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  シーカー 作者:安部飛翔
第五章
32話
 通常の時系列へと回帰するスレイ。
 ただ一人、静止していたシャルロットが動き出す。
「ぬうっ?グルスの奴めはどこへ行きおったのだ?」
「あのねー、パパが凄かったんだよー。グルグルってやって、ズバババッってやって、そしたらバラバラの粉々になってお猿さん消えちゃった」
 シャルロットの疑問にアルファが無邪気な表現で答える。
 その答えにシャルロットは顔色を変えるとスレイに詰め寄った。
「スレイ、お主。ちょっと探索者カードを見せてみい!」
「まあ、恋人のシャルになら見せても構わないが、いったいどうしたんだ?」
「いいからはようせい!」
「ああ」
 疑問顔をしながらも、探索者カードを取り出し能力値を表示してみせるスレイ。

スレイ
Lv:52
年齢:18
筋力:SS
体力:SS
魔力:SS
敏捷:EX
器用:SSS
精神:EX+
運勢:G
称号:不死殺し(アンデッド・キラー)、闇殺し(ダーク・ブレイカー)、神殺し(ゴッド・スレイヤー)、虐殺者ジェノサイダー、双刀の主、天衣無縫
特性:天才、闘気術、魔力操作、闘気と魔力の融合、概念操作、思考加速、思考分割、剣技上昇、刀技上昇、二刀流、無拍子、化勁、明鏡止水、無念無想、心眼、高速詠唱、無詠唱、多重魔法、融合魔法、炎の精霊王の加護、炎耐性、毒耐性、誘惑耐性、霊耐性、邪耐性、神耐性
祝福:無し
職業:剣皇
装備:双刀“紅刀アスラ”“蒼刀マーナ”、ミスリル絹のジャケット、ミスリル絹のズボン、牛鬼の革のスニーカー、九尾の腕輪
経験値:5100 次のLvまで100
預金:90062コメル

「やはりか」
 シャルロットがどこか深刻そうな顔をして呟く。
「いったいどうしたんだ、シャル?」
「どうしたのママー?」
「どうしたんだい?」
『どうしたというのだ?』
 2人と2匹が一気に疑問を投げかける。
「ぬう、何とも気が抜けるのう」
 一斉の唱和に肩を落とすシャルロット。
 だが頭を振り、姿勢を正すと、シャルロットは告げる。
「どうやらグルスの奴めは、邪神の使徒となっても変わらず魔猿族の長、魔猿王な事に変わりはなかったようだの。お主の称号に闇殺し(ダーク・ブレイカー)が増えておる。この称号は妾達、闇の種族にとっては天敵そのものだぞえ」
「そうか、だが問題は無かろう。特に俺は闇の種族と敵対するつもりは無いからな」
 軽く肩を竦めて告げるスレイ。
「うむぅ」
 シャルロットは僅かに唸るも、かぶりを振り、表情を呆れ顔に切り替えた。
「まあ、そうだのう。スレイならば問題あるまい。サイネリア陛下には妾から伝えておくとしよう。しかしなんだの、スレイは本気で色々と非常識だのう。以前と比べてもますます非常識度が増しておるぞえ」
「失礼だな、いったいどこが非常識度が増したというんだ?」
 スレイがそう言うと、シャルロットは怒涛の如く問い詰める。
「まず能力値、いくら職業が以前見た時の中級職から隠し最上級職にクラスアップしているとはいえ、Lv52でこの能力値の高さは非常識であろう。何か反論はあるかの?」
「むぅ」
 唸り黙り込むスレイ。
 だがシャルロットは止まらない。
「次に称号、闇殺し(ダーク・ブレイカー)は今のグルスを倒して得た物だから置いておくとして、虐殺者ジェノサイダーに天衣無縫などという称号が増えておるのう、これはなんだの?」
虐殺者ジェノサイダーについてはディラク島の邪神の尖兵である約1万のアンデッド兵と一人で戦ってな、だいたい千体ほど倒したら取得していた。あと天衣無縫に関しては今の戦いで得たようだな、技を極め、技の本質を知りながら、技の型に囚われず、自在な形で技の本質を操る者に与えられる称号らしい」
 称号を取得すると同時に脳裏に刻まれた情報を開示するスレイ。
「どれだけ無茶をしておるのだお主は」
 シャルロットはますます呆れ顔になり続けた。
「概念操作については、アルス王との戦いからこっち、この屋敷での戦いぶりまで存分に見せてもらって、常識外れなのは知っておるがのう。しかし何故剣士系職業のお主が、この僅かな間に多重魔法や融合魔法などと言った魔術師系の特性を取得しておるのだ?よく考えてみれば、確かに城の前で多重魔法を使ってはおったが」
「クラスアップしたら取得していたんだ」
「剣士系職業のクラスアップで魔術師系の特性を身につけるなど、どれだけ非常識なのだお主は」
「むぅ」
 反論できずに黙り込むスレイ。
「あと増えている耐性、霊耐性については言う事は無いが、誘惑耐性とは、いったいどんな敵と戦ったのだ?」
 やはり其処に突っ込みが入るか、とスレイは納得し、答える。
「少しばかり、迷宮に居た異世界の女神とな」
「ふむ、誘惑された訳かの?」
「されたが少しも靡かなかったぞ、俺は」
 じと目のシャルロットに、自信を持って答えるスレイ。
 だがシャルロットは溜息を吐くだけだった。
「誘惑に耐性があろうがなかろうが、手の早さに変わりは無いから意味が無いの」
「ぐっ」
 あっさり告げられた言葉がスレイの胸にグサリと突き刺さる。
「そして装備の『九尾』の腕輪。初め見た時から並々ならぬ神気を感じておったが、九尾の狐と会ったのだな?」
「まあ、ギルドへの協力の約束を取り付けにな」
「ほう、それだけかのう?」
 じっとりとスレイを見やるシャルロット。
 視線が外れずスレイは居心地が悪い。
 ついつい白状してしまう。
「まあ、手は出したがな」
「やはりの」
 シャルロットの反応はあっさりとしたものであった。
 それが逆に胸に突き刺さる。
 どれだけ自分は信用が無いのかと。
 まあ、女性関係に関しては自分自身でさえ、自分を信用できない程だから、仕方の無い所だが。
「ねー、ママー。手を出すってなにー?」
「うむ、お主にはまだ早い話だぞえ、アルファ」
「うんそうだね、まだ早いよ」
『もう少し大人になってからだな』
「ねー、パパー?」
 シャルロットとペット二匹に諭されたアルファが、スレイに疑問の視線を向けてくる。
「そいつらの言うとおり、まだアルファには早い話だよ」
「ぶー」
 むくれてしまうアルファ。
「まあ、とりあえず妾はサイネリア陛下に今回の顛末を話に行こうと思う。まったく、グルスが馬鹿をやった所為で妾が宰相をやる羽目になりそうで気が重いのう。新しい魔猿王も決めねばなるまいて。それと、アルファに関してはスレイの元に置いておくと情操教育に悪そうだから妾が引き取り育てるとしよう」
「そうしてくれると助かる、俺に子育ては多分無理だ」
「えー、パパは一緒じゃないのー?」
 ますますむくれるアルファ。
 スレイはしゃがみ込むと、ふと気付き、魔法の袋に入っていた布の服を取り出しアルファに羽織らせる。
「うわぁ、えへへー。パパの匂いだー、あったかーい」
 無邪気に喜ぶアルファ。
 そしてスレイはそのままアルファに語りかける。
「すまないな、出来る限り会いに行くから我慢して良い子にしててくれるかな?」
「むぅ。……うん、分かった」
 どこか詰まらなそうにしながらもアルファは素直に頷いた。
「という訳でだ、アルファの事と、後はシャルが宰相になって、シャル達が魔王の城に住むんなら、会いに行く為の手段の確保なんかも頼む」
 全てシャルロットに丸投げするスレイ。
 非常に無責任な男である。
「……まあ良かろう、手立てについては考えておこう。だがその前に、とりあえずは城の修復からだのう」
 制御室の制御用の端末を弄り出すシャルロット。
 結論を言うと、城は問題無く修復され、清掃も清掃用魔神マシンが問題無く行い、そして二体の魔神マシン兵も、スレイの概念操作と時間魔法の併用により問題無く修復できたのだった。


面白いと思ってもらえたらどうぞ宜しくお願いします。



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