友人が暮らしていたことをきっかけに、東村高江のヘリパッド建設に反対してきた歌手のUA(ウーア)がこのほど、同村農民研修施設で開かれた「ヘリパッドいらない住民の会」の座り込み4周年報告会で、ミニライブを行った。妊娠中の大きなおなかを抱えながら、自然との共生や基地なき世界への祈りを込めて歌い上げた。
奄美群島出身の母を持ち、沖縄に「憧れと懐かしさ」を感じていたというUA。福島第1原発事故による放射線の影響が心配になり、4月に神奈川からやんばるへ家族で移り住んだ。
報告会でのライブは、奄美の島唄「太陽ぬ落てぃまぐれ節」で始まった。古代の祈りのような歌が、会場を人と自然、神の距離が近かった時代に引き戻した。オリジナル曲「Moor」では「宇宙船地球号に暮らす65億の蟻(あり)」の物語を歌う。蟻たちは船が滝壺(たきつぼ)に落ちようとしているのに気付こうとしない。東京から参加したスティールパン奏者トンチが、魔法のような音色で歌の世界を支えた。
UAは沖縄を「原発がなくても基地があって問題だらけ」と指摘。「この子が生まれて空にオスプレイが飛んでいたら一体何と説明したらいいのか。人が人を疑って戦争の練習をしていると伝えるのはとても辛(つら)い」と語り掛けた。
同日夜にヘリパッド建設現場前で催された交流会では、シンガー・ソングライター七尾旅人のカバー「わたしの赤ちゃん」を歌った。
「喜びに射抜かれている/世界の祝福よここに/すべて集まれ今夜は/わたしの赤ちゃんやって来た」
おなかの子どもは8月に生まれる予定だ。子守歌のような優しい声が、スティールパンや虫の音と混じり合い森に溶けていった。
(伊佐尚記)
(琉球新報)
2011年7月19日