2011年5月21日 20時42分
【上海・隅俊之】高速鉄道網が急速に整備される中国で22日から、高速列車(時速200キロ以上)の切符購入と乗車の際に、身分証明書の提示が義務づけられる。
テロ防止やダフ屋対策が主な目的で、インターネット上には「犯罪者の逃亡防止に役立つ」と歓迎の書き込みがある一方、当局に移動情報を把握されるほか「飛行機ならともかく、直前に駅に行ったら間に合わない」と不満が出るなど、賛否の声が噴出している。
一般市民が持つ「居民身分証」のほか「戸籍簿」「軍官証」など公的な身分証を提示しなければ購入できない。複数の場合は人数分の身分証が必要になる。乗車時にも乗車券とつき合わせる。
盛光祖鉄道相は4月、中国メディアに「安全確保に有効だ」と意義を強調していた。ただ、ICチップ付きの最新式「居民身分証」はオンラインで瞬時に身元確認できるものの、それ以外の「旧式」の身分証は手作業で情報を入力するため時間がかかる。
中国では需要の高い路線の切符を買い占めて高値で転売する悪徳業者が横行している。制度導入は業者締め出しの利点もあるが、買い占めの対象は、多くは庶民が利用する一般列車の切符だ。上海紙・解放日報は「旧正月の春節期間中も(高額な)高速鉄道の切符購入は難しくなかった」と指摘している。