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  シーカー 作者:安部飛翔
第五章
エピローグ
「それでだ、SS級相当探索者になるにあたっての説明とやらを聞かせてもらえるか?」
「あ、ああ」
 まだ先程の雰囲気から立ち直れず、顔を引き攣らせながらゲッシュは説明を始めた。
「まず、SS級相当探索者になるにあたっては、二つ名が公式の物となる。君の場合は“黒刃コクジン”だね」
「その二つ名というのは変えられないのか?」
 やや嫌そうな顔をしながらスレイが尋ねる。
「ふむ、世間一般に知られているものを二つ名にしなければ意味が無いからね。君の場合はもう結構この二つ名が通っているから変えられないよ。だが、参考までに聞くと、何か希望の二つ名でもあるのかね?」
「……いや、特に無いな。ただ二つ名なんかで呼ばれるのが大仰で嫌なだけだ」
 スレイは暫し考えると、何も浮かばない事に気付き、自分の本心を口にする。
「そういう事ならこれに関しては諦めてくれたまえ、SS級相当探索者の義務なのでね」
「ああ、分かった」
 スレイは嫌々ながらも仕方なく頷く。
「次にだ、君の能力値なんだが、他のSS級相当探索者達と同じく、私やごく一部の探索者ギルドの諜報員だけが閲覧できる機密書類に記載させてもらう事になる。勿論トップシークレットとして外部には洩らさない事を約束しよう。これもSS級相当探索者の義務になるので断る事はできないよ」
「ああ、分かった。しかしSS級相当探索者、というのは義務が多いな。メリットはあるのか?」
「勿論だとも。探索者ギルドが持つ迷宮に関する情報は全て開示し、機密書類についてもある程度までは閲覧可能、他にも様々なサポートを最大限受けられる、決して損はさせない事を約束しよう」
「ふぅ、分かった。それで次は?」
 溜息を吐くも、スレイは大人しく話の続きを促す。
「ふむ、以前も説明したと思うが、だいたい君達SS級相当探索者の速度は異常なもので、それこそ他の移動手段が無くても、自分の足で、一瞬でどんな遠くまでも行けるだろうが、その速度を利用しての遠距離移動は控えてほしい。これは君達の速度での遠距離移動は色々な意味で危険だから安全の為にだね」
「ああ、確かに言っていたな」
「まあ、この前の会談からはその代わりになる転移の間の使用許可や、特別製の飛翼の首飾りを提供しているし、問題は無いだろう?それにもし自ら空間魔法の転移魔法などを身につけた場合は、転移魔法に関しては特に規制はしていないしね」
「なるほど、そういえば転移魔法という手段もあったな」
 納得したように頷くスレイ。
 そんなスレイの様子にゲッシュが恐々と聞いてくる。
「まさか君は、空間魔法まで身につけているのかね?」
「さて、どうだったろうな?」
 笑って恍けてみせるスレイ。
 ゲッシュは気になって仕方が無かったが、スレイが答える気が無さそうなので、仕方なく次の説明へと移る。
「それでは次にだ、君はまだ一度も経験が無いだろうが、最低でも5年に一度は探索者ギルドでの登録の更新が必要になっている。もし5年を過ぎても更新手続きをしなかった場合は一時的に探索者としての資格を、また新しく手続きするまでは失った状態になる、という規則がある」
「そのことなら前にジンとかいう元SS級相当探索者のエルフの爺さんから聞いた事があるな」
「君はジン殿とも知り合いなのかね?随分と顔が広いね」
 驚いた表情をするゲッシュ。
 だがスレイは構わず問い返す。
「それで、それは全探索者に関する事なのだろう?SS級相当探索者になると何か変わるのか?」
「うむ、その事を説明しようとしていたのだが。有体に言うと、普通の探索者は通常の各地のギルドで更新してもらえれば問題無いが、SS級相当探索者に関しては、ここ、探索者ギルド本部の私の所で直接更新してもらう必要があるのだよ」
「ほう、どうしてだ?」
 理由を尋ねるスレイ。
 それにゲッシュはあっさりと答えた。
「まあ、SS級相当探索者に関しては先程も言ったように機密書類に能力値を載せる事になるのでね、その能力値も新しい物に更新しなくてはならないだろう?そしてギルド本部以外で能力値を開示させるなど出来る筈もあるまい」
「なるほどな」
 納得を示すスレイ。
「さて、私からの説明は以上になるが、何か質問はあるかね?」
「いや、今のところは特に無いな」
 ゲッシュは笑って頷くと告げた。
「それでは、クロウ夫妻が現役に復帰したので、君は現在公式に認められた12人目の現役SS級相当探索者という事になるね。ちなみにSS級相当探索者になった最年少記録はクロウ殿の16歳だが、君の探索者になってからSS級相当探索者になるまで約2ヵ月半というのはぶっちぎりの最短記録になる。我々探索者ギルドはこれからの君のますますの活躍を期待しているよ」
 そうにこやかに告げた後、ゲッシュは真面目な表情になると、やや小さい声で続ける。
「ただ、あまりトンデモない事をやらかすのは控えめにしてくれると私個人としては有り難いね。特に私の胃の為に」
「はは、分かった。なるべく努力してみるさ」
 笑ってスレイは答えると、そのまま探索者ギルド本部、ギルドマスターの個室から退出するのだった。

【???】???“???”???
「さーってと、久しぶりに表に出てきた気分はどうだい、トリニティ?」
「うむ」
「感謝するぞ」
「例え」
「汝に」
「どのような」
「思惑があろうとな」
「うわ、表に出てくるとますますややこしいね、その喋り方。せめて誰か一人に統一して喋れないのかい?」
「仕方」
「なかろう」
「我等は」
「三柱にして」
「一柱」
「完全なる同体故」
「まあ、そうなんだろうけどさー。せめてもうちょっと……まあ、いいや。それで君達はまず“勇者”達に復讐するんだっけ?」
「勿論」
「その為にも」
「仕込みが必要」
「ふーん、君達も色々と動くって訳か。でも珍しいね。君達以外の邪神は僕も含めて“勇者”なんて無視して“天才”の方を気にしてるのに」
「我等に」
「してみれば」
「あのような化物を」
「完全に」
「覚醒させようとする」
「汝らの方が理解不能」
「わっかんないなー。絶対“天才”の方が遊んで楽しいじゃん。僕達邪神は皆好き勝手楽しむ為にこの壊れない世界ヴェスタへやって来たんだと思ってたんだけどなー」
「戯れも」
「楽しみ方も」
「色々あると言う事よ」
「実際」
「汝らとて」
「“天才”への関わり方」
「そのスタンスは」
「全くの」
「別物であろう?」
「まあ、そうかもね。それじゃあ、まあ君達は君達で頑張って場を引っ掻きまわしてよねー。僕はそれも利用させてもらうから」
「ふむ」
「流石は」
「享楽の」
「邪神と」
「言う事か」
「せいぜい」
「利用されないよう」
「気をつけると」
「しよう」
「まあ、せいぜい頑張って。さーて、それじゃあお次はどうしようかなー。嗚呼、君との再会が楽しみで仕方ないよスレイ」


面白いと思ってもらえたらどうぞ宜しくお願いします。



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