「そういえば」
グラナダ氏族の集落。
エミリアの家。
エミリアと同い年に見える若々しい父母に迎えられたスレイは、エミリアの恋人という事で歓迎され、一通り歓談の時を過ごし、今その2人は別の家に住むエミリアの祖父を呼びに行っている。
図らずも訪れた空白の時に、スレイは気になっていたことをエミリアに尋ねる。
「はい、なんでしょうスレイさん」
「“女帝”と“剣女神”というのはどういう奴等なんだ?」
「……どこでその名前を?」
エミリアの視線が険しいものとなり、スレイを睨むように見てくる。
その態度に少々疑問を覚えながらも、スレイは正直に答える。
「この前、エルシア学園に臨時講師として呼ばれたフレイヤの助手として付いていった時、学園生から名を聞いてな。なんでも学園の各学年主席よりも強いという話なので気になってな」
「そうでしたか」
やや、エミリアの顔から険が薄れる。
「てっきりスレイさんのことだから、また新しい女性に目を付けたのかと思ってしまいました」
「おい」
スレイは不本意そうな表情をする。
「それじゃあまるで、俺が何時でも発情している軟派な男みたいじゃないか」
「ええ、実際行いそのものはそんな感じじゃないですか?」
エミリアの厳しい評価に、だがスレイは反論できず口を噤む。
「まあ、そういう男性だと分かっていて恋人になったんですから、そのことにとやかく言う権利は私にはないですけどね」
くすっと笑うエミリアにスレイはやり込められたことに気付き暫し憮然とする。
「それで、“女帝”と“剣女神”の2人のことでしたね。勿論知っていますよ、私達より1学年下だから現在エルシア学園の3年生で、ただ早生まれなので私達と同い年の娘達ですね」
「学園内だけの話とはいえ、やや大仰過ぎる通り名だと思うのだが、それに見合うほどに強いのか?」
「ええ、強いですよ」
エミリアは真剣な表情で告げる。
「私と同年代で、私よりずっと強い異性に会ったのはスレイさんが始めてでしたが、同年代で私よりずっと強い同性に会ったのは2年前、その娘達の入学してきた時が初めてでした」
「エミリアとてかなり強いと思うんだが、それほどか」
やや驚くスレイ。
「ええ、私達の学年では、主席を私とルルナとアッシュとで競い合っていた感じですが、あの2人に関しては入学してきた時点でもう別物だと分かるだけの実力を備えていました。現に1年生の時点でそれぞれその時の生徒会長と風紀委員長から実力でその座を奪い取ったほどですからね」
「人柄はどんな感じなんだ」
「多少傲慢で自信家ですが、どちらも礼儀正しくきちんと弁えた性格をしていますよ。私達にも生徒会への勧誘や風紀委員への勧誘などありましたけど、断った時もすんなりと引いてくれましたし」
なるほど、とスレイは納得する。
エミリアがそれほどに評価している相手ならば、今度フレイヤに付いて学園に赴き、会ってみるのも一興かと考える。
そんな考えを読み取ったのか、エミリアが今度はじと目でスレイを見ていた。
「なんだ?なんでそんな目で見る」
「いえ、またスレイさんの犠牲者が増えそうな予感がひしひしとしまして」
「心外な、自慢じゃないが俺は自分の方から女を口説いた事など一度も無いぞ?」
「ええ、そうでしょうね、そうでしょうとも」
やはりエミリアはじと目のままで、そのまま暫くはそんな様子であった。
暫く経ち、エミリアの両親がエミリアの祖父と共に戻ってきたのか玄関の方から扉が開く音がする。
そして誰かが走ってくる音。
目の前に突然現れた誰かが伸ばした腕をスレイは咄嗟に止めていた。
その手はエミリアの胸に触れる寸前で止められている。
スレイに止められた手の持ち主は、やはりエミリアと同い年ぐらいに見える、エルフの男であった。
「なんじゃいお主、孫の成長を確かめようとする祖父である儂の邪魔をするとは何のつもりじゃ」
スレイはその男から手を離し、瞬時にエミリアを片手で抱きしめそのまま胸を揉みしだく。
「えっ」
エミリアが驚いた表情をするが、構わずスレイは告げた。
「悪いがこれは俺のものだ、相手が誰だろうと指先1つ触れさせる気はない」
「ほう?」
エルフの男はエミリアの胸を穴の開くほど見つめ、次にその視線をスレイに移し、おもむろに言う。
「なるほど、エミリアの胸を前以上に育てたのはお主か、かかかっ、重畳かな、重畳かな」
カハハと笑た後、男は真剣な表情に戻ると告げる。
「さて、よく来たな、エミリアの恋人よ。儂がエミリアの祖父、グラナダ氏族長老衆が1人ジンじゃ」
「あんた、探索者か?」
突然のスレイの誰何に、ジンは驚きの表情となる。
「ふむ惜しいな、儂は元探索者じゃよ。しかし良く分かったのう」
「先程の動きや、気配を読めばそのくらいは分かる」
ジンは、感心したようにスレイを見つめ、嬉しげにエミリアに告げる。
「ふむ、良くやったエミリア。どうやら極めて優秀な男を連れて来たようじゃな。これで招かれざる客人も追い払う事ができそうじゃわい」
何やら色々と気になることを言っているが、スレイはジンに疑問を投げかける。
「あんた、探索者としては何級相当だったんだ?」
「ふむ、元SS級相当じゃよ」
それは……と、スレイはどこか挑戦的な目でジンを見やる。
しかし、ちょうど不可解に思っていた疑問を解決するチャンスだと思い、スレイは質問を続ける。
「ところで、元探索者と言っても力はそのままで、探索者カードだって無くなる訳じゃないだろうに、何を以って「元」探索者になるんだ?」
「なんじゃいお主、そんなことも知らんのかい。それでも探索者か?いいか、探索者を現役で名乗るには5年に1度ギルドに対し更新の手続きをする必要があるのじゃ、その更新をしなければ探索者名簿から除籍され「元」探索者ということになる。尤も探索者カードがあるから、手続き1つであっさり現役に戻ることは可能じゃがの」
クロウ達に出会ってから疑問に思っていたことが解決したスレイは、今度は元SS級相当探索者であるというジンに興味を向ける。
スレイの視線に気付いたジンは、やれやれと言ったように肩をすくめた。
「ふむ、どうやら儂と戦いたくて仕方の無いようじゃの。まあ良いじゃろ、儂としてもあの馬鹿共を追い払う前に、まずはお主の実力を直に確かめてみたいからの、相手になろう」
それでは、と続ける。
「まずはお主の探索者カードを見せてくれんか。儂のカードも見せるので良いじゃろう?」
スレイは頷き、探索者カードを差し出す。
スレイ
Lv:43
年齢:18
筋力:A
体力:S
魔力:A
敏捷:SSS
器用:SS
精神:EX
運勢:G
称号:不死殺し(アンデッド・キラー)、神殺し(ゴッド・スレイヤー)、双刀の主
特性:天才、闘気術、魔力操作、闘気と魔力の融合、思考加速、思考分割、剣技上昇、刀技上昇、二刀流、無拍子、化勁、明鏡止水、無念無想、心眼、高速詠唱、無詠唱、炎の精霊王の加護、炎耐性、毒耐性、邪耐性、神耐性
祝福:無し
職業:剣鬼
装備:双刀“紅刀アスラ”“蒼刀マーナ”、鋼鉄のロングソード×2、ミスリル絹のジャケット、ミスリル絹のズボン、牛鬼の革のスニーカー
経験値:4202 次のLvまで98
預金:9050コメル
「ほう、これはまた」
ジンは驚いたようにスレイを見やると、スレイに尋ねる。
「お主、探索者になってどのくらいになる?」
「まだ2ヵ月かそこらってところだな」
「なんと!」
流石にジンは驚愕の声を上げる。
「それはまた、とんでもないのう」
「次はあんたのカードを見せてもらいたいんだが」
「む、ふむ、そうじゃの」
まだ驚きを表情に見せながらも、ジンもカードを差し出す。
ジン
Lv:98
年齢:683
筋力:A
体力:S
魔力:EX+
敏捷:SSS
器用:SSS
精神:SSS
運勢:SS
称号:不死殺し(アンデッド・キラー)、竜殺し(ドラゴン・バスター)、魔導を極めし者、森エルフ、エルフの長老、森の守護者
特性:魔力操作、思考加速、思考分割、魔法上昇、木属性魔法効果上昇、高速詠唱、無詠唱、木属性、炎耐性、水耐性、土耐性、風耐性、毒耐性、光耐性、闇耐性、魔耐性
祝福:森神ルディア
職業:魔賢帝
装備:世界樹の杖、世界樹のローブ
経験値:9999 次のLvまで0
預金:0コメル
流石は元SS級相当探索者と、スレイは歓喜の笑みを零す。
「流石にここでやる訳にはいかんから外に出るぞい」
「ああ」
先に出るジンとそれに続くスレイ、そんな2人を慌てて追いかけるエミリア。
そして忘れられ、話の展開に置いていかれたエミリアの両親と、ディザスターもまた、どこか落ち込んだように後に続くのであった。
面白いと思ってもらえたらどうぞ宜しくお願いします。
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