編を投稿してみました。
あっちはFINAL準拠です。
『プロジェクトR!』って題名ですので、お暇な方は、どうぞ。

TACTICSシリーズの年表が欲しい…



[21751] 6 逆巻く空間
Name: ユウ◆2a9fd0bf ID:ec2c350f
Date: 2011/01/17 21:36
・逆巻く空間



【逆流空間 a】




我々が空間の歪みに近付くと、いきなり歪みが大きくなり、艦隊が誘引された。
不味い。空間の狭間に入り込んだら、どうなるか分からない。
私は艦隊に停止命令を出すが、歪みはさらに大きくなり我々の艦隊を飲みこんだ。


一瞬の混乱の後、周囲を見回すと様々な粒子が逆巻く空間であった。
何故、こんな空間に吸いこまれたのだろう?
我々を狙って引きずりこんだようにも思えるが…
前にもこんな事があったが、いつぞやの様な充足感は無い。別ものなのだろう。


周囲を観察して…ほら、瞳はいない。
でも替わりに私の目に入ったのは、
幾何学模様のフレームを幾重にも重ね合わせたようなデジタルウォールと、
半透明のキューブが連なった様な物体が2つ。ピンクとブルーの一対。
デジタル生命体グリッドロック…
彼らが我々をここに呼んだのだろうか。


『提督、前方集団、攻撃態勢に入りました。攻撃してきます。』


思考に沈みかけている私に、副官が警告を発する。
なるほど、こんなところを彷徨っている我々は丁度よい餌なのだろう。
彼らは、自分達とは異質な我々を狩って、自らの血肉とするつもりだろうか。
しかし、如何に彼らが腹をすかせているとしても、
私は私の艦隊を彼らの滋養として譲渡しようとは思わない。
彼らには、誰に手を出したのか分からせてやろう。


敵対してくる彼らに、私は攻撃命令を発した。




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【第一次バイドミッション終結後_軌道上R機開発基地】



「ライトニング波動砲を実装するとなると、波動エネルギーを一度電気パルスに変換する必要があります。
波動砲の制御部が大きくなりすぎるのです。本体に収まりません。」
「小型化に問題でも?」


基礎骨格だけのR機の前で白衣の男性が話し合っていた。
一人は首からかけたカードキーから、Team R-TYPEの関係者であることがわかる。
もう一人は、ゲストというカードキーを下げ、胸にはウォーレリック社のロゴを模したピンをつけていた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


第一次バイドミッション当初、Rwf-9Aアローヘッドは30機導入された。
世に言う‘R-9大隊’だ。
最新鋭戦闘機30機の開発と発注を、多くの軍事メーカーは喉から手が出るほど欲しがった。
それで得られる利益も重要だが、なにより、人類の救世主を開発したという実績がつく。しかし、R-9はTeam R-TYPE主導で作られ、外部者は一切関わることができなかった。
多くの軍事メーカーが開発計画に食い込もうと働きかけたが、下請け以上の役割は無かった。


軍事企業各社は第一次バイドミッション中から、次期計画に向けて自社を売り込んだ。
そこには、少しでも権益に食い込もうと、軍事企業だけでなく異業種からの参加もあった。
Team R-TYPEは、次期試作機として3機開発する事になっていたが、
政府から働きかけられ、その内の2機の開発で企業と共同開発することを了承した。
試作機開発をかけて、熾烈なコンペティションを勝ち抜いた2社は、
航空機メーカー・マクガイヤー社と軍事メーカー・ウォーレリック社の2社だった。


純粋Team R-TYPE製のRwf-9A2デルタ。
マクガイヤー社は、RXwf-10アルバトロスを作成。
そして、ウォーレリック社の社運を掛けた試作R機が、Rwf-13Aケルベロスだった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「規定の大きさに収まりません。小型化に成功してもかなりの大型になるでしょう。
高バイド係数フォースに対応するために、フォース制御部も大きすぎます。」
「単機突入の際に広域制圧が出来る兵器が求められていますので、ライトニング波動砲は必要ですね。
アンカーフォースも捨て難いですし…」
「しかし、どれかをオミットする必要があります。すべては採用できません。」


ふたりが手にする書類には、「Rwf-13A兵装(案)」とあった。
どうやら機体に乗せる兵装の容量について、検討している。
二人の背後には、関係者以外立ち入り禁止とかかれた区画があり、
覗き窓からは、オレンジ色の光が漏れだしている。対バイド兵器フォースだ。
中央の発光体こそ通常のフォースと同様であったが、明確に違うのはコントロールロッドだ。
まるで近づくもの全てを捉えんとするがごとく、黒い鉤詰めが付いていた。
関節のような機構があり、実際に稼動するようだ。


「どれも落とせないなら、いっそ次元突破用ブースターを取り外しましょう。ついでに、アンカーフォースの制御も有線にしてしまえば、フォースコンダクターは小型化可能です。」
「異相次元突入機能に支障が出ます。それは異相次元戦闘機としては問題があるのでは?」
「異相次元の壁を突破できないだけであって、穴が開いていれば通過できますし、
異相次元内の航行は可能でしょう。それならば問題ありません。」
「しかし、それでは穴が無ければ異相次元への突入と、帰還ができないのではありませんか?」


異相次元戦闘機R-9はもともと、単機での運用を考えられた機体だ。
異相次元への単機突入を考慮して、異相次元突破用のブースターを積んでいるし、
コストを無視して可能な限りの兵装を、職人芸で詰め込んでいる。
そのような機体が集められたR-9大隊の各機も、かなり性能にバラつきがあったらしい。
通常こんな機体は量産できないが、地球連合政府は膨大な資金と権力を持って断行した。
人類が滅亡するかもしれない、という恐怖が後押ししたのだ。


「フォースがあります。あなただって、あの事件のことは聞いているでしょう。
バイド種子の実験中にフォース研究施設の半径30kmを消し飛ばした事件です。
フォース…いえバイドは次元に干渉する能力を持ち、膨大なエネルギーを内包している。
フォースを半暴走させて不安定な空間に叩きつければ、理論上は次元の壁を越えることが可能です。」
「暴走って…自機も巻き込まれるのでは?」
「半暴走です。いや開放といった方がいいかな。適切に制御する技術さえあれば使えるでしょう。」
「…しかし……。」
「ウォーレリック社はR機を開発しに来たのですか?それとも邪魔しに来たのですか?」
「…。」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


・局地殲滅兵器暴走事故報告書(抜粋)

局地殲滅兵器暴走事故が発生。同時期にRwf-13Aケルベロス試作機が完成。
暴走事故鎮圧のためRwf-9A2 デルタ、RXwf-10 アルバトロスとともにRwf-13Aケルベロスが実践投入される。
ケルベロスは任務中に異相次元に突入、任務達成後未帰還。
同時に異相次元に突入したデルタ、アルバトロスのパイロットの証言から、
ケルベロスは異相次元に突入後、バイド中枢の攻撃に向い、その後消息不明となったとのこと。
同時に突入した2機は脱出直前に、大型バイド反応の消失を確認しており、
また、反応消失後に、デルタのパイロットがケルベロスのマーカーを確認しているため、
ケルベロスはバイド中枢を破壊後に、脱出に失敗して異相次元に取り残されたものと思われる。
バイド中枢の破壊により、該当する異相次元の状態が不安定になっており、
二次被害の可能性を考慮して異相次元内の捜索は断念。
30分後、該当異相次元へのリンクが途絶。
ワープアウト座標がずれた可能性を考慮してデルタ、アルバトロス両機のパイロットが志願し、
周辺宙域の捜索が行われたが発見できず、150時間後にパイロットの生存は絶望的であるとして、
ワープアウト宙域の捜索は打ち切られた。


異相次元からの脱出失敗の原因として、
・被弾による各種機能の喪失
・次元突破装置のオミット
・波動砲の特殊化
・フォースの喪失
などが考えられる。


兵器としての信頼性、安全性に疑問があるため、
軍部の評価機関より、Rwf-13Aケルベロスの量産機開発は一時凍結とされた。




________________________________________




【逆流空間 b】



私はこの空間に浮かぶ正体不明の障壁、デジタルウォールを盾に侵攻する。
なぜならさっきから濃紫のゲインズが陽電子砲を連射してくるからだ。
ゲインズ2の陽電子砲は強力ではあるが直進しかしないため、物陰に隠れる事で、難を逃れている。


こちらからもタブロックを中心に敵を撃ち落としているのだが、
やっと、4隊目を殲滅したところだ。
あと、2隊、10機か。
私があと少しでゲインズ2を平らげられると思った時、
グリッドロックの中から白いゲインズが出てくる。
白兵戦を専門とするゲインズ3だ。
どうやら我々をここから追い出して、砲火の中に叩きだしたいらしい。


私は考える。
こちらにも中距離武装はあるが、高速で動きまわるゲインズ3に当てる事は難しい。
残念ながら今の私の艦隊には有効な接近戦の出来る機体がないのだ。
今まで接近戦はフォースで対応してきたのだが、フォースは機動性が低く、
動き回るゲインズ3には追いつけないだろう。
何か策が必要だ。


ノーザリーデコイの自爆では数が足りない。一隻分の爆発では5機程度しか巻き込めないだろう。
遠距離から狙い撃てば、多少減らせるが、このままでは押し切られて突破される。
バイドシステムのデビルウェーブ砲などは、使い時を誤らなければ使えるだろう。
あとは…ともかくデコイで足を止めてからだな。


私はデコイをデジタルウォールの側に作り、ゲインズ3に対する壁とした。
揺れ動くデジタルウォールに潰されないようにデジタルウォールからは少し放してある。
ゲインズが来る…
迂回するために大回りすれば、必然的に速度が落ちるだろう。そこをフォースで狙う。
すでにフォースはデコイの後ろにスタンバイさせている。


しかし、デジタルウォールとデコイの隙間を何機かのゲインズ3は突破してきた。
1機、2機、3機、4…あ、潰れた。
デジタルウォールとデコイに挟まれて白いゲインズが爆発した。
でも、3機はフォース地帯を無視して本隊に近づいてくる。
不味い。本隊に中近距離兵装持っているのはジギタリウスしかいない。


ジギタリウスでゲインズ3を倒せるかは微妙なところだ。
しかし、私はジギタリウスにゲインズ3の相手を任せて、
私は敵の旗艦らしきグリッドロックに火力を集中させた。
敵旗艦をやれば此方の勝ちだ。
でもこのまま飛び出せば、ゲインズ2の陽電子砲に射抜かれてしまう。


私は旗艦からリボーを出して、未だに陽電子砲で狙ってくるゲインズ2に差し向ける。
綺麗な十字砲火が見えた。
もはや塵一つ残っていないが、十字の交点にリボーが居たのだろう。


問題ない。
資源さえあればまた作り直せるさ。


私はその隙に回りこむようにデジタルウォールの影からでて、照準をあわせる。
衝撃波。
ピンクのグリッドロックの中央にあるプリズムの様な構成物にひびが入る。
しかし、グリッドロックも端にある砲台で攻撃をしてきて、我々の旗艦の装甲を抉る。


『提督、敵艦の攻撃により装甲の30%を喪失しました!』


副官が焦った声で、報告してくるが、私は無視する。
狙うは敵のコア。
私はさらに衝撃波を、グリッドロックに叩きつける。
衝撃波発射も3回目を数えたとき。
キンという否な音が聞こえた気がして、グリッドロックをみると、中央部が完璧に陥没していた。
そして、一気にヒビが全体に回り、一瞬の後砕け散った。


私は勝利を確信し、更にもう一つのグリッドロックに攻撃を仕掛けようとしたとき、
今度は、周囲の風景がたわみ、一気に収束していく。





私が疑問を持って眺めていると、逆巻く空間は凝縮されて消えてしまい。
周囲はただの宇宙空間に戻っていた。
間違いない、あの空間に引きずりこまれる前にいた場所だ。


どうやら追い出されたようだ。
我々が簡単に餌になる存在でないと気が付いたのだろう。
私は気を取り直して、先に進む。


さあ、今度こそワープ空間の入り口だ!


我々は地球を目指して、空間のゆがみに入っていった。 



=================================
なんで挿話がケロちゃんかって?
それは久しぶりに某動画サイトでY-TYPE⊿を見てきたからです。
本当はパイルバンカーシリーズの開発風景で、
狂気に染まってきたTeam R-TYPEを書く予定だったんですけどね。
プロットは無視するものです。

Team R-TYPEってはじめっから狂科学者集団ではなかったと思うんです。
始めは、理想もあっただろうし、健全な組織であったかと(前回の挿話)。
でも、組織が膨らめば考え方の違いも出てくるし、予算と権限が増えれば、中の人で傲慢になる人もいる。
腐れ開発チームの始まりです。



[21751] 7 ワープ空間の戦闘
Name: ニイ◆2a9fd0bf ID:ec2c350f
Date: 2011/01/27 21:39
・ワープ空間の戦闘


【跳躍空間 a】



今後こそワープ空間に入れた。
これを抜ければ地球に近づけるかもしれない。
そう思うと、自然と足も軽くなる。
地球から遠ざかっている可能性もあるが、
そうだったなら、もう一度この宇宙を探せば良い。
時間に終りはない。いつかはたどり着けるさ。


今の私は機嫌が良い。


ワープ空間といえば、私が思い出すのは…
そう、あの太陽系開放同盟だ。
彼らの艦隊はワープ空間で壊滅し、
たったひとりを残して、次々に次元の歪みに飲み込まれていったが、
何処へ消えたのだろう。
この広い宇宙のどこかに彼らもいるのだろうか。


私達の艦隊は宇宙を彷徨いながら、地球を探している。
もしかしたら、あの歪みに飲まれた人のうち、
一人くらいはどこかでめぐり合えるのではないか。
彼らは我々と敵対していたが、今なら分かり合える気がする。
そんなことを考えた。


『提督、敵襲です。』


我々が進むワープルートに巨大な兵器が立ち塞がっている。
あれは…また、頭がもやもやする。
ちゃんと思い出せ。


…バイド。


そう、そうだ、あれは人類の敵バイドだ。
我々が滅ぼすべき敵なのだが…
何故今まで忘れていたのだろう?


どうやらあの兵器群はバイドに侵食されているようだ。
我々に向けて、攻撃の意思を示している。
行く手を拒むバイドは排除しなければならない。
それでは戦闘を開始する。


…そういえば今回はワープ酔いにならないな。
私の三半規管も成長したらしい。




_____________________________________




【本部防衛戦1ヵ月後_本部工廠機密区画】



「バイド係数安定、規定レベルまで上昇しました。」
「内部装甲活性化、キャノピー感応膜反応良好。」
「保護溶液排水。」
「機械フレームと生体部品の拒絶反応なし。順調です。」
「被験者、バイタルグリーン。接続問題なし。」
「よし、そのまま出力を戦闘レベルまで上げてね。計器から目を離さないように。」


その場の指揮を取っているのはゲイルロズから移って来たレホス技術主任。
品の良い上質なシャツ、しわの無いスラックスと隙の無い格好の上に、
汚れた白衣を着て、踵の潰れたサンダルを履いてトータルバランスを台無しにしている。


そこにあったのは異様な物体だった。
キャノピーは緑色、機体は紫で、何よりも異様なのは、
その機体の装甲の一部には明らかに機会や金属で無い部分が見られたことだ。
遠目に見れば、R機特有の洗練されたデザインではあるが、
その有毒植物や動物が持つ警戒色の様な、カラーリングがまず目に付く。
接近してみると、キャノピーの外側に‘何か’が張り付いている。
極めて有機的な構造の‘何か’は、半透明で内部は肋骨の浮き出た胸板のようだった。
ゆっくりと伸縮を繰りかえす様子は、生理的嫌悪を感じる。


機体にはマークが付いていた。
一部の研究施設や、フォースロッドなどの器具につけられるマークだ。
…バイド汚染の危険性を示すマーク。


BXwf-T ダンタリオン
フォースのバイド係数上昇が頭打ちになり、波動砲の純粋な威力にも天井が見えたとき、
考えられた構想が、R機自体へのバイド素子の添加だった。
バイドに秘められた攻撃性やエネルギーをフォースだけでなく、機体自体にも応用したのがこの機体だ。
機体自体の攻撃能力に加えて、広域掃討可能な波動砲を備えている。
バイドは精神感応を起こす能力をもち、パイロットの思考をダイレクトに反映できる。
Team R-TYPEは各分野の専門家を招集し総力を結集し、この機体の開発に取組んだ。
ダンタリオンとはソロモンの悪魔の一柱をあらわす名前で、知識をつかさどる悪魔のこと。


「戦闘出力まで上昇しました。」
「被験者、バイタル低下していますが、接続には問題ありません。」
「バイド係数安定。その他ステータス良好です!」
「出力固定して。10分の継続出力テストに移行するから。」


「5分経過しました。出力安定。」
「バイド係数、その他良好。」
「被験者バイタル、イエローゾーンに突入しましたが、問題は起きていません。」
「イエローなら問題ないよ。試験を続行して。」
「あと4分です。」


「時間です。10分経過しました。」
「出力、バイド係数、その他ステータス問題なし。」
「被験者バイタルイエロー。脈拍、血圧が低下していますが、重大な障害はありません。」
「よろしい、出力を待機状態まで落してって。」
「出力低下、…40%……30、……20……10……待機状態です。」
「問題は?どう?」
「ありません。」


「成功だ!」


誰かがそう言うと、周囲からうわっと歓声が上がる。
目の下にクマを作った白衣の研究員たちが、ガッツポーズをしたり、抱き合ったりしていた。
何処から持ってきたのか音だけの無煙クラッカーが鳴らされる。
さすがに実験室内でシャンパンを開ける者はいなかったが、ちょっとしたお祭り騒ぎだ。


その横で防護服を着た数人がコックピットに近づき、コックピットを開放する。
まず、ドロリとしたゲル状の物質があふれ出す。
ゲルの中に沈んでいたのは、体に密着する薄いボディスーツを着た女性だった。
服は裸体を隠すためというよりは、全身に繋がれているケーブルを接続するための器具といったように見える。
まだ歳は若そうだが、頭髪は全て剃り上げられており、瞳も閉じられている。
顔色は半透明のゲルが絡まっていて緑色に見える。


防護服を着た作業員が、慎重に服に付いたプラグを抜いていき、
呼吸補助機と、首筋に繋がった太いケーブルだけ残して脇にあった台の上に横たえる。


「バイタルイエロー!想定の範囲内です!」
「よし、洗浄後、経過観察を続けておいてね。」
「分かりました。」
「貴重な被験体なんだから殺さないように。殺したら君が次の被験者だからね。」
「!は、はい、被験者を第3実験室に搬入します!」


周囲で研究員達が騒いでいるので、レホス技術主任とスタッフは怒鳴りあうように会話する。
コックピットに入っていた女性が搬出されると同時に、白衣を着た男性が入ってくる。


「あ、モリエンド所長。バイド添加試作機の実験成功おめでとうございます。」


研究員らから声を掛けられたのは白髪の老齢の男性。
深いしわの向こうから人懐っこい瞳が覗いており、
聴診器でも持っていれば優しい町医者といった風情だ。
老博士はゆっくり頷いて、研究員達を労っていく。


「君達も良くやってくれたね。今日は追試も無しにして、皆でお祝いをしようかね。」


そういうと、更に盛り上がる白衣の群。



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後片付けをする研究設備を見渡しながら、防護ガラスで守られた壇上に彼女らが居た。
Team R-TYPEの幹部研究員バイレシート開発部長と、この研究施設の所長モリエンドだ。
バイレシートは、スーツで決めた服装の上に白衣を着ており、
白衣が無ければ、やり手の40代キャリアウーマンといったところだ。


「モリエンド所長。実験成功おめでとうございます。」
「ありがとうございます。バイレシート部長。
しかし、この区画が破壊されなかったのは不幸中の幸いですな。
「あら、当然ですわ。そのために工廠の地下にこんな施設を作ったのですから。」


窓からのグロテスクな風景を除けば、一般的といえる応接間の様な部屋で、
Team R-TYPEの上層部に位置する男女が話している。


「しかし、まさか、あのテロリストどもに付いて行った連中が、ここまでの技術を育てたとはな。」
「まったくです、BBSなんて技術を実戦レベルまで引き上げていたとは、私も驚いています。」
「バイドバインドシステムですか、縛るとは言いえて妙ですな。
たしかに、彼らはバイドの表層しか縛っていなかった。破壊本能はほぼそのまま。」
「暴走すれば、まずは一番近いものに襲い掛かるのは必定ですね。安全策を怠るからあんなことになるわ。」
「まったくですな、何万年と人が飼いならしてきた犬だって人に牙をむくことがあるのに。
轡も噛ませないで、紐で結んだだけでバイドを飼いならした気になるとは、なんとも愚かな。」


老博士が大仰な様子で、嘆いてみせると、
中年女性も老博士も、互いにクスクスと笑いあう。
しかし、二人ともその目は笑っていない。


「あの英雄提督さんがBBSのデータ持ってきてくれて良かったですわ。
もっともラストダンサーには間に合わなかったから、アレに積み込んであるのは従来型なのですが。」
「まったく、ダンタリオンの方が先に設計したのにロールアウトがこんなに遅れるとはの。」
「間に合ったから良しとしましょう?」
「そうですな。ダンタリオンとライフフォース。これが出来れば、人類は新たなる地平に立てる。」


好々爺の様であった老博士の瞳に炎が燈る。
メラメラと燃える若い火ではなく、青く静かに…しかし決して消えることの無い火だった。




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【跳躍空間 b】


敵はファインモーション。その周囲には小型バイドが多数群がっている。
ファインモーションはその船体に比べて収容容量が小さい。
バイドの群としては小規模なものだ。
陣形からしてあの艦がバイドの旗艦なのだろう。


私の取るべきは、敵旗艦の破壊だ。
旗艦を破壊すればバイドは補給機能が弱まり掃討が楽になる。
物質の密度の低いこの空間では、いかに強力な自己複製能力を持っていても、
物質に溢れる通常空間より遅くなる。
本来単体で…いや素子だけで増殖可能なバイドが旗艦を欲するのは、これが原因ではなかろうか。


私は、フォースを装備させたバイドシステムα、アンフィビアンに突撃させる。
この前作ったゲインズはまだ温存する。
基本的に陽電子砲がチャージしないと運用に困る機体だからだ。


『提督、敵旗艦後退します。』


ん?
バイドのくせに逃げる?
なぜ?


バイドは破壊衝動をもっている。
敵を認めると、貪欲なまでに襲ってくるはずなのだ。
あれはバイドではない?
バイドの変種?
我々は敵と認識されてない?


疑問が次々に沸くが、無視だ。
やつらの様子が違おうと関係ない。
あれは我々の敵、バイドだ。
敵は滅ぼさねばならならない。


私はなお突撃させようとしたが、すぐに命令を取り消す。
ファインモーションの後ろに、グリッドロックを含むバイドの一団が見えたからだ。
このまま突撃させればバイドの群の中で孤立しかねない。
ここは陣形を整えて周囲の小型バイドから打ち減らしていくべきだ。


私は旗艦であるベルメイトを中心に小型機を展開して、進軍した。
何時もどおり、主砲の打ち合いになるが、
此方には長距離射程のベルメイトとタブロックがいる。
ファインモーションの取り巻きであった小型バイド群は殲滅した。
艦が無ければ、バイドは個に過ぎない。
索敵も困難な状態ではこちらの長距離攻撃を避けるすべは無い。


しかし、そうしている間にファインモーションは完全に射程外に逃げてしまった。
私は亜空間機であるアンフィビアンに後を追わせる。
戦闘ではなく、索敵を続けて敵の状態を明らかにしておくためだ。


グリッドロックと合流する気だろうか、
壊滅こそ無かったがダメージを受けた機体が数機あるので、
一度旗艦に下げて、今度はゲインズを前面に押し出して進軍する。
グリッドロックは手数が多いバイドなので一気に破壊したいのだ。

私は索敵を続けながらグリッドロックに狙いを定める。
グリッドロックはその場に留まっている。
あちらは大型だ。索敵能力に優れているだろう。
先ほどのように一方的に打ち据えるわけには行かない。
初撃のゲインズの陽電子砲で、できるだけ弱らせたいものだ。


もう少しで、ゲインズの射程だ。
効果的に、しかし敵より先に撃たないと。


…今だ!撃て!


グリッドロックの中央のコアに、加速された陽電子の束が数条、叩き込まれる。
コアは破壊こそされなかったが、半壊しており奇妙な音を発している。
しかし、グリッドロックの周囲にある種子は無傷で存在する。
虎の子であるゲインズは、グリッドロックの反撃が怖いので後退させる。
グリッドロックがその種子から攻撃を放ってくる。
周囲の小型バイドも動き出した。


ジギタリウスは種子の攻撃をフォースで受け止めながら接近し、
射程に捉えると、フォースを小型バイドに向けて切り離し、グリッドロックに主砲を放つ。
ジギタリウスの主砲は威力が弱いが、半壊したコアに止めを刺すくらいなら問題ない。
甲高い音をたてて、グリッドロックのコアが崩壊する。
続いて、周囲のブロックが崩れ落ちていった。

ジギタリウスが小型機に投げつけられたフラワーフォースを回収しようと、
小型機群に不用意に近づき、主砲で吹き飛ばされていたが、趨勢に影響は無い。


プチプチと残党を潰して、ファインモーションを追いかける私達。
アンフィビアンに後を追わせているので、見失うことは無いが何処に行こうというのか?


我々の旗艦ベルメイトは余り足が速くない。
ファインモーションとの距離は中々縮まらない。
アンフィビアンを収容してから、敵を見失わないように気をつけながら追撃を続ける。
敵は殲滅だ。


暫くおっかけっこを続けた後、袋小路に追い詰めた。
…どうやら空間が不安定だ。
大きなエネルギーをぶつければ、通常空間への穴をあけられそうだ。
ちょうどいい。


私は此方に反転しかけているファインモーションに向けて、
全射線を集中させる。
その身で受け止めきれないほどのエネルギーを抱いて、
ファインモーションがはじけ飛ぶ。


それと同時に空間も割れる。


『提督、通常空間に復帰しました。現在位置は不明です。』


静かな宇宙。
我々は通常空間に戻ったらしい。
ここは地球の側のなのだろうか?


先ほどのファインモーションの破片が宇宙空間に飛び散って来た。
欠片には恒星のマークの周囲にLiberation Unionと標された歪んだエンブレムが…




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【 !!!! 】


認識:次元振動およびワープ反応を確認。
行動:索敵モードへ移行。


認識:対象を確認。
検索:対象を惑星破壊兵器B1亜種と確認。
認識:同時間内移動を確認。該当次元には接触せず。
判定:他時間からの当時間への侵略は認識できず。通常ワープと判定。
判定:脅威度判定 - 。行動規範に適合せず。
行動:待機モードへ移行。




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原作だと最後までバイドぼけしたままなのですが、提督が徐々に覚醒してきていますね。
更新が開いてしまったのは、ハイパー鬱タイムだった所為です。申し訳ないです。

今回の挿話は、ダンタリオンです。バイドが「純粋な悪意」ならば、
Team R-TYPEはカウンターパート、「人類の狂気」としての役割があるように思います。
Team R-TYPEの狂気というのは、裏を返せば、危機に瀕した人類の狂気であるわけで。
バイドの淡々とした悪意に対して、人類の狂気の結晶R機とフォースで戦う。
救いが無い…

そういえばPSPでEDF2が発売されるようですね。携帯機しか持ってないので、うれしいです。



[21751] 8 残滓
Name: タソ◆2a9fd0bf ID:ec2c350f
Date: 2011/02/01 21:08
・残滓



【穏やかな宇宙 a】




ワープ空間を抜けると通常空間であった。
バイドの気配はない。
静かだ。


いや元々宇宙空間では音は届かない。
静かというのは慣例的に、能動的な活動を示さないものについて用いられる。


私はどちらに行こうかと考える。
周囲の宇宙は静寂に満ちていて
目に付くような天体などは見当たらない。
さて、どうしたものか。


私は思考を続ける。
ここの所、早く地球に帰ろうと、気ばかり早っていた。
少し落ち着いて考えてみよう。


まず…我々の目標は、地球に還ること。
あのとき約束した。みんなで還ると。
そして、戦闘文明やバイドが迫っていることを警告しなければならない。


手段だが…
こればかりは、行き当たりばったりにならざるを得ない。
我々は現在位置を見失っているのだ。
ともかく、巡航しながら手がかりを探すしかないだろう。


現状、迷子。
…そう言うのが一番適切だろう。
いい大人が集団で迷子というのは、いささか切ない響きがあるが、
事実なのでしかたがない。


つまり、我々は宇宙を彷徨うしかない状態。ため息が出そうだ。
しかし、私が諦める訳にはいかない。ポジティブに考えないと。


次に懸案事項。


まずは、当然バイドだ。
今のところ、大集団は見ていないが、散発的に戦闘になっている。
あのグロテスクな生命体は、警戒を要する敵である。


次に戦闘文明。
我々に問答無用で戦闘を仕掛けてくる、攻撃的な異文明だ。
数度戦闘になっているのだが、機体は不思議な形状をしているものが多い。
今のところ、兆級巡航艦、四十四式戦闘機、五十五式戦闘機が確認されている。
フォースこそもたないが、戦闘機同士が合体する。
敵意をむき出しにして攻撃を仕掛けてくる、バイド並みに警戒を要する敵といえるだろう。
彼らは…


『提督、敵襲です。戦闘文明の戦闘部隊と思われます。』


…戦闘文明か。噂をすれば何とやらだ。


あれだけの文明を持ちながら、
分かり合えないのは非常に悲しいことだ。
だが、彼らは攻撃を仕掛けてきている。
我々に敵対するならば、相応の対応をせねばならない。


さあ、戦闘準備だ。




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【本部防衛戦1ヵ月後_本部工廠機密区画】



Team R-TYPEの意義。
結成当初は「次元戦闘機開発班」というだけだったが、
バイドの研究を続けるにしたがって、規模が大きくなるにしたがって、
徐々に目標に修正が加えられた。
細かい事項が付け足されるが、大目標としてのTeam R-TYPEの意義は
『人間がバイドの束縛から逃れて、真の自由を手に入れること。』


第一期評価では、単機で突入機能を持ったR機の完成。
第二次Project RXの達成を持って完了。
これ以降、Team R-TYPEは大規模計画Project R-TYPE直属機関となる。


第二期評価では、波動砲機能の拡張と、フォースの改良。
Project Deltaの達成(一部凍結)をもって完了



現在推進中の第五回評価後の目標は、
全てのバイド・状況に対応できる能力を持った究極互換機の完成。
計画名はOp.Last Dance


究極互換機開発プロジェクトが秘密裏に発令され、周囲が気付かない内に達成された。
Rwf-99 ラストダンサー
それが究極のR機の名前だった。


「ラストダンサーの意義は、全てのバイド・状況に対応できる能力。
あれはあれで完成されたR機だ。無為に手を加えて、あの機体を汚すこともあるまい?」
「Rwf-99に搭載した型は、バイドフォースを一時的に飼いならすためのもの。
でも、ダンタリオンに搭載したのは機体自体をバイド素子に馴らすためのもの。ですか。」


ダンタリオン試作機はすでに実験室に移されていて、
ヒラ研究員達は消え、防護服を着た作業員達が後片付けをしている。
バイレシート開発部長とモリエンド所長はまだ施設にいた。


「…ラストダンサーの次はどんな踊り手なんだい。」
「‘Curtain Call’と‘Grand Finale’という名前にしようかと考えています。」
「カーテンコールとグランドフィナーレか。役割は?」
「カーテンコールというくらいですもの、もちろん顔見せですわ。これまでの我々の技術をすべて注ぎ込み、後世に残すための箱舟です。博物館にでも展示しようかと。」
「いいねえ、私も博物館の館長なんかをして老後を楽しみたいよ。で、グランドフィナーレは?」
「まだ、秘密です。」


静かな時が流れる。
実験室の作業音は防護ガラスに阻まれて二人の元には届かない。


「第六期評価での目標は、バイドのコントロールについてだったか。」
「ええ、人類はBydo Bind Systemではなく、Bydo Control Systemを手に入れました。
今はまだ一部組織を利用するだけですがいずれは…」
「バイレシート部長、私はバイドとともに生きてきた。
バイドという未知のものに興味を抱き、怒り、怯え、逃げ惑い、逃げ場が無いと知って理解しようとした。
でも、ここにきてバイドを人類の支配下に置くことができるかもしれん。」
「ええ、人類はバイドを従える。」




_______________________________________




【穏やかな宇宙 b】



この穏やかな宇宙で思考に沈んでいたいが、
攻撃文明は我々がここに存在することさえ許す気はないらしい。


比較的岩礁の多い地帯で、大型の岩礁が浮かんでいる宙域と、
小型の岩礁…デブリが漂っている宙域とがある。
攻撃文明も我々も大まかな互いの位置は認識している。
ならば、足を取られるデブリ帯より、岩礁地帯に隠れるのがいいだろう。
こちらも見通しは効かない事は変わりないが、
岩礁のなかに亜空間機アンフィビアンを隠しておけるからだ。


今のところ、攻撃文明では亜空間潜行できる機体は確認されていない。
兆級巡航艦を解析したところ亜空間バスターなども装備していなかった。
もしかしたら、彼らには亜空間潜行の概念・技術が無いのかもしれないと、私は考えている。
もしそうならば朗報だ。
地球圏では亜空間バスター、ソナーの登場とともに、戦術としての地位が下ってしまった亜空間戦法だが、
亜空間技術を持っていない文明にはアドバンテージとなるだろう。
何しろ、対処法を持っていなければ、一方的に索敵、包囲だって可能なのだ。


もちろん、接触されれば通常空間に引き戻されてしまうので、
絶対的有利という訳ではないが、このような岩礁地帯での効果は絶大だ。
対攻撃文明への切り札となりえる。


もちろん、我々が知らないだけで亜空間技術を持っている可能性はあるので、運用には慎重を要するが、
今のところ確認されている機体、船舶に亜空間潜行機能がないことだけは事実だ。
今回の敵は比較的小規模のようだ。検証を行ってみよう。


私はアンフィビアンを多く布陣する。
フォースを機首につけて泳ぐアンフィビアンの編隊。
私は岩礁の出入り口となりうる箇所に亜空間機を配置した。
これで、ある程度の質量を持つ機体はあの隙間を抜けられない。
一見何も無いし通常索敵にも反応しないが、亜空間機が塞いでいるのだ。


接触したり、亜空間機の索敵範囲に入ればすぐに感知できる。
亜空間潜行に関する知識があれば、直ぐにその場を離れようとするだろうが、
要所にはゲインズを潜ませておく。
待ちの戦術はあまり性に合わないのだが、損害が少なくなる戦術を取るべきだ。
ここのところ特に攻撃的な指揮が多かった気がするしな。


次々に亜空間に潜行していくアンフィビアンを見て、私は思考の海に浸る。
作戦中に他のことを考えるのが不味いことは分かっているのだが、
遥かな故郷を思い出す行為は、戦闘ばかりしている私を慰めてくれる。


今回思い出したのは、小さい頃に見たテレビジョンの映像だ。
まだ、地球の海が工業汚染に晒されておらず、生命が満ちていた頃の記録映像で、なんと2Dだった。
そのなかにでてきた深海魚が、目の前で虚空に溶けていく亜空間機にそっくりだったのを急に思い出したのだ。
暫くぼうっとアンフィビアンたちを眺めていたが、ふと思う。


亜空間機は…あんな形状だったか?
もっと、機能美と力強さを兼ね備えた…

‘ウォーヘッド’?

不意に浮かんだ名前。
私は何か…とてつもない思い違いをしているのではないか?
旅愁で満ちていた私の心は、急に不安に覆われた。
これ以上はダメだ。戦闘中に司令官が不安げな顔を見せるわけには行かない。
私は記憶の残滓を振り払った。







『提督、亜空間機が敵機と接触しました。』


罠にかかったのは四十四型と五十五型の合体戦闘機だった。
先頭の集団がまず亜空間戦法に引っ掛り、後ろも混雑を起こしている。
私がゲインズに合図を出すと、陽電子砲が白い戦闘機の群に打ち込まれる。
相手も主砲を限界までチャージしていたらしく、盛大に爆発する。


あの戦闘機群は亜空間機に接触して混乱していた。
想定外の出来事だったのだろう。
予想通り、戦闘文明には亜空間潜行の概念が無いのかもしれない。
…ならば、わざわざ教えてやることはない。
教訓を得た機体を返さなければ、ばれる可能性も小さくなるだろう。
私はトドメにフォースを打ち込ませる。彼らを殲滅するためだ。


敵の前衛部隊は亜空間戦法により殲滅できた。
しかし、奇策は2度は使えない。
次の部隊は警戒して岩礁宙域を迂回すると思われる。
恐らく、岩礁を迂回してデブリ帯を通ってくるのだろう。


敵の進路が分かるのはいいのだが、デブリ帯は見通しが利かない。
うっかり敵の主砲の射程に入れば、此方が消し飛ばされる。
ゲインズの装甲はそこまで厚くないので、運用は出来ない。
ここで考えられるのはリボーを使った特攻偵察と、
旗艦の索敵機能をフルに使って察知する方法だ。


リボーがある意味一番安全なのだが、敵機発見に興奮した敵が、
乱射しだすと乱戦に巻き込まれる恐れがある。
旗艦で警戒しながら漸進しよう。
アンフィビアンは…燃料にはまだ余裕があるな。
アンフィビアンは岩礁宙域を進軍させた。敵の様子を知りたかったのだ。
ただ、接触して亜空間戦法のカラクリに気付かれるのもイヤなので、安全第一だ
岩礁から身がはみ出ないように注意して進ませた。


我々が、岩礁宙域とデブリ帯からじわじわと漸進していると、
敵機が索敵に引っ掛った。副官が先ほどと同じ合体戦闘機だと告げる。
敵機は主砲以外は遠距離武装を持っていない。
私の部下達はそっと息を潜めて命令を待つ。先走るものはいない。
彼らは私の自慢の部下だった。


撃て


彼らが射程に納まると私は指令を出す。
ずっと狙いをつけていた敵に向けてトリガーを引くだけ。
敵の半数を初撃で破壊すると、一気に乱戦に持ち込む。
戦闘機動を取る相手に主砲を叩き込むのは至難の業だ。


ターゲットが遠方にあるうちは、ターゲットが加速したり進路を変更しても、
機首をほんの少しずらすだけで対応できる。
しかし、格闘戦をすると互いの相対速度は非常な大きなものとなる。戦闘機は非常に高い加速性能を持つからだ。
戦闘機同士の格闘戦では、レールガンを数撃って敵機に当たることを願うしかないのだ。


目の前を駆け巡る戦闘機。
こうなってしまうと旗艦ベルメイトの衝撃波も当たらない。
敵味方入り乱れてのドッグファイト中にそんなものを打ち込めば、
かなりの確立で同士討ちになることは想像に難くない。


私は無視して進軍する。
先ほど亜空間潜行中のアンフィビアンから、兆級巡航艦を発見したとの報が入ったのだ。


亜空間戦法の情報を持ったこの艦を逃がすわけにはいかない。
私は索敵されないギリギリの位置に旗艦を停止させ、
ゲインズを出す。
後は一気に畳み掛けるだけ。


撃て


ゲインズの陽電子砲が戦闘文明の巡航艦に突き刺さり、白い装甲が爆ぜていく。
私は通常空間にアンフィビアンを戻して更に追い討ちをかける。


オーバーキルと思われるほどの集中砲火が止むとそこにあった船体は、
形をとどめていなかった。
戦闘機隊からも敵を殲滅したと連絡が入る。


再び、穏やかな宇宙が戻ってきた。




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今日の睡眠時間は1時間15分。徹夜明けは筆が進みます。

研究者にとってTeam R-TYPEというのは一種の理想だと思います。
たぶん徴兵は免除(軍属?)。国家の事業で、実験し放題、実証は軍が請け負ってくれます。
知りたい。やってみたい。っていうのは研究者の根本的な欲求ですので、
技術的にできるのに、やっちゃいけないというのは、とても悔しい。
倫理、予算の枷が無ければ…と思う研究者はいると思うんです。

…と、ここまで書いて、「人類のため?なにそれ?研究したいからするだけ。」
ってさらりと答えるのが、真のTeam R-TYPEだと思い直した。



[21751] 9 腐敗都市
Name: レカ◆2a9fd0bf ID:ec2c350f
Date: 2011/02/08 22:28
・腐敗都市


【腐敗都市 a】




あの穏やかな宙域は心地が良かったが、いつまでも留まってはいられない。
資源であるバイドルゲンの塊を回収して先に進むこととした。
資源を使い、私は旗艦を新たにする。
赤い装甲のコンバイラだ。


やはり戦艦はいい。艦隊という感じだ!
提督と呼ばれるからには戦艦に乗りたいものだ。
輸送船や、巡航艦の艦隊ではこの気持ちは味わえない。





久しぶりの戦艦に、はしゃいでいたら副官に叱られた。
動作確認と言ってフラガラッハ砲をチャージしたのが、いけなかったのだろうか。
無性にテンションが上がってしまった言い訳ではないのだが、
このコンバイラになにか私の心に訴えるものがあるのだ。


この感情は…
―懐かしさ
―敵意
―恐れ
―哀憫
―焦燥
―憧憬…?


なんだろう、色々な感情が沸いて来るのだ。





旗艦を新調しようと、迷子に取れる手段というものは限られるもので、
結局、思いつきで進路を決めて、今日も我々は彷徨っている。
遭難したら動かない。という格言もあるが、救援が望めない状況なので動くしかない。


暫く進む内に、私は一つの惑星を見とめた。
上空から探査したところ、どうやら都市があったようだ。
『あった』というのは、知的生命が活動しているにしては反応が小さかったからだ。


我々は見知らぬ星へ降下した。
そこで分かったのだが、この星には地球人類と同じような知的生命体の都市があったと思われる。
残念ながら今は廃墟になっているようで、生命体の気配はない。
腐敗し澱んだガスが底に貯まり、都市そのものが死んでいるかのようだ。


私は久しぶりに見る人の生活の名残を見て、なぜこの街は廃墟になったのだろうと考えた。
施設を見れば地球人類並、もしくはそれ以上の文明を誇ったはずなのだ。
これだけの文明が滅びなければならなかったのか。
外部から侵略を受けたのか?
内戦などで自滅したのか?
ヒントになるようなものは無い。


その時、我々に接近してくる一団の反応があった。
無人の都市と思っていたが、違ったらしい。
この星の本来の住民の後に、都市を支配しているのはバイドのようだ。


私は皆に戦闘準備を命じた。




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【本部防衛戦1年後_バイド研究所ベストラ】


「もし人間がその思考を保ったまま、バイドの能力を手に入れられたとしたら。そう思わないか?」
「いきなり何を言っているのか、理解できない。」


呆れたようなバイレシートの声に、ちょっとした思考実験だ。と男性は答える。
男性の首から提げるカードキーにはTeam R-TYPE技術部長ハチャマルクとあった。


「君もご苦労だね、研究施設を飛び回っているそうじゃないか。」
「ええ、すでに連絡機が専用機になってるわ。あなたはベストラに居つくつもり?」
「ああ、やっとベストラが復旧したんだ。ゲイルロズや本部地下の様に狭いところは嫌いだね。」
「まあ、物理的に独立した大型研究設備はギャルプⅡとベストラくらいですからね。」
「ギャルプⅡは君ら開発部が多くて肩身狭いし、都市の近くであまり大規模実験は出来ないから、
我々、基礎研究を生業とするものはベストラに集うというわけだ。」


ベストラ研究所は天王星衛生軌道上にある独立した研究施設で、バイド研究施設としては最大を誇った施設だ。
かつてフォース実験中に、バイドの制御に失敗、半崩壊したため内部のバイドごと封印されていた。
しかし若き英雄こと、ジェイド・ロスと彼の艦隊はベストラの封印を解き、
内部で増殖していたバイドを激戦の上駆除した。
その後地球連合軍は、太陽系内のバイドを追い出すために、主のいなくなったベストラを滅菌した。
そして、若き英雄の活躍によってバイドの脅威が去ったため、そのまま封印していた。


しかし、グランゼーラ戦争後期から、太陽系内に飛来するバイドの増加が見られた。
地球連合政府は、戦争を継続するために、この事態を隠蔽していたが、
このことを知る立場にあったTeam R-TYPEは、これ幸いとベストラの再建を提唱。
バイドの大規模侵攻には間にあわなかったが、バイドの危機が未だ去っていないことを知り、
政府関係者はこのバイド研究施設の再建を推し進めた。
現在ベストラ研究所は、バイドの基礎研究設備となっている。
フォース開発など応用研究はすでにギャルプⅡに移転していたからだ。


「この前ロスデータについてモリエンド所長と話したのだが、面白いことを思いついたんだ。」


ロスデータとは、太陽系外周で回収された、ロス艦隊のレコーダからもたらされたデータの総称だ。
その中にはレホス主任が引っ張り出したバイド化したロス艦隊のデータも入っている。
ロス艦隊がバイド化していたという事実は隠蔽され、彼等はバイド帝星攻略後未だ行方不明となっている。
極秘資料として、バイド化後の情報を記録した特にテキストデータは厳重に秘匿されている。
データを閲覧できる研究員達からは、皮肉を込めて‘記憶の残滓’などと呼ばれている。


「バイド化後も人間は意識を色濃く残す場合がある。嗜好もある程度残る。
ここで仮定しよう。もし、バイド化しても完全に意識を残す技術があったなら?
バイドの脅威から逃れられ、人類は肉体の脆弱性や寿命から解き放たれるのではないか。」
「さっきの話の続き?戯言かと思っていたわ。
フォースさえ毛嫌いするグランゼーラ主義の奴らが聞いたら、発狂しそうな思考実験ね。
でも前提が破綻していないかしら。バイドは素材を組換えてバイド体とする。
それは人間とは言えない。遺伝子すらバイドに侵食されている。」


「すでに前世期から出生前の遺伝子治療は行われている。理論上は遺伝子改変に問題はない。
それに人間の遺伝子が無くても自己増殖は可能だ。バイドの自己修復機能があれば自己増殖だって可能なはずだ。」
「バイド化は、人類の進化ではないわ。バイド化すればそれは人間ではなくてバイドよ。」
「それは君の考えだね。しかし、我々は研究者だ。我々は常に可能な技術を示して行かなければならない。
私は可能性の一つを追求しているだけ。ついでに言うと、この思考実験は息抜きついでのお遊びだ。」


ため息を吐いてバイレシートは目の前の同僚のことを、マッドサイエンティストだと再確認した。
昔からどうでもいい絵空事を非常に真面目に考察するのだ。妄想にしてもレベルが高いから手に負えない。
自分も結構な実験を行ったりするが、思考はまともなはずだ。とバイレシートは考えていた。
そして、もう一度ため息をつくと話題を切りだす。


「で、BBSはどうするの。」
「バイドバインドシステムだったか。あれは目新しい技術というほどの物ではないよ。
もともとコントロールロッドの性質を、バイド体そのものに拡大したものだ。
知っているかね。旧世紀の21世紀に、マウスの脳に装置を取り付け、操縦するという実験があった。
しかし、マウスの思考を自由にできた訳ではない。感覚を騙し、反射を誘導しただけだ。
それでも、マウスの操縦はできたんだ。バイドをコントロールロッドで操縦するのも同じ、
コントロールロッドで、バイド種子の破壊衝動に指向性を持たせているだけだ、
バイドの性質そのものを変えているわけではない。21世紀のマウスと発想は変わらんね。
技術は進歩したが、発想は変わらないというわけだな。しかしバイドというのは実に…」


「ハチャマルク技術部長。私はあなたの生徒ではないし、あなたの講義を聞きに来たわけではありません。」


研究の話になると止らなくなる同僚のクセを思い出して、バイレシートは無理やり割り込む。


「ふむ、そうだな。君ならこんなことを常識だな。これは失礼したようだ。」
「あなたと話していると疲れるわ。ともかくバイドバインドシステムは実用には耐えないのね。
バイドコントロールシステムの方の経過は?筋道ついた?」
「BCSか。難問だね。」
「一応、何個か案があるんでしょう。」


「BCS第一案は順調…とは言い難いね。
プロトタイプは出来たのだが、強い攻撃性は残るし、外形変化も著しい。
バイドにも別物として認識されるのでもちろん攻撃を受ける。
長時間の起動状態…というより確率で本来のバイド素子が活性化し元の性質に戻る。
パイロットにも高負荷がかかるので、現段階では使い捨て状態だ。
単体で利用するなら、やはりコントロールロッドの様な補助器具で拘束する必要がある。」


「BCSの第一案である、『バイド特性の強制制御』は足踏みね。」
「そうだね。君に第二案の予備実験の成果を見せよう。」
「第二案は…『侵蝕能力の制御が可能な穏健性バイド素子の新レースの開発』だったわね。」


二人は研究区画の最奥の巨大実験エリアに移動する。
その間に3つのセキュリティーチェックを受け、防護服に身を包む。
非常に大きい広間を電気駆動の作業車にのって進む。
奥にあったのは実験槽。そこには5mくらいのバイド体が培養されていた。


「ドプケラドプス。」
「そう、その幼生だ。土星衛星基地のグリーズから回収した欠片を培養したんだ。」


「生命は遺伝子の記述に添って増殖、再生する。
ドプケラドプスになるという情報はないはずなのに、あの欠片はドプケラドプスを再生する。
回収した欠片にある何かに誘導されて再生しているんだ。
まあ、当たり前だな。数あるバイドの形質がすべて遺伝子に書かれているわけない。
誘導に関係しているのは素材…取り込まれたものの思考も関与しているかもしれない。
バイド素子は、バイド体を形成している限り、バイド体を再生し続ける。
バイド体以外にバイド素子が付着し発芽できる状態になると、全能性を取り戻す。
全能性を取り戻すと、バイド素子は周囲のものを侵蝕してバイド化させる…
バイドの最大の脅威は…」


「侵蝕と次元移動能力。」
「そう、でもバイド体を構成している内は侵蝕しない。
素子がバイド体から引き離されると、侵蝕という本来の特性を発揮する。」
「バイド体を構成している間に侵蝕しだしたら、バイド体同士で食い合うことになるわね。」
「そう、そこで第二案の『侵蝕能力の制御が可能なバイド素子の新レースの開発』だ。
なにかバイド体を構成している素子の全能性が発現しないように抑えるスイッチがあるはずだ。
これが入りっぱなしになる変異体を作れば、非常にバイドをコントロールしやすくなる。」
「これは10年計画ね。」
「今は、この培養櫓を使って比較的穏やかな系統を作って、代を重ねてレースを固定している。」
「…長いわね。さすがに10年かけて結果が出るか微妙な研究を待って入られないわ。」


「この研究が成功すれば、対バイド用バイド兵器として人類の有力な戦力になるだろう。」
「我々の目的は『人間がバイドの束縛から逃れて、自由を手に入れること』よ、
バイドをコントロールすることではないわ。Project R-TYPEは絶対に失敗するわけには行かないの。
あなたには残念だけど、プランBを採用させて貰うわ。」
「プランB。短絡的であまりスマートじゃないな。」


チューブだらけになりながら培養液の中で浮かんでいるドプケラドプスを見上げる二人。
その時バイレシートにイヤホン型の通信機から呼び出しが入る。
小さな声で受け答えをしてから、モリエンド技術部長に向き直る。


「呼びだしよ。私を庶務か何かだと思っているのかしら。じゃあいくわね。」
「おつかれ。君と話すのは楽しいから、歓迎するよ。」
「研究以外興味の無いあなたに言われるのは微妙ね。」


バイレシートは実験エリアを出て防護服を脱いだ後、そのまま振り返らずに、
後ろについてきたモリエンドに告げる。


「…そうそう、Team R-TYPEはプランB…Rwf-101が完成ししだい解散する予定だけど、
バイド研究所は軍の研究施設になる予定よ。基礎研究は必要ですからね。」
「軍属は堅くて嫌だなあ。でも私から研究を取ったら何も残らないから仕方ないか。」


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『…確かに、我々人類はバイドに抗うための兵器「フォース」の開発に成功した。
しかし、その反動がこのようなバイドの暴走を引き起こし、多くの人命を奪ったのだ。
いったい何のための兵器か…。
これに懲りて、人類が自分たちの手に余ることに手を出さなくなればいい。
この「ベストラ」と言う名の施設は、そのことを我々、人類が忘れないようにするために残るだろう。
かつての役割を忘れ、ひっそりと…。』

―航海日誌、ロス艦隊ジェイド・ロス提督―


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【腐敗都市 b】


迫ってきたのはボルドタイプが一隻と、小型バイド。
さすがに戦艦コンバイラの索敵機能は格段に良い。
リボーいらないな、解体するか。


ボルドタイプの加速性能、索敵範囲、格納容量はすでに知っている。
私は有り余る索敵能力を持って、敵の索敵範囲ギリギリにつけた。
チャージされた状態で配置したゲインズで、遠距離からボルドに砲撃を加える。


忍び寄って、一気に叩く。
反撃を貰う前に叩き潰す。
メジャーな奇襲のやり方だ。


旗艦コンバイラの主砲であるフラガラッハ砲は、まだチャージが済んでいない。
ミサイル、レーザーをメインに攻め立てる。
接敵から間もないことから、相手のボルドも主砲のチャージが終わっていないだろう。
私は正面からボルドを打ち据える。主砲がこないならわざわざ回り込む必要が無い。


発射


周囲の小型バイドが動き出し射撃を加えだしたが、我々は全兵力、あちらは先遣隊。
戦力差があり、初戦は比較的楽に通れた。


やはり搭乗するなら戦艦がいい。
半分以上は気持ちの問題なのだが、こう戦場を見渡せるというか、優越感がある。
そもそも戦艦とは、敵を威圧することに大きな意味がある。
バイドが威圧されるとは思わないが、味方に与える安心感は戦場に置いて大切なものだ。
司令官としても、硬く大火力を持った戦艦に乗っていることで、指揮に余裕がでる。
敵の主砲1~2発で落ちかねない輸送艦では、前線で思い切った指揮はできないのだ。


小型機の掃討はバイドシステムαやジギタリウスの出番だ。
…正直ここの所、敵の数が多くなり、これらの機体では正面勝負は辛くなって来たのだ。
なので、戦艦の攻撃後の討ち漏らしや、主砲チャージのキャンセルがメインになっている。


奥の方から、バイドが居ると思しき反応がある。
私は陽電子砲のチャージを終えたゲインズを船内に格納して前進する。


都市の内部は底面にガスがたまっており、機動兵器の脚を取られそうだ。
私はできる限り、都市の天井付近を進む。
ガスの中は砲撃やレーザーが減衰するので避けている。
バイドに乗っ取られた砲台が何門かあるようだ。


小型機が飛来する。
長射程を誇るコンバイラで打ち据えると、バイドシステムが食らう。安定してきたな。
ちなみに今回は進軍する必要があったため、足が遅く積載に時間のかかるタブロックはお休みだ。


そうこうしている内に、壁に行き当たった。
この閉じられた都市は壁で外部と遮られている。
出入り口は底面の開口部だけのようだ。
底面には濃い腐敗ガスが貯まっており非常に戦闘がしづらそうだ。
コンバイラは開口部をくぐれないので、小型機で進軍させることになりそうだ。


よく見えないが、出入り口付近には小型バイドの反応がある。
壁の向こうは壁に遮られて索敵にかからない。しかし、大型バイドがいるのはこの向こうだろう。


さて、どうしたものか。
ガスの中にいるうちに頭を押さえられて、一方的に攻撃されるのは避けたい。
ただでさえ、峡路を抜けるので戦列が乱れるのだ。
コンバイラは巨大すぎる船体のため支援は出来ないが、せめて索敵はしたい。
危険だが、亜空間機に壁貫けをさせて、索敵をさせよう。


亜空間にアンフィビアンを溶け込ませ、壁を透過させる。
壁から機首だけ出して案全域を確認してから、ゆっくりと索敵すると、
直にバイドの旗艦を発見する。


『提督、ボルドタイプ敵艦を発見しました。旗艦と思われます。』


副官がアナウンスしてくれる。
亜空間機からの情報ではボルドガングのようだ。
比較的大きな艦だ。普段ならそこまでの敵ではないのだが、
ただ、都市出口のすぐ上にいる。
腐敗ガスに蓋をする感じで待機している。


戦闘機を出しても視認性、機動性がガタ落ちであり、出口で渋滞が起きるだろう。
高威力の主砲では腐敗ガスに引火しかねないため、ガス内で主砲は撃てない。
亜空間機アンフィビアンを迂回させて背後を取ることもできるが、
数が揃わないので、撃沈は出来ないだろう。


………泥臭いが、ひたすらミサイルで攻撃しかないな。
私は戦闘機にガスの海に潜ることを命じた。


バイドシステムαやジギタリウスがフォースをつけて腐臭漂うガスに潜っていく。
ついで、アンフィビアンもボルドガングに触れないように注意して裏手に回りこむ。
相手もさすがに巡航艦クラスだ。艦首砲さえ撃たないが、ミサイルが雨あられとガスの海に降り注ぐ。
ガスで命中率の落ちたミサイルは、それでも運の悪い戦闘機に当たって爆発する。


戦闘機隊はひたすらに耐えてガスの中を進む。
全機がボルドガングを射程捉えると、一気にミサイルを発射する。
同時に、フォースを切り離してボルドガングにぶつける。
裏手に回っていたアンフィビアンも少数ながらガスに引火しないように主砲を発射する。


暫くミサイル合戦が続く。
さすがに戦闘機の群にミサイルを撃たれているだけあって、敵艦の動きが鈍くなる。
その隙を突いて、ジギタリウスが一機ガスの海から駆け上り、近くにあったフォースを回収しながら、
壁と、ボルドガングの隙間に機影を摺りこませる。
そして、フォースシュート。


触手を持ったビーストフォースが敵艦のコアに向って飛び込む。
はげしい音が響きコアが停止すると、ボルドガングは形を失いながら腐敗ガスの中に消えていった。
戦闘機はすでに逃げていたらしく、ゴミの固まりに潰されたものは居なかった。
あのボルドガングもいつしか腐り落ちて、この腐敗した都市の一部となるのだろう。


私は、この都市を包むガスこそが、この星の文明を築いた者達の成れの果てではないかと考えた。


地球は大丈夫だろうか。
宇宙を旅して帰ってきたら、人類は滅びて違う種が栄えていたという古典を思い出した。
彼らは当初、あまりに違う地球を故郷と認識できなかった。


私は…大丈夫だ。
地球の思い出はしっかり、胸に刻んである。


―そびえ立つ摩天楼
―黄昏に染まる海面
―暮れなずむ空
―沈む夕日

―私の還るべき街…


私はあの夕暮れの都市を思い出していた。






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バイド提督の動かしづらいこと…最近は覚醒してきたので以前ほどではないのですが。
それに比べて、腐れ開発チームはきびきび動いてくれて助かります。
今回の挿話は微妙です。学術的な話を分かりやすく書くのは難しいですね。
あ、挿話にでてきたマウス電極実験は、実際にあった実験です。
分かっていたとはいえ番外編は、ほとんどTeam R-TYPE編という、恐ろしいことになりそうです。

あ、そうそう、寝不足で筆が進んだので、チラ裏の「プロジェクトR!」も更新しました。



[21751] 10 燃え上がる連星
Name: ラカ◆2a9fd0bf ID:ec2c350f
Date: 2011/02/14 00:15
・燃え上がる連星


【二つの太陽 a】



今、我々の前には接近した二つの恒星がある。
2つの恒星は互いに影響を及ぼしあい回転し、ダンスを踊っているようだ。
ダンスの激しさを伝える激しい炎柱…プロミネンスが生き物の様に立ち上がっている。
見とれていると思わず吸い込まれそうになる。
この熱量の前には戦艦の装甲など、ものの役に立ちはしないだろう。
天然の核融合炉なかでは、物質など直ぐに蒸発してしまう。


ここに来てみたのはなんとなくだ。
我々は腐敗した都市を辞し、まだ見ぬ宇宙を再び彷徨っていた。
宇宙の大半は静寂が支配しているが、いつまでも続くその静寂は苦痛にも似ていたから、
地球人類には関係が無いと知りつつも、恒星や惑星に立ち寄るのかもしれない。


我々の想いに関係なく、二つの太陽は活発に活動を続けている。
まるでこの場所の時間だけが進んでいるかのように感じた。
二つの太陽を眺めていると敵が現れた。
恒星を挟んで向こう側から戦闘文明の艦隊が現れたのだ。


また戦わなければなるまい。
私は戦闘文明の艦隊へ進路を取る。
相手も此方を認めたようで、進路を変えてきた。
恒星の間で争うことになりそうだ。




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【地球連合軍南半球第一基地】




Team R-TYPE局長が真新しい建物の前の壇上に立ち演説している。


R's MUSEUM…R機を展示する博物館の完成だ。
Rwf-9AアローヘッドからRwf-100カーテンコールまでの各R機と、
POWや工作機などが展示され一般公開される。
もちろん展示品は主機が抜いてあったり、レプリカであったりで動かない。
実機は地下格納庫に保存されている。
地下区画で保守整備はできるが、開発能力はない。
R機の歴史、変遷、多くのR機が散って行ったバイド戦役、グランゼーラ戦争…
それらを人類が忘れないように、博物館を作るのだ。

そしてTeam R-TYPEの解散…。



バイドの圧力が減じ、対人類の戦争も終わったと地球連合政府は結論付けた。
残存艦隊を整理しつつ、軍縮が行われている。
この流れの中でひとつの方針が政府によって示された。


地球連合政府とグランゼーラ革命政府が統一される運びとなったのだ。
地球圏統一政府として発足する新政府は、地球連合派とグランゼーラ派が半数ずつ議席を占める事で双方が合意した。


新政府の方針の一つが、新たなR機開発の凍結だ。
今までの開発成果を博物館に提供、保管し、
研究組織であるTeam R-TYPEもこれを機に解散する運びとなった。
人類はその力を再び、太陽系の発展のために用いることとなった。


…というのが表向きのTeam R-TYPE解体の理由である。


実際にTeam R-TYPEは解散する。
しかし、本当の理由は軍縮や政府の決定ではない。
巨大計画Project R-TYPEが完了するためだ。
計画は数々の修正を加えて一応の終結を迎えることとなった。


最後の作戦プランBが発動されることとなった。
すでにRwf-101グランドフィナーレがロールアウトし、R機の開発については終了し、
グランドフィナーレの最終調整の目処がついた。
あとは実行するだけだ。ここまでくれば研究開発組織としてのTeam R-TYPEは必要ない。



この作戦をもって全対バイドミッションが終了する運びとなっている。



演説は佳境に入ったようだ。
男が何かに掛かった赤い幕の前に移動している。
言葉をとめるとともに、周囲の人間と一緒に幕を下す。



そこにあったのは始まりのR機R-9を模ったモニュメントだった。


―人類のために散ったすべてのR機パイロットをここに讃える―




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【二つの太陽 b】


今日も戦闘文明はあの奇妙な戦闘機、五十五型と四十四型の合体戦闘機で攻めて来た。


…場所が悪い。このままの進軍速度では恒星の隙間で接敵することとなる。
なるべくならば手前で待って、陣を整えて迎え撃ちたいところだが、
敵戦闘機は強力な主砲を装備している。チャージが貯まりきらない内に先頭だけでも叩きたい。
環境は非常に不安定だ。
艦隊を飲み込むほどの大きさのプロミネンスが両方の恒星から吹き上がっており、
そして2つの恒星は互いの重力で引っ張り合い、高速で回転している。
恒星の表面近くでは重力も大きく、かなりの大きさのデブリが落ちてゆく。


恐らく双方の考えは、一致しているだろう。
短期決戦だ。


私は味方戦闘機にフォースを装着させて、突破力を高めると
今回の旗艦であるベルメイトを先頭にして一気に進軍した。


接敵場所はちょうど恒星の隙間、一番狭まったところとなった。
プロミネンスが吹き上がる危険地帯を敵も攻めあぐねている。
私もこの避ける隙間の無い戦場で、彼らを相手に戦いたくない。


こういうときは…
そう…ちょうどいい人材がいたはず…。
副官に任せよう。私は副官にプロミネンスの予測軌道を予測させることとした。


『了解しました。提督』


何時もとは違う抑揚が抑えられた声。


ん…?
「何時もとは違う」?
あれ?副官は副官なはず。何時もとは違うって何だ。
いつも横に居た副官に違いなんてあるのか?


私の副官は…


冷静で、
熱くて、
大胆で、
献身的で、
独創的で、
ニヒルで、
無口で、
饒舌で…


そんな頼りになる副官だった。
うん、そうだ。なにも矛盾はないな。
私は何が気になったんだ?


『提督、予測値が出ました。情報を反映します。』


さすがに仕事が速いな。さすが中尉。
さあ、これで楽をさせてもらえればいいのだが…
私は予測を見ながら、小型機を配置していった。


私は予測情報を元に、プロミネンスにギリギリ巻き込まれない位置に船体や、
小型機を予測された安全圏に滑り込ませる。


敵機はあの合体戦闘機だ。
あの機体はある特徴がある。主砲以外の射程が非常に短いのだ。格闘戦仕様ということだろうか。
合体時のみ短距離ミサイル程度の射程を発揮できるが、その他は軒並みバルカンの射程程度だ。


…まだ、敵主砲が完全にチャージされるには時間がある。
近寄って格闘戦で討ち取ろうとしている戦闘文明機。
ひたすらに回避軌道を描いてただ避け続ける味方機。
そうだ。もっと寄って来い。


太陽の近くで縮こまる味方機と、それに攻撃をくわえようと取り囲む敵機。
そろそろだが…


そのとき太陽から火柱が上がった。
火柱は味方機のすれすれを伸びてループを描いてゆっくり太陽に戻っていく。
戦闘文明機は予期しない闖入者に驚き、回避もまともに取れないままに蒸発していく。
炎が消えると、戦闘文明の機体は半数以上が消滅していた。


もともと、戦闘を予期していなかったのだろう、
今回の戦闘文明の艦隊は規模が小さい。今ので戦闘機の数は激減している。
敵の増援を待ってやる事は無い。
敵戦艦から第二波が来ない内に落としたい。


『提督、バイドシステムαの主砲チャージが完了しました。』


よし、こんなところに長居は無用だ。
とっとと戦艦を叩いてしまおう。
吹きあがり続けるプロミネンスに最新の注意を払いながら、
バイドシステムを誘導する。
敵の戦艦は、炎柱に翻弄されて回避に専念している。
攻撃隊の出撃はまだできないだろう。


こちらの戦闘機部隊はプロミネンスの陰に隠れられるように少数しか出ていない。
戦艦を落とすのには打撃力不足だろう。なので一計を案じることとした。
敵の行動が制限されているのを利用して、敵艦の後方に回り込むと、
敵の推進部に主砲を撃ち込んだ。


2部隊が主砲を撃ち込んだところで、敵艦の推進部から爆炎を確認した。
ここは2つの恒星の支配する戦場だ。
これだけの規模の恒星が迫っていれば当然相応の重力が存在する。
宇宙に進出している文明には出力計算の誤差程度のものだ。
しかし、普段ならば気にもとめない程度のそれは、推進力を失った戦艦に牙をむく。


初めはゆっくりと、徐々に加速して恒星に落ちてゆく戦闘文明の戦艦。
プロミネンスから逃げ延びた敵戦闘機が、母艦の元に駆けつける。
装甲が融解しながら崩壊してゆく戦艦の周囲を、少し離れて旋回する戦闘機。
これだけの攻撃性を持つ文明でも、やはり味方の損害は気になるのだろうか?


…私は勝利の確信と少しの苛立ちを抱えながら、殲滅を命じた。
味方の損害も少なく喜ぶべき勝利のはずなのだが、私は素直に喜ぶ事が出来なかった。




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副官は性別を超越するようです。
提督はバイドボケの症状として、認識が捻じ曲がっていますね。男女の区別もつかないとは。
最近は違和感を感じてきたようですが、超老人性認知症の様なので直らないかもしれません。

さて、この話でTeam R-TYPEについての挿話は一時終了です。
腐れ開発チームは突拍子も無いことを書けるので、書いていて面白かったです。
次話の挿話ではゲーム本編で投げっぱなしにされた、あの人の話に触れようかと。

今日、PSPのR-TYPESをダウンロードしてみたのですが、作者には無理でした。
そもそもが、遥か昔に友達の家でやったツインビーですら投げた作者が手を出していいものではなかった…
反射神経が皆無なので、初代STAGE3までで、すでにパイロットを3ケタ殺した気がします。



[21751] 11 水辺の思い出
Name: エリ◆2a9fd0bf ID:ec2c350f
Date: 2011/02/18 22:45
・水辺の思い出


【氷水を湛える星 a】



所々を海氷に覆われた荒涼とした景色。
光の乏しいこの星では海が黒々と見える。
植生の乏しい岸へと、規則的に引いては寄せる波。
波が抉りとった洞穴。


私はこの星に降り立ってから、ずっと思想の海に浸っている。
海だったか湖だったかはっきりと覚えていないが、
広い水辺に、とても大切にしているものがあったはずなのだ。
しかし、それが何であったかは思い出せない。
どうして大切にしていたのかも覚えていない…。


焦点を結ばない記憶。
それは決して像を結ばないのに、狂おしい程の感情の激流となって私を急き立てる。
私はどうしようもないほどの旅愁に捕らわれて、ここを動けないで居た。


―ビル群
―茜の空
―夕日
―海鳥
―水上艦
―ラストダンサー
―夜の帳
―コンバイラ

―白亜の戦艦
―宇宙へ逃げるバイド


頭の中を流れて行く記憶の断片。
まるで頭の中にもう一人の私がいて、叫んでいるようだ。
思い出す?
私には何を忘れているのか分からない。


この水と氷の星に降下したのは、そんな記憶を少しでも思い出すのではないかと思ったからだ。
正直、思い出の場所とこの星が似ているかどうかも分からない。
しかし、波があと数回打ち寄せたら、何かを思い出すかもしれない…。
そんな不確かなことに期待を寄せてみる。


・・・その時、私の邪魔をするものが現れた。この星に巣くうバイド生命体のようだ。
重要な思考を中断させた闖入者へ、私は直ちに攻撃を命じた。




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【グランゼーラ戦争終結7年後_冥王星基地グリトニル】


「あの戦いは、一体何だったのだろうな。」
「‘開放同盟の乱’ですか?」


太陽系外縁部、冥王星基地グリトニルのカフェテリアで二人の軍人が静かな声で話していた。
太陽系最外部の施設として、バイドやグランゼーラ陣営、そして地球連合軍の攻撃に晒され続けたグリトニルだが、
改修を終え、すでにワープ設備だけでなく、軍港や、福利厚生施設など以前の機能を取り戻している。
二人が身につけているのはグレーの軍服。…統一宇宙軍の制服だ。


地球連合政府とグランゼーラ革命政府の戦争は、
双方の支持層からの市民運動によって比較的穏やかに幕を閉じた。
バイドの襲撃で両軍とも疲弊しており厭戦感が蔓延しており、
これ以上は益が無いということで、バイドの本部基地襲撃を機に手を取るに至った。


政治のごたごたや、一部事件などもあったが、
統一政府として、地球連合派とグランゼーラ派が半数ずつ議席を占める議会を置くことで、
何とか終戦を迎えた。
ただ、グランゼーラ軍は地球連合軍に吸収合併されることを嫌がった。
戦争にはほとんど勝ったと言えるが地球連合政府だが、バイドの地球襲撃で疲弊しいることは否めず、
再び争うことを嫌い、軍の名称を地球圏統一宇宙軍と変えることで、グランゼーラとの融和を図った。


問題であったフォースについては、厳しい検査の行われる施設に保管され、
通常戦闘では持ち出しが厳しく制限された。
フォース廃絶を唱えるグランゼーラ派が、この妥協ともいえる案を呑んだのは、
バイドの地球襲撃の際、フォースが多大なる貢献をしたのを認めざるを得なかったからだ。
また、研究で人工フォースであるシャドウフォースの研究が進められることとなった。
その間にTeam R-TYPEも解散しており、R機の新規開発もストップした。


「カトー中佐。あの時、我々は地球圏の政治改革に酔っていたと思っているよ。」
「大の大人がそろいも揃って馬鹿な夢を見ていたんですね。ブラーダ大佐。」


グレーの制服を着た二人の軍人。
太陽系開放同盟キースン艦隊の次席参謀であったカトー元大佐と、
同じく同盟空母の艦長であったディア・ブラーダ大佐だった。


カトー元大佐は同盟が崩壊した後、戦犯として極刑になってもおかしくは無かったが、
司法取引(Team R-TYPEが関与したと噂されている)によって、降格及びその他の刑を宣告された。
軍からの追放を命じられなかったのは、単純に使えるものは使い倒そうという軍部の考えゆえだ。
度重なるバイドの来襲や、グランゼーラ戦争、7年前のバイドの地球襲撃で、
地球連合、グランゼーラ双方とも、艦隊要員が払底していた。
艦隊を指揮できる人間が少ない、だからもしもの時の予備として軍に留め置かれたのだ。
ただ、やはり艦隊などから遠ざけられて、基地の事務方や、補給などの任に付いていた。
予備役や不名誉除隊にするくらいなら、反乱の危険性の無いところで働かせようというわけだ。


ブラーダ大佐は艦長として艦隊指令の命令に従ったていたことと、
バイド討伐の際に協力したことで減刑された。
戦時措置として一時だけ艦隊司令官を勤めたが、
現在はマーナガルム級巡航艦‘コカイカフェ’の艦長として、
出世とは程遠い太陽系外縁部の哨戒任務などに付いている。
やはり太陽系開放同盟に所属していたという事実が、経歴に影を落としていた。
グリトニルには補給に寄ったところだ。


太陽系開放同盟に参加した将兵はみな冷遇されているが、2人は現状を受け入れているようだ。
カトー中佐は当時、太陽系開放同盟の本隊、キースン艦隊の次席参謀。
ブラーダ大佐は、開放同盟の第二艦隊旗艦の艦長だった。
トップに近く、命令する側でもあったので、反乱について思うところもあるのだろう。


「戦後聞かれました。キースン大将はBBSをどこから手に入れたのかと。」
「そうだな。私は同盟の本隊ではなかったから、聞いたことも無かった。恐らくキースン艦隊のみの極秘研究だったのだろう。」
「ええ、連合を脱した研究員がその技術を持ってきました。妙に目の鋭い男でしたが、
Team R-TYPEの関係者だったのでしょうね。戦後の司法取引でそのことを色々聞かれました。」
「…それで、キースン大将はBBSの研究を始めた。」
「今思うとあれはなんだったのでしょう。地球連合の尋問では研究員の事を聞かれたのに、Team R-TYPEでは聞かれなかった。その後の裁判を考えると利用されたのでしょうか。」
「キースン大将もTeam R-TYPEも互いに利用し合っていたのではないか?」
「グランゼーラの名を捨てて、太陽系解放同盟を名乗ったのはそう意味もあったのかもしれませんね。」


疲れたように言うカトー中佐。
この元参謀は、戦争終了後に白髪が目立つようになった。
戦後には癖の様になった自嘲を続ける。


「私の罪は重い。次席参謀でありながら止めるどころか、おろかな夢に酔っていた。
その結果が艦隊の全滅です。」
「それは言わないことにすべきだ。中佐。」
「そうですね。」


暫く、黙ってコーヒーを飲む。
やがてディア大佐が口を開く。


「カトー中佐は…キースン大将だからついていったのか?それとも太陽系開放同盟に?」
「キースン大将でしょうね。確かに大将は謀将であるとか、俳優であったとか色々言われていますが、
あの人には不思議と人を引き付ける魅力があった。それが危険な博打であることは分かっているのですが、
分かっていてなお、それに乗っていました。そういう人だったのです。」
「キースン大将が、ワープ空間で亡くなったのは良いことだったのかもしれん。
大将は良くも悪くも乱世の人だ。戦を収める能力には欠けていた様に思う。
存命であれば、まだ地球圏は混乱していたかもしれない。」
「…そうですね。」


太陽系解放同盟の中枢であるキースン艦隊にいたカトー中佐は、未だに割り切れないものを抱えていた。
一方、ブラーダ大佐ははっきりと決別を示していた。


「終戦の英雄。」
「?」
「私は提督と一度だけ一緒に戦ったことがあるが、その時思ったのだ。‘この人はキースン大将と逆の人だ’と。」
「分かる気がします。キースン大将は危険な魅力と畏怖で兵を率いたが、あの提督は違ったようです。
なんというか司令官と部下というよりは、仲間といった感じでしたから。」
「…」
「私は討伐艦隊に偽装降伏を仕掛けたとき、あの提督を恨みましたよ。
もっと嫌な奴なら、あんなに罪悪感を感じることなく騙せたのに。と」


結局バレていましたが。と、カトー中佐は自嘲気味に笑う。
独白のようなカトー中佐の言葉に、ブラーダ大佐は黙っていた。
目の前の元艦隊参謀が、かつて終戦の英雄相手に謀略を仕掛けたことを知っていたからだ。
間を開けて、ブラーダ大佐はすでに冷めたコーヒーで喉を湿らせて言う。


「私のあの提督への印象は度量のある人だったな。
バイド襲撃時、強硬に戦争を継続する艦隊指令を、私の部下が殺害した。
あの提督はそれを知りつつ、艦隊指令は戦死として処理して降伏を受け入れてくれた。
降伏後も、バイド討伐任務として我々に汚名返上の機会をくれたし、私は彼に感謝しているよ。」


「死ぬには若すぎますね。」
「…終戦の英雄が亡くなってから、もう7年か。」


そしてどちらとも無く立ち上がり、別れを告げ、それぞれ職場に戻ろうとする。
カトー中佐は基地内の総務部の庶務課に、
ブラーダ大佐はドックに係留してあるマーナガルム級‘コカイカフェ’へ。


去り際にカトー中佐が一言。


「ブラーダ大佐。私はキースン大将や、終戦の英雄が亡くなったとは思えないんです。
二人とも、まだどこかで艦隊の指揮を執っていて、いつかひょっこり帰ってきそうな気がするんです。」
「カトー中佐、それは…。
いや、あの提督ならバイド討伐記念に副官達と星の海でバカンスを決込んでいるかもしれんな。」
「ええ、キースン大将はどこかの星で再起を狙い、終戦の英雄は宇宙で迷子…なんてどうです?」
「ははは、迷子なら帰りが遅くてもしょうがない。そろそろ時間だな
…迷子の英雄を探すために外縁部哨戒に出てくるよ。」
「では、私は彼らが帰ってきてもいいように、少ない予算を遣り繰りして、
ささやかな歓迎会を出来るくらいの隠し予算でも作っておきましょうか。」


背中合わせのままジョークを言い合って、今度こそ本当に別れを告げた。




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【氷水を湛える星 b】


氷の浮かぶ海にバイド達が暮らしているようだ。
氷塊をつぎつぎと生み出しているのは奇妙な形状の中型バイド。
あれはガスダーネッドか。
遠目にもガスダーネッドが氷を精製しているのが良く見える。
周囲にも小型バイドが沸いているようだ。


我艦隊には水中戦に向く機体が無い。
この宇宙において流体の水が存在する環境は極稀だ。
そんな特殊環境のために専用機を製造する余裕はないのだ。
攻勢用の兵器として、特殊化より汎用化が秀でていることは実証されている。
そう究極互換機『       』がいい例だ。


…また欠落か。記憶に穴が開く。
…いや違う。穴が開いていることに気が付き始めたんだ。
私は何を忘れている?


私は苛立ちを隠すように、邪魔な氷塊を割るように指示する。
ゲインズの陽電子砲で破壊されていく氷。
このままガスダーネッドの鎧をはぎ取ってしまおう。
私がさらに氷塊を破壊しようと、前進すると突然前に進めなくなる。


『提督、敵機に接触しました。亜空間機です。』


…何もない空間から出てきたのは蔦だらけのバイド、マッドフォレスト3。
愛らしいアイビーフォースを揺らして、唐突に海中に出現した。
私は舌打ちしたくなった。
ここのところ戦闘文明との戦闘が多かったからか、
バイドが亜空間潜行能力をもっているある事を失念していたのだ。


衝撃。
戦艦で先行していたため、敵の目玉ミサイルをもろにくらってしまった。
出現したマッドフォレスト3の集団の掃討を、戦闘機に命じる。


亜空間機が一機だけという事はあるまい。
あと何体か潜んでいると考えた方が良いだろう。
マッドフォレスト自体の性能やチャージ攻撃に特筆すべき脅威はない。
問題は亜空間潜行だ。
威力の小さい攻撃であろうと、懐に飛び込まれると痛い。
とくに懐でフォースシュートされるのが怖い。
それに一方的に索敵されているかもしれないという、脅威がある。


亜空間戦法…、敵にされると本当に厄介なものだ。
残念ながら今回は、亜空間バスターを装備しているベルメイトを連れてきていない。
私はアンフィビアン2(改造した)を壁の中に飛び込ませ、敵マッドフォレスト3に対する壁とする。
後手なのは否めないが、何もしないよりマシだろう。


ここは…そうだな、頭を先に潰そう。
亜空間機は燃費が悪い。
特ここでは亜空間潜行と水中戦で航続距離・時間が短縮されるだろう。
敵旗艦を潰せば、補給できずに亜空間で潰れるか、戦闘不能状態で漂うだけとなる。


亜空間にアンフィビアン2を潜り込ませた後、
私はバイドシステムやジギタリウスを展開し、
壁際にゲインズを配置する。
敵に索敵されているかもしれない状態では、待ちの戦法は使えない。
こちらから攻める。
此方の索敵の要、旗艦コンバイラも前に出す。


戦場を2分する大きな岩を超えると、コンバイラの索敵能力が敵の全容を捉える。
遠くから見たとおり、ガスダーネッドとマッドフォレスト3あと、Uロッチが構えている。
敵本隊の戦力は小さい。マッドフォレスト3が戻ってこない内に叩こう。
やはり亜空間から索敵されているのだろう、敵も反応してくる。
私はゲインズに前面に居たマッドフォレストとUロッチを焼き払わすと、
一気に流れ込む。


Uロッチは主砲を持たないので、多少の被害を覚悟すれば強行できる。
コンバイラで援護しながら戦闘機を進める。
狙うはガスダーネッドのみだ。


ガスダーネッドはコアが隠れており、上方から狙うのがいいのだが、
その上空は、ガスダーネッドの防空射撃で近づけない。
まずはコアを囲む砲台から狙っていく。


バイドシステムの主砲で砲台をうったあと、フォースを打ち込む。
フォースも迎撃されるが、それにも負けずに砲台をすり潰す。


私はのコンバイラの二又の主砲、フラガラッハ砲の射軸をコアにあわせる。
後方でマッドフォレストが出現したがすでに燃料切れで、即座に行動には移れない。
自軍戦力を退避を勧告した後、フラガラッハ砲で止めを刺す。
コンバイラの砲塔から発射された光は、途中で二又に分かれながら、広範囲を破壊する。
ガスダーネッドごときの装甲は問題にならない。一気に溶かしてコアを砕く。


上半分を失って、崩れながら海中に沈んでいくガスダーネッド。
水中で残りの半身も爆発四散する。
周囲を見てもエネルギー切れで動けなくなったマッドフォレスト3や、
満身創痍の小型バイドがいるだけ。
私は出番の無かった、ジギタリウスに掃討を命じた。


これで、この氷と水の星に巣くうバイドを撃破した。
やっと思索に集中できるだろう。



掃討も終わり、私は再び暗い海の上に佇んでいる。
私は何かを思い出せそうなこの波打ち際で、思考を続ける。


まず考えなければならないこと。今回の戦闘で思ったことだ。
なぜバイドは亜空間航行技術や、次元航行技術をもっているのか?
私はずっと、一定以上の技術をもった文明は次元関係の技術にたどり着くと思っていた。
しかし、戦闘文明は亜空間航行技術を持っていない。
少ない事例なので確信はないが、ワープ空間で会敵したこともないので、
次元航行技術も持っていない、もしくは、未熟なのかもしれない。


あの腐敗都市や、グリーンインフェルノを作った文明はどうなのだろう。
我々や、バイドが特殊なのだろうか?
我々地球人類とバイドを繋ぐ何かがあるのだろうか?
バイドとは…?



やはり答えは出ない。


もう一つの疑問。
私が忘れているらしき記憶についてだ。
いくつかの記憶が欠落している事が分かっている。
あと、断片的な記憶の欠片もちらほらとある。
しかし、多すぎてまとまらない。
まず、私自身の事を確認しよう。


私は『      』だ。
地球連合軍の将官で、このバイド討伐艦隊の提督である。
若き英雄ジェイド・ロス提督にあこがれていて、
始めはグランゼーラや太陽系開放同盟から地球連合市民を守るために、
バイドの脅威から地球人類を守るために戦ってきた。


そして、『      』率いるバイドの大群が地球に押し寄せてきたとき、
各軍と手を取り合って、地球に降下してきたバイドを討伐した。
太陽系外縁部までバイドを追い詰めて、それから…
それから?


私はバイドを殲滅したはずだ。
しかし、どうやったのか、どうなったのかが全くの空白となっている。
何があったのか?
そこに、私の記憶の欠落の真実があるのだろうか?
答えは…出ない。


私は再び海を眺める。
ここに来て強く感じる旅愁の正体を探ろうと思ったのだ。
私が心に焼き付けた、大切なもの。
それを見つければ、全てを思い出せるのではないか。そんな気がしていた。
波が岸に打ち寄せてくる。
しかし、波の音は何も教えてくれなかった。


どれくらい、そうしていただろうか。
すでに周囲は暗くなりつつある。
地球とは組成の違う大気の中に、この星系の恒星が沈もうとしていた。
塵に乱反射して青く輝く夕日に、何故か失望を覚える。


私はしばらくその様子を見つめたあと、この星を発つことを決めた。




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いらない子ガスダーネッド。ぶっちゃけバラカス様の護衛といった印象しかない。

使い捨て気味だったオリキャラ+原作で一瞬名前だけ出てくる参謀を出してみた。
今回の挿話は端役のリサイクル兼、前フリです。

シューティング技能が足り無すぎて、初代R-TYPEが進まない。何でSTAGE3は途中復活無しなんだ。
作者は大量の戦死者を出しながら、途中復活で漸進するダメプレイヤーなので、噂のSTAGE7で詰む予感。



[21751] 12 星に願いを
Name: ミチ◆2a9fd0bf ID:ec2c350f
Date: 2011/02/20 22:55
・星に願いを




【流星群宙域 a】


流れ星。
誰が言い出したのか知れないが、消えるまでに願い事を3回唱えれば、願いがかなうという。


私の目の前では願いごとの大安売りが行われていた。
中規模の流星群の真っ只中を突っ切っているのだ。
そこここに流星が飛び込んでくる。その運動エネルギーは大きく、
流星に当たれば、コンバイラとて簡単に破壊されるだろう。
こんな場所ではおちおち願いも唱えられない。


私はいま、流星群が流れ去るのを待っている。
旗艦コンバイラでは危なくて進めない。
一応、リボーを哨戒に出して警戒しながら待機している。


私は流星群の中心部から離れて待つ間に、一つ願い事を思うことにした。
これだけの流れ星があるのだから、中には願いを叶えてくれる「ホンモノ」もあるかもしれない。
そんな似合わないことを考えながら、私は願う。


―私の故郷、地球が無事でありますように。


これに勝る願いは無い。
色々思うことはあったが、私や私部下達はこのために命をかけてきた。
これさえ確認できれば満足だ。
地球が無事でありさえすれば、私個人がどうであろうと、
地球人類としての義務を果たしたとして胸を張って自慢できる。


‘彼’もきっとそう思ったに違いない。


だから、人々の営みを見て安心して地球を離れたのだろう。
次元の狭間にある2つ目のバイドの中枢へ、我々をいざない、
そして、自らを犠牲にして、次元の狭間への扉を開けた。


私も彼のようにできるだろうか…?


私は意外に真剣に願いを込めている自分に気付き、苦笑する。
私はロマンチストではなかったと思うが。
一人で笑っていると、副官が告げてくる。


『提督、敵襲です。バイドの群のようです。』


おいでなすったようだ。
さあ、この一戦一戦が地球の平和に繋がると信じて、今日もバイドと戦おう。




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【グリトニル戦役後?_不明宙域】




これは、どういうことだ。
俺は、太陽系解放同盟の総旗艦ジャコギートの艦橋で、
所属不明な戦闘機の群を見ながら思った。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


俺はかつて地球連合軍の将校で、謀略の影にキースンありなどと言われていた男だ。
別に性格が陰険だとか、謀略を仕掛けることに快感を覚えるとかではない。
たまたま巡り合わせでそういう任につき、そして才能があっただけだ。
俺にとっては、謀略は仕事、任務の一環であった。


ただ、バイドの攻勢が強かった当時、謀略とは味方を混乱させる悪と考えられていた。
しかし、俺は地球を捨てて貴重な装備を持ち出してまで逃避しようとする裏切り者を処断したことが悪とは思わない。
奴らは、地球圏を混乱させる害悪だった。だから、情報を操作して嵌めた。
その手の才能のあった俺は順調に功を挙げ、昇進した。
相変わらず他の部署からは嫌われていたが、同じ任につく部下達には慕われていた。
上からは「役に立つ」という微妙な評価を得た。ダーティな役回りだったためだろう。


バイドの攻勢が落ち着いた後も、‘謀略好き’とされている俺を欲しがる艦隊は無く、
もとの部下達と、独立した特殊部隊として特殊任務についてた。
俺は白い目で見られながらも、連合に必要な役回りとして階級だけは上がって行った。
ある意味、裏方として出世していったわけだ。


そんな俺がグランゼーラに参加したのは、自分の艦隊がほしかったからだ。
人類の希望としてロス艦隊が地球を離れるのを間近で見て、その想いを強くした。
俺とて他の軍人と同じく、華々しい戦果にあこがれていた。
謀略は仕事、手段であって、好き好んでやっているわけではない。
新興の軍事組織であったグランゼーラ軍なら、俺でも主流に食い込めるかもしれないと考えた。
俺は自分の隊を引き連れて、グランゼーラの軍門に下った。


実際、それは上手くいった。
俺の戦術指揮能力は並であったが、謀略については並ぶ者はいない。
対人間との戦闘では謀略は悪ではなく、味方の損害を減らす有効な戦略であると評価された。
言葉の裏を読む癖がついた俺でも悪い気はしなかった。


ただし、グランゼーラの理念だけは、信奉する気にならなかった。フォースだろうと何だろと人類の武器なはずだ。つかえる道具は使うべきだ。
地球連合のかつての味方を罠にはめて戦果を上げた俺は、いつしか一個艦隊の指令になっていた。
俺の望みは叶ったのだ。


しかし、そういつまでも上手くは続かなかった。
グランゼーラの宿将ハルバーが、フォース廃絶を含む有利な条件での講和。なんてものを提唱したのだ。
そんなことをすれば和平を唱える馬鹿があらわれ、グランゼーラ全体の士気が低下する。
しかも、もし和平が成れば軍も縮小され、謀将である俺の立場も危うくなる。
戦争が終われば走狗は煮られるのだ。
そして、真っ先に切られるのは双方の暗部を知る俺だろう。


俺は、裏から主だった主戦派の将兵に接触し、派閥に取り込むとともに、
地球連合の上層部と図り、グランゼーラの原理派勢力を減じる工作を行った。
俺が目指したのは、戦果を交えない穏やかな戦争状態の継続だ。


その過程で、どうしても邪魔だったのがハルバー提督だ。
主戦派としてはこの宿将を排除したい。
しかし彼は鋼の意思を持ち、カリスマ的人気を誇るグランゼーラの英雄だった。
彼を言葉でこちらになびかせることは出来ない。
さりとて、英雄ハルバーという支柱を失えばグランゼーラは瓦解してしまうかもしれない。


俺個人としてはハルバー提督のことは嫌いではない、尊敬さえしている。
しかし、我々の思想が交わることはないし、両雄は並び立たない。
俺は一つの選択をした。
ハルバー提督を失脚させ、俺が英雄ハルバーに成り代わるのだ。


俺は地球連合にハルバー艦隊の情報をリークした。
今まで散々ハルバー提督に煮え湯を飲まされてきた地球連合は、大艦隊を送ってきた。
小さな思想犯収容所を解放していたハルバー艦隊が相手にするには圧倒的すぎる兵力だった。
そしてグランゼーラの英雄は地球連合の捕虜となった。俺が予期した行動だ。
有能で人命を尊ぶ理想の提督であるハルバーなら、完全に勝ち目がなくなれば降伏するだろう。そう考えた。
そしてハルバー提督が生きてさえ居れば、ハルバー派の中枢は脇目を振らず彼の救出に全力を尽くす。
派閥争いは二の次になるはずだ。実際そうなった。


ハルバー提督が捉えられた後、俺は即座に予定していた行動を起こした。
俺の派閥、太陽系開放同盟を正式に起こして、その勢力を背景にグランゼーラのトップになった。
そして、ハルバー派の将校を前線などに飛ばした。
グランゼーラ軍の中枢は実質、太陽系開放同盟のものとなった。


戦果を交えない穏やかな戦争状態の継続。
そのためにさらに工作を続けた。
めざすは地球連合―グランゼーラ―太陽系開放同盟の冷戦だ。


地球連合は戦力が減じ息切れしている。
グランゼーラ原理派は、団結こそ強いが戦力は大きくない。
太陽系開放同盟は反地球連合で成り立っているが、団結は強くない。
ちなみに俺自身には地球連合の政策についてはどうも思っていない。


地球連合が火星より内側を支配し、グランゼーラ原理派は太陽系外縁部を納める。
我々太陽系開放同盟はゲイルロズを中心とする宙域を納める。
地球連合にとって裏で結んだ我々とは戦わなくてすむ良いパートナーだろうし、
グランゼーラ原理派は外宇宙から来るバイドと戦うので手一杯だろう。
主戦派からなる、太陽系開放同盟が調整役というのも可笑しな話であるが、そこは俺の腕の見せ所だ。


地球連合との密約は成功した。
互いに小競り合いで済まそうという内容の秘密協定だ。
地球連合は停戦まで持ち込みたいようだが、俺はそこまで行おうとは思わない。
地球連合は自分達の息の掛かった開放同盟を大きくして、グランゼーラの主流に挿げ替えたいらしい。
そのための生贄歩合まで選定しているとのことだった。
生贄部隊を解放同盟が撃破することで、グランゼーラ内での解放同盟の発言力を高めて、
地球連合―解放同盟間での密約を強固なものにしようというものだろう。
それで戦況が安定する。


ついでにTeam R-TYPEから技術提供を受けた。実質、研究員の亡命という形を取ったが、
より過激な実験をしたいという科学者達を受け入れたのだ。
研究成果についてはつかってもらって構わない、しかしデータは頂くということだった。
実験台ともいえなくは無いが、使えるものは使うべきだ。
R機開発のノウハウも取り込まなくてはならない。


亡命した科学者のリーダーが研究していたのはBBS(バイドバインドシステム)という技術だった。
どうやらTeam R-TYPE内でも孤立していて、まともに研究が出来なかったらしい。
リーダーの男は目つきの鋭い傲慢な性格で、Team R-TYPEを出てきたのは性格の問題だろう。
武力は交渉材料だ、使えるならと思い取っておいた。


俺の計略は順調に思えた。
ゲイルロズは押さえたし、グランゼーラの支持母体も徐々に此方に流れてきた。
あとはグランゼーラの原理派を活かさず殺さずの状態に保つのみだ。


しかし、ここまできて足元をすくわれた。
発端は、ゲイルロズの陥落だった。
俺の艦隊がゲイルロズを離れた隙に、要塞ゲイルロズを墜とされたのだ。
開放同盟の艦隊が守備に入っていたのだが、ここまでもろいとは。
相手はあの生贄部隊だったらしい。波状攻撃とはいえ、輸送艦が主力の艦隊に落とされた。


それでケチがついたのか、その艦隊は一気に戦力を着けて迫ってきた。
グランゼーラ勢力圏で散発的に残っていた地球連合軍の戦力を取り込んだ生贄部隊。
彼らの脅威は徐々に大きくなってきた。対人謀略を仕掛けてきた俺のカンが、奴らは危険であると告げていた。
規模だけなら問題ない程度なのだが、この連戦で人員が育ち、すでにベテランといえる域に達している。
司令官も切れ者らしい。


件の艦隊の勢いは止らず、我々は太陽系外縁部のグリトニル基地にまで追い詰められた。
ここまできたら、グリトニルをもってしてもあの艦隊は止らないだろう。
密約を交わした地球連合も、当てにはできない。
勝ち馬に乗るのがこの世界の常道。
勢いに乗った生贄部隊を英雄に仕立てて、グランゼーラともども我々を打ち破るつもりだろう。


どうしてこうなったのか。
俺は軍人なら誰でも望む晴れの舞台が欲しかっただけだったのに。
地球連合時代からの部下達に、陽の目を見せてやりたかっただけなのだが…


しかし、時間は敵に利する。俺は決断した。
余力があるうちに追手を逃れ、再起に足る戦力を温存すると。
戦力は、軌道に乗ったBBSの成果に頼ることになるだろう。


準備を進めるうちに、一気に生贄部隊がグリトニルに来た。
俺は基地の防衛部隊が引き止めている内に、
俺は精鋭である太陽系開放同盟第一艦隊のみを連れて、間一髪ワープ空間に逃げた。
もちろん、すぐに追手が掛からない様に、ワープ施設は要所を壊れるように仕掛けを用意しておいた。


ゲイルロズを追われ、グリトニルも陥落した今、太陽系開放同盟は追い詰められていた。
俺は自分にカリスマがあるのを利用して艦隊をまとめ、なんとか戦意を維持してきた。
ワープ空間でBBSの仕上げを急がせた。BBS…バイドを意のままに操る技術。
その技術の最終試験の最中にそれは起こった。


艦外で実験中のバイドに反応するように突然、旗艦ジャコギートの中にある研究設備が、暴走を始めたのだ。
一瞬にして艦のシステムを乗っ取られ、コントロールを失い、警報が鳴り出した。
ワープ警報だ。
このアングルボダ級空母の周りの空間が歪んでいた。


突然のことに、俺は周囲の僚艦に退避勧告をすることしか出来なかった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


…そして、ここにいる。




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【流星群宙域 b】


今回の旗艦はベルメイト。
コンバイラの巨体ではこの流星群の隙間を縫う事は不可能だ。
破壊力を秘めた流星だが、この干渉の殆どない宙域においては、
自らの持っているベクトルに従って等速直線運動しかしない。
予測は簡単だ。ただ遠くに目を向けておくだけでいい。


敵艦もこの流星群のなかではおいそれと接近できないだろう。
私は亜空間機アンフィビアンを差し向ける。
亜空間では流星も関係ない。
先行部隊を出した後、私もベルメイトで慎重に後に続く。


当たらないとわかっていても、近くを岩の塊が通過していくのは肝が冷える。


『提督、亜空間機が敵機と接触しました。敵も亜空間潜行を行っているようです。』



不味い。
ベルメイトを囲まれてしまえば、身動きが取れなくなる。
流星が来ても避けられなくなるのだ。私は警戒を強くする。


亜空間機対する攻撃手段は亜空間バスターか、通常空間に引き戻してからの通常兵器での攻撃になる。
この開けた宙域で敵機を通常空間に引き戻すのは容易ではないだろう。全方位警戒が必要になる。
ベルメイトが装備している亜空間バスターは3発。それ以上は弾を生成するのに時間が掛かる。
これで迎撃するのが現実的だろう。
問題は亜空間機がどこにいるか分からない事だ。
小型機で探るのも良いが、接触した際に流星が迫っていると、巻き込まれる危険がある。
それに接触してしまうと通常空間に戻ってしまい亜空間バスターで攻撃できなくなるし…


めくら撃ちはあまりスマートではないから嫌なんだが…
私は一定の間隔を開けて、3発の亜空間バスターを撃つこととした。
後は小型機を先行させての強行突入だ。危険だけど仕方が無い流星が流れ去るのを待ってはいられない。


『提督、亜空間バスター発射準備終了しました。』

よし、発射。


『カウント3,2,1…発射。』


亜空間へ衝撃波が伝わり、余波として通常空間にも特徴的な爆音が轟く。
…以前は耳が痛くなった覚えがあるのだが、今回は無いな…慣れてしまったのか?


『撃墜音、15機程度です。』


やはり近くに来ていたか。大体の位置を確認すると、進行方向からの接近が多い。
流星の接近があったためベルメイトの位置をずらすと、一拍の時間をおいて再度発射命令を出す。


『亜空間バスター2射目、カウント3,2,1…発射。』


爆音と撃墜音。
今度も15機ほど、やはり進行方向に居たらしい。
あちらに敵の母艦があるな。
亜空間機は総じて燃費が悪い。だから大量に運用するためには母艦が近くに居る必要がある。
しかも、あれだけの量の艦載量だ。敵の母艦は大型である事が予想されるので、流星群には突入できまい。
敵母艦は亜空間機が来た方角で、おそらく流星群の出口に張り付いているはず。


私は副官に命令して、ゲインズ2を発進準備させ陽電子砲のチャージを開始させる。
3射目と同時に敵母艦に向かって発進させるのだ。
副官がカウントしてバスターをは発射させる。
今度は…10機程度。これ以上は打ち止めだろう。
ゲインズ2に発進を掛ける。バイドシステムは護衛だ。


ベルメイトも策敵の為に、流星に気をつけながら前進させる。
…どうやらタブロックがいるらしい、策敵外から大型のミサイルが飛んできている。
護衛機を付けてよかった。レーザーで減少したミサイルならば、大した被害は出ないだろう。


敵母艦は…ボルドガングか。
主砲の射程も短いアレが旗艦ならば、図体が大きいだけの的だ。
私は射程ギリギリからゲインズ2に陽電子砲を撃たせる。


1射目、敵も主砲カラドボルグ砲を発射するが、ゲインズの手前で減衰する。
こちらの陽電子砲は主砲ユニットを半壊させた。


2射目、敵コアに有効打。タブロックからのミサイルで攻撃隊が一部損害。
私はベルメイトでタブロックを牽制する。


3射目、陽電子砲の光がボルドガングのコアを飲みこみ消滅させると、ボルドガングの巨体はゴミの山となり果て、数瞬後に爆発した。
旗艦さえ排除してしまえば策敵もままならない。
私は周囲のバイドをベルメイトの衝撃波で排除した。



我々がバイドを殲滅するのを待っていたように、流星群がこの宙域を抜けた。
もう少し早ければ、楽に戦えたのに…
私はこの場を駆け抜けていく流星群を見て、ふと、今一度願いを掛けてみる事にした。


―願わくば、再び地球の大地を踏める事を。


私は遠ざかっていく流れ星達に祈る。
…この願いは叶うのだろうか?
いつしか、私の祈りを乗せた流れ星は漆黒の宇宙に消えていた。




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キースンのモノローグなげぇ。前編~後編中盤の総括になってしまった。
ちなみにキースンはほぼ妄想設定です。一人称が俺なのは提督と区別するためです。

原作グランゼーラ編のキースンって、ラスボスチックに名前が出てくるのに、
一戦もしないでワープ空間でフェードアウトとか、ある意味すごいです。

初代R-TYPEは現在STAGE5巣窟です。ベテランTYPERが言う「死んで覚えるSTG」ってこういう…



[21751] 13 物質の牢獄
Name: ヲサ◆2a9fd0bf ID:ec2c350f
Date: 2011/02/22 06:18
13 物質の牢獄


【小型ブラックホール宙域 a】


我々の目の前には、ブラックホールがその口を開けていた。
空間や物理法則さえも捻じ曲げてしまう特異天体だ。
この天体の大きさは、光が脱出不可能となる範囲であるシュバルツシルト半径を持って図るが、
このブラックホールは小型に属する。


近寄りすぎなければ害はないが、一度その重力に捕らわれれば脱出に多大なエネルギーを費やすし、
一定半径に引き込まれれば永久に、この重力の牢獄の虜囚となる。
ブラックホールの表面付近は重力が大きすぎて、外からは時の流れが非常に遅く観測される。
ブラックホールに落ちた哀れな被害者はブラックホールの表面に圧縮され、永久にそこに展示されることになる。
もっとも、吸い込まれた方の観測では一瞬なので、恐怖や苦痛が永劫に続くわけではないが。


私はこの天体が、かつては周囲を煌々と照らしていたであろう、恒星の成れの果てだと思うと、
何故か言いようのない侘しさが募った。
こんなところに不吉なところに用はない。さっさと抜けてしまおう。


『提督、敵襲です。戦闘文明の大艦隊です。』


戦闘文明の艦隊が現れた。
彼らは何故これほどまでに、我々に敵意を持つのだろうか。
確かに私はすでに多くの彼らの艦隊を破ってきたが、いつだって仕掛けてきたのは彼らだった。
何か妄執のような物を感じる。
しかし、私も黙ってやられるわけにはいかない。


敵はブラックホールを挟んで向こう側にいる。
出来る限りブラックホールを迂回して進みたいが、
通常なら内側を取った方が攻撃を集中できて戦略的に有利なのは自明だ。
ミサイル、バルカンなどの質量を伴った攻撃は打ち下ろしの方が強いが、
光学兵器や粒子兵器は重力ではほとんど威力が変わらない。


ふむどっちを取るべきか。
副官にも尋ねるか。


『提督!ブラックホールに落ちなければ問題ありません!最短距離を進みましょう!』
『何があるか分からないならば、落着までに余裕のある外部を回るのがよろしいかと思います。』


…ん?二人いる?


暑苦しいのと、何処までも冷静な声。
どっちにしようか迷っているから意見聞いたのに、副官も意見割れてるし。


『えーと、提督?ここは亜空間機で様子を見ながら進軍するのはどうですか…あ、ダメですよね…』
『敵と接触したらオワリじゃない。せっかくフォースあるんだから外側から叩き落したらいいでしょ。』


相変わらず2人だが、さっきとは違う声だ。


気弱な声と、タメ口…。
将官と尉官ではどれほど階級が離れていると思っているんだ。
まあ、うん、でもフォースで追い落とすのは悪くないな。採用だ。
後は進軍ルート。障害物の関係から2ルート考えられる。
ブラックホールを基準としてとって、Z軸マイナス方向とプラス方向だ。
これもどうせだから意見聞いてみるか。


『波動砲…いや艦首砲を活かすなら、Z軸マイナス方向の方がよろしいかと。』
『マイナス方向は進軍に向いていますので敵も主力を差し向けるでしょう。裏をかいてプラス方向からはどうですか?』
『…データからすると、Z軸マイナス方向からの進軍が効率的です。』
『提督…副官一同提督の判断に従いますわ。自信を持って指示なさってください。』


…また増えたし。なんぞ。


我々の目的は敵の無力化だ。マイナスから一気に攻めようか。
私が決めると、私の前に8人の副官達がいるのが視えた。



…そうだった。今思い出した。
私の副官は8人いたっけ。
何故忘れていたのか…
原因は…例の記憶の穴の所為しかないな。


相変わらず名前は出てこないけど、その内思い出すだろう。
一人で指揮するより、みんながいた方が心強い。
これから戦闘文明の大艦隊との戦闘なのだが、負ける気がしなかった。
私は皆に戦闘準備を命じる。


さあ、行こうか!




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【グリトニル戦役後?_不明宙域】


「キースン大将、不明勢力の戦闘機らしき物が向ってきます。数…およそ50!」
「後退、ジャミングは使えるか!?」
「ジャミング機能障害あり。復旧作業中です。使用まではあと約3分かかります。」
「R機を発進させて、時間を稼げ。ともかく撤退する。」


アングルボダ級空母の旗艦ジャコギートだけワープ空間から弾き出されてしまったらしい。ワープ空間を抜けると何の変哲も無い宇宙だった。
そう、何も手がかりのない宇宙だ。星図からして太陽系でないのは分かっている。
そして、そこは未開ではなく先人が居た。白を基調とした戦艦と戦闘機を保持する勢力だ。
始め、彼らは此方を警戒しながら、コンタクトを取ろうとしているようだった。
しかし、この出会いは異文明交流には発展しなかった。


暴走状態のBBS機…いやバイドが異文明機に攻撃を仕掛けたのだ。
当然、彼らは報復に動き、BBS機と一緒に居た我々も敵として認識されてしまった。
幸か不幸か、彼らの主砲はバイドに対して効果的であり、
異文明機はバイドに取り込まれること無く、BBS機は殲滅された。
そして、当然矛先は我々に向く。


我々の戦力は未だ完全復旧がならない空母と、そこに格納されているR機が60機ほど。
そのR機も即時対応できるのは、BBSの暴走に備えていた30機程度だ。
管制システムもワープ時のシステム障害のために、正常に機能していない。


俺は逃走を指示した。
提督としての能力は決して高くない。俺の艦隊運用能力は凡庸な才しかないのだ。
俺に出来るのは華麗に勝つことではなく、明確な判断と、その時とを間違わないこと。
逃げるのは恥ではない。今は撤退して現状を確認するときだ。


戦況は…良くない。
R機は見慣れない異文明の戦闘機を相手に苦戦しているようだ。
アングルボダ級のジャミングがあれば、逃げおおせることも可能だ。
ただし、移動が制限されるため敵機を引き離してからでないと意味が無い。


「キースン大将、ジャミングシステム復旧しました。」
「セラニアス参謀長、戦闘指揮は任せる。戦況は!」
「はっ。R機損傷率14%、敵機と当艦の距離は約600単位です。
距離を稼いでジャミングを展開しての離脱を進言します。」
「よし、実行しろ。」
「はっ。アンチェインドサイレンスを発進、ジャミングの準備をさせろ。本艦と敵戦闘機との距離が1000単位に達したらジャミングを掛けて離脱する。管制、ジャミング機を前線に出しすぎるな。」
「アンチェインドサイレンス発進了解。前線200単位手前に待機させます。」


セラニアス参謀長は旗艦ジャコギートを後退させつつ、R機の撤退準備をさせる。
いくら旗艦がジャミングで見えなくなっても、帰還してくるR機を追跡させれば、ばれてしまうからだ。
ここの距離のとり方や、ジャミング機の展開タイミングが職人芸なのだろう。
俺にはまねが出来ないので、艦隊運用のプロである参謀長に一任してしまう。
余計な口は出さない。


参謀長のセラニアス少将は地球連合時代の部下ではなく、俺がグランゼーラに来てから発掘した人材だ。
艦隊指揮は出来るのに、政治的問題で一向に出世できず万年大尉で燻っていたのを引き抜いたのだ。
軍内政治を理解しようともしない姿勢はどうかと思うが、彼の艦隊指揮能力は本物だ。
クセがあって扱いにくい人物だが、人間というのは自らを評価してくれる人に好意を抱くものだ。
俺に忠誠とでもいうべき感情を抱いており、俺が彼を正当に扱っている内は問題ないだろう。


「敵戦闘機部隊との距離1000に達しました。」
「R機損傷率、40%を超えました!」
「キースン大将。」
「よろしい。」


矢継ぎ早に情報が入る。
参謀長は俺に確認を取った後指示を出す。
本来、参謀には指揮権が無いので、提督の補佐、代理指揮ということになるのだ。
参謀がいきなり指示をだすのは、越権行為に当たる。


「ジャコギート及び、アンチェインドサイレンス機各機はジャミング展開。
攻撃隊はデコイを射出後、ジャミング機とともに所定のルートで帰還すること。これより無線封鎖に入る。」
「総員、撤退せよ。ジャミングを掛けて地の果てまででも逃げるぞ。」


一応、参謀長の指示を邪魔しない程度に、俺も撤退指示を重ねて出しておく。
俺がしなければならないのは、この後の全体方針の決定だ。
この後の身の振り方を提示しなければならない。


ここはどこか。ここは明らかに地球圏でない。
地球に帰ることが出来る位置なのか。そうでないのか?
異文明と講和できる可能性は?
BBS暴走によるバイド汚染の心配もある。
…情報が足りない。


「R機隊収容しました。帰還率65%」
「敵戦闘機部隊、此方をロストした模様。索敵を行っているようです。」
「最寄の敵戦闘機部隊との距離、800です。」


「ジャミング解除できるようになったら教えてくれ。セラニアス参謀長、それまでは艦隊の指揮権を預ける。」
「はっ。了解しました。ジャミング効果内での全力後退を。」
「後方3000単位の位置に、巨大な重力反応を検知しました。」
「ふむ、キースン大将、開けた空間では精密観測されれば重力分析で位置を特定されかねません。
後方の巨大重力天体の側に艦を寄せるべきと愚考します。」
「無駄にへりくだるな。巨大重力天体…恒星ではなさそうだし、白色わい星かなにかか…
そうだな、我々には落ち着く場所が必要だ。そこを目指すぞ。」
「了解しました。」


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俺の艦隊は現在、ブラックホールの側に身を隠している。
巨大重力天体は小型のブラックホールだったのだ。
太陽系の近くにはブラックホールは存在しない。つまりここは太陽系とはかけ離れた場所だ。
艦隊には先の戦闘での損傷の修復と、それ以外の人員には休息を取らせている。


どうにかして現在位置を突き止めようと、星図の観測もしらみつぶしに行ったが、全く不明だった。
このエネルギー残量では、ワープ空間に戻っても、そこから出ることは叶わなくなる。
…このままでは太陽系には戻れないか。
手が無いからといって、もう戻れません。と部下に言うのでは司令官失格だ。
どんなことでも、この先のすべきことを示さなくてはならない。


この艦ジャコギートだけではこの先長くない。
あの異文明に接触しなければならないのは確実だ。
しかし、手持ちの戦力ではあの艦隊を破ることは難しいだろう。
というより、あの艦隊を撃破しても、俺の艦隊のエネルギー問題はなんら好転しないのだ。


一戦した後での講和は難しい。
しかも言語が分からないし、あちらが我々を対等に扱うかが不明だ。最悪サンプル扱いだろう。
俺の手札は…BBSくらいか。
敵をバイド化させてから取り込むのは出来ないだろうか。
最初に接触したとき、バイドには特別な警戒をしていなかった。バイドを知らないのかもしれない。
油断しているなら敵艦隊をバイド化させることは可能だが…。


俺は意見を聞くために、セラニアス参謀長と研究主任を呼んだ。
セラニアス参謀長は異文明との講和案を出し、
BBS研究主任からはBBSを利用した敵艦隊の取り込みを提案してきた。
俺は、講和が出来るか懐疑的であったので、BBS案を採用した。


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俺はアンチェインドサイレンスを含む決死隊に、バイド種子を持たせて敵艦隊に散布した。
我々の発した電波によりブラックホール付近に、おびき寄せられた異文明の艦隊にだ。
作戦の第一段階は成功だ。外周部を固める巡航艦からバイド反応が見られ。
一定値に達すると、一気にバイド化が進む。


敵艦隊は混乱している。
味方が急に変貌し襲ってくるのだ。耐性の無いものには恐ろしい状況だろう。
バイド化が敵艦隊全体に進行してから、行動に移したいのだが。
俺は敵の旗艦らしきものからバイド係数が確認された時点で行動を開始した。


「コントロールロッド射出。BBS制御機関最大出力でまわせ。」
「了解しました。コントロールロッド射出します。」


BBS用に改良されたコントロールロッドを敵艦隊に向けてぶつける。
BBSを使って強制的に此方に取り込むのだ。


「目標A、B、D制御確認。Cは自沈しました。」
「制御を継続させろ。敵旗艦に次コントロールロッドの射出を行う。」
「キースン大将、危険ではありませんか。」
「セラニアス参謀長は反対か?」
「いえ、命令に従います。」


恐らくこの作戦自体に反対なのだろう。この参謀長と研究班の仲が良くないのは周知の事実だ。
ただセラニアス少将はプロ意識の強い軍人なので、研究班からの意見を握りつぶしたりはしない。
ただ、感情的に研究班の連中が嫌いらしいので、不満がたまらないように後でフォローをすべきだろう。


コントロールロッドの射出のためにジャミングを一時切る。
パシュっという気の抜ける音と主に、コントロールロッドが飛んでいく。
そして敵旗艦にコントロールロッドの内数本が突き刺さる。


「シナプスツリー接続信号あり、しかし制御動作確認できず。」
「コントロールロッドが働いていないのか?」
「はい、逆にコントロールロッドが侵蝕されています。」


敵戦艦はバイド化が進む中で、此方に向き直る。
そして、艦首をまっすぐこちらに向け…


「!不味い。緊急回避!キースン大将つかまってください。」
「艦首砲か!」


船尾のブラックホールに向けていたことが災いした。
重力は距離の2乗に比例して強くなる。艦首と船尾に掛かる引力が違う。
地球などの小さな重力ではたいした違いではないが、ブラックホールの表面では大きな力になる。
ザイオング完成制御装置も、これだけの負荷の中運用されることを想定されておらず、その恩恵は限定的だった。
その結果、船尾だけ引力に捕まった状態になった。
ブラックホールの引力に捕らわれ、上手く回避が取れずに、敵の艦首砲に船尾を撃ち抜かれる。
衝撃で固定の緩いものが飛び交い。司令部スタッフは生傷を作る。


「大将!メインスラスターが半分以上もっていかれました。」
「!」
「このままではブラックホールの引力に引かれます。」
「破壊部の燃料供給カット!ザイオング慣性制御装置は!?」
「重力加速度を中和しきれません。現在、ブラックホール深度L2に落下中!」


顔色が青白くなったセラニアス参謀長がオペレータに尋ねる。
しかし、結果は芳しくないようだ。
メインディスプレイで敵旗艦が完全にバイド化したのを見た。
横では参謀長が慌てて、何とか現状を切り抜けようと指示を出している。


それを見ながら俺は比較的平静だった。
どこかで、身の破滅を予測していたのかもしれない。


「ブラックホール深度L3に入ります!ザイオング慣性制御システムこれ以上は持ちません。」
「…キースン大将。R機だけでも脱出させましょう。」
「拒否する。発艦は認めない。」
「何故ですか!この艦がダメでも、足の早いR機ならまだ抜け出せるかもしれんのです!」


セラニアス参謀長が怒鳴る。
周りのスタッフも此方を見る。
俺は、なるべく冷静に聞きやすい声で伝えた。


「どのみち単機では継続飛行距離もたいしたことはない。早晩あの異文明に鹵獲されるだろう。
そして、R機には座標システムや、地球の最新技術が内蔵されている。
自爆できればいいが解析されれば、地球の位置がばれ、技術が敵にわたるかもしれない。
そうすれば、奴らは報復として、嬉々として地球圏に攻撃を仕掛けてくるだろう。」


そう、今なら敵の艦隊が全滅した原因は、すべてバイドの所為にできるかもしれない。


「俺は地球を捨てたが、地球人類がどうなってもいいとは思わない。さあ、覚悟を決めるんだ。」




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【小型ブラックホール宙域 b】


私はZ軸マイナス方向から進軍している。
もちろん旗艦はコンバイラだ。
小型機各機にはフォースを装着させてある。
作戦としてはコンバイラで策敵を行いながら進軍し、
敵機発見後は、長射程を誇るゲインズ2やコンバイラのフラガラッハ砲で戦力を削ぎ、
射線に入らなかった者については小型機各機によるミサイルの撃ち下ろしや、
ブラックホールに近い個体についてはフォースシュートで叩き落とすというものだ。
戦艦、巡航艦については小型機の主砲を当てるか、コンバイラのレーザー、ミサイルで対応する。


私は順調に進軍する…が、今回は少々ウルサイ。


『提督、敵機を発見しました。合体戦闘機の編隊です。』
『ゲインズ隊チャージ完了しています。発射ですね。僕が合図しちゃっていいんですか。はい分かりました。』
『提督、ゲインズ3番隊も撃てます。陽電子砲撃ちますがよろしいですね。』
『敵被害評定、策敵範囲内の40%で有効ダメージ。撃ち漏らしを早急に処理すべきです。』
『はいはーい。提督、コンバイラのミサイルで敵の推力を落としてから、フォースをぶつけるべきです。』
『提督、それ以上はフォース自身が事象の地平に落ちかねません。…私はそれでも構いませんが。』
『提督、小型機隊第一波撃破した模様です。お疲れ様です。どうされますか?進軍ですね。分かりました』
『提督!敵巡航艦を発見しました。…あちらも我が艦に気付いたようです。ご命令を!』
『そうですねフラガラッハ砲をここで使用して、相手の動揺を誘うのはどうでしょう?』
『敵巡航艦、撃破動力部に被弾した模様。爆発します。』
『巡航艦の陰にもう一隻、巡航艦が隠れていました。ええ、兆型です。』
『ゲインズ再チャージ完了しています。はい、交代式で撃ちます。』
『当方被害、30%に達しました。小型機の被害が目立ちます。一度艦内に戻しましょう。』
『兆型巡航艦から一撃もらっちゃいましたが、ゲインズ隊各隊は一応残っています。』
『ゲインズ隊攻撃、コンバイラで引き継ぎます。ミサイル発射します。』
『兆型破壊。残骸はブラックホールに飲まれるコースです。』
『…提督、データ分析結果です。敵艦隊は持てる艦載機をほぼすべて展開しています。
なので、Z軸プラス方面に展開している戦闘機がこちら側に流れ込まない内に旗艦を撃破すべきです。』
『敵、大型戦艦発見。呼称は…京型戦艦ですか。はい京型こちらに回頭しています。』
『フラガラッハ砲はチャージ中、ゲインズも修理中ですが、提督どうしましょう…?』
『提督!コンバイラで接近全速接近すれば敵艦に主砲を撃たれる前にレーザーの射程が届きます!』
『艦首砲で無いのは面白くありませんが…、レーザー、ミサイル発射します。目標敵旗艦、主砲ユニット。』
『提督。敵旗艦、主砲ユニット破壊には至りませんでしたが、チャージエネルギーは拡散した模様ですわ。』
『提督、フラガラッハ砲チャージ完了しました。いかがしましょう。』
『敵戦闘機、Z軸プラス方面より接近しています。迎撃しますか?』
『旗艦を落としましょう提督。艦隊ならば指揮が乱れるはずです。』
『はい、コンバイラ射軸を敵旗艦に合わせました。ゲインズも一隊付けます。よろしいですか。提督命令を。』


発射
コンバイラの放った主砲が敵の旗艦、京型戦艦を飲みこむ。
同時にゲインズも攻撃を放っていた。
艦中央の重要区画をごっそりと持って行かれた敵戦艦は、ゆっくり二つに折れる。
そして、推力を失った船体はブラックホールへと落ちて行った。




もう、何が何だか…
私も受け答えをしているのだが、彼ら彼女らの威勢に比べるとどうも…
今まで忘れていたから、鬱憤がたまっているのか。


ともあれ…
ブラックホール周辺宙域にて、戦闘文明の艦隊を撃退した。 いや、殲滅か。
戦闘文明の艦隊の残骸がブラックホールに吸い込まれていく。
戦闘文明艦隊の残骸はブラックホールを飾るアクセサリーとして、永久に保存されるだろう。


私は、ブラックホールの表面のアクセサリー群を見渡す。
岩石が多かったが、何かの残骸らしきものも多かった。
そのなかの一つに目を止める。


空間がゆがめられて非常に見にくいが、見覚えのある形状だ。
あれはアングルボダ級…?そう、あれはグランゼーラの空母だ。
ということは、ここが地球から来られる距離であることの証明だ。
我々は迷走しているわけでなく、着実に地球に近づきつつあったのだ!
私はこの事実に自らを勇気付けて、先の宙域へと進んだ。



はるか昔に重力の井戸に取り込まれたであろう空母の残骸。
その船腹には‘Llacoguito’とマーキングがしてあった。




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あれ?提督、当初のプロットでは最後までバイドボケしているはずだったのに…。
そしてやっぱりキースンなげぇ。提督には参謀いなかったけど、参謀キャラっていいですね。
ラストのジャコギートの綴りは適当です。色々間違っている気がするが気にしない。
もともと原題がカタカナなのを無理矢理スペイン語っぽくしたらああなった。

初代R-TYPE報告。
同じ場所で死にまくっていると、「見える!見えるぞっ」って状態になるんですね。
まあ、指と頭がついていかないので結果はそんなに違わないのですが。



[21751] 14 合体戦艦
Name: ガシ◆2a9fd0bf ID:ec2c350f
Date: 2011/03/01 05:10
・戦闘文明との決戦


【戦闘文明の惑星 a】


結局、副官が8人もいると、さすがに五月蝿いので当番制にした。
今は冷静さで定評のある中尉が横にいる。名前は…そのうち思い出すさ。
ブラックホールであの残骸を見て志願してきたのだ。
まあ、元グランゼーラの士官だから気になるのだろうか。
ここのところ頭クリアになっていくのが実感できる。
私の記憶が完全になれば地球への帰路も見つかるのだろうか?


私が人類の痕跡を必死に探しながら巡航していると、ある惑星が目に入った。
その星には青い海と大陸が見え、地球に似ている気がしたのだ。
私は地球と環境の似ている星なら、地球からの移民が居てもおかしくないと思った。


フォアランナ出発~帰還までの20年の間に、新たな新開拓地に我慢できず、
星の海に飛び出して行った命知らず達がいたことを聞いたことがある。
もっとも、彼らの大多数が遭難か、ワープ空間で消失の憂き目にあったのだろうが。
私はそんな話をチラリと思い出し、未だに地球にたどり着けない自分を勇気付けた。


我々がこの星の地表に降下すると、そこには巨大な都市があった。
都市の中心地を眺めると、地球よりも遥かに高度な文明と思われる都市が広がっていた。
大規模な都市で、ビルが所狭しと立ち並ぶ中心地は、あたかも地面そのものが盛り上がっているようだ。


私は地球の人類の都市を発見したかと思ったが、なぜか忌避感を感じていた。
そびえ立つ高層建築物は地球の都市を彷彿とさせたが、 良く見ると不思議なデザインだ。
…何か違う。そもそも私設移民として旅立ったのは多くても50人程度の規模だ。
短期間で、こんなにも栄えることができるだろうか。


『提督、敵襲です。…戦闘文明艦隊です。』


そこにいたのは戦闘文明の艦隊…違和感の原因はこれだったのだ。
現れたこの都市の防衛艦隊は、あの戦闘文明の艦船だった。
この星は彼らの星だったらしい。
彼らは我々に明確な攻撃意思を示している。
戦いは逃れられそうにない。


『敵は堅牢な防衛陣を敷いている様です。提督、降下前の光学観測から、後方にも都市が確認されています。
その都市が戦力を持っているとすれば、挟み撃ちにされます。』


嫌なことは続く物だ。今はとにかく生き残ることを考えよう。
こんな場所に迷い込んだのはアンラッキーだが、
この一歩が地球への道を進んでいると信じて進むしかない。
…敵陣突破だ。


私は中尉に我々のもてる猶予を聞く。


『他の都市の艦隊が、正面艦隊と同じ位の速さで展開したとすると、30分が安全圏です。』


覚悟を決めよう。
地球に還るには、この都市の防衛艦隊を打ち破るしかない。


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正面突破は戦の華だ。
…決して褒められた指揮ではないが、消耗を気にしている場合ではないので、私は突撃を指示する。
敵の戦闘機編隊―いつもの四十四型戦闘機や五十五型戦闘機だ―が来るが、さすがに斥候部隊ごときにやられはしない。
敵の編隊を一気に溶かすとコンバイラを前進させる。


もちろんまっすぐに突っ込むわけではない。それは自殺志願者や脳筋のすることだ。
第一波を飲み込んだ後、コンバイラを待機させて第二派を待つ。
正面から敵機の編隊を打ち破りながら、攻撃の合間にビルの隙間に身を隠して戦力の回復に努める。
的になりやすいコンバイラは、正面で攻撃を貰い続ければ崩壊しかねないからだ。


私は都市上空を漸進しながら、戦闘機隊の第三派も撃破する。
さすがに敵の一大拠点だ。今までとは物量が違う。
こちらの戦闘機部隊もかなりの被害が出ている。
バイドシステム、ジギタリウス、ゲインズ2、アンフィビアン、Uロッチ…どの隊も数機失われている。
全滅した隊は少ないので回復は可能だが、如何せん消耗が早く格納が間に合わないのだ。
しかし、ここで足踏みをして後方を敵に塞がれたら泣くになけない。
突破するかと、こちらの戦闘機をビルの隙間から戦闘機を先行させて、
私もコンバイラで身を乗り出す…


『提督!高エネルギー反応来ます!』


冷静沈着なクロフォード中尉が叫んだ、と思った瞬間に衝撃波が襲う。
制御仕切れていない途轍もないエネルギーの奔流が、目の前を暴れながら流れていく。
ウートガルザ・ロキの様な戦略級兵器か!?
私は余波で巻き起こる衝撃に耐えながら、これが戦闘文明の切り札かと思った。
激流が弱まり収束すると、私は先ほどの射線に一気に飛び出す。


『提督、敵兵器の射程内に飛び出すのは危険です。』


アレだけの砲撃だ連射は出来まい。チャージ時間を要する。
むしろ今がチャンスだ。広大な射線から敵機が退避している。
ちっ。戦闘機隊は、格納しているゲインズとバイドシステム、Uロッチ…
あと亜空間に入っていたアンフィビアンだけだ。
資材はあるから落ち着けば製造はできるが、今はこの戦力でここを突破しなくてはならない。


私はビルの隙間から出て、砲撃ともいえないエネルギーの流れを作り出した方角を見た。


『提督、敵艦を確認しました。』


クロフォード中尉を視ると、先ほどの驚愕は既に無かったが、少し目を見開いて驚いているようだ。


一瞬、理解できなかった。
いや、見たものを言葉にすることは簡単なのだが、ソレを実行してしまうとは…
艦が2隻合体している。…兆級巡航艦と京級戦艦がくっついている。
そこに至までの思考回路をトレースするとこんな感じだろう。


戦艦の主砲の威力を上げたいが、戦艦に詰める主機では出力不足。

一つでダメなら主機を繋げばいいじゃないか。

決戦艦、兆京級合体戦艦の完成。


コンセプトがイカれているな。
しかし、この発想力は腐れ開発チームに似た物がある気がするのだが…
文明の守り手になるには常人では無理なのだろうか?


イカれた開発班は置いておくとしても、さすがに現場指揮官は冷静だ。
発射前に味方機を退避させ、ビルは避けているようだ。
しかし、その余裕と冷静さが命取りだ。
自分達の都市を守る姿勢は立派だが、そんな事で私を倒せると思っているのか!?
ビルごと打ち抜くくらい出なければ、コンバイラを倒せないのは私が良く知っている。


また敵の戦闘機が出てくる。
合体戦艦の強大すぎる主砲をチャージする時間を稼ぐためだろう。
戦闘機が次々と突撃してきて此方の足を止めようとしてくる。
敵の意図が分かっていても、手数が減っている我々は迎撃で手一杯で前に進めない。
何機叩き落しても、消耗を省みずに押し寄せてくるのだ。
クロフォード中尉が主砲のチャージ具合を警告してくるが、戦闘機の相手で手一杯で、退避できない。
敵の戦闘機だって無限ではないはず、死ぬ物狂いなのがその証拠だ。


『提督、あと1分で敵の主砲がきます。』


…私は戦闘が非情な物だって知っている。
我々、地球人類は倫理や感情を押さえ込んでバイドに対抗してきたのだ。
そう、だから敵を利用することに躊躇いを覚えてはいけない。
躊躇えば討たれるのは此方なのだから。


…Uロッチに命令を送る。敵戦闘機を出来る限り捕獲せよと。
Uロッチは私の命令を忠実にこなし、鹵獲弾で敵の戦闘機を捉える。
本来ならコントロールもすべてうばいとるのだが、今回は捕獲するだけ。
もちろん鹵獲弾でぐるぐる巻きにされているため、身動きが取れない。
そんな状態の戦闘機群を、敵艦の射線上に放置する。
艦首砲の発射を躊躇ってくれれば恩の字だが目的はそれでは無い。


敵はその異様な攻撃で囚われた仲間を見て警戒したのか、戸惑いを見せる。
一瞬だが防空網に穴が開き、私はその隙に一部隊を送り込む。
他の戦闘機ならその防空網を抜けても戦艦の迎撃システムにやられているだろう。
しかし亜空間機であれば視認されない。


私は敵艦の砲撃の前に発射を妨害することとした。
敵艦の艦首に取りつき艦首砲ユニットを破壊するのだ。
すでに時間が無い。敵の発射が早いか、アンフィビアンが取りつくのが早いかの勝負だろう。
私はその間も戦闘機の迎撃を続ける。


『提督、敵合体戦艦艦首に高エネルギー収束を確認。先ほどの砲撃が来ます。』


クロフォード中尉の声と同時に、アンフィビアンが通常空間に戻ってくる。
そしてアンフィビアンは、艦首砲ユニットの目の前からミサイルを撃ち込み半壊させる。


『提督、敵艦…依然としてエネルギーが異常収束していきます。』


!?
艦首砲ユニットが壊れてるということは、エネルギーを外部に出力できないということだ。
普通、艦首砲ユニットにダメージを受けた艦は非常用回路から強制的にエネルギーを拡散させて、その破壊的な熱量を逃がす。
先の砲撃…合体戦艦はお世辞にもエネルギーをすべて制御しているとは言い難かった。
あんな状態の艦首砲ユニットに過大なエネルギーを流せば暴発するぞ?


『敵艦エネルギー収束率、先ほどの150%に達しました。なおも上昇中。暴発すれば我々も巻き込まれます!』


…!
制御を離れている?暴走か!
今から爆発の範囲外に逃れるすべは無い。
私は、総員に対ショック姿勢を指示した。


目の前が光に包まれる―――




______________________________________




【?】


私は考えた。
何があったのか。
とりあえず考えられるというのは、私が在るということだ。
爆発はしのいだようだが…


そっと目を開ける。


私の前にあったのは、理解を超えた光景だった。






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ちょっと間が開いたのでリハビリが必要なようです。そのうちこの話も修正かけるかも。

もともと原作は形だけで、妄想90%な拙作ですが、ちょっと原作と流れをかえてあります。
原作では普通に、戦闘文明の星脱出→宇宙の果て?に行くのですが、
宇宙の果てが通常空間にあってたまるかと思ったので、
爆発→空間が捻じ曲がって飛ばされる→宇宙の果て?にしました。



[21751] 15 宇宙の果て?
Name: ツヅ◆2a9fd0bf ID:ec2c350f
Date: 2011/03/08 21:00
・宇宙の果て?



【平常と躊躇の間】


私の前にあったのは理解を超えた景色だった。


見飽きたはずの…しかしどこか違う宇宙。
そして、その広大な空間を完全に遮断するような永遠に続くかのような壁。
漆黒の空間に壁だけが発光しているように見える。
壁の向こう側から漏れてくる光だろうか?


そういえば、私は何故こんなところにいるのだろう。
戦闘文明の合体戦艦の爆発に巻き込まれたはずなのだが…


ここはどこなのか?
宇宙の果て…?
それとも宇宙の中心だろうか?


…ともかく、先に行けば答えが見つかるかもしれない。
最低限の戦闘機の製造も終わった。
私は壁の向こうに何かがあることを期待して、
コンバイラで攻撃準備を始める。




________________________________________________________________________________




【!!!!】


認識:門ユニットNo.23より連絡。要観察体の門ユニットNo.23への接近を確認。
検索:惑星破壊兵器B1亜種と確認。以前接触した個体と同一であると認識。
認識:目標個体が門ユニットNo.23を感知した可能性を提唱。
判定:認識阻害障壁、次元湾曲率ともに平常展開。現時点での目標からの門の観測は不可能。


認識:門ユニットNo.23より連絡。目標の認識阻害障壁への破壊行動を確認。該当空間の門ユニットへ接近。
判定:戦闘ユニットによる排除行動を提唱。
検索:〈行動規定46〉に抵触。〈使者〉護衛以外での通常空間への〈衛兵〉の配備は不可。
判定:蓄積データを元に、戦闘ユニットの作成・配備を推奨。
判定:観察目標の所属文明機の提示による、目標攻撃行動の沈静化を提案。
行動:門ユニットへのデータ送信。戦闘ユニットによる防衛を指示。
検索:転送データの確認。〈次元軸:第3隣接次元〉〈時間軸:-350年〉の…〈地球文明〉




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【慢心と幻想の間】


私のレーザーが壁を抉り、そしてついには叩き割る。
そして私は中に飛び込む。
そして、淡い光に照らされるのは、霞の中の艦艇。


輸送艦や、
駆逐艦や巡航艦の群。
なぜか水上艦までいる。
戦艦の威容もちらほら見える。
全て、恐ろしいまでの大艦艇だ。


目を凝らすと霞のように見えていたのは大量の戦闘機だ。
編隊も組まずにゆったりと漸進している。
地球連合の艦艇やR機達は、我々には目もくれずに、
静かに壁に向っていく。


どこか懐かしい艦艇。
しかし、ずっと私の胸を焦がしていた、あの狂おしい感情は起こらない。
何かが違うのだ。
私にはあれらの艦が空っぽに見えたのだ。


私の中の冷静な部分は格納庫で小型機の編成を進めている。
私は失った部隊の分も機体を創りながら、その静かな行軍を見ていた。
空っぽ。
私は先ほどそう感じたのだが、あの艦の中に地球人類は…いや、生命体はいるのだろうか。
ふと、古典ホラーのマリーセレスト号を思い出した。


ガラスのような不可思議な壁へと進む艦艇と戦闘機。
壁に突き刺さっている艦も見える。
しかし、周囲のガラス状の壁はヒビも入っていなかった。
この空間は物理法則を無視している様に思える。


我々を無視するかのような艦艇のほかに、戦闘準備をして留まっている艦隊もある。
爆撃機、可変戦闘機とジャミング機、そして、巨大な空母。
彼らが我々の待ち人だろうか。


私は砲門を横に向けて、低速で近づく。
攻撃意思が無いことを示すためだ。
ジャミング機の索敵範囲に入った瞬間に、
かの艦隊は明らかな攻撃意思を示してきた。
なぜか、少し悲しくなった。


しかし、黙ってやられるわけには行かない。
私は攻撃命令を出した。


『提督、敵の大型ミサイルは脅威です。爆撃機の破壊を進言しますわ。』


そこに居たのは副官の…そう、ベラーノ中尉だ。
…この名前を呼ぶのは随分と久しい気がする。
そう思って彼女の横顔を見つめていると、ちゃんと指揮をして下さいと窘められた。
私は、内心慌てて指示を飛ばし、戦闘機を展開してじりじりと距離を詰めた。


バルムンクよりコンバイラの方が射程が長い。
だからこちらの射程ギリギリから撃てば、一方的に攻撃が出来る。


『提督、敵機前列、コンバイラ攻撃射程に入りました。』


私はミサイルと、レーザーを撃ち、敵爆撃機を叩く。
バリア弾で攻撃力を削がれてしまうが、かまわない。数を減らせればいいのだ。
バルムンクだけは怖いからな…て、バルムンクって何だっけ?


ここの所、失っていた記憶が戻ってきている。
記憶が帰るたびに、こんなことも忘れていたのかと驚かされる。
全てを思い出したら地球に還れるだろうか。


敵爆撃機がバリア弾でレーザー、ミサイルを耐えている内に、
可変戦闘機がブーストをかけて一気に接近してくる。
私はUロッチに迎撃を命じる。
可変戦闘機の機首にエネルギーが収束し始めていたからだ。
ともかくミサイルを当てて、チャージを拡散させる。


Uロッチは砲身からミサイルを多量に発射する。
可変戦闘機は高速で迫っていたこともあり、数機がミサイルの弾幕に突っ込む。
ギリギリで進路を変更して撃墜を免れた機も、
ミサイルと僚機の爆発の衝撃で安全装置が働いたのか、エネルギーを拡散させている。


可変戦闘機の残存機は回避機動で明後日の方向へ向いていた機体を反転、
さらに攻撃しようと、此方に機体を向けてきた。
しかし、可変戦闘機がこちらに向けて再加速しようとした時、投網状の物体が絡みつく。
ブースターを必死に吹かすが、すでに機体に張り付いている網目状の物体は取れず、
それどころか、徐々に制御系統を侵食している。
完全にコントロール権を失った可変戦闘機は動かなくなった。


投網の正体は鹵獲弾だ。
命中率に難のある鹵獲弾だが、さすがに静止目標についてはだいたい当たる。
いかに慣性を制御しようとも、反転しようとすれば速度が0になる瞬間がある。
その瞬間を狙って、Uロッチが可変戦闘機に向けて鹵獲弾を放ったものだ。


鹵獲結果は…2機か。
Uロッチが機体の制御を完全に奪うと、可変戦闘機は自らコンバイラに格納される。
ふむ、TXw-T03 エクリプス強化仕様型か…複製して有効利用させてもらおう。


…?
爆撃機が居ない。
一瞬、可変戦闘機―エクリプス強化仕様型―に意識を向けている間に消えている。
少し時間をかけて索敵をしても見当たらない…。
私が横にいるベラーノ中尉に聞く。


『爆撃機だけでなく、ジャミング機も消えています。恐らくジャミングで隠れたのかと。…!熱源感知しました。』


大型のミサイルが迫っていた。
…ああ、バルムンクって核ミサイルだったっけ。


私は、鹵獲し複製していたエクリプスのうち一隊をコンバイラの前面に出し盾とする。
それでも、ミサイルの数発は抜けてコンバイラに衝撃を与える。
痛ぅ。
状態は…フラガラッハ砲のエネルギーが拡散したくらいか。
ところどころにダメージはあるが致命的なものはない。
盾部隊があったし、先ほどレーザーで数を減らしたのが功を奏したらしい。


私はすぐさま、ジャミング機のいる辺りに向けて、ゲインズに陽電子砲を打ち込ませる。
全くのめくら撃ちだが、相手は機動力を制限されている関係もあり、先ほど見た2隊を撃墜する。
オマケといっては何だが、その後方で姿を隠していた空母にもマグレ当たりをし、半壊。
敵空母はジャミング機能を失ったようだった。


あとは、殲滅戦だ。
私は自軍に命令を出し、詰みに掛かる。
相手が投了しないなら仕方ない。


最大の攻撃手段を失った爆撃機と、ハッチのいかれた空母であれば問題はない。
見る間に制圧されてゆく敵軍。
さて、戦果は…


『先ほどのエクリプス強化仕様型を1部隊、手に入れました。』


ふむ、この空間にはもうなにも無いようだ。
次の空間に向うとしよう。




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【!!!!】


認識:門ユニットNo.23より連絡。観察目標は第二障認識阻害障壁を攻撃中。
行動:不要な情報を与えないため、観察目標の所属文明機による攻撃を継続。




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【欲望と焦燥の間】


次に見えたのは、黒色の空間。
そして、2隻の巡航艦とフォースを従えた戦闘機群。
戦艦が居なかったのは幸いだ。


巡航艦が二隻居るのは面倒だな。
あの戦闘機は厄介そうだ。出来るだけ遠くから叩いて置きたい。
私は右側の敵をゲインズ隊に任せ、コンバイラで左の敵に向かった。
フラガラッハ砲の威力であれば戦闘機はひとたまりもないだろう。


私はフラガラッハ砲エネルギーを送りながら、戦闘機群を睨む。
敵の戦闘機は、先ほどの戦闘機群と比べるとシンプルな造形ながら、非常に機能的なフォルムだ。
戦闘機の機首には圧縮されたエネルギーが光を発している。
3本足の部品のついたフォースをこちらに向けて、戦闘準備は万全というところだろうか。


こちらに向けて近づいてくる敵機。
あの機体の装備しているスタンダード波動砲は射程に乏しい。
出来れば、相手の射程範囲に入る前にチャージのキャンセルを行いたい。
フラガラッハ砲は巡航艦用に残しておきたいので、レーザー、ミサイルと鹵獲したエクリプスが手数になる。
敵機がフォースを装備しているのが少々厳しいが、早期警戒機さえ落としてしまえば、
フォースを避けて機体を直接狙えるだろう。
フォースは一撃されるくらい見積もった方がいいな。フォースより波動砲が怖い。
私は慎重に接近してゆく。


ところでなんで私は敵の射程なんて知っているのだ?


疑問を胸にしまいこんで、レーザーの一斉射を行う。まずは邪魔な早期警戒機から潰す。
皿のようなレドームを背負った早期警戒機だが、さすがに戦艦の索敵範囲には叶わない。
味方機に警戒くらいはされるかもしれないが、目を潰すのは重要だ。
着弾。全機破壊。
機動性をもたせるために軽量化し、内部装甲を電子部品に置き換えた早期警戒機は脆い。
敵戦闘機が見えない敵を探して警戒しているのが見て取れる。
フォースにレーザーなどが当たって防御されないように、私はコンバイラの位置を調節する。
私は本命のレーザー・ミサイルを発射し、エクリプス隊も投入する。


絶妙な角度から、まずはレーザーが降り注ぎ戦闘機を削っていく。
少し遅れてミサイルが敵機に到着する。さすがにフォースを軸にあわせて防御の体制をとるが、
ミサイルの爆発によって機体が小破する。
繊細なセーフティ機構は、限界まで保持されていたエネルギーを強制的に排出していく。
さらに、回り込んだエクリプスがミサイルを置いていく。


8割がたの機体の波動砲チャージをキャンセルしただろうか。
あとはフォースを処理して、敵が再び波動砲の発射態勢を整える前に殲滅する。
もちろん巡航艦も艦首砲を装備しているので、近づきすぎないようにしないとな。


エクリプス隊にそのまま、掃討に当たらせようと指示をしたところで、
敵機のなかから、波動砲の発射反応を感知した。
まだ、発射態勢にあった機体が撃ったらしい。
エネルギーの収束率が高い、短射程ながら高威力の波動砲がエクリプス隊を貫く。
エクリプス隊が半壊するが、そのまま囮としてその場に残す。
しょせん鹵獲部隊だ。コンバイラ到着まで持てば回収しよう。


『提督、敵機の一群がコンバイラに向けて接近してきます。』


敵機コンバイラに向けて発進してきた。もちろんフォース付きだ。
どうやら、大体の位置を特定して、フォースシュートによる攻撃を仕掛けてくるようだ。
迎撃を指示するが、あの速度で接近されれば一撃は耐えなければならないだろう。
フォースシュートは痛いのだがな…。


接近してきた3隊の内、2隊はフォースごと全滅したが、残る2隊は消耗しながらも、
攻撃を仕掛けてきた。
内包するエネルギーをその周囲に纏わせたフォースが打ち込まれる。
コンバイラのコア近くに3つ、コアを逸れて2つのフォースがミサイルユニットにがめり込む。
装甲が軋み蒸発するがコアには届かない。装甲の耐久力は減少したがまだ耐えられる程度だ。
問題はミサイルユニット。当たり所が悪かったのか暫くミサイルの発射は出来そうにない。
フラガラッハ砲が無事だったから良しとしよう。
著しく勢力の減衰していたフォースは、補欠で留まっていたジギタリウスによって討ちとられる。


あとは、あの赤いマーキングの巡航艦だけだ。
私はフラガラッハ砲の発射準備を進める。
横目でチラリと見ると別働隊の方はすでに巡航艦に攻撃を仕掛けていた。問題はなさそうだ。


『提督、フラガラッハ砲最終調整完了ですわ。発射命令をどうぞ。』


ベラーノ中尉の言葉を受けて、私は発射を指示する。
早期警戒機や戦闘機を打ち落とされ、目を失った巡航艦が戦艦に勝てるはずも無い。
索敵外からきたエネルギーに艦橋を落とされて沈黙する。
エクリプス隊が見えないところから、全滅したのだろう。


私は別働隊が戦闘を終了するのを待って合流した。
また鹵獲したのか、敵の戦闘機が一機混じっていたので、一緒に格納した。
Rwf-9A4ウェーブマスターか。波動を極めし者とは随分吹いているな。
被害はちらほら定員に達していない部隊があるが、全滅したのはリボーだけらしい。
どうやら、リボー隊突っ込まして索敵させたあと、敵戦闘機の射程外からゲインズ2でリボーごと滅多打ちにしたらしい。
それはちょっとひどくないか?


『提督も同じようなことを、やっている気がするのですが…』


いや、上からの命令でなく、いわば同格からもその扱いってどうなんだ。
いじめ、かっこわるい。


…これ以上ふざけるとベラーノ中尉が怖いので、補給の終わった機体を展開して先に進んだ。




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【!!!!】


認識:門ユニットから連絡。目標は認識阻害障壁の半数を破壊。
判定:目標の脅威レベルを引き上げ。観察対象から殲滅対象と認定。
判定:同一の次元内に存在する勢力のデータの使用を許可。
認識:門ユニットから連絡。行動パターンの解析許可を要求。
判定:低密度干渉波の使用規範に合致。許可。
認識:警告。干渉波の過度の使用は対象神経系への特異変化を助長する。




________________________________________________________________________________




【燃焼と洗浄の間】


私は鹵獲したウェーブマスターに波動砲を発射させ、壁に穴を開ける。
壁の向こうは赤熱した空間だった。
侵入口を広げて中に飛び込んでみると、熱量があるわけではないのだが、空間自体が燃え立っているようだ。
そこにいたのは、見知った機体。
バイドだった。


敵の陣営はボルドタイプが一隻と、
バイドシステムλ、クロークロー、ミスティレディ2、とそのフォースだ。
攻守に優れた部隊だ。正面からぶつかるのは辛いな。


クロークローの主砲は攻撃力が大きく、正面からは当たりたくない。
ミスティレディ2の霧状防護膜はレーザーの威力を減衰させ、索敵も難しくする。
バイドシステムλは万能な遊撃手だ。基本性能が高く、そつのない戦闘ができる。


全機とも射程は長くないのでゲインズで焼き払いたいが…
障害となるのはクローフォースだ。
装甲の薄いゲインズタイプではフォースシュートなんて食らえば一撃だ。
かといってコンバイラのフラガラッハ砲を連射するのはさすがに無理。


しかも、嫌なことにバイド達は壁が破壊されたのを見止めると、一気に此方へ突っ込んでくる。
なので、索敵範囲外に布陣して…ということをしている暇はない。
先ほどまでの戦闘機群は索敵範囲に踏み込むまで待機していたのだが…。


私は一度後退し、壁を挟んで小型機を相手にすることにした。
乱戦になって指示が効かなくなるのは怖いからだ。
壁ごと主砲で撃ちぬかれる可能性もあるのだが、敵の小型バイドはおしなべて短射程だ。
壁の穴を広げないように、ゲインズの陽電子砲でチクチクと削ることにした。


壁にあけた穴をから出てきたクロークローを、ゲインズの陽電子砲が吹き飛ばす。
クロークローは攻撃に特化した機体だ。接近されれば怖いがこの距離ならどうということはない。
バイドから爪が生えているというよりは、爪にバイド体がくっ付いている様な攻撃的な形状をしているが、
反面で脆いようで、壁付近にはクロークローの爪を構成していた高硬度物質の破片が漂っている。


反面で厄介であったのは霧状の防護膜を纏ったミスティレディ2だ。
ミスティレディ2は索敵さえ掛かるが、ロックオンがし辛く、気付けば目の前に迫っている。
クロークローが居ないのは幸いだが、接近戦を許してしまった。


私はミスティレディ2を優先的に攻撃するように指示する。
接近戦になってしまえば、細かな指揮なんて無駄なので、目の前の敵の優先度を指定するに留めた。
ミスティレディ2を狙ったのは、広範囲に射程を持つ主砲を持っているからだ。


ここで意外にも活躍したのは、鹵獲したウェーブマスターだった。
特質すべき機能も無く、チャージターンも普通、波動砲も威力こそ高いがスタンダードで、ミサイルも、まあそこそこ。
凡庸を突き詰めたような機体であったが、逆に良かったのかもしれない。
バイド狩りに尖った能力なんて必要ない。全てのことをそつなくこなせる能力こそが必要だ。


時間こそ掛かったが、なんとか小型バイドを狩りつくした。
問題がひとつ。
ボルドガングが壁から出てこなかったのだ。
壁を挟んでは索敵出来ないが、壁をくぐった瞬間に艦首砲で蒸発させられるのはごめん被りたい。
一番いいのは囮を放って向こう側を索敵することだが、リボー隊はすでに全滅している。
どうするか。


『提督、鹵獲したバイドを放ってはどうでしょう。』


鹵獲したバイド…バイドを鹵獲するという考えは思いつかなかったが、
出来るのであればこれほど良い案はない。バイドがつぶしあってくれるのだ。
私は戦場をちょろちょろしている腐れPOWアーマーを捕まえさせた。
正直かまう暇も無かったし、脅威でもなかったので放置していた個体だ。
バイドが鹵獲されるというのは、どうも特異な図だが贅沢も言ってられまい。


私は腐れPOWをそっとリリースして、索敵をリンクさせる。
壁の穴を潜って壁の向こう側が索敵範囲に入ると、私はドキリとした。
ボルドガングは壁に張り付いて機会をうかがっていたのだ。
うっかり近づいていたら、壁ごと吹き飛ばされていたかもしれない。
私は腐れPOWの中からボルドガングを見上げる。POWからみるとこんなにも大きいのか。
突然砲門が此方に向き、光が放たれる。


私は自分が撃たれた気になって身を強張らせた。
しかし実際には索敵リンクが切れ、壁の向こう側で小爆発が起こっただけだった。
小型機や戦闘機のパイロットは死ぬ前にこんな思いをしていたのか。
…これからはリボーを索敵デコイ代わりに突っ込ますのはやめてあげよう。


私は気を取り直して、ゲインズ隊にボルドガングのいる辺りの壁ごと打ちぬかせた。
先ほどの小爆発とは違い、大きな爆発が起こり周囲の壁を吹き飛ばす。
このエリアは我々が制圧した。さあ、次のエリアに行こう。




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【!!!!】


認識:門ユニットから連絡。殲滅目標、最終エリアに侵入を開始。
判定:門ユニットNo.32のレベル3までの機能の開放を宣言。
認識:門ユニットから連絡。自己保全権限により殲滅目標の高密度干渉波による思考スキャンを決行。
判定:追認。認識阻害障壁最大出力起動、門ユニットの擬態を要求。
認識:門ユニットより連絡。擬態はスキャンデータを使用。ユニットの撃破時の対応の協議を要求。
判定:承認。別命あるまで殲滅目標への対応を継続。




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【眩惑と昇華の間】


まず目に入ったのは光。
私はその光に目が眩みしばし、立ち尽くす。
そして、私は意を決して壁の向こう側に抜ける。


更に強い光を浴びて、思わず立ち止りそうになる。
何故かその光の中で、色々な思い出が通り過ぎていく。
走馬灯…とは違うようだ。
思い出すというよりは、記憶がめちゃくちゃな順番で引っ張り出される感じ。


赤い戦艦
暴走掘削機
コンバイラリリル
フォース
輸送艦艦隊
グリーンインフェルノ
ノヴァシステム
冥王星基地グリトニル
太陽系開放同盟
要塞ゲイルロズ
夕暮れの街
ジェイド・ロス
琥珀色の瞳孔
バイドに飲み込まれる戦艦
巨大な…ベツレヘムの星?


一瞬の間に色々なものを見せられてワケが分からない。
私は混乱する記憶に一時蓋をして前を睨む。
我々は前に進まなければ成らない。


光を抜けるとそこに居たのは戦闘文明の戦闘機群だった。
そしてこの先には壁が無い。ただ光に満ちた空間が広がっているだけだ。
ここが最後ということだろうか。
先ほどの記憶…
肝心なところが抜けてしかもバラバラだが、ここには私の記憶をなぞる何かがあるはずだ。
すべては彼らを倒してからだ。


ここまで来たのだ。我々がやられるとは思えない。
壁を破った時点ですでに交戦距離に入っている。
私は普段であれば絶対にしない命令する。
好きに暴れるようにと。


すぐに戦闘機による大規模な乱戦が始まった。
縦横微塵に飛びまわる戦闘機。
私はその光景を見て少し興奮した。
昔見た映画の様だったのだ。


ザイオングの恩恵を受けて機敏な動きを繰り返すバイドシステムに、
強力な加速性能を利用し、大きな弧を描いて追従する四十四型戦闘機。
ゲインズ2の陽電子砲が煌くと、呼応するように敵も主砲を放つ。
あちらではビーストフォースと五十五型機が衝突を繰り返してせめぎ合っている。
最早、編隊など用を成しておらず、正にお祭り騒ぎだった。


私も鹵獲で捉えたウェーブマスターを直衛にして、
レーザーを使用して、迂闊に近づく敵機を迎撃する。
ミサイルも単発ならば発射できるようになった。
ベラーノ中尉は呆れているようだが、ちゃんと的確に敵機の接近などの情報を伝えてくれる。
彼女には悪いが、これに興奮する感覚は男で無いと分からないかもしれない。
いや、男でも分かってくれそうなのはマッケランかワイアット少尉くらいか…


私はこの狂ったこの空間の空気に呑まれているのだろうか。
迎撃の手を緩めないようにしながら、少し頭を冷やしてみる。


まず、この空間について分かることはない。理解不能だ。
次に、各層にいた戦闘機や艦艇。様々な機体が居り統一されていない。
そして、このような周囲に天体の無い宙域にいるのに艦艇の数が不足している。
世界の果てのようなこの宙域に展開しようとすれば、大規模な艦隊を組むだろう。
小型機が別途ついてきた可能性もないわけではないが、好き好んでそんな事はしないだろう。
何者かに操られているのだろうか…そうBBSのように。
そう思えるぐらいには、不自然な状況だ。


もし、何者かが操っているとすれば、なぜ、彼らはこの場に展開しているのだろう。
この特異な空間か?
しかし、この広大な空間を探査したり、防衛するには艦艇が少ない。
何か…いるのか?
この光り輝く空間には彼我の戦闘機しか見えないが、索敵、光学探査を避ける方法などいくらでもある。


私は、段々と減少してきた戦闘機を見ながら、ベラーノ中尉に命じる。
周囲を次元精査するようにと。
次元精査は一般的にはワープ航路の開拓を行うときに用いる手段で、微小な時空の歪みを捉える。
太陽系開放同盟を討伐した際に、ワープ空間に彼らが留まっていることが分かったのも、この技術の応用だ。
戦闘中に行う物ではないので、精度は幾らか落ちるだろうが、‘いる’か‘いないか’だけ分かれば良い。


『提督、いました。前方空間距離1000に小型の艦影あり。』


近いな、戦闘機群のなかに紛れていたのか。
あれが親玉だろうか。
…周囲の戦闘は終わりに近づいている。


私は前方の空間に向けて艦首砲をチャージし始めた。




________________________________________________________________________________




【!!!!】


認識:門ユニットより連絡。認識阻害障壁消失、防衛戦力を喪失。対象の亜空間探査により門ユニットの秘匿は不可能。現在、殲滅対象の思考スキャンデータによって擬態中。
検索:〈ケース21〉の適用を推薦。
認識:〈ケース21〉適用条件は、対象が〈製作者〉にとって一定水準の脅威となりうる場合のみ。
検索:殲滅対象ユニット詳細。出身次元軸〈第3隣接次元〉、時間軸〈-350年〉、〈地球文明〉、〈時間移動能力保有兵器〉、想定敵αから惑星破壊兵器B1亜種へ変化した個体群。
判定:〈ケース21〉発動条件は満たすが、対象との距離から不適と判定。門ユニットによる次元追放を提起。
認識:追放先候補選定…




________________________________________________________________________________




【眩惑と昇華の間】


私は不可視の物体に向けてフラガラッハ砲を放つことにした。
すでに周囲の戦闘は決着がつき、戦闘機も艦載している。


『チャージ完了。提督いつでも打てますわ。』


発射を命令するとエネルギーが一気に収束を始めた。
発射までの一瞬、不可視ベールがいきなり解ける。


船腹に書いてある文字は
‘Llaqui Runa’




え…?

私の艦?




見間違うはずも無かった。
そこにあったのは私が始めて持った自分の艦。
ヨルムンガント級輸送艦の‘リャキルナ’だった。


混乱する私を余所に、発射体勢に入ったフラガラッハ砲はエネルギーを加速させて前面に押し出そうとする。
私は衝動的に、射線をずらすとフラガラッハ砲の発した光は、輸送艦掠めて飛び去った。
罠だったかと思った瞬間、輸送艦にはありえない膨大なエネルギーを感知した。


私は閃光に包まれながら思った。
‘リャキルナ’はあの琥珀色の空間で…?




==================================================================
前回手抜き臭かったので、今回は真面目に書いた。まともな戦闘シーンは久しぶりな気がします。
それにしても延びる。前の話がwordで7ページくらいなのに、20ページ超えてます。
余計なギミックを入れた所為で、話の分割が出来ない…

この面の解釈は非常に悩みました。夢オチ、幻覚、生まれ変わりの比喩、あの世…
最終話だったらどうとでも好き勝手できるのですが、まだ先あるし…
アイレムさん、解釈丸投げマジパネェっす。

!!!!がチラっとネタバレ始めていますね。
あ、最初のページにもかいてあるのですが、TACTICSシリーズで明言されていない事柄については、他作品の設定を混ぜています。いや、むしろ妄想設定が多いです。



[21751] 16 水棲生物の星
Name: ケタ◆2a9fd0bf ID:ec2c350f
Date: 2011/03/31 22:20
水棲生物の星



【偏在する宇宙~水の惑星】


光が収まると、そこは何の変哲も無い宇宙だった。
どういうことだ。私はあの輸送艦の形をしたナニカに自爆されたと思ったのだが…
私は周囲を探索するが、本当に普通の宇宙のようだ。
少し遠いが惑星がいくつかある宙域があるくらいだ…
私はその宙域に向って巡航しながら、あの不思議な宙域で起きた事を整理することとした。


まず、壁や輝く空間については全く理解を超えている。予想もつかない何かだ。
しかし、壁を破るごとに敵が配置されていた。しかもあの広大な空間の中で、私の進路のみにだ。
戦力を小出しにすることといい、此方を観察しているようだった。
そして、最後の輝く空間で輸送艦に化けていたやつは…何なのか?


私は、最後の壁を破る際に記憶の混乱を感じた。
あれは自発的に思い出したのではなく、外部からの何らかの影響があったと思っている。
大量の断片的な記憶が引きずり出された感じだ。
思い出した時系列も(たぶん)バラバラで、
それぞれについては分かるのだが、記憶が一本の道として繋がらない。


私は何をしていた?
何故宇宙を彷徨っている?


ずっと問いかけてきた疑問だ。
ここらで整理してみよう。


私は地球連合軍人として、グランゼーラとの戦争に参戦した。
艦隊を率いて、グリトニルを落として休戦を勝ち取った。
地球連合、グランゼーラの混成艦隊を再編成し、
太陽系開放同盟をワープ空間まで追い決着をつけた。
そして、バイドが来襲していることを聞き地球圏に戻り、
地球…私の還るべき都市を防衛。
しかし、大型バイド、コンバイラベーラを後一歩で取り逃がす。
彼を追い詰めた先で彼を…コンバイラリリルを撃破。
同時に彼が英雄ジェイド・ロスであったことを知った。
私達は琥珀色の空間に招かれ、全ての元凶である琥珀色の瞳孔を倒す。
そして…私は琥珀色の瞳孔に吸い込まれて…


それから…
それから?


…なんとか形になった記憶はここまでだ。
やはり穴だらけだが、何とか繋がったな。


ふむ、我々はあの琥珀色の瞳孔に弾き飛ばされたのだろうか。
つい先ほどよく分からない輸送艦もどきに飛ばされたばかりだ。
瞳孔が最後の力で我々を弾き飛ばしたとしても可笑しくはないだろう。
この記憶障害もバイドの精神汚染の影響かもしれない。


自分の名前を思い出せないのは致命的であるが、問題にはなるまい。
どうせ、みんな「提督」と呼ぶしな。


うん、私のすることは変わらない。
艦隊のみんなを連れて地球に帰ること。
そして、攻撃文明などの脅威が迫っていることを伝えること。


方針が明確になってすっきりしたな。
あとは、地球を探すだけだ!


私が一人で満足していると、横合いから声が掛かる。


『提督!未確認惑星を発見しました。命令を!』


主席副官のマッケランだ。
こいつのことは忘れたままでも良かった気がする。


なんにせよ…
調査は必要に成るだろう。
私は降下を命令した。


我々が立ち寄ったこの星は、豊富な水をたたえていたが、随分と気味の悪い場所だった。
階層状になった地形に、濁った生ぬるい水が滝となって流れ落ち、床に浅く貯まっており、
その水は通常より少し粘度があって、微弱なバイド反応が検出される。
しかし、あの奇妙な空間を見た後とあっては、少しは心が休まるような気がした。
…病んでるな。


その時、大きめのバイドの反応があった。どうやら水中にいるようだ。
この星の水が禍々しいのと無関係ではないだろう。
この水の中でバイドは随分活発に増殖しているようだ。
ここで増えたバイドが地球に災いをもたらすかもしれない。
私は、水中に潜むバイドを撃破することに決めた。




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【冥王星基地グリトニル_Team R-TYPE解散1年後】



バイド帝星への討伐艦隊の投入や、地球圏防衛戦でのバイト討伐艦隊の活躍により、
地球圏へ飛来するバイドはほぼ居なくなった。
さらに、正式配備されたRwf-99ラストダンサーによって、
地球圏に残っていたバイドは次々と駆逐され、地球圏でのバイドは減少している。


巷では、対バイド戦争の勝利と、グランゼーラ、太陽系開放同盟との休戦を経て、
気が早い者は、終戦の開放感に酔いしれている。
実際、民間の経済活動も活発になり始めているので、いい事でもある。


商魂たくましい民間企業には、民間による太陽系外へのクルーズを企画していたところもあったくらいだ。
もちろんワープ空間には未だバイドの残存勢力が居り、クルーズなど論外であったため、
政府から警告を受け、軍部から絞られて計画取り消しになった。


太陽系外へのワープ施設を抱える冥王星基地グリトニルでも、民間人の姿が見られ始めていた。
しかし、この一週間はグリトニルの大規模改修とワープ設備調整と題されて、
民間はおろか、軍の艦隊すら追い出されている。
今、グリトニルにいるのは、最低限の基地要員(ほとんどは居室待機となっている)と、
基地の防衛艦隊(これも中規模ドックに押し込められている)、あとは、白衣の一団だった。


彼らは解散したはずのTeam R-TYPEの主要メンバーだった。
表向きは、機密区画に残っていた資材の撤去に召集されたとされていたが、
どうみても逆に機材が持ち込まれている。


そのなかで、最も目を引く機密の封印がされたコンテナに収められていたのはR機だった。


究極互換機ver.3 Rwf-101グランドフィナーレ
次元戦闘機の最終機であり、Team R-TYPEが最後に手がけた機体だ。
R機の特徴であるラウンド型のキャノピーはあるが、ずんぐりむっくりな形状をしている
アンテナ類やウイングは極力排されており、スラスターなどの推進部は強化されている。
また機体下部には格納用スペースの様な構造が見える。


「随分長かった気もするし、一瞬だった気もするわ。」
「人生の殆どをTeam R-TYPEに捧げてきたバイレシート開発部長としては、やっぱり感慨深いわけですかぁ。」
「人生を捧げた?冗談でしょう?」
「あれぇ、違うんですか?」
「私は研究という悪魔に、魂を売ったのよ。レホス主任…課長になったんだったかしら?」
「Team R-TYPEの技術主任から、ウォーレリック社の課長ですからねぇ。事実上の格下げです。」


冥王星基地グリトニルの強化ガラスでできた窓から、ワープ施設を眺める二人。
バイレシート元開発部長とレホス元技術主任だった。
Team R-TYPEが解散した今、研究員達は再就職なり楽隠居なりそれぞれの道についていた。
バイレシートは軍の技術部の顧問として、
レホスは軍事企業マクガイヤー社の課長に納まっている。


「にしても、あなたがそんな格好をするなんてどういう心境の変化?」
「社長命令ですからねぇ。それにしても僕が白衣をクリーニングに出す日がくるなんて…。」
「ああ、研究員とはいえ民間だからね。お客様のいる身でしょう。清潔な格好も仕事の内よ。」
「あれは、僕のポリシーだったんですよぅ。恩師から白衣の汚れは一人前の研究者の証だって。」
「口調も、少しまともになったし…」
「僕を何だと思っているんですぅ?敬語や固い口調が話せないわけじゃないんですよ。部長。」


レホスの格好は淡いブルーのシャツにネクタイ、グレーのスラックス。
そして、磨いてある黒い革靴に、皺の無い白衣を着ていた。
完璧すぎてこれはこれで場違いだった。
顔の造形や体形に目立つところの無い男だが、何故か悪目立ちする。
かつてのTeam R-TYPE関係者がこの最果ての基地に集った理由は、
もちろん同窓会などではなかった。


「ザイオング慣性制御システム異常なし。」
「1番から5番スラスター動作確認完了。」
「次元突破用2段式ブースター装着。」
「波動砲ユニットと、レールガン調整終了です。」
「エネルギー充填100%。」
「エンジェルパック積載完了、20分後にスリープモードから起動。」
「液体酸素充填。」
「フォース及び、ビットの装着完了。」
「推進剤の満載です。」
「〈グングニル〉の積み込みに入ります。」


コンテナから出されたグランドフィナーレは白衣の集団によって、直ぐにチェックされる。
そして、明らかに通常のワープには不要なくらいの装置が設置されている加速装置にセッティングされる。
加速装置は明らかに急に取り付けましたという感じで雑然としていて、
裏では大人の太ももくらいはありそうなコードが床をのたうっている。
戦艦や空母さえワープ空間に打ち出せるだけの出力を持った装置をさらに改造して、R機を飛ばす。
しかも、偽装までしている。


「あれが〈グングニル〉よ。空間消去型弾頭で5基ほど積み込むわ。」
「空間消去型の弾頭ですか。もともとは単機突入機の機密保持用でしょう?」
「そう、軍の方針で非バイド製兵器の開発に力を入れてるの。あの弾頭もその一つよ。」


軍では第一次バイドミッションから、機密保持を徹底していた。
単独突入ミッションに参加したパイロットなどは名も公表されない徹底振りだ。
機体の方も、バイド化されることを恐れて小型の自爆装置を積んでいた。
どうせ、敵地で不時着してもバイド化するだけ。というのが当時の考え方だった。
その対応法がバイドに取り込まれないように周囲の空間ごと消滅させる自爆装置だ。
ただし、かなり敏感な自爆装置で、致命的損傷ではなくとも発動してしまう欠点もあった。
地面との接触や、パーツ破損でも自爆してしまうほどだった。
ちなみに、それなりに高価な装置であったので、敵地への突入任務する機体のみに装備されていた。


「核はグランゼーラにリードされていますし、シャドウフォースもグランゼーラ製、地球連合軍としてはおもしろくないでしょうねぇ。」
「そう、そのうちグランゼーラと軍を統一する案も出ているようだけれど、そのためにもオリジナルの武装を作らなければならなかったのよ。」
「結局、張り合うためですかぁ。アホらしいけど、軍の技術部もたまには良い物を作るんですね。」
「範囲内にある物質を全て消滅させる兵器よ。宇宙空間じゃ効果薄いけど…」
「なるほどなるほどー。‘地球のような’高密度かつ、重力のある環境下で使用すれば、
範囲外も影響を免れなくて、上手く条件が合えば5基で惑星の一つなら壊滅させられる、と。
しかし、ネーミングセンスないですね。」
「グランゼーラのバルムンクに対抗心があるんじゃないかしら。節操無いネーミングはもともとよ。」
「ああ、そーいえば、艦艇とか軍の技術廠がつくったのには神話系多いですものね。」


目の前で慎重に、〈グングニル〉を搬入する技術者をみる。
機体下部へ5つ大型の弾頭を積み込む。
ずんぐりむっくりな形状はこの格納スペースを作るためのようだ。


「理論値では地上構造物の全破壊だけれども、実際には産業レベル、軍事力の低下による長期的外部進出活動の抑制ね。」
「突然、現れて爆弾を落としていく謎の兵器ってことになるわけですね。」


大型弾頭の積み込みが終わったグランドフィナーレは運ばれていき、発射台にセットされる。
そして、二機目が運ばれてくる。


「ちなみに、あれに乗りこむ天使様