「タコイカウイルス」と呼ばれるコンピューターウイルスでパソコン内のデータを使用不能にしたとして、器物損壊罪に問われた無職、中辻正人被告(28)の判決で、東京地裁は20日、ウイルスでハードディスク(HD)の機能が害されたと判断して罪の成立を認め、懲役2年6月(求刑懲役3年)を言い渡した。
判決理由で岡部豪裁判長は、器物損壊罪には効用が侵害されることも含まれるとしたうえで、HDの機能を(1)保存データの随時読み出し(2)新たなデータの書き込み--と認定。「保存データをその通りに読み出すことは不可能になり、復元も容易ではない。書き込み機能も侵害された」と指摘した。
弁護側はウイルス作成を認めた上で「HDは物理的に壊されておらず、損壊罪の適用は法の類推解釈で許されない」と無罪を主張していた。
判決によると、中辻被告は昨年5~7月にファイル共有ソフトを通じてウイルスを流し北海道と群馬、神奈川両県の男性3人のパソコンに保存された写真などのデータをイカやタコの画像に変えて使用不能にした。
当時はウイルス作成を直接処罰する法律はなかったが、増加するサイバー犯罪へ対処するため、今国会の刑法改正で作成罪が新設され、14日から施行されている。
中辻被告は08年にコンピューターウイルス作成者として国内で初めて逮捕された。著作権法違反の罪などで京都地裁の有罪判決が確定し、執行猶予期間中だった。
毎日新聞 2011年7月20日 10時53分(最終更新 7月20日 12時07分)