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  シーカー 作者:安部飛翔
第三章
16話
スレイ
Lv:43 
年齢:18
筋力:A
体力:S
魔力:A
敏捷:SSS
器用:SS
精神:EX
運勢:G
称号:不死殺し(アンデッド・キラー)、神殺し(ゴッド・スレイヤー)、双刀の主
特性:天才、闘気術、魔力操作、闘気と魔力の融合、思考加速、思考分割、剣技上昇、刀技上昇、二刀流、無拍子、化勁、明鏡止水、無念無想、心眼、高速詠唱、無詠唱、炎の精霊王の加護、炎耐性、毒耐性、邪耐性、神耐性
祝福:無し
職業:剣鬼
装備:双刀“紅刀アスラ”“蒼刀マーナ”、鋼鉄のロングソード×2、ミスリル絹のジャケット、ミスリル絹のズボン、牛鬼の革のスニーカー
経験値:4202 次のLvまで98
預金:8050コメル

「……これだったらもう、隠し職業である剣皇になれる条件を満たしていますね。あとはLvを上げるだけです」
「そうか、すまないな。本当は守秘義務などもあるんだろう?」
「ええ、まあ。でもスレイさんに聞かれたらわたくしには隠し事なんてできません。これが惚れた弱みってやつなんですね、卑怯です」
 スレイのカードを見て、隠し職業についての情報を一部開示したフィーナはそういって頬を膨らませた。
 かわいい態度にスレイは口元を綻ばせる。
 今日もまた、スレイはディザスターを伴い職業神ダンテスの神殿を訪れていた。
 連日の主とのお出掛けに、ディザスターはご満悦な様子だった。
 代わりに神殿の神気はもう勘弁してくれと言わんばかりであったが。
 流石に多少職業神ダンテスに同情を覚える。
 まあ勘弁するつもりにはならなかったが。
 ともあれ職業神ダンテスの神殿の職業神の巫女の宿舎。
 以前は忍び込むように入ったが、流石に今回は宿舎の管理人に頼み、フィーナを呼んでもらった。
 フィーナは相手がスレイだと知ると、彼女にしては随分と急いだ様子で飛び出して来たものだ。
 まあもともとの運動神経もあるのでそれほど早くは感じられなかったが。
 そうしてフィーナをデートに誘い出したスレイであったが、ついでとばかりに少し自分の能力値を見てもらっていた。
 最近は自分の能力値の異常さに気付いている為、見せる相手は選んでいるが、恋人であるフィーナは当然見せても構わない相手だ。
 そしてなにげなく隠し職業についても聞いてみた。
 するとフィーナは、かなり秘匿度の高い情報だろうに、あっさりとスレイの今の能力値が、Lvを除けば剣皇への必要条件を満たしている事を明かしていた。
 まあ、流石に実際どの能力値がその条件なのかまでは明かさなかったが、それでも破格の対応であろう。
 フィーナにとっても恋人であるスレイは特別だということだと考えると、なかなか嬉しく感じる。
 そしてスレイは自分の選んだデートコース。
 なるべく装備品を扱う店には近付かないようなルートを歩きながら、他にも色々と尋ねてみることにする。
 装備品を扱う店に近付かないようにするのは、以前の教訓からだ。
 恋人であるフィーナに何かプレゼントする分には全然気にならないのだが、装備品を扱う店で、自分の装備品に出費させられるのは流石にもう懲りた。
 何より今の預金で高価な装備品を買うのは無理がある。
 だからといって恋人であるフィーナの好意に甘え、彼女にプレゼントなどされるのは男の沽券に関わる。
 なので財布の紐を固く縛る意味で、そういった店から離れたデートコースを設定していた。
 フィーナはそれに気付いているのかいないのか、だが少なくとも何も言わないでくれている。
「でも、驚きました。称号といい特性といい、とんでもないですね」
 ともあれ探索者カードの能力値をフィーナに全て見せるのは初めてであった為、どうやらその内容に驚いているようだ。
「ふむ、できればどの称号と特性がどのようにとんでもないのか聞かせてもらえるだろうか、特性については獲得した時点で詳細が……初めから持っていた“天才”を除いては、全て脳裏に知識は刻まれたのだが、世間一般でどうなのか、までは分からんのでな」
「わかりました、それではご説明しますね」
 フィーナはどこか気取った調子になる。
 そういう仕草も可愛く思えて仕方無い辺り、自分は本気で色ボケしてると感じる。
 ちなみに先程からディザスターを撫でようとフィーナは手を伸ばしたりしているのだが、あっさりと移動で運ぶ時など、必要な時以外、主以外に触れさせるつもりの無いディザスターに躱されて、ガックリと項垂れたりもしている。
 そんな動作も可愛いと思えるのだから末期かもしれない。
「まず称号についてなのですが、不死殺し(アンデッド・キラー)は結構ありふれてるので問題無いです。ですが神殺し(ゴッド・スレイヤー)、まずこれはありえないです。いったいどうやって手に入れたのですか?敬虔な神の信徒に見られれば、それこそ宗教関係を全て敵に回しかねませんよ?」
「どうやって手に入れたかはちょっと教えられないが、フィーナは敬虔な神の信徒ではないのか?」
「わ、わたくしはスレイさんを信じてますから」
 頬を赤らめてそう告げるフィーナも可愛いと思えて、やはり自分は色ボケかとどこか諦めたように考える。
「そ、それでは次ですね。双刀の主。これは使い手を選ぶ特別なシークレットウェポンから主として認められた証ですね。これも非常に珍しいですが、別に隠すほどではありません」
 ふむ、とスレイは自らの腰に差された双刀を見やる。
 シークレットウェポンとしても規格外だと思われるこの双刀に主として認められていると考えるとどこか誇らしい気分になる。
『主よ、我も、この欲望の邪神ディザスターも、主を主として認めているぞ』
 スレイのみに聞こえるように自己主張してくるディザスター。
 そんなディザスターに苦笑しながらわかっていると頷く。
 スレイの様子を不思議そうに見ながらフィーナは続ける。
「それでは特性なのですが、天才、これに関してはわたくしも分かりかねます。持ち主であるスレイさんですら分からないとなると、本当にこれに関しては謎としか言いようがありませんね。なので隠しておいた方が無難かと」
 実は知識が脳裏に刻まれなかっただけで、以前のシェルノートとの会話や、ディザスターからの情報で、ある程度は把握できているのだが、そこは口を噤む。
「次に闘気術と魔力操作は一般的なものですので説明の必要は無いでしょう。次の闘気と魔力の融合、これは聞いたことも無いのですが、いったいどのような特性なのですか?」
「ふむ、一つ聞くが闘気と魔力、その構成要素は知っているか?」
「ええ、闘気は生命の力の一部と世界の全ての構成要素である第一質量プリマ・マテリアを世界の全ての結合要素であるエーテルで結合したもの、魔力は精神の力の一部とプリマ・マテリアをエーテルにより結合したもの、でしたよね?」
 非常に博識なところを見せるフィーナ。
 スレイも幼少時代から読書を趣味として、様々な書物を読んできたので、そんな所に共通点を見出し嬉しくなる。
 それと同時にここ2年ほど書物を読んでない事に気付き、非常に読みたくなってくる。
 絶対に、今度エルシア学園を訪れて図書館で本に溺れて過ごしてやると決意する。
 と、今はフィーナとの会話だと思考を切り替えフィーナに答える。
「ああ、その通りだ。闘気と魔力の融合というのは、闘気と魔力の構成要素である生命の力の一部と精神の力の一部を相殺し、分離したエーテルとプリマ・マテリアの内プリマ・マテリアが拡散し、残った純エーテルを用いて強化する特性と考えてもらえればいい。もっと成長すればプリマ・マテリアを拡散させず手元に留める事もできるようになるらしいがな」
「純エーテルによる強化ですか!?まるで古の神話に語られる“真の神”みたいですね」
「まあな」
 実際、邪神もその“真の神”で、純エーテル強化が可能なのだが、必要の無い事なので黙っておく。
「それでは闘気と魔力の融合については隠すべきだと思います。次に、思考加速、思考分割、剣技上昇については一般的なものですね、特に何も問題は無いです。刀技上昇、二刀流、無拍子については以前に説明しましたよね?これは刀技上昇はディラク島ではありふれてますし、二刀流は多少珍しいぐらいです、無拍子についてはかなり珍しいですね、ですがこれらも隠すほどのものではありません」
「なるほど、無拍子については確かに以前興奮した様子で説明していたな」
「それは忘れて下さい!」
 ちょっとからかうとフィーナの可愛い反応が見れたのでスレイは満足する。
「化勁については、難しいですね。ある武術の大家では普通に習得方法を確立していますし。でもスレイさんは独力で身につけたんですよね?」
「ああ、そうだが。その武術の大家というのはグランド家のことか?」
「ええ、ご存じなのですか?」
「ああ、ちょっとそこの家の息子と縁があってな」
 ジークの事を思い出すスレイ。
 そういえば化勁の他にも面白い特性を持っていたなと考える。
 そのうち道場破りでもしてみようか、と物騒な思考まで出てくる。
 だが、ジークの事は気に入っているし止めておこうか。
 などと少し悩んで、今は保留にする。
「まあ、隠すようなものではないですが、グランド家には睨まれないよう気をつけた方が良いですね」
「それはもう手遅れだな」
「え?」
「いや、なんでもない」
 しかし、とスレイは思う。
 この説明ぶり、フィーナも自分と同じで知識を教授するのが好きなのだろうか。
 なんとなく会話の馬が合うし、そんな気がするスレイだった。
「?それでは次に、明鏡止水に無念無想……どの神も信仰せず祝福も受けてないのにまるで聖職者ですね」
 なんだか呆れたように呟くフィーナ。
「ふむ、明鏡止水は戦いに置いて常に平静を保てるし、無念無想の境地は心を読むような敵と相対した時に非常に便利だと思うんだがな」
「ともかく、基本的に聖職者でも高位にあるような方が身につける特性なので、これも隠した方が良いと思います」
「……クロウも明鏡止水は身につけていたんだがな」
 フィーナに聞こえないようぼやくスレイ。
「?次に心眼ですが、あらゆる時空間全次元に死角が無くなり、限定的な未来予知すら可能とする特性、これは無拍子より遥かに珍しい特性です。鬼刃ノブツナ様や、最近現役に復帰なされて実は生きていたと判明した、ノブツナ様の父親であるあの刀神クロウ様、わたくしの知る限りではこの二人ぐらいしか身につけている人はいないと思われるので、やはり隠した方が良いですね」
「……クロウは隠す必要も無いのに」
 やはりぼやいてしまうスレイ。
「?それでは次に、高速詠唱と無詠唱、一般的なものですが、剣士職でこんなのを身につけているというのは隠した方が良いです」
「だな、それは俺もそう思ってた」
 自分のように剣士でありながら、魔法についても特性を得るようなのはまずいないだろうな、とスレイは考える。
「さて次ですが、炎の精霊王の加護、いったい何処で炎の精霊王になんて会ったのですか?」
「普通に迷宮でだが」
「どこかの、未知迷宮でしょうか?精霊王の中でも炎の精霊王は、その所在が謎という事で、精霊の祝福や加護を得たい者が血眼になって探しているのに見つからない存在なのですが。そういう訳なので、特に魔術師系で精霊の力を借りるような相手には絶対にこれは隠すべきですね」
 まさか下級迷宮にいるイフリートが、炎の精霊王だなどとは、誰も思わないのだろうな、と思わず可笑しくなる。
「何を笑ってるんですか?」
「いや、ちょっとな」
 あれは絶対に見つからない、というかばれないだろうとスレイは確信した。
「それでは次に、耐性というのは普通は何も特別ではないものの筈なんですが、邪耐性に神耐性って、スレイさんは邪神とでも戦った事があるんですか?」
 正解だ、と心中で呟くスレイ。
 だが流石にそれを表に出す訳にもいかず、言い訳じみた言葉を告げる。
「それについては何時の間にか身に付いていてな、俺としても心当たりが無い」
「ふぅ、まあスレイさんだったら今更何があっても驚きませんが」
 呆れたように自分を見てくるフィーナに反論したくなるが、反論の根拠が無く仕方なく黙り込む。
「邪耐性はともかく神耐性は、神殺し(ゴッド・スレイヤー)の称号と並んで、“真の神”の全能の力にさえ抵抗力を持つ耐性かもしれません、そう考えるとこれらは絶対に隠すべき称号、特性です」
 そして纏めるように続ける。
「まあ、総括としては、絶対に能力値の詳細は人に見せない方が良いってことですね」
「……まあ、そうなるな」
 僅かに項垂れるスレイ。
 分かっていた事とはいえ、能力値を見せる相手を選ばなければならないというのは、なかなかに面倒臭く、探索者カードの利便性が結構損なわれるのだが。
 ギルドで、隠したい能力値のみ隠せるような機能を付けてくれれば、などと無茶なことを思う。
「ところで話は変わるがフィーナはセリアーナって少女を知っているか?今の職業は剣鬼で、あのエルシア学園三年生で、学園内では“剣女神ソードゴッデス”なんて通り名で呼ばれてるらしいんだが」
「セリアーナさんですか?知っていますよ。あの年頃で二回もクラスアップする女性なんて極めて珍しいですし、多分わたくしの知ってるセリアーナさんとスレイさんの言ってるセリアーナさんは一緒だと思います。スレイさんと出会う少し前に二回目のクラスアップを担当しましたね」
「二回ともフィーナが担当したのか?」
「はい」
「ふむ、俺の時といい、なんというかフィーナには偶然が多いな、そういう巡り合わせなのか?」
 自分がこの迷宮都市でフィーナに出会ったのは、都市を訪れてすぐの話だ。それ以前に二回目のクラスアップを果たしていたという事は今でも多分自分よりLvは上だろうと予想する。
 そんなスレイの脇腹をフィーナが軽く抓る。
 それほど痛くはなかったが、フィーナらしからぬその行動に驚いてスレイは疑問の声を出す。
「フィーナ?」
「正直、恋人と二人きりの場面で、他の女性の話題を出すのはどうかと思います」
 それもそうか、とスレイは反省する。
 そしてスレイはフィーナに腕を差し出した。
「スレイさん?」
「話は終わった事だし、デートの続きだ」
 言葉の意味を理解したフィーナは、スレイの腕に抱きつくように腕を組む。
 そしてそのまま、スレイとフィーナはデートの続きを楽しんだ。
 スレイは決して装備品関係の店には近付かないようにしながら、お洒落な喫茶店で会話を楽しんだり、ちょっとした小物の店でプレゼントをしたり。
 決してフィーナに費用は出させず、強い希望で全て自分で費用を負担した。
 探索者の装備品みたいな値段の桁が違うものでなければ、全て自分が負担しても全然問題が無いので、デートでの男の沽券を守る事はできた。
 そうして昨日と同じ様に、ディザスターには甘いお菓子のお土産を約束して先に帰ってもらう。
 ディザスターはどこかいじけたように帰って行った。
 そしてフィーナには正面から職業神の巫女の宿舎に帰ってもらい、スレイは、警備の隙をついて、フィーナの部屋に忍び込む。
 なんというか、このような事に探索者の能力を使うというのは、能力が泣きそうな気がした。
 だが、スレイは気にせずフィーナの部屋に忍び込むと、スレイをそわそわと待っているフィーナに気付かせずいきなり後ろから抱きついた。
「キャッ」
 驚いて悲鳴を上げるフィーナをベッドに押し倒し、強引に口づけをする。
 最初は驚き抵抗を示したフィーナは、相手がスレイと分かると身体の力を抜き、全てをスレイに預けて来る。
 唇を離すと、フィーナはちょっと怒ったように言った。
「いきなり驚かせるなんて酷いです、本気で怖かったんですから」
 その目尻に涙が光ってるのが見え、スレイは酷く慌てる。
「す、すまなかった。まさか、そこまで驚くなんて」
 慌てるスレイに僅かに溜飲を下げたようにフィーナが微笑む。
「それじゃあスレイさん、ちゃんと優しくしてください」
 もともと儚げな雰囲気を持つフィーナだ。
 スレイはそのように言われて、どこか恐る恐る探るようにフィーナの身体に触れていく。
 そしてそのまま優しく解きほぐすように、スレイはフィーナと交わっていった。


面白いと思ってもらえたらどうぞ宜しくお願いします。



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