「すまないが、彼女は俺の連れでね。誘いを掛けるなら他の令嬢方にしてくれないかな?」
「スレイさま!!」
ルルナが瞳を輝かせてスレイを見つめる。
彼女を放置してしまったのは自分なので、その視線にやや気が咎めるスレイ。
「くっ」
「ちっ」
「けっ」
ルルナにしつこく誘いを掛けていた令息達は舌打ちなどしながらもあっさりと退いていく。
流石にSS級相当探索者と事を構えるなど相手が悪いと分かっているのだろう。
というか、それならば、初めからルルナに強引に誘いをかけたりしないでほしいところだが。
見ると、何やら周囲の令嬢達の視線も感激したようなものとなっている。
繰り返すがルルナを放置してしまったのは自分である。
それを後から現れて颯爽と助けた、と言っても、憧れの視線で見られては、やはりこう、決まりが悪い。
そしてスレイ達は、軽く令嬢達に断りを入れ、場を離れると、一代貴族の大人達に挨拶回りをする。
大人達は皆、スレイの礼儀に適った作法に感心している。
そして先程の令息達の両親らしき人物達からは謝罪の言葉なども頂いた。
一通り挨拶回りを終えると、スレイとルルナの二人は、壁際に立つアッシュの元へと赴いていた。
軽く酒など嗜んでいたアッシュはスレイに呆れたような視線を向けている。
「いや、お前ほんとたった一日で良くそこまで礼儀作法が身についたな」
「礼儀作法だけじゃないぞ、後でダンスの腕前も披露してやるさ」
軽く笑って答えるスレイ。
「しかし途中でエスコートする相手を放置するってのは正直どうかと思うがな」
「ぐっ」
何も言い返せずスレイは言葉に詰まる。
「本当に、酷いですわ。あのしつこい殿方達の誘いを断るのにどれだけ苦労したか」
「すまない、つい知り合いを見かけたものでな」
アッシュは、そうそう、と尋ねてくる。
「お前あのグランド家の嫡子と知り合いなのな、驚いたぜ。いったいどんな経緯で知り合ったんだ?」
「あら?わたくしを放っておいて話していた相手はグランド家のジークさまでしたの?」
「うっ」
やはりルルナの言葉に棘を感じ唸るスレイ。
だが軽く咳払いなどして、調子を取り戻すと、正直に話す。
「まあ、フレイヤの付き合いでエルシア学園の臨時講師の助手など勤めて、その時にな」
「へぇ」
「まあ」
感心したような二人。
アッシュは他にもその時の生徒がこの中に居るんじゃないかと言い。
ルルナは自分もスレイの教えを受けたかったなどと言う。
「まあ、確かに居るかもな。だが俺が重点的に教えたのは三人だけだったし、あとルルナ、俺の教えはスパルタらしいから、あまりお薦めしないぞ」
納得した様子を見せる二人。
闘技場での模擬戦闘などを思い出しているのだろうか。
やや遠い眼差しだ。
ふとアッシュが尋ねてくる。
「そういえばその重点的に教えた3人って、ジーク・グランドは当然入っているとして、後の二人は誰なんだ?」
「ライオット・グレイブという騎士と、ルーシーという魔術師だな」
アッシュが驚いた顔をする。
「おいおい、ジーク・グランドも入れれば、今の1年2年3年の各主席じゃないか。しかも生粋の武断派の由緒正しい名門公爵家の嫡子に、学園でも飛び抜けて魔力が強く傲慢な性格の少女。随分と反抗的だったんじゃないか?」
「まあな。というか良くルーシーの事まで知っているな」
今度はスレイが驚いた。
ルーシーは3人が卒業してから入学した生徒だと思うのだが。
「まあ、俺も学園には色々と伝手があるからな」
「なるほど」
スレイは頷く。
それならば、と尋ねる。
「エミリアにも聞いたんだが、学園内で女帝と剣女神と呼ばれる生徒は知っているか?」
「ああ知っている。俺達より一学年下だが、早生まれだから今は同い年の生徒だな。さらに言うなら学園在籍中は俺もルルナもエミリアも敵わなかった、本当の学園最強だな。多分今の俺達でも敵わないだろうな。と、言うかお前こそ良く知っているな」
「ああ、ジークに聞いて、リリアに色々調べて貰ってな。って」
ふと見るとルルナがじと目でスレイを見ていた。
思わず言葉を止めるスレイ。
「また新しい恋人候補の選定ですか?ヒルデの事といい、本当にスレイさまはそっち方面には余念がありませんわね」
「い、いや。そういうつもりじゃなく、ただ単純にその力に興味があるだけなんだが」
「さあ、どうでしょうか?」
なにやらやさぐれた雰囲気を醸し出すルルナ。
流石にスレイも気まずい思いがして、慌てて話題を逸らす。
「と、ところでだ、二人とも、今でもエルシア学園の図書館に入れたり図書館の蔵書を借りれたりするのか?俺もエルシア学園の図書館に行ってみたいんだが」
ふと呆れたような視線がアッシュとルルナの二人から注がれている事に気付く。
理由が分からず困惑するスレイ。
すると溜息を吐きつつルルナが教えてくれた。
「エルシア学園は探索者ギルドと繋がりが深いので、探索者ギルドで申請すれば、エルシア学園の図書館を利用する許可証が貰えますわよ」
「なにっ!?」
知らなかった事実にスレイは衝撃を受ける。
もっと早く知っていれば、と心が後悔に染まる。
と、アッシュが言う。
「ところでだ、ほら楽団も来て準備を終えてる、そろそろダンスタイムだぞ。さっき言ったようにダンスの腕前を披露してくれ」
アッシュの言うとおり、話し込んでる間に、何時の間にか楽団が現れ演奏の準備を始めている。
スレイはルルナの手をとり、その手の甲に軽くキスをする。
「私に貴方と踊る栄誉を与えて下さいませんか?」
「はい」
思わず陶然として頷くルルナ、アッシュは軽く呆れている。
そのままスレイはルルナの手を取り会場の中心へと進み出ていた。
令息達の嫉妬の視線がスレイに突き刺さる。
しかしスレイは構う事なくそのままルルナを軽く抱き寄せる。
そして音楽が流れ始めた。
スレイはアッシュに宣言した通り完璧なダンスの腕前を見せつけ、そして二人のダンスは今日の主役の座を掻っ攫っていたのだった。
グラナリア家の邸宅に戻り、夜も遅いという事でそのまま邸宅に泊まる事になるスレイ。
そしてスレイはルルナの部屋を訪れていた。
スレイはベッドに座り込み、後ろからルルナを抱き寄せている。
以前も確認した事だが部屋の防音は完璧なようだった。
軽くルルナの胸を揉み、太ももを撫で上げ、うなじに口付ける。
そんなスレイの愛撫に敏感に反応するルルナ。
スレイは告げる。
「今晩は寝かせるつもりはないぞ、一晩中可愛がってやる」
「ど、どうしましたの?随分と今日は強引ですけれど」
「いや、今までああいう場でルルナが他の奴と踊った事があるってだけで嫉妬していてな」
「まあ」
あまりに自分勝手で稚気に溢れた独占欲にルルナは苦笑する。
「わかりましたわ。存分に可愛がってくださいませ」
しかしルルナはそんな独占欲すら嬉しく、そして可愛くすら感じた。
そしてそのままルルナはスレイの全てを受け入れていった。
面白いと思ってもらえたらどうぞ宜しくお願いします。
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