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  シーカー 作者:安部飛翔
第五章
19話
 あれから、すぐにスレイは探索者ギルドを訪れていた。
 そして換金所へと入る。
 相変わらずふくよかな体格をしたメアリーが驚いたような表情でスレイを見る。
「おやまあ、随分と久しぶりの顔だねぇ。スレイ、あんた、最近全然来なかったけど、お金は大丈夫だったのかい?」
「ああ、まあ」
 曖昧に濁すスレイ。
 実際全然大丈夫などでは無く破産寸前だった訳だが男の矜持でそこは黙っておく。
 もっともアリアあたりのところに行けば一発でバレて、同じギルドの職員であるメアリーにもすぐに伝わってしまうであろうが。
 ともあれスレイは、今回の探索において手に入れた換金用のアイテムを魔法の袋から一気に取り出し、大きめの物や大量の収穫があった場合に置く為の巨大なテーブルへとぶちまける。
 その量にやや唖然とした表情をメアリーはしていた。
「これは、まあ……」
 なにせ、未知迷宮を一気に50階層以上も下った上での、戦ったモンスター全てから掻き集めたアイテムである。
「これだけの量となると、ちょっとばかり計算に時間がかかるねぇ。あんた、時間は大丈夫かい?」
「ああ、問題無い。ここで待たせてもらおう」
 そんなスレイにメアリーは不思議そうに尋ねてくる。
「リリアちゃんに会いにいったりしなくていいのかい?」
「ああ」
 何せリリアや他の恋人達にはディラク島に行く前に散々に埋め合わせるように、デートや蜜月を過ごしている。
 こう、我侭な話だとは分かっているが、暫くはただ休みたいというのが本音であった。
 世界の半分を敵に回しそうな悩みである。
 そうしてスレイは頭に小竜を乗せ、ディザスターを膝の上で愛で、換金待ち用の椅子に座り換金アイテムの計算結果を待つ。
 メアリーはそんなスレイの様子を見て呆れたような声を上げた。
「あんた、何時の間にか魔物使い(モンスター・テイム)の特性や、魔物使い(モンスター・テイマー)の称号まで取得したのかい?」
「失礼だなぁー、僕はモンスターなんかじゃないよ」
『うむ、そのような下等な存在と同一視されるのは不本意だ』
「……こりゃあ、驚いた」
 フルールの声とディザスターの念話に、本気で驚いた表情をするメアリー。
「知性があるだけじゃなく、会話も可能、それに他にも何かありそうだねぇ。その子達はなんなんだい、スレイ?」
「まあ、俺のペットという事で覚えていてもらえれば概ね間違いない」
 説明の難しい二匹の事なので、曖昧に答えるスレイ。
「その通り僕達はスレイのペットさ」
『うむ、我等は主のペットであるな』
 どこか誇らしげに告げる二匹。
「なるほどねぇー」
 なんとなく関係は理解できたのだろう、そうメアリーは一応の納得を見せると、そのまま換金アイテムの計算に戻る。
 しかし、モンスターには反論して、スレイのペットというのは誇らしげに語るとは。
 これもペットとの信頼関係と呼んでいいものであろうか。
 スレイは首を傾げるが、まあいいか、と思いなおし計算結果を待つのだった。

 暫し経ち、計算を終えたメアリーがスレイに告げる。
「換金額が出たよ、しかし何というか見事にモンスターから奪ったって感じの換金アイテムばかりだねぇ。でも一部【始まりの迷宮】のものが混ざってるけど、大部分の換金アイテム類からすると、あの死亡率のやたらと高い【欲望の迷宮】に入ったんだろう?財宝の入った宝箱や、財宝が隠された部屋を見つけたりはしなかったのかい?あそこはそういうのが多かったと思うんだけどねぇ」
「残念ながら一度もそういうモノには遭遇しなかったな」
 どこか項垂れるように告げるスレイ。
「ま、まあ、それはともかく!」
 慌てて話を切り替えるメアリー。
「ほら、これを」
 何やら小さな紙を渡されるスレイ。
 そこには色々な書式のサインが書かれ、その上で中心に100000コメルと書かれていた。
「これは?」
 疑問に思い尋ねるスレイ。
「いや、随分と換金金額が多くて、それこそ上級の中でも低ランクの探索者だったら一月分の稼ぎになるような金額だったからね。細かい額は切り上げてちょっきり100000コメルにさせてもらったよ。それにいくら魔法の袋とはいえ、それだけの金額の通貨を出し入れするのは大変だろう?それをギルドの銀行に持って行けば、そのまま預金に追加してくれるようになってるから、気をつけて持っていくんだよ」
「なるほど、確かにそれだけの硬貨を出し入れするのは大変そうだな。便利なシステムだ」
「まあね、ギルドにもそれなりの歴史があるからねぇ」
 苦笑いするメアリー。
「まあ、なるべくなら今度は、そんなにアイテムを溜めない内に来ておくれよ?」
 流石に持って来た換金用アイテムの殆どが一日で集めたものとは想像もしていないのだろう。
 そう言ってくるメアリー。
「わかった」
 波風を立てることもないだろうと、スレイは素直に頷くと、換金所から出て、ギルド内への銀行へ向かうのだった。

 そしてギルド内の銀行。
 ケリーの恋人だというアリアという女性が、機械を使って調べたスレイの預金残額の少なさと、今回持って来た紙に書かれた金額の多さに唖然としている。
「最近、ケリーから、色んな意味で規格外の、スレイと言う名の友人が出来たとは聞かされてましたけど。……本当に規格外ですね、スレイさん。それにその子達があの邪神ディザスターさんと、時空竜のフルールさんですか」
「いや、まあ。俺にも色々と事情がな。しかしケリーは喋り過ぎじゃないか?」
 規格外という言われ様には言葉を濁すしか出来ないスレイ。
 だがケリーの情報開示には少々疑問を呈する。
「私はケリーに凄く信頼されてますし、その信頼を裏切る事もありませんから。まあそれはいいです。でも、本当にちゃんと定期的にお金は稼いだ方がいいですよ。探索者は何時どのようなことがあるか分からない職業ですからね」
「ああ、以後気をつける事にする」
 素直にスレイが頷くと、アリアは溜息を吐きながら、機械を操作して、100000コメルを預金した。
「はい、それじゃあカードを確認してみてもらえますか?」
 言われるままにカードを表示し見てみるスレイ。

スレイ
Lv:51
年齢:18
筋力:S
体力:SS
魔力:S
敏捷:EX
器用:SSS
精神:EX+
運勢:G
称号:不死殺し(アンデッド・キラー)、神殺し(ゴッド・スレイヤー)、虐殺者ジェノサイダー、双刀の主
特性:天才、闘気術、魔力操作、闘気と魔力の融合、概念操作、思考加速、思考分割、剣技上昇、刀技上昇、二刀流、無拍子、化勁、明鏡止水、無念無想、心眼、高速詠唱、無詠唱、炎の精霊王の加護、炎耐性、毒耐性、誘惑耐性、霊耐性、邪耐性、神耐性
祝福:無し
職業:剣鬼
装備:双刀“紅刀アスラ”“蒼刀マーナ”、ミスリル絹のジャケット、ミスリル絹のズボン、牛鬼の革のスニーカー、九尾の腕輪
経験値:5001 次のLvまで99
預金:100062コメル

 預金が問題無くされている事を確認する。
 端数の少なさが、何故か侘しさを感じさせた。
 そしてスレイはギルド内の銀行を出ると、今度はギルド内の鍛冶工房を目指すのだった。


面白いと思ってもらえたらどうぞ宜しくお願いします。



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