緊急調査・指導
根拠なく「放射性物質完全除去」などとうたい、
消費者を誤認
させる広告・表示を行ったインターネット通販事業者を指導
平成23年7月20日
生活文化局
福島第一原子力発電所の事故以来、放射性物質や放射線被曝などに対する消費者の関心の高まりや不安に乗じて、インターネット上の通信販売サイトでは、放射性物質対策をうたうさまざまな商品の広告・表示が見受けられます。
こうした状況を踏まえ、平成23年5月、東京都はインターネット広告・表示監視事業(毎月2400件検索・調査)において、家庭用の放射性物質対策商品に関するインターネット上の広告・表示で、不当景品類及び不当表示防止法(以下「景品表示法」という。)に抵触するおそれのある広告・表示の調査を行いました。
その結果、合理的な根拠なく放射性物質除去等をうたい、実際の商品よりも著しく優良であると消費者を誤認させるおそれがあると認められた広告・表示58件について、53事業者に表示の改善を指導しました。
1 調査・指導の概要
(1) 指導件数
| 検索件数 | 広告・表示の詳細調査件数 | うち放射性物質関係の指導件数 |
|---|---|---|
| 2400件 | 102件(89事業者) | 58件(53事業者) |
不当表示につながるおそれのある広告・表示102件について、89事業者に対して景品表示法に関する啓発メールを送信するとともに、詳細調査を行いました。その結果、58件について、53事業者に指導しました。
また、放射性物質関係以外の広告・表示であって、実際よりも優良又は有利と消費者を誤認させるおそれがあると認められた広告・表示4件(4事業者)についても、併せて改善を指導しました。
(2) 商品別内訳
| 浄水器 | 健康食品 | 放射線測定器 | その他(メガネ・防護服等) | 合計 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 広告・表示の詳細調査件数 | 54件 | 17件 | 9件 | 22件 | 102件 |
| うち放射性物質関係指導件数 | 36件 | 9件 | 5件 | 8件 | 58件 |
2 指導を行った「放射性物質に関する不当表示」の例(詳細は別紙のとおり)
「放射性物質を完全に除去」とうたう浄水器
試験結果等に基づく表示ではなく、販売事業者は、当該浄水器が放射性物質を完全に除去するという事実について確認できる資料を保有していなかった。
「昆布に多く含まれるヨウ素は、体内に入る放射能を体外に排出させる」とうたう健康食品
販売事業者は、当該健康食品の効能について、合理的な根拠となる資料を保有していなかった。
※健康食品には薬のような効能表示は認められておらず、薬事法にも抵触するおそれがある。
「『米国保健物理学会』で承認済み」とうたう放射線測定器
販売事業者は、当該表示について、合理的な根拠となる資料を保有していなかった。
3 販売事業者に対して望むこと
- 景品表示法等の法令を遵守し、販売事業者として、責任を持って広告・表示を行うこと。
- 仕入れ元などから商品情報を得る際には、広告・表示の根拠となる試験結果等の客観的事実について確認を行うこと。
- 放射性物質や放射線被曝などに対する消費者の不安に乗じるような広告・表示を行わないこと。
4 業界団体への要望
公益社団法人日本広告審査機構、社団法人日本通信販売協会及び浄水器や健康食品関連の業界団体、またインターネット関係事業者に対して、本日、以下の要望を行いました。
- 関係事業者に、景品表示法及び関係法令の遵守について、より一層の周知を図ること
- 関係事業者が広告表示等を行う場合、表示の根拠となる客観的な事実を確認した上で表示を行うよう、団体又は事業者としてより一層、各種方策に取り組むこと
消費者へのアドバイス
インターネット広告においては、科学的な根拠があるかのように効能・効果をうたっていても、裏づけとなる客観的事実が乏しく、販売事業者が表示の根拠を説明できない事例が多く見られます。
表示の内容が、実際に行った試験結果等に基づくものか、専門機関などの見解又は学術文献などで客観的に実証されたものであるのかなど、消費者としても、事業者の広告内容をうのみにせず、多角的に情報を収集し、十分に検討を行いましょう。
「インターネット広告における不当表示調査」は、「10年後の東京」への実行プログラム2011において、以下の目標・施策に指定し、重点的に実施している事業です。
目標5「安心できる少子高齢社会の都市モデルを創造する」
施策17 「犯罪から都民を守り、消費生活の安全・安心を実現」
| 問い合わせ先 生活文化局消費生活部取引指導課 電話 03−5388−3068 |
〔参考〕
放射性物質に関する浄水器や健康食品の効果について
1 浄水器
浄水器の放射性物質除去効果についてはさまざまな情報がありますが、実際に行われた試験の結果や試験方法の検討に関する情報は、一般社団法人浄水器協会や独立行政法人放射線医学総合研究所により公表されています。
※一般社団法人浄水器協会ホームページ
※独立行政法人放射線医学総合研究所ホームページ
2 健康食品
東京都福祉保健局は、ホームページ「健康食品ナビ」において、健康食品には薬のような効果は認められておらず、このため、例えば「体内に入った放射性物質をすぐに排出させる」、「放射線被ばくに対する身体の抵抗力を高める」などの広告・表示をすることは、薬事法、景品表示法等に違反する可能性があると、注意を呼びかけています。
景品表示法で禁止されている不当表示
優良誤認(第4条第1項第1号)
内容について、実際のものよりも著しく優良であると一般消費者に示す表示、又は事実と相違して競争事業者に係るものよりも著しく優良であると一般消費者に示す表示
有利誤認(第4条第1項第2号)
取引条件について、実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示、又は競争事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示
その他(第4条第1項第3号)
上記の他、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがあると内閣総理大臣が指定する表示