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「避難つらい、居場所がない」パチンコ人気

2011年07月20日

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平日昼でも空き台は少ない=大船渡市のパチンコ店

 避難生活が長期化し、盛夏到来で暑い日が続く被災地で、ひときわ人の集まる場所がある。パチンコ店。「人恋しい」「失業して居場所がない」。つらさを一時でも忘れたいという切実さが垣間見える。

 7月上旬、岩手県大船渡市の郊外にある「大船渡セントラル」。平日昼にもかかわらず368台のパチンコとスロット台はほぼ埋まっていた。「気晴らしが大切なんだべ」。空き台を通路で待つ陸前高田市の農業の男性(63)は言った。

 男性は自宅と約5千平方メートルの畑を津波で失った。3カ月ほど友人宅に身を寄せた。同居する7人中、自分だけが他人。「話が合わない。先に寝られない。言いたいことも言えない。孤独だし、窮屈で窮屈で」。血圧が200に上がった。たまらずパチンコに逃避すると心が和んだ。

 6月に妹が仮設住宅の抽選に当たり、母と3人暮らし。壁は薄く会話が隣に筒抜けで気を遣う生活は続く。「勝ち負けにはこだわらない。やめたいけど、しばらくは無理だね」

 同県住田町の女性(66)は「仕事がないし、涼しいから」。正社員だった水産加工会社が被災し、失業した。この日は2千円を使い「お金もかかる」と苦笑いした。

 同店が4月5日に営業再開すると、客が増えて6月は普段の3割増。1999年の開店以来最多で、日中は住民、夕方以降は復旧・復興関連の仕事で県外から来た客の姿が目立つという。工藤敦史店長(32)は「沿岸は商業や娯楽の施設が乏しい。厳しい避難生活の息抜きの場がないからではないか」とみる。

 大船渡市の「ダイナム岩手大船渡店」では、遊び方を店員に尋ねる新規の客が増えた。家族5人で仮設住宅で暮らす男性(64)は「昨秋にがんの手術をした。仮設でゴロゴロしてるわけにもいかねえし」と週1日程度来ている。津波で妻、長男、次男は失業。家の再建のめどは立たない。6月に被災者生活再建支援法の基礎支援金50万円が振り込まれた。「支援金には手をつけねえようにしねえと」。景品のレトルト食品を手に帰った。

 被災3県の遊技業協同組合などによると、加盟する約570店のうち、約70店が津波や原発事故の影響でいまも休業している。

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