韓国軍:元幹部が天下り先を通じ軍事機密を流出(下)
■スカウトの真の目的は機密流出とロビー工作
業者が軍の幹部たちをスカウトする理由は、表向きには「専門性」を持つというものだ。しかし、実際には別の目的があるとの事実が、裁判所の判決や検察の起訴状によって明らかになった。サーブに天下りしたA氏は、2級軍事機密とされる「合同軍事戦略目標企画書」を流出させた。また、外国のヘリコプターメーカーの販売代理店に天下りしたP氏ら3人は、3級軍事機密に当たる、2006から10年までの中期国防計画の一部を業者に流出させた。一方、韓国のある車載用発電機メーカーは、陸軍への納品を実現するため、00年に中領を最後に除隊したL氏(59)をスカウトし、軍の通信体系に含まれる発電機の調達計画などの機密を入手した。だが表向きには、L氏に毎月200万ウォン(約15万円)を支給し、納品に成功した場合、受注額の3%を成功報酬として支給するという「コンサルティング」契約を交わしていた。
■現役時代から「管理」
射撃に使用する装備品の開発業者N社は09年1月、S陸軍中領(54)に「秘密の提案」を持ち掛けた。S中領の息子を同社のインターンとして採用するという内容の虚偽の書類を作成し、毎月250万ウォン(約19万円)を支給するとともに、法人用クレジットカードで毎月100万ウォン(約7万5000円)を使えるようにする、という内容だった。S中領は後輩のH中領にN社との取り引きを引き継ぎ、1年後に除隊した。N社の社長は検察の調べに対し「軍内部に広い人脈を持つS中領を、現役時代から管理していた」と供述した。
■軍のずさんな情報管理、「前官礼遇」も対策なし
陸軍大領を最後に除隊したH氏(66)は05年、国防関連の研究所を設立したが、経営に行き詰ったため、09年に現役の中領を研究所に招き、講義を任せた。だがある時、講義で軍人が口外した軍事機密を米国の軍需企業NGCに流出させた。講義を行った軍人は「重要な機密が含まれているため、メモは取らないように」と伝えたが、結果的に軍事機密を海外に流出させる上で貢献することになった。
外国の企業などに軍事機密が流出したのは、第一次的にはその企業に天下りした軍の元幹部たちに責任があるが、軍が対策を講じなかったことや、制度的な盲点も原因として挙げられる。経済関連省庁の職員たちは、在職中に一定期間担当していた業務と関連がある企業への天下りを制限されているが、元軍人にはこのような制限はない。また、裁判所は1993年以降、軍事機密の流出に関与した被告人に実刑判決を下した判例がない。こうした軽い処罰も、軍事機密の流出が相次ぐ要因として指摘されている。
崔鍾錫(チェ・ジョンソク)記者