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  シーカー 作者:安部飛翔
第三章
20話
 早朝。
 スレイはまどろみから目を覚ます。
 昨日は、真紀が全力を出しても問題無い相手ということもあり、真紀は初めてだというのに、それこそ獣のように全力で交わってしまった。
 真紀も最初は苦痛に耐える表情であったが、途中からは責めに転じ、責め、責められ、それこそ何度も交わった。
 眠りについたのはほんの僅か前の話である。
 だがスレイが目を覚ました時にはもう真紀は目を覚まし、スレイの寝顔を嬉しそうに見つめていた。
 そんな真紀の視線にスレイはぼんやりと尋ねる。
「どうした、何を笑っているんだ?」
「いえ、貴方も寝顔は可愛いものだと思ってね」
 そしてまた笑みを零す真紀。
 スレイもなんとなく笑い返し、穏やかな空気が流れる。
 テントの中にディザスターとフルールはまだ居ない。
 どうやら空気を読んでずっと戻ってきていないようだ。
 そんな中突然テントの入り口がまくられ、セリカが顔を出す。
「ハイ、スレイ。あなた真紀が何処に行ったか知ら……」
 テントの中の状況を見て取ったセリカの声は、尻すぼみに消えていった。
 真紀は平然としている。
 スレイは思わず目を覆う。
 そしてセリカの叫び声が響き渡る。
「真紀が、真紀が、スレイを襲ったーーーー!!?」
 流石にその台詞に真紀が硬直して目が点になる。
 外からは他の者達が起き出し、集まって来る音が聞こえる。
 スレイも流石に驚きながらも、こう言った。
「まあ、間違ってはいないな」
「間違ってるわよ!!」
 思いっきり裏拳を繰り出す真紀と、それを受け止めるスレイ。
 そして王都サザンクロスを目指す旅程。
 その二日目の朝が始まった。

「本当にお主、手が早いんじゃのう」
「俺も恋人が何人か居るから、偉そうな事は言えないんだけど。頼むから姉さんにだけは手を出さないでくれよ」
「同じく六人の女性を妻にしている私が言えた事では無いが、流石に手が早すぎるんじゃないかね?スレイくん。リリアに何と説明すればいいやら」
「なんじゃ御主等、全員同じ穴のむじなかい」
 朝食後の一時の休息時。
 スレイに苦言を呈する三人。
 だが他二人の言葉を聞くと、クロウは呆れたような顔になる。
 それらの言葉を軽く聞き流すスレイ。
 その膝の上にはディザスターが、頭の上にはフルールが乗っている。
「おい、フルール。なぜ俺の頭の上に乗る」
「いやあ、何かこの位置が気に入っちゃって」
 ふう、とスレイは溜息を吐くと、気にしないことにして、ディザスターを撫でる。
 その毛並みは何時も通りに素晴らしい感触であった。
 そして、ふと視線を移し、女性陣を見る。
 ただ一人、マリーニアだけがスレイを潔癖そうな、険しい視線で睨んでいた。
 サクヤは、仕方の無い子供を見るような視線でスレイを見やっている。
 それらの視線にやや居心地が悪くなるスレイ。
 ちなみに少し離れた場所に止められたユニコーンもスレイを睨んでいたが、睨み返してやると途端に怯えたようにうつ伏せた。
 再び女性陣を見やるスレイ。
 先程の二人以外の、他の三人はスレイの視線に気付かず、三人で騒いでいる。
 出雲とセリカの二人が時々黄色い叫び声を上げ、真紀はいきり立ったように二人に言い募る。
「だ・か・ら、どうして私がスレイを襲った事になるのよ!」
「だって、真紀ちゃんだし」
「そうよね~、真紀だもんねぇ~」
 出雲は淡々と当然のように答え、セリカは真紀をからかうような口調で告げる。
 もう何度も繰り返したそんな問答に、真紀は疲れたような溜息を吐く。
「でも、結局真紀ちゃん、もう一つの夜のお相手してもらったんだ」
「そういう事になるわよね、ムキになって否定してたくせに、結局はこういう事になるなんてね~」
「ええそうよ、私はスレイに夜のお相手をしてもらったわよ、惚れちゃったからね。これでいい?」
 諦めたように認める真紀。
 先程まではムキになっていた真紀が、開き直って大人しくなってしまったのに、他の二人はつまらなそうな顔になる。
「残念、真紀ちゃん開き直っちゃった」
「本当、割と早かったわね。もうちょっとからかって楽しめるかと思ってたんだけど」
「あんたたちは、本当に」
 二人が分かっていてからかっていたと知り、真紀は頭が痛そうに抑える。
 ふと、真紀がスレイを見やり、二人の視線が合った。
 途端顔を赤くする真紀。
 そんな真紀をまた二人がからかい出す。
「真紀ちゃん、顔、真っ赤」
「本当に凄い赤いわね、まるで林檎みたい。愛しのスレイと視線が絡み合っただけで顔を赤くするなんて、結構純情ね」
「あんたたち……」
 真紀は諦めたように溜息を吐いた。
 その時、ふとスレイは手を前に突き出す。
 ゲッシュの手前で止まるその手。
「スレイくん?」
 不思議そうにするゲッシュ。
 だがスレイのその手には何時の間にか矢が握られていた。
「づっ!」
 スレイは痛みを感じ瞬間的に矢を手放す。
 地に落ちた矢は全てが鋼鉄製で、電気が纏わりつき放電している。
 僅かに焦げた手の平を、治癒魔法で癒しつつ、再び電気を纏い雷速で迫り来る数本の矢を、クロウと共に左手のマーナのみで斬り落とす。
 無駄を悟ったのか飛来する矢が止んだ。
 そして声が聞こえてくる。
「へえ、やるなあ。この電撃魔法を使って電磁気で加速する空間を作り上げ、そこを通して加速させ、超高速で撃ち出す鋼鉄製の矢を受け止めたり、斬り落としたり。何時もはこの矢だけでけりがつくんだけどなあ」
 そして現れる金髪碧眼の男。
 無精髯を生やし、どこか野卑な雰囲気を纏う。
 その男の後に続くように、数十人の同じく野卑で、それだけでは無く卑屈ささえ感じさせる男達が現れる。
 最初に現れた男を見たゲッシュが呻くように言う。
「雷弓のライナ!?」
「知っているのか?」
 スレイの質問にゲッシュは頷き返す。
「ああ、元S級相当探索者で、もうすぐSS級相当探索者になろうという時に、何故か盗賊に身を落とした男だ。賞金首で、5000000コメルもの賞金がかけられている。この街道に現れるのは知っていたが、ユニコーンで移動しているからまず会わないだろうと思っていたんだが」
 そう言うとスレイを見やるゲッシュ。
 どうやらライナに襲われたのもスレイの運勢が原因では無いかと考えたようだ。
 ゲッシュの視線を気にせずスレイは賞金額に反応する。
「そいつは破格な金額だな」
「まあ、SS級相当探索者に動いてもらおうと思ったら、最低そのくらいの金額は出さないとね。まあ、出しても動いてもらえなくて、放置されていた訳なんだが」
 とはいえ、とゲッシュは続ける。
「今の我々の前に現れたのは、彼にとっての不幸としか言い様が無いがね」
 なにせ“あの”刀神クロウに、それと互角に戦ったスレイが居る上、他の者達も実力者揃いだ。
 ゲッシュはむしろライナに同情すら覚える。
「ほう、言ってくれるじゃないか。それじゃあどちらにとっての不幸だか試してみるかい?」
 弓を構えるライナとそれに従うよういくつもの弓を構える男達。
 どうやら全員が基本的に弓使いらしい。
 もちろん剣なども携帯しているが、今のところ使うつもりは無いようだ。
 静かに身構えるスレイ達。
 だが、それを抑えるように前に出て行く者が居る。
 セリカだ。
「ほう、良い女だな。なんだ、色仕掛けでもしてくれるのかい?」
 ライナの台詞にセリカはどこか獰猛に笑いながら返す。
「いいえ、どうやら貴方達は弓が得手みたいだから、射撃勝負と行きたくてね」
「射撃勝負?どうやらあんたは弓を持っていないようだが」
 セリカは太ももの銃ホルダーから魔導銃を抜き放つ。
 ちらりと見えた眩い白い太ももに目を引き寄せられる両陣営の男達。
 男の悲しい習性である。
「冷たっ!」
 そしてクロウはまたサクヤに仕置きを受けていた。
「なんだい、そいつは?」
「これが私の武器よ」
「ははっ、そいつは面白い、そんなごつい鉄の塊で何を撃つって言うんだい?」
 おかしそうに笑うライナ。
 ライナに従う男達もそれに追従する。
 セリカは静かに魔導銃を構えると、自分達からも、ライナ達からも、離れた場所に魔導銃を向け、引き金を引く。
 閃光が奔る。
 そして凄まじい音を響かせ、地には巨大なクレーターが出来ていた。
 魔導銃の効果範囲を指定せず、意志も込めず、ただ解き放っただけの一発。
 だが威嚇には十分以上の効果だった。
「はっ?」
 あまりのことに呆然としているライナ達。
「まずいわね」
「うん、まずい」
 何故か真紀と出雲が緊張した声で言葉を交わす。
「うふ、うふふふふ」
 セリカが嬉しそうに笑い声を洩らす。
「さあ、貴方達の弓と私の銃、どちらが優れた射撃武器なのか試してみましょうか?」
 そして暴虐が始まった。
 ひたすらに笑いながら、銃を乱射するセリカ。
 その度に男達が倒れ、地面には穴が開く。
 どうやら命までは奪わないよう加減をしているようだが、銃の引き金を引く手は止まらない。
 ライナが打ち出すレールガンと同じ原理の矢も、正面から軽く撃ち落としてみせる。
 ライナは堪らず部下の男達を置いて逃げ出す。
「うふ、あははははっ、待ちなさい、逃げられると思っているの?」
 何とかセリカの、亜光速の魔力弾を躱しながら、地の利を利用して逃げていくライナ。
 だがセリカは止まらない。
「セリカはどうしたんだ?」
「セリカの奴、重度のトリガー・ハッピーなのよ」
「トリガー・ハッピー?」
 スレイの質問に真紀が答えるが、基本的には銃の存在しない世界の住人であるスレイには言葉の意味が分からない。
「ともかく、ああなったらそれこそ辺り一帯を荒野に変えるまで、セリカは止まらないわよ?」
 その言葉に表情を引き攣らせるスレイ達。
 慌てて、真紀に問う。
「どうすれば止められる?」
「そんなの知らないわよ、いつもセリカの気が済むまでやらせてたし。ただ、そうね。よほどのショックでも与えれば正気に戻るんじゃないかしら?」
「ふむ、ショックを与えればいいんだな」
「スレイ?」
 疑問の声を上げる真紀。
 スレイはそれを無視してセリカに背後から気配を消し去り近付いていく。
 ちなみにライナは既に逃げ出していた。
 セリカの前には気絶した部下の男達と、でこぼこになった地面だけがある。
 スレイはセリカの真後ろに立つ。
 そして。
 そのまま胸を鷲掴みにし、思いっきり揉んでいた。
「きゃ、きゃーーーーーっ!!!!」
 悲鳴を上げ、胸を押さえて屈み込むセリカ。
 顔を上げ、頬を赤く染め、瞳を潤ませながらスレイを見つめる。
「な、な、何をするのよ。うう、もうお嫁に行けない。誰にも触らせた事なかったのに……」
「ふう、これで止まったな」
 一仕事やり終えたような顔で、額を拭うスレイ。
 そんなスレイに真紀の刀と、出雲、マリーニア、サクヤの魔法が一気に襲い掛かって来るのだった。

「むう、ただセリカを止める為にショックを与えただけなのに、何であんな目に」
 夜。
 再び街道の脇でキャンプを張る一同。
 既に夕食は終えている。
 ライナの部下の男達はあの場で縛り上げ、放置して来た。
 ちなみにケリーがきちんと合図を出して、ギルドの他の諜報員が引き取りに行く手筈になっている。
 今頃は既に、諜報員達によって引き立てられているだろう。
「いや、あれは無いだろう。流石に」
「うむ、少々お主は自重を覚えるべきじゃな」
 ケリーとクロウに駄目出しをされ、スレイは拗ねたような顔をする。
 ちなみに先程からセリカに顔を向ける度に、スレイの方を見ていたセリカが顔を真っ赤にして視線を逸らすという事を繰り返している。
 他の女性陣からは女の敵を見るような目で見られる始末だ。
『主よ、主が例えどんな事をしても我だけは味方だぞ』
「なんというか、スレイって実にユニークな性格をしてたんだね。今まではその真面目な表情に騙されて全然気付かなかったよ」
「寝る」
 ペット二匹の言葉に、もはや完全に拗ねたスレイはふて寝をする事にして、そのままテントへと入って行った。

 深夜。
 何故か今日はペット達はスレイのテントに入って来ず、一人で眠るスレイ。
 だが、何者かの気配を感じ、スレイは目を開け上半身を起こす。
 そこには正座をしたセリカがいた。
「セリカ?」
 驚いたように問いかけるスレイ。
 そんなスレイに構わず、セリカは三つ指をつき、礼をして告げる。
「不束者ですが、どうぞよろしくお願いいたします」
「はっ?」
 疑問の声を上げるスレイに、セリカは頬を赤く染めて潤んだ瞳で告げる。
「私を傷物にしたんだから、責任を取ってちょうだいよ」
「いや、傷物って、胸を揉んだだけなんだが」
 流石のスレイもこの急展開には呆然とするしか無かった。
「責任、取ってくれないんだったら、ここで大声上げてスレイに襲われたって言う」
「いや、待て」
 流石に、先程までの周囲の反応を見ると、それが洒落にならない事に気付き、スレイはセリカを静止する。
「と、いうか。俺は昨日真紀を抱いていて、お前はその事を知っているだろうが」
「ええ、だから妾でも何でも構わないから責任を取ってちょうだい」
 セリカのあまりに都合の良い台詞に、流石に警戒を覚えるスレイ。
 だが、思い出すセリカの眩い白い太ももと、実に大きく手に馴染んだ胸の感触。
 スレイは欲情を覚えると、それを抑える事をせず、セリカの手を取り、自分の寝床へと引き摺り込む。
 どこか怯えたような色を宿しながらも、黙って受け入れ、そのまま仰向けに倒れ込むセリカ。
「や、優しくしてね?」
 何時もの強気で陽気な態度とは全然違うそのしおらしい様子に、スレイはプツンと何かが切れる音を聞いた気がした。
 そして強引に唇を奪い、舌でセリカの口をこじ開けながら、どんどんと服を脱がせて行く。
 目を見開きながらそれを受け入れるセリカ。
 なんというか、スレイは理性が完全にトンでいた。
 そしてそのまま荒々しくセリカの身体を開いていく。
 そして肉食獣が草食動物を貪るように、スレイはセリカのよく発達した見事な肢体を貪りつくして行くのであった。


面白いと思ってもらえたらどうぞ宜しくお願いします。



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