いつまで続く 福岡の暴力団犯罪
いつまで続く 福岡の暴力団犯罪 07/20 19:55

こちらをご覧ください。

先月、福岡県警が押収したけん銃やマシンガンです。

発見されたのは福岡市のマンションの一室で、なんと暴力団の武器の保管庫として使用されていたんです。

そしてこれは、2004年以降、福岡県内で起きた発砲事件の数です。

今年は、すでに10件起きていますが、今年だけが多いわけではありません。

今年を含めて赤い数字の年は、全国ワーストなんです。

シリーズでお伝えしている「どうなっているんだ!福岡」、きょうは、福岡県が抱える最も厄介な問題、市民生活を脅かす暴力団犯罪についてお伝えします。

●福岡県・小川洋知事
「私は県民1人1人が福岡県に生まれ、生活してよかったと実感できる県民幸福度日本一の福岡県を、県民の皆様と共に目指してまいります」

●能見記者
「小川知事が目指す県民幸福度日本一の福岡県、しかし、現状はといいますと、こちらをご覧ください。福岡県警のホームページです。『手りゅう弾に注意』と呼びかけています。まるで戦場です」

●目撃者
「まだ中に男の人がいて、血だらけで救急車に乗せられて…」

今年4月、車内で手りゅう弾が誤爆し、元暴力団組長ら2人が死亡しました。

福岡市で企業トップの自宅が狙われた事件では、一歩間違えば最悪の事態となるところでした。

●西部ガス・田中優次社長
「(妻が)手に取って裏を見たら、英語が書いてあったと…。パイナップル弾か何かじゃないですか」

福岡県では今年に入って、手りゅう弾を使った事件が4件起きています。

手りゅう弾が爆発した場合、半径15メートル以内にいた人は死亡する恐れが、また半径50メートル以内でも重傷を負う恐れがあります。

●小畠記者
「こちらにずらりと並べられた14丁ものけん銃とマシンガン。これらは先月、福岡市のマンションで見つかり、押収されたものです」

福岡県は、発砲事件も全国ワーストの10件。

東京都で2件、大阪府で1件しか起きていないことからも、いかに異常なのかがわかります。

発砲事件10件のうち6件は、ゼネコンなど企業が標的になっています。

発砲された企業は、一様に、「全く心当たりがない」と話しますが、ある指定暴力団の幹部は、一般論だと前置きした上で、「狙う側には必ず理由がある」と言い切ります。

●暴力団幹部(声吹き替え)
「狙う理由がないのに狙うはずがないだろう。撃つ側もリスクを負うわけだし、何より発砲は金がかかる。その都度、拳銃を捨てないといけないのだから」

そして、特定の企業が狙われる理由についてはこう続けます。

●暴力団幹部(声吹き替え)
「今まで長いこと付き合いをしていて、条例が出来たからと言っていきなり手を切るなんて、出来るはずがないだろう。撃たれた企業には、必ず身に覚えがあるはずだが、それを警察にしゃべることは絶対にない」

福岡県では、公共工事をめぐる混乱を避けるため、建設会社は長年、地元対策費を落としてきました。

その大半が暴力団に流れていたといいます。

暴力団排除条例が施行されて1年余り、県警は、発砲事件が相次いでいる背景には、暴力団の焦りがあると話します。

●福岡県警組織犯罪対策課・原田大介課長
「暴力団とのつながりを断ち切る企業が増加したり、暴力団との密接な交際を行ったという事業者が公共事業から排除されるということから、暴力団は資金源に窮し焦っている、これが原因ではないかと考えています」

県警の別の幹部は、関東や関西などの暴力団が、様々な分野に手を広げ資金源を確保するいわゆる「経済ヤクザ」として活動しているのに対し、福岡の暴力団は、公共工事に群がるという昔ながらの手法を続け、思い通りにならないとすぐに発砲すると言い放ちます。

さらに、福岡県では、暴力団同士の抗争事件が続いています。

●抗争事件の目撃者
「パンパンパンという乾いた音でした。それが3〜4回響いた後に車が猛スピードで」

先月、大川市の住宅街で、カーチェースの末に、指定暴力団・九州誠道会系の幹部の車が銃撃されました。

2007年以降、繰り返される指定暴力団・道仁会との抗争事件。

県警によりますと、「トップをとるまで抗争は終わらない」とする道仁会に対し、九州誠道会はいまのところ、「報復はしない」という方針を打ち出しています。

県警は、九州誠道会の内部でうっ憤が爆発し、報復が始まった場合、抗争事件は一気に拡大すると危惧しています。

捜査をつくすという福岡県警、しかし、10件の発砲事件はいずれも未解決です。

●福岡県警・原田課長
「犯行現場に、指紋やDNAなど客観的な証拠が現場に残りにくいという特徴がある。そのため、捜査に長い時間と労力がかかる」

これについて長年、暴力団排除運動に携わってきた堀内弁護士は、福岡県の暴力団を取り締まるには、現行の法律や捜査手法ではもはや、限界だとの見方を示します。

●暴力団犯罪に詳しい堀内恭彦弁護士
「一概に警察が悪い、警察は何をやっているんだという風には、私は思っていない。じゃあ、警察にどういう捜査権限を持たせて、どういう法律を作れば、もっと暴力団犯罪はなくなるのかと、そういう全体の議論をしないと意味がない」

●福岡県・麻生渡前知事
「反社会的な団体が、10年も20年も生き残っておかしいじゃないですか。国がしっかりしないと」

麻生前知事らは国に対し、法律の改正やおとり捜査の制度化を求めていますが、国は慎重な姿勢を崩していません。

こうした中、いま県警が力を入れているのが教育です。

県内の全ての中学高校で特別授業を実施し、暴力団の実体を噛み砕いて説明しています。

●授業を受けた男子中学生
「今までは、義理人情があるとか思っていたけど、この授業を通して、暴力団は絶対いけない存在だとわかりました」

●授業を受けた女子中学生
「発砲事件とか手りゅう弾とかあったので、いつそういう巻き込まれるのかわからず不安です」

先週、北九州市で行われた指定暴力団・工藤会の会長交代に伴う会合。

黒づくめの組員らがずらりと並び、物々しい雰囲気となりました。

全国最多、5つの指定暴力団が存在する福岡県、県警が認定する暴力団は、準構成員を含めると3380人に上っていて、今年に入ってすでに700人以上が検挙されています。

県内各地で暴力団排除の声が上がる一方で、あまりにも身近で発砲などが繰り返されるせいか、一つ一つの事件に対する受けとめ方が鈍くなっているようにも感じます。

●能見記者
「手りゅう弾や拳銃が平然と使用される、この異常事態が続く限り、県民幸福度日本一は夢のまた夢です」