紙吹雪や紙テープが舞う銀座の街を、なでしこたちが練り歩く。そんな夢プラン…は実現しない。「バカ!」「バカ!」と繰り返したのは、石原知事だ。
「何できのう(19日)帰ってきてすぐ、銀座でパレードやらないんだ。気が利かない。国も政府も東京都もバカ!」
都庁ホールで怒りを爆発させた。DF鮫島と熊谷、佐々木監督らの優勝報告を受けた席の冒頭だった。
「担当局長を怒った。成田から来てすぐ、1時間でもやれば絵になったのに。時間はあったのに企画力、発想力がない。もっともっと(喜びが)膨らんだはず。残念。こんなことでは五輪(招致)も勝てない」。独特の口調でまくし立てる石原知事。隣の鮫島と熊谷の顔は、みるみる硬直していった。
猪瀬直樹副知事はこの日、ツイッターでパレード実現への意欲を記していたが、夕方には「土曜に、なでしこリーグが始まるからパレードは日程的に無理という。残念。そもそも決勝の段階で、サッカー協会やJOCが企画しておくべきだったね」と断念を宣言。MF沢の東京・府中市など各選手の出身地では計画があるが、全体パレードは開催できそうにない。
もちろん、石原知事が怒りを大爆発させたのは、なでしこを祝いたかったから。鮫島と熊谷へは「本当にありがとう。最近くだらんことが多くて、こんな日本に住みたくないという人も出てくる中、いちるの望みをつないでくれた」「男より根性がある。日本の男どもは総理もオレも含めてダメだ」「日本中が勇気をもらった」−などと、絶賛の嵐だった。
猪瀬副知事はその後、「今後の教訓にしましょう。目指すはロンドン五輪です」とツイート。来年の五輪で“2冠”を達成すれば、今度こそ実現する考えを披露した。
鮫島は「優勝の喜びを共有できてうれしい」。熊谷は「満足せず、ここからやっていきたい」と先を見据えた。来夏こそ、金メダル2個を胸に銀座をパレードする。 (須田雅弘)
(紙面から)