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  シーカー 作者:安部飛翔
第四章
3話
 再度ゲッシュは立ち上がる。
「それでは次に晃竜帝国の方々の紹介をお願い致します」
 そしてゲッシュが座り、黒髪黒瞳の壮年の威厳ある男が立ち上がる。
「ふむ、それではまず私から自己紹介させて頂こう。私は晃竜帝国が竜皇ドラグゼス・ドラグネス。当年きって205歳のまだ若造だが、よろしく頼むよ」
 どこか軽いユーモアを交えたような態度でそう告げる。
 実際探索者でもないただの人間ならば205歳というのはとんでもない高齢だが、竜人ともなれば205歳というのは本当にまだまだ若造に過ぎない。
 そこらへんの年齢感覚の違いを使ったユーモアである。
「次に我が娘達の紹介をさせて頂こう。まず我が長女、世間では“闘竜皇女”などと呼ばれているお転婆娘のイリナ・ドラグネス」
「どうも。オレがイリナ・ドラグネスだ。よろしく頼む」
 立ち上がり礼をする見事なまでに煌く長い黒髪に意志の強さを感じさせる黒い瞳の強さが人の形を取ったかのような美少女。
 その瞳は今、好戦的な色を宿してスレイを見つめていた。
 ゲッシュは、この円卓の間に入って来た時、彼女がスレイに対し『久しぶり』と言っていたことを思い出し、またか、と諦観を以って受け入れる。
 そのままイリナは席に座り、ドラグゼスが続ける。
「続いて我が次女、これもまた世間では“癒しの竜皇女”などと呼ばれている、まあ、我ながら良くできた娘だと思っている、エリナ・ドラグネス」
 イリナが不本意そうな視線をドラグゼスに向ける中、たおやかに立ち上がる白髪に赤い瞳のアルビノの美少女。
 静かに一礼し、そのまま上品に座り直す。
「以上三人が我が晃竜帝国の代表となる」
 そして席に着くドラグゼス。
 またゲッシュが立ち上がり告げる。
「続いて、フレスベルド商業都市国家の方々、ご紹介をお願いいたします」
 ゲッシュが座ると同時に立ち上がる赤い髪に茶色い瞳の明るい雰囲気の男。
「どうも、始めまして。フレスベルド商業都市国家の議会で議長を務めさせてもらっているカイト・ギルスだ。一応S級相当探索者でもある。だから“商王”などという二つ名で呼ばれているね、よろしく頼む」
 明るく告げてウインクなどしてみせる。
「次に我が娘、アリサ・ギルス」
 立ち上がり礼をする、カイトと同じ赤髪をポニーテールにし、同じく明るい茶色い瞳をした美少女。
 そのまま少女は席に着く。
「まあ、今は大人しくしてるが、ちょっとやそっとじゃ扱いきれないような娘でね。このを扱いきれる自信のある男を募集中だから、よろしく頼むよ」
 そんなことをほざいた父親カイトに娘のアリサが立ち上がると、どこからか取り出したハリセンで父親の頭を思いっきりはたく。
「何を言ってるのよ父さん!!」
 と、アリサは周囲の視線に気付き、そのまま恥ずかしそうに座った。
 図らずも、父親の言葉を行動で肯定してしまった形である。
「ハハハ、ご覧の通りでね。いったい誰に似たんだか」
「父さんに決まってるでしょ」
 小声でアリサが突っ込む。
「続いて、私が個人的に雇っているSS級相当探索者“閃光”ダリウス」
 黒髪に茶色い瞳の、どこか人生に疲れたような表情をした男が立ち上がり一礼する。
 そのまま座り直すダリウス。
「まあ、私と娘がこんなで暴走気味だから、そのお目付け役みたいなものかな?彼が居て実に助かっているよ」
「分かってるんなら少しは自重してくれ!!」
 思わず叫んでしまったダリウスは周囲の視線に気付き、黙り込むと疲れたような溜息を吐く。
「まあ以上三名が、フレスベルド商業都市国家の代表と考えてもらって構わない。よろしく頼むよ」
 そしてまたカイトはウインクなどしてみせて席に座った。
 どこか、場違いなコントを見せられたような空気が周囲に漂う。
 慌ててゲッシュは立ち上がると、続きを促す。
「それでは続いて、聖王猊下とお付きの方々、ご紹介をお願い致します」
 眩いばかりの黄金色の長い髪と黄金色の瞳を持った、豊かな胸の絶世の美少女が立ち上がる。
「どうも始めまして、わたくしヴァレリアント聖王国の王とヴァレリア教の最高司祭を兼任させて頂いています、イリュアと申します。よろしくお願いしますね」
 軽く礼をするとその豊かな胸が揺れる。
 それに眼を奪われる男達。
 途端イリュアの隣に座っていた金髪碧眼の美形の男が険しい眼差しで周囲を見て、んんっと喉を鳴らす。
 仕方無さそうに男を見やるイリュア。
 そして続ける。
「続いて、わたくしの兄で、わたくしの護衛役である“聖剣”ヴァリアス」
 周囲を睨み喉を鳴らした男が立ち上がり一礼すると、また周囲を険しい視線で睨んでから、席に座った。
「ここからは中央の都市国家群で活躍されているSS級相当探索者の方々になりますが、今回はわたくしについて来て頂きましたので、わたくしから紹介させて頂きますね。まずはSS級相当探索者でも現在最古参として名高い“拳聖”オウル様」
 壮年にしか見えない茶髪茶瞳の男が立ち上がり一礼して席に着く。
「次に知者として名高いSS級相当探索者“賢者”アロウン様」
 無造作に長く伸ばした茶髪に黒い瞳の男が周囲を興味深げに眺めながら立ち上がり一礼して座り直す。
「続いて、傭兵国家グラスベルの国王でもあられるSS級相当探索者“傭兵王”グラナル様」
 黒いざんばら髪に黒い瞳、無精髯を生やした粗野ではあるが野卑ではない、そんな印象の男が立ち上がり、一礼すると席に乱暴に座る。
「次にその数々の英雄的な行動で知られる“英雄”ブレイズ様」
 金髪碧眼の爽やかな正義感溢れる表情をした男が立ち上がり一礼すると、静かに座り直した。
「最後に女性でありながらSS級相当探索者であり、“毒蜂”と“毒蜘蛛”の二つ名を持つミネア様」
 黒髪黒瞳で何処か陰を感じさせる暗い雰囲気を持つ絶世の美女が立ち上がり一礼するとそのまま音もさせずに席に着く。
「以上がヴァレリアント聖王国と中央の国家群の代表となりますわ」
 そしてイリュアは座りながら意味ありげな視線をスレイに向ける。
 それに気付いたヴァリアスが厳しい視線をスレイに向けた。
 どちらの視線にも構わず、マイペースにディザスターを愛でるスレイ。
「ふむ、しかし一騎当万とも言われ、山河をも軽く砕く力を持ち、実際地形を変えるような真似を仕出かしては地図を塗り替えている化物達をこんなにも集めるとは、やはりヴァレリアント聖王国は恐ろしいな」
「あら?同じ様な化物を一国で占有している国の王様が言っても説得力はありませんわね」
 アルス王とイリュアがどこか挑戦的に睨み合う。
 その様子にまた胃の痛みを感じながらも立ち上がり、ゲッシュは告げる。
「続いて、ヘル王国の方々、ご紹介をお願いします」
 途端、円卓の空気が凍り付いた。
 闇の種族の国、ヘル王国。
 それは今まで人間の敵として認知され、蔑視されていた国であった。
 その代表がこの場に立つ。
 人間達は全員が緊張を持ってその様子を伺う。
 だがスレイだけは相変わらずで、今度はディザスターの上にフルールを乗せ、二匹同時に愛でていた。
 そのままお茶のおかわりなども侍女に要求する。
 それに答える侍女はやはりプロであった。
 そのような空気の中蒼いストレートの長髪に、蒼い瞳の絶世の美少女が、何も気にした様子もなく立ち上がる。
「どうも人間のそして竜人の皆さん始めまして、わたし初代にして当代の魔王サイネリアと申します、よろしくお願いしますね」
 にこやかに告げるサイネリア。
 だがその闇の波動は周囲の者達にプレッシャーを与える。
 ディザスターほどの圧倒的なものでは無かったが、それでもやはり周囲の者達はそのプレッシャーに冷や汗を掻いていた。
 ただ一人スレイだけは今度はお茶菓子をディザスターとフルールに食べさせる作業に没頭していたが。
 そんな様子を面白そうに眺めながらサイネリアは続ける。
「それでは次に、闇の種族の吸血鬼の長にして、約5000歳のお婆ちゃん、“吸血姫”シャルロット」
「お婆ちゃんとは酷い言い草だのう」
 そう言いながら豪奢な縦ロールの金髪に鮮血のような深紅の瞳の絶世の美女が立ち上がり礼をする。
「既に陛下から紹介に与ったが、妾は“吸血姫”シャルロット。かつての聖戦時から生きておるから、知識の面では力になれると思うゆえ、よろしく頼むぞえ」
 そう告げるとシャルロットは席に着く。
「闇の種族はかつての聖戦時、戦いに協力しなかったそうじゃないか」
 そんなシャルロットに対し、ヤンが無謀にもそんな野次を飛ばした。
 途端シャルロットに睨みつけられ、ヤンは硬直し、そのまま冷や汗をたらす。
「ふむ、確かに闇の種族は種としては協力しなかったが、妾を含め数人の者はある男に従い聖戦に参加しておるぞえ。なんならその身で試してみるかのう?」
 圧倒的な威圧感にヤンはただ震えるしかなかった。
 そんなシャルロットをサイネリアが制する。
「止めておきなさいなシャルロット。弱い者いじめは感心しないわよ?」
「ふむ、そうだの」
 途端あっさりと視線を逸らすシャルロット。
 ヤンはほっとしながらも弱い者扱いされた事にプライドを傷つけられ、唇を噛み締める。
 そんなヤンを他二人の職業:勇者が侮蔑するように見ていた。
 まあ、そんな職業:勇者三人を、さらに周囲の者達が呆れたように見ていたのだが。
「続いて、“魔狼王”リュカオン。彼も約3000歳のお爺ちゃんね」
「よろしく頼む」
 リュカオンはその巨体をのそりと起こすと口内の空気を魔力で操作し、人の言葉で挨拶するとそのまままた蹲る。
 スレイがその毛並みに興味を示しながら、気になったように尋ねる。
「随分と大きいが、街中で騒がれたりはしなかったのか?」
「それは大丈夫よ。この城に来るまではわたしの影の中に潜っていたしね」
「ほう、面白い術だな」
 スレイは感心したようにリュカオンを見つめる。
 そんな主にディザスターが自らに感心を引くように膝の上で転がる。
「最後に“鬼王”ダート。150歳の若者よ」
「よろしくお願いします」
 三つの角を持つ大男が、立ち上がり礼をすると席に座り直した。
「以上四名がヘル王国の代表かしらね」
 そういって、サイネリアは席へと着いた。
 そしてゲッシュが立ち上がり、一息吐くと告げた。
「それでは、皆様ご紹介も終わりましたので、これから本題である邪神対策の会議を始めたいと思います」


面白いと思ってもらえたらどうぞ宜しくお願いします。



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