「と、いう訳でだの。お主の力を貸してくれい」
「意味が分からん」
手の平でシャルロットの頭を軽く叩くスレイ。
「い、いきなりなにをするか!」
「いや、お前がいきなり意味不明な事を言うからだろう?」
涙目で頭を押さえて見上げてくるシャルロットにあっさりと返すスレイ。
だが、そういうスレイ自身、自分のあまりに気安い様子に疑問を覚える。
ついこの間会談で会っただけの相手だ。
その会談でさえ特別深く話した覚えはない。
だが何故か軽く叩いた瞬間、懐かしさまで覚えてしまった。
これが既視感というものだろうかと、スレイは考える。
「ま、まあ、確かにいきなり過ぎたの。それでははっきり言うぞえ。妾の城の清掃に手を貸してくれい」
「もっと分からん」
またしてもシャルロットの頭を軽く叩くスレイ。
「ま、またしても……」
やはり頭を押さえて涙目で見上げてくるシャルロット。
色々と文句を言いたそうな様子を無視して、スレイは告げる。
「たかが城の掃除くらい、お前……は無理にしても、召使にでもやらせればいいことだろう?」
「それが、そうもいかなくての」
遠い目をするシャルロット。
「妾が城を留守にして、召使も解雇し、3000年程放っておいたのだがの。妾が掛けた魔法結界の効果で城そのものは全く風化せず、城の体裁を保っているのだが、中身がトンデモないことになっておっての」
「なんだそのトンデモないこと、というのは?」
思わず問い返してしまうスレイ。
しまった、と思うがもう遅い。
「ふむ、興味があるか、あるだろう。よい、存分に聞かせてやろうぞえ」
これ幸いとシャルロットが語りだす。
「あの城は、ただ妾の本来の居城と言うだけではなく、妾の魔導科学の研究所も兼ねておった場所での、色々なものを設置したり放り込んだりしておいたのだ。それが今回久しぶりに帰ってみると、それらの魔導科学の産物が何故か暴走して酷い事になっておっての。妾一人では片付ける事は不可能。たとえ召使を雇っても戦闘面では役に立たん。という事でお主に白羽の矢を立てたのだ」
告げられた内容に呆れた溜息を洩らすスレイ。
「なんだって3000年も放置したんだ」
「いや、まあ。別荘の方が居心地が良くて、ついの。ちょっとした実験の失敗もあって暫くは魔導科学の研究から離れたいという気持ちもあって、ついつい足が遠のいての」
ふぅ、と溜息を吐くスレイ。
「いくらお前が齢5000歳のお婆ちゃんとはいえ、3000年といえば半生よりも長い期間だろうに。それで、なんでいきなり放置してた城に戻る気になったんだ?あと魔導科学とはなんだ?」
「お婆ちゃん呼ぶでない!」
スレイに怒鳴り返した後、繰り出された疑問に、シャルロットはちょっと気まずげに答える。
「まあ、3000年も放置してしまったのは、あとちょっと、あとちょっと、と怠惰な生活をしていたら何時の間にか、という感じでの。城に戻る気になったのは、研究成果が邪神との戦いで役に立つだろうと思ったからだの。ついでに魔導科学についてはお主も散々その産物を見ている筈だとおもうがの」
「俺が?」
スレイの疑問の声に頷くシャルロット。
「うむ、例えば探索者になる肉体改造の為の装置、或いは職業神の神殿のクラスアップ用の装置、小さいものを言えばその探索者カードなどもそうじゃの」
「迷宮都市にある探索者用のシステムは、全部神々が創ったと書物にはあったがな」
「うむ、それは間違いないぞえ。なにせ魔導科学そのものの産みの親が神々だからの」
これはまた、ややこしい情報を知ったものだとスレイは感じる。
しかし好奇心には勝てない。
「魔導科学の産物や由来については分かった。だが、結局どういうものなんだ?」
「まあ説明しても分からんだろうしの。そこはそういうものがあるとだけ理解しておいてくれればよいぞえ」
「はぁ」
どこかどうでも良さそうな溜息を吐くスレイ。
「ところで最近は、探索者ギルドに登録してしかも高いランクを得ている戦うメイドさんや執事も居るらしいが、そいつらを雇うというのは?」
「普通の探索者が闇の種族に雇われてくれる訳があるまいに。というかいったいなんだの、その色モノ連中は?」
スレイは暫く沈黙する。
「じゃあ、なんで俺のところへ話を持って来たんだ?」
「お主なら力を貸してくれると思ったからの」
とりあえず色モノ探索者の話題は流して紡いだスレイの疑問に、あっさり答えるシャルロット。
何やらその瞳には信頼の色まで浮かんでいる。
碌に知らん相手の筈なんだがな。
そう考えつつも何故かシャルロットには非常に親近感を感じてしまうスレイ。
齢5000を数える相手だというのに、何故か妹を相手にしているような気分になる。
まあ、スレイに妹がいたことは無いのだが。
「まあ、話は分かった」
「そうか!」
明るい顔になるシャルロット。
「それでは、力を貸してくれるか!?」
勢い込んで顔を近づけてくる。
その深紅の瞳は人を惹き付けてやまない妖しい色香を発している。
絶世のと付けても良いほどの美貌で、縦ロールの腰まで届く金髪もどこか高貴な印象を与えている。
肉体も完全に成熟した大人のもので、色香がプンプンと漂ってくる。
だというのに、好色な自分が平静なままというのはどういう事だろうか?
少しばかり疑問に思うが、やはり疑問は放置して、話を続ける。
「力を貸すのは吝かじゃないが、無料で、という訳にはいかないな。俺とて探索者だ、そのくらいは分かるだろう?」
途端、シャルロットの深紅の瞳がより妖しく輝いた。
またしても、しまった、と考えるスレイ。
だがそれは後の祭りだ。
救いを求めて周囲を見ると、何故かフルールとディザスターの姿はそこには無かった。
「ああ、お主のペット達には先程指向性の念話で出て行くように頼んでおいたぞえ」
思わずスレイは薄情者のペット達を心の中で罵る。
「さて、それでは報酬の話だったの」
シャルロットに向き直る。
するとシャルロットはそのゴシック調の黒い派手なドレスを脱ぎ、パサリと足下に落としていた。
下着のみに包まれたその肢体が露になる。
窓の外を見ると、何時の間にか日は落ち、月が顔を出していた。
月光に照らされ、より妖しくシャルロットの姿が浮かびあがる。
「お主の女好きは良く知っておる。どうかの?妾の肉体が報酬というのは」
思わずごくりと息を飲む。
どうやらやはり戦闘中で無ければスレイは誘惑を跳ね除けられないらしい。
「今度は妾が子供だなどと言わせんぞい。どうじゃ、立派な成人した大人の女の肉体であろう?」
「?俺が何時あんたの事を子供だなんて言ったんだ?」
「いや、言葉の綾だの。忘れてくれい」
そう告げると、シャルロットはますます妖しい笑みを深める。
「どうかの?妾の肉体を先払いの報酬としよう。何せ5000年も護ってきた純潔だぞえ。この報酬で不足はあるかの?」
スレイは答える事なくシャルロットににじり寄り荒々しく抱き寄せると唇を奪う。
「後払いの報酬の追加を要求する」
「な、何をかの?」
唇を離し告げたスレイに、頬を赤く染め戸惑いつつ、シャルロットが尋ねる。
「なに、簡単な話だ。これから先もお前の肉体は俺だけのもの、そういう約束が欲しい」
何故か、シャルロットの瞳が嬉しげに潤んだ。
「どうした?」
「いや、なに。永年の夢がこんな形で叶うとは思っていなくての。思わずな」
「永年の夢?」
「気にせんでよい」
今度はシャルロットがスレイの唇を塞いだ。
絡み合う舌と舌。
交換され互いに嚥下する唾液。
スレイはシャルロットの下着だけの肉体を万遍なくまさぐり、そして下着を脱がせていく。
そのままスレイはシャルロットをベッドの上に押し倒す。
何故かシャルロットは涙を流していた。
だがその表情はひどく嬉しげである。
「おい、なんでいきなり嬉しそうに泣いているんだ?」
「気にするでないと言うておろう。それより早く、お主の全てを妾にぶつけるがよいぞえ」
スレイを促すシャルロット。
スレイとしても限界を迎えていた。
なのでそのまま突き進む事にする。
遠慮はしなかった。
そして、その日一晩かけて、スレイは5000年物の処女を、徹底的に味わい尽くすのだった。
面白いと思ってもらえたらどうぞ宜しくお願いします。
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