大相撲名古屋場所11日目の20日、前人未到の8連覇を目指す白鵬は、大関取りを狙う琴奨菊の寄りに屈して初黒星。琴奨菊は9勝目を挙げた。日馬富士は琴欧洲との大関対決を制し、ただ一人全勝を守った。優勝争いは日馬富士を、1敗で白鵬、2敗で把瑠都、琴奨菊、平幕の豊真将が追う構図になった。
今場所初めて無数の座布団が宙に舞った。大関取りが懸かる琴奨菊が、約4年間にわたって19連敗していた白鵬を破った。
立ち合いで白鵬の張り手が空振りした。その右脇に、琴奨菊は得意の左を差した。考えていた自分の相撲を取れる形だ。がぶって寄りながら右上手もがっちり。体勢十分で一気に前に出ると、横綱の左足が土俵の外に出た。支度部屋に戻ってきた琴奨菊は「自分を信じた結果。本当に大きい」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。
この日、同じ福岡県出身の魁皇が引退届を出した。「魁皇関がいたから安心してできていた。今度は自分が頑張らないといけない」と、一つ上を狙う自覚が芽生えた。
横綱・大関戦を3勝1敗で乗り切った。大関昇進の目安となる3場所通算「33勝」まであと3勝。過去の対戦で1勝26敗と歯が立たなかった白鵬を破ったことは、ただの1勝以上の意味を持ち、放駒理事長(元大関・魁傑)は「大きな1番であることは間違いない」と高い評価。貴乃花審判部長(元横綱)は、魁皇が正式に引退届を出した日に起きた27歳の活躍に「世代交代でしょう」と認める。
周囲の評価は高いが、かつての兄弟子、琴光喜は02年初場所14日目に入幕2場所目の武雄山に敗れ、34勝しながら大関昇進が見送られた。「人の評価よりも自分の気持ちが大事。大関昇進はおまけなので」。あと4日、言葉通りの相撲を取れるか。【安田光高】
○…大関昇進が懸かる琴奨菊に白鵬が完敗した。「(自分の)ファンには申し訳ないが、勝ってはいけない雰囲気があった」。魁皇の引退で横綱大関陣に日本人がいなくなったことで、集中できなかった心境を吐露した。これまで大関候補の壁になってきたが、「そういう時期じゃない」とも。琴奨菊には「(大関に)なるものはなるんだという気がします。力はあると思う」とエールを送った。
○…日馬富士が琴欧洲を問題にせず、優勝争いでトップに立った。のど輪で突き起こし、右上手を取ると出し投げで崩し、休まず出る万全の内容。「流れです。まわしを取られないことだけを考えた」と自らの取り口に満足げ。初日からの11連勝は初優勝を飾った09年夏場所以来。2年ぶりの賜杯に向け「もちろん意識する。一日一番、自分の相撲を取るだけ」と自らに言い聞かせるように語った。
毎日新聞 2011年7月20日 20時11分(最終更新 7月20日 21時27分)